数年後にはさつまいもが食べられなくなるかも?さつまいもを苦しめる病気とは?サツマイモ基腐病や黒斑病の感染ルートや影響を調べてみた

いつでも食べたくなる「さつまいも」。甘い蜜の香りに誘われて、スーパーなどで焼き芋を買ったことがある人も多いはず。しかし、そんなさつまいもが「将来食べられなくなる可能性がある」という事実をご存知でしたか?この記事では、さつまいもを苦しめる病気について解説します。

さつまいもVSさつまいもを苦しめる病気

ころんとかわいい見た目にぴったりの、甘い野菜と言えば「さつまいも」ですよね。焼くだけでも、天ぷらにしても、スウィーツにしても最高なマルチプレイヤーのため、大好きな人も多いことでしょう。しかし、皆のアイドル「さつまいも」が数年後には、「食べられなくなる可能性」がゼロではないと言われているのです。サツマイモにも、人間と同様にさまざまな病気があり、日々さつまいもや農家さんたちを苦しめています。さつまいもの病気には、どのようなものがあるのでしょうか?

サツマイモ基腐病

基腐病は、アメリカで約100年前に発見された病気です。アジアにおいても、この約10年の間に感染が広がりました。基腐病が生じると、さつまいもの葉の色が変わって、生育不良になります。さらに、さつまいも自体の根元も黒く変色し、腐敗することが特徴です。日本では、2018年の11月から感染の報告が上がってきており、現在では以下の都道府県で確認されています。

東北地方
山形県、北海道
関東地方
群馬県、茨城県、東京都、千葉県、埼玉県
中部地方
静岡県、岐阜県、福井県、石川県、長野県
関西地方
兵庫県、大阪府、和歌山県
中国・四国地方
高知県、愛媛県、鳥取県、広島県、岡山県
九州地方
沖縄県、鹿児島県、宮崎県、福岡県、熊本県、長崎県

当初は、九州を中心に感染が流行していましたが、徐々に各地域へ感染が拡大しました。そのため、国も支援策を考えるなど、「さつまいも基腐病」の問題は深刻化しています。

サツマイモ基腐病はどのように感染するの?

2020年は、特に基腐病の感染地域が拡大しました。理由は、梅雨シーズンの記録的な雨量と高温多湿が原因です。基腐病は、糸状菌と呼ばれる「カビ」が原因で生じます。糸状菌は、有用微生物(EM:Effective Microorganisms)の発酵食品や、医療品を作る上でかかせない菌でもありますが、条件が揃うとさつまいもの病気を引き起こしてしまうのです。糸状菌は排水が悪い場所で発症しやすく、雨などによってカビの胞子が飛沫し、周囲のサツマイモ畑に広がることで、感染します。また、この病気に感染しているさつまいもを種芋にしてしまうと、発病だけではなく、感染したさつまいもを育てていた土壌もしっかりと殺菌しなければいけません。なぜなら、育てていた土壌からも感染するという、恐ろしい一面があるからです。

サツマイモ基腐病が及ぼす影響について

現在では、1本200円程度でさつまいもを購入することができます。そのため、さつまいもは、料理やスウィーツ作りなどにも愛用しやすい素材です。しかし、さつまいも基腐病がこのまま拡大を続けていけば、さらに収穫量が下がり、価格も少しずつ高騰していくことが予想されます。また、さつまいもは、「芋焼酎」の主な材料として使われている他、お菓子やジュースなどの甘味にも使われる「でん粉」を作る際にも、欠かせない存在です。私たちが思っている以上に、さつまいもは多くの場面で使われています。もし、収穫量が減少したら、その分大きな影響を受けることでしょう。

他にも病気はある!さつまいも黒斑病(こくはんびょう)

黒斑病は、さつまいも基腐病と同じく糸状菌(カビ)が原因です。ネズミ・土壌害虫(ハリガネムシなど)などが、さつまいもを食べるときについた傷から病原菌が侵入し、黒斑病に感染してしまいます。また、黒斑病に感染している種芋を使用して育てた場合や、収穫する際についた傷から感染してしまう、などのケースもあるので注意が必要です。特に一番恐ろしいのは、収穫し熟成させている間に感染が広がると、深刻な問題につながると言えるでしょう。症状としては、さつまいもに黒い斑点が現れるとともに、病斑部分がくぼんでいきます。そして、塊根内部にまでカビ(毛のような見た目)が発生し、腐敗するのです。

こういう状況に陥ってしまうと、無病の種芋を選んだ上で、農薬や温湯消毒などで種芋を消毒する必要があり、最初から最後まで気が抜けないことになります。

さつまいもをこれからも食べられるように

私たちがさつまいもの病気を減らすためにできることは、残念ながら「ない」というのが現実です。しかし、今回お伝えしたさつまいも基腐病や黒斑病以外にも、いろいろな病気と農家さんは日々戦っています。道の駅などで、農家さんを見かけたときは「いつも買っています!おいしくて大好きです!」などの言葉を伝えてみると良いかもしれません。

きっと農家さんは、「そう言って貰えたのなら、もっと頑張ろう」という温かい気持ちになれるはずです。さつまいもは「誰かが時間と手間をかけて育てた食材」だと再認識し、大切に食べていく意識を改めてみてはいかがでしょうか?