さつまいもスイーツ専門店が次々と登場するなど、近年、さつまいもがますます注目を集めています。さつまいもを使ったスイーツはバリエーション豊かで、焼き芋にとどまらず、スイートポテトやパフェ、チップスなど、さまざまな形で楽しめます。特に甘味が強くしっとりとした食感を持つ安納芋は、濃厚な味わいから多くの方に支持されており、スイーツの素材としても人気が高い品種です。さつまいも博でも沢山の安納芋の焼き芋、スイーツが出品されるほどさつまいも品種の中でもとりわけ人気の品種であることは間違いありません。それでも、安納芋は特別な高級品というわけではなく、比較的手が届きやすい価格帯で購入することが可能です。
今回は、安納芋の美味しさの秘密や、安納芋の価格が高めとされる理由、そして他のさつまいもとの価格差についてご紹介します。安納芋が育まれる種子島の豊かな土壌と気候が、その独特の甘さを生み出しているため、他の品種とは一線を画す味わいが楽しめます。本記事が、安納芋をより身近に感じていただくきっかけになれば幸いです。
安納芋は高級品種?
さつまいもの高級品種と言われるさつまいもの品種は、安納芋、紅はるか、シルクスイート、鳴門金時(なると金時)があります。食感はねっとり系、しっとり系、ほくほく系と様々で産地毎にブランドを作って販売しているさつまいもの品種もあります。そのようなさつまいもの高級品種と言われるさつまいもの中で、まずは、安納芋の特徴や値段について解説します。安納芋が高級品種と言われる理由や、さつまいもとの価格の違いについて紹介しますので、参考にしてみてください。
安納芋の特徴
安納芋は、鹿児島県の離島・種子島を代表するさつまいもで、その特徴は何といっても豊かな甘みとしっとりとした食感です。水分をたっぷりと含むため、焼き芋にした際には蜜が滲み出し、ねっとりと濃厚な食感が楽しめます。外観も魅力的で、コロンとした丸みのあるフォルムに、褐紅色の皮と赤みがかったオレンジ色の果肉が見られます。種子島の温暖な気候は一年を通じて穏やかで、日差しに恵まれた気候とともに、潮風が豊富に吹き込むことでミネラルを多く含んだ土壌が形成されています。こうした環境の中で育まれる安納芋は、自然と糖度が高まり、他のさつまいもにはない極上の甘さが引き出されるのです。
安納芋が高級と言われる理由
安納芋が高級と言われる大きな理由は2つです。
1.安納芋は皮が非常に薄く、特に水分量が多いのが特徴です。このため、わずかな衝撃でも皮が剥がれやすく、扱いには細心の注意が求められます。もし傷がついたり皮が剥がれたりすると、そこから痛みやすくなり、新鮮な状態での保存が難しくなります。こうした理由から、収穫や流通の際にはひとつひとつ丁寧に取り扱わなければならず、安納芋の品質を保つための人件費がかさむことが多くあります。結果として、他のさつまいもに比べても高値で流通する傾向が見られるのです。この繊細さと、それに伴う生産管理の難しさが、安納芋の価格に反映されています。
2.種子島産の安納芋は、その品質と独自性から今なお根強い人気を誇っています。安納芋の栽培はもともと種子島で始まり、平成25年までは登録品種苗とされていたため、種子島以外での栽培は厳しく制限されていました。現在では全国各地で栽培されるようになったものの、原産地である種子島産の安納芋は特に評価が高く、需要も安定して高いため、市場での価格が上昇傾向にあります。また、種子島は鹿児島本土から約45kmの距離がある離島であり、安納芋を新鮮な状態で各地に届けるためには船や飛行機での輸送が必要となり、輸送コストが発生します。こうした輸送費用も価格に影響を与えており、種子島産の安納芋が高価になる一因となっています。
安納芋の値段
安納芋の価格は1kgあたり1,200円前後であることが多く、特に種子島産のものは1kgあたり約1,800円とさらに高めに設定されています。これは、一般的なさつまいもが1kgあたり700~800円程度で販売されているのと比較しても、その希少性と品質の高さから高級な品種として扱われていることがわかります。種子島産の安納芋は、その豊かな甘みとねっとりとした食感で、多くの消費者から支持を集めています。旬の時期である10月から12月頃には、スーパーや百貨店、オンラインショップなど様々な場所で見かけることが増えるため、店頭で見かけた際には他のさつまいもと値段を比較して、その価値を確かめてみるのも楽しみの一つです。
安納芋と他のサツマイモとの比較
ここでは、安納芋と他のサツマイモを比較していきます。まずは、人気の品種と1kgあたりの大まかな価格を一覧にして紹介します。
品種 | 1kgあたりの価格 |
安納芋 | 1,200円 |
シルクスイート | 1,000円 |
紅はるか | 1,000円 |
鳴門金時 | 1,200円 |
紅あずま | 800円 |
パープルスイートロード | 900円 |
値段だけを比較すると、安納芋は他の品種と比べて高い傾向にあります。ここからは、各品種を簡単に紹介しますので併せて参考にしてください。
シルクスイート
シルクスイートは、さつまいも品種「春こがね」と「紅まさり」を交配させて誕生したもので、その名前の通り滑らかな口当たりが特徴です。皮は濃い赤紫色で見た目にも鮮やかさがあり、果肉はクリーム色で食欲をそそる色合いをしています。繊維が少ないため、加熱するとしっとりとなめらかな舌触りとなり、シルクのように滑らかに感じられることから「シルクスイート」と名付けられました。
紅はるか
紅はるかは、九州生まれの「九州121号」と「春こがね」を交配して生まれた品種で、見た目は赤紫色の皮とクリーム色の果肉をもつシルクスイートに似ています。豊富な水分を含んでおり、焼き芋にすると中から蜜がにじみ出すほど糖度が高く、ねっとりとした口当たりが特徴です。その強い甘みと濃厚な食感は、他のさつまいもにはなかなか見られないもので、焼くと自然なスイーツのような味わいが楽しめます。紅はるかという名前も、その甘さが「はるかに」優れていることから由来したとされ、和菓子や洋菓子の材料としても人気が高まり、さまざまな用途で好まれる品種です。
鳴門金時
鳴門金時は、「高系14号」をもとに品種改良されたさつまいもで、徳島県鳴門市がその発祥地とされています。甘みが際立ち、ほくほくとした食感が特徴のため、焼き芋としてはもちろん、天ぷらや大学イモにしても豊かな風味が引き立ち、幅広い料理に使われて人気を集めています。見た目も美しく、外皮は鮮やかな紅色で中の果肉は黄金色をしており、まるで栗のような上品な甘さが楽しめます。この優雅な甘さと独特の食感から、鳴門金時という名前を耳にしたことがある人も多いでしょう。
紅あずま
紅あずまは、東日本を代表する品種で、その生産量は国内でも非常に多く、さつまいもといえば紅あずまを思い浮かべる人も少なくありません。繊維が少なく、しっとりとした滑らかな舌触りを持ちながらも、口の中ではほくほくとした食感が楽しめるのが特徴です。この絶妙な食感のバランスから、焼き芋としてだけでなく、スイートポテトや天ぷら、煮物などさまざまな調理方法に適しており、家庭料理からスイーツまで幅広いメニューで活躍しています。そのまま食べても自然な甘さが味わえますが、加熱することで甘みがさらに引き立ち、豊かな風味が楽しめるため、多くの人に愛され続けています。
パープルスイートロード
パープルスイートロードは、母体となる「九州119号」を基に複数の品種を掛け合わせて生み出されたさつまいもで、外皮が赤紫色、中身が鮮やかな紫色をしていることから「紫イモ」とも呼ばれることがあります。特にこの紫色は、ブルーベリーなどにも多く含まれるアントシアニン系の色素によるもので、アントシアニンには目の調節機能を助けたり、抗酸化作用が期待される成分として知られています。パープルスイートロードは、しっかりとした甘みとほのかな酸味を感じさせる独特の風味が特徴で、焼き芋として食べるのはもちろん、タルトやスイートポテトといったスイーツ作りにも適しています。
まとめ
今回は、安納芋がさつまいもの中では高級品とされる理由や、他のさつまいもとの価格差について解説しました。安納芋が「極上の甘さ」と評されるのは、主な生産地である種子島の独特な土壌や気候条件が影響しており、さらにその栽培には丁寧な手間がかけられています。種子島の土壌にはミネラルが豊富に含まれており、この栄養豊かな環境が、安納芋特有の濃厚な甘みを生み出す要因となっています。また、皮が薄く水分が多いため、収穫や流通過程で慎重な取り扱いが必要で、人件費が高くなることも価格が高くなる理由の一つです。
とはいえ、安納芋は何万円もするような手の届かない高級品ではなく、旬の時期にはスーパーや百貨店でも比較的手頃な価格で見かけることが増えます。日常の食卓にも気軽に取り入れられる機会があるため、もし店頭で見かけた際にはぜひ手に取って、安納芋の美味しさや甘さを味わってみてください。その濃厚な甘みとしっとりした食感は、焼き芋やスイーツとしても楽しむ価値がありますよ!