知っているようで知らない?安納芋。安納芋の歴史や安納芋の種類、安納芋の栽培方法とは?苗、種芋、土壌作り、植え付け、つる返し、収穫と安納芋の全てを教えます!

ねっとりした食感と、クリーミーな甘さが人気の安納芋。その甘さから、干し芋をはじめ、焼き芋や天ぷらなどの料理のほか、焼酎やペットフードなどでも親しまれています。そんな魅力あふれる安納芋は、いったいどのような種類があり、どのように栽培されているのでしょうか?そこでこちらでは、安納芋の歴史や種類、栽培方法を交えて解説します。

安納芋とは

安納芋は、さつまいもの一種で、主に鹿児島県の南部にある、種子島にある安納地域で栽培され始めたことから、その地域の名をとって「あんのういも」と呼ばれています。さまざまな種類があるさつまいもは、食感がほくほくしたものと、ねっとりとしたものとに大別できます。ほくほくしたものとしては、紅あずまや鳴門金時のほか、焼酎の原料にもなるコガネセンガンなどがあります。一方、ねっとりしたものとしては、紅はるかや焼き芋向きの紅まさり、新品種で甘みが強いシルクスイートなどがあります。

安納芋は、ねっとりしたものに分類されますが、その中でも特に糖度が高く、生の状態でも鳴門金時の13度程度に対し、安納芋は17度前後に達します。さらに、時間をかけて焼くことで、蜜が出るほどの甘さになります。10月中旬から1月下旬までが安納芋の旬で、9月頃から11月頃にかけて収穫され、収穫後2週間から3週間経過した頃が、より甘さが増し美味しくなります。

安納芋の歴史

安納芋は、第二次世界大戦後、インドネシアにあるスマトラ島の北部、セルダンという地域から兵隊が持ち帰った芋を、1947年頃から鹿児島県安納地域で栽培を始めたとされており、歴史はまだ浅いです。ちなみに、さつまいもの歴史は古く、沖縄の野國總管(のぐにそうかん)が1605年に中国の福建省から、さつまいもの苗をひそかに持ち出し、故郷の野國村(現在の沖縄県嘉手納町)に植えたのが始まりと言われています。そして長崎県においては、1615年に平戸からタイのシャムに向かって出航した、ウィリアム・アダムス氏が、船の不備のために沖縄県の那覇から引き返すこととなった際に、そこで見つけたさつまいもを、土産として持ち帰り植えたことが始まりだとか。また1715年には、対馬市上県町久原の原田三郎右衛門氏が、海を渡って鹿児島県薩摩から、さつまいもの種芋を持ち帰った後、作付けに成功して対馬全島に普及させたと伝えられています。対馬は、水田が少なく、食糧不足が問題とされていましたが、さつまいもは痩せた土地でも育つことから、食糧不足は解消に向かいます。このことから、人々を食糧不足から救ったさつまいもとして、対馬では孝行芋と呼ばれるようになっていきました。

安納芋の種類

安納芋には、主に

  • 安納紅
  • 安納こがね

の2種類があります。安納紅は、安納芋では一般的な品種で、表皮は褐色がかった紅色、中は黄色です。安納こがねは、表皮が傷みやすく栽培が難しいため、生産量が少なく、表皮は薄い黄褐色、中はオレンジ色です。

安納紅と安納こがねは、クセや嫌味がなく、最も好ましい甘さを持つ物質と言われるショ糖が、他のさつまいもと比べて約2倍も含まれているのが、安納芋の甘さの秘密です。どちらも、1989年から鹿児島県農業試験場熊毛支場において、形状や外観に優れた糖度の高いものだけを選別し、1998年10月29日に品種登録されました。その後、2013年10月までは、鹿児島県種子島のみ栽培が認められていましたが、現在では規制が解除され、全国で安納芋の栽培が可能となっています。

安納芋の栽培方法

安納芋は、

  1. 苗もしくは種芋も用意
  2. 土壌づくり
  3. 植え付け
  4. つる返し
  5. 収穫

といった流れで栽培します。

1.苗もしくは種芋を用意

家庭の場合は、苗を購入し栽培することが一般的です。安納芋の苗は、ホームセンターや種苗店などで、毎年4月頃になると販売されます。農家の場合は、種芋を土に植えて芽が出るのを待ち、育った苗から栽培することが多いです。種芋から芽を出させるために、ハウスの中で伏せこみを行い、芽が出てから約40日で苗ができ、葉が7枚から8枚程になったらハサミなどで切り取り、苗にします。

2.土壌づくり

安納芋の栽培には、日当たりと水はけが良い乾燥した土であることと、痩せた土地であることが重要です。この土壌づくりが、安納芋の糖度に直結します。また、植え付けをする前に土をよく耕して、幅90cm程の畝を作っておきます。

3.植え付け

安納芋の植え方には、

・斜め植え・・・苗を斜めに刺して植える
・水平植え・・・苗を寝かせて土に埋まるように植える
・直立植え・・・苗を立てて植える

などがあり、4月下旬から6月下旬に行います。斜め植えや水平植えは、大きさが多少異なるものの芋が多く実りやすく、直立植えは、土の下の方になるにつれ芋が小さくなりやすいです。プランターの場合は、土がたくさん入る深さのあるものを選び、苗を植えて毎日水を与え、根がついてからは、土が乾いてから水を与えることがポイントです。

4.つる返し

安納芋の苗を植え付けして、1カ月から2カ月程経過した夏頃になると、つるが伸びて畝からはみ出すことがあります。つるが土に触れていると、そこから不定根といわれる根が増えて、芋がついて栄養も分散されてしまうため、元々の株の芋に栄養が行き渡らなくなります。そこで、畝から伸びてはみ出したつるを、土から持ち上げてひっくり返す、つる返しを行うことで、元々の株の芋に栄養を集中させ、大きな芋を育てることができます。

5.収穫

安納芋の苗を植え付けして、120日から140日程を目安に収穫します。収穫が早いと味が悪く、逆に収穫が遅いと、芋の形が悪くなりやすいため、時期を見極め収穫します。

まとめ

安納芋について、歴史や種類、栽培方法を交え解説しました。安納芋は、ミネラルやビタミン、食物繊維も豊富に含まれているため、便秘や生活習慣病を予防し、身体を健康に保つ働きがあります。また、糖度が高いわりにカロリーは低いため、ダイエット効果も見込めます。身体に良いこと尽くめの安納芋は、苗を用意して良好な土壌づくりを行えば、家庭菜園やプランターでも気軽に楽しめます。安納芋を上手に栽培できるか不安な方や、より美味しい安納芋に出会ってみたいという方は、通販でも購入できますので、是非試してみてはいかがでしょうか。