一言で「さつまいも」と言っても、色々な品種があるのをご存じでしょうか。日本で栽培されている主なさつまいもの品種だけでも、60以上あると言われています。この中には、地域やJAによってブランド化されているさつまいももあります。本記事では、さつまいもの代表的な品種と特徴、高級さつまいもとして人気の安納芋について紹介します。
さつまいもの特徴や品種数
日本でのさつまいもの歴史や、さつまいもの生産量、主に作付けされている品種について解説します。
さつまいもの名前の由来
さつまいもの原産地は中米で、ヨーロッパから東南アジア、そして中国へと伝わりました。日本へは、1604年に中国から琉球(現在の沖縄)に伝わったのが最初とされています。その後、1700年代の初めになって薩摩藩(現在の鹿児島県)が栽培を始め、蘭学者の青木昆陽が全国へと広めました。関東では、薩摩藩から伝わったことから、薩摩芋(さつまいも)と呼ばれるようになりましたが、九州では中国から伝わった芋ということで、「唐芋(からいも)」と呼ばれます。また、中国では甘い芋という意味の「甘藷」と呼んでいて、日本でもそのまま「甘藷(かんしょ)」と言うこともあります。
さつまいもの生産量
そもそも中米が原産のさつまいもは、日本では主に、関東より南の暖かい地域で栽培されています。農林水産省の「令和3年度 いも・でんぷんに関する資料」によると、生産量が多い都道府県は、1位が鹿児島県、2位が茨城県、3位が千葉県、次いで宮崎県、徳島県、熊本県です。
参考資料:農林水産省「令和3年度 いも・でんぷんに関する資料」
さつまいもの品種数
現在栽培されているさつまいもの主要な品種は、約60品種もあります。品種別に作付けが多いのは、「コガネセンガン」「紅はるか」「紅あずま」「高系14号」「シロユタカ」の順となっています。コガネセンガンは芋焼酎の原料用の品種で、シロユタカはでんぷん用の品種です。紅はるかや紅あずま、高系14号は食用の品種です。
代表的なさつまいもの品種と特徴
前章で紹介した通り、さまざま品種のさつまいもが栽培されています。その中でも代表的な生食品種の特徴をご紹介します。
紅はるか(べにはるか)
紅はるかは、九州沖縄農業研究センターが、「九州121号」と「春こがね」を交配させて育成した品種です。2010年に品種登録されています。果肉の色は黄白色で、やや粉質ですが、加熱するとしっとりとした食感となり、ねっとりとした強い甘さが特徴です。貯蔵することで、甘みや食感が良くなることから、30日以上寝かせてから出荷されるケースが多くなっています。
紅あずま(べにあずま)
紅あずまは、九州農業試験場で、「関東859」と「コガネセンガン」を交配したものを、茨城県の農業研究センターが選抜、育成した品種です。1985年に品種登録されました。西の「高系14号」、東の「紅あずま」と呼ばれるように、関東で多く栽培されています。果肉の色は黄色で、繊維が少なく粉質です。加熱すると適度なホクホク感としっとり感があり、食感のバランスが良いことで人気です。
高系14号
高系14号は、沖縄農事試験場で、「ナンシーホール」と「シャム」を交配した種子を、高知県農事試験場で選抜、育成した品種です。早掘り用品種として、1945年に高系14号として命名されました。西の高系14号と言われるように西日本で多く栽培されています。果肉は黄白色の粉質で、加熱するとホクホクとした食感になります。貯蔵性が高いことから、加工用としても利用されます。
安納芋は高級品種?
さつまいもの高級品種と言われるさつまいもの品種は、安納芋、紅はるか、シルクスイート、鳴門金時(なると金時)があります。食感はねっとり系、しっとり系、ほくほく系と様々で産地毎にブランドを作って販売しているさつまいもの品種もあります。そのようなさつまいもの高級品種と言われるさつまいもの中で、まずは、安納芋の特徴や値段について解説します。安納芋が高級品種と言われる理由や、さつまいもとの価格の違いについて紹介しますので、参考にしてみてください。
安納芋の特徴
安納芋は、鹿児島県の離島・種子島を代表するさつまいもで、その特徴は何といっても豊かな甘みとしっとりとした食感です。水分をたっぷりと含むため、焼き芋にした際には蜜が滲み出し、ねっとりと濃厚な食感が楽しめます。外観も魅力的で、コロンとした丸みのあるフォルムに、褐紅色の皮と赤みがかったオレンジ色の果肉が見られます。種子島の温暖な気候は一年を通じて穏やかで、日差しに恵まれた気候とともに、潮風が豊富に吹き込むことでミネラルを多く含んだ土壌が形成されています。こうした環境の中で育まれる安納芋は、自然と糖度が高まり、他のさつまいもにはない極上の甘さが引き出されるのです。
ブランドさつまいもの火付け役「安納芋」とは?
作付けが多い「紅はるか」「紅あずま」「高系14号」以外にも、生産量は少ないですが、食感と甘みに優れたさつまいもの品種はあります。最近では、地域やJA、企業などが独自にブランドさつまいもとして展開しているものもあります。
最後に、そんなブランドさつまいもブームの火付け役となった「安納芋」について紹介します。
安納芋とは?
安納芋は、第二次世界大戦後にインドネシアのスマトラ島から持ち帰った芋を、種子島で栽培したのが始まりと言われています。栽培していたのが安納地域だったことから、安納芋と名付けられました。
平成に入り、鹿児島県農業開発総合センターで選抜、育成が行われ、1998(平成10)年に、「安納紅」と「安納こがね」の2品種が品種登録されました。当初は、種子島以外の地域では栽培が認められていませんでしたが、現在は他の地域でも栽培可能です。
安納芋の特徴
安納芋は、ねっとりとした食感と強い甘みが特徴です。じっくりと時間をかけて加熱すると、糖度が40度にもなるさつまいもとして人気が高まりました。このねっとりとした食感と甘さは、他のさつまいもの品種と比べると、ショ糖が多く含まれているからだとされています。
まとめ
安納芋は、ねっとりとした食感と強い甘みが特徴で、現在のブランドさつまいもブームの火付け役となった品種です。