安納芋の栽培ってむずかしいの!?安納芋の難しさの定義を安納芋を栽培して12年の農業法人の社長が解説します!苗の育ち方、害虫や病気、収穫量、向き不向きの土地柄、気候、種芋の保管方法まで

五島市(福江島)で安納芋を栽培して早12年。累計約2,000tを栽培し収穫してきましたが、「安納芋の栽培って難しいですか」「安納芋と紅はるかってどっちが難しいですか」ってよく質問をうけます。取引先様、お客様、そして農家からもよく聞かれます。農家から聞かれるってことは、安納芋を栽培している農家は少ないってことです。

難しさの定義とは

  1. 苗の育ち方
  2. 畑での育ち方
  3. 害虫や病気
  4. 収穫量
  5. 萌芽のはやさ
  6. 美味しさ、黄金色のような色合い
  7. 向き不向きの土地柄、気候
  8. 種芋の保管方法

安納芋と紅はるかも含めた他の品種との違いを説明していきます。まず、安納芋も含めたさつまいもの植え付け方法をご存じでしょうか。さつまいもはジャガイモのように芋を植えるのではありません。芋から伸びてきた苗をきって畑に植え付けます。ここって結構知らいない人が多いさつまいもあるあるかもしれません。

苗の育て方と育つスピード、苗の量

まずは苗の育て方や育つスピード、苗の量です。当社は有機安納芋、ふくむらさき芋、芋おとめの3種を栽培していますが、苗の育て方の違いはなく、苗の育つスピードに大差はありません。以前、紅はるかも栽培していましたが同様です。ただ、大きな違いが「萌芽」の量が違います。萌芽とは芋からでてくる芽のことですが、この芽の量が安納芋と紅はるかを比べると倍ぐらい違います。安納芋が5か所ぐらい芽がでてきますが、紅はるかは10か所から出てきます。この萌芽の量が多いと少ない種芋で多くの苗が育ち獲れます。苗づくりは太く、節間を短く育てるのが上手な育て方だが、肥料や水をやりすぎると早く長くなるが、節間も長く良い苗にはなりません。因みに苗を育てるときの肥料は窒素成分の高いものを使用する。リン酸、加里は不要。

種芋から、にょきにょうきと苗が育ち、育った苗が30センチぐらいなるとカットし畑に植えるが、畑に植えた後のスピードに違いがる。ふくむらさき芋の苗の育ちは早い。すぐに伸びてくる。伸びるということは葉っぱの数もおおくより光合成ができるということ。一方安納芋は普通。畑に散布する肥料成分は安納芋も紅はるかも同じで、品種ごとに変えることはしない。大きな芋に育てたければ品種ではなく、苗の畑への植える角度をかえることが大事であり、垂直に苗を植えると個数は少なく大きな芋が育つ。栽培日数も安納芋も紅はるかも同じで、用途によって日数を変える。例えば、焼酎用や加工用であれば栽培日数を180日間と長くして大きな芋に育て、生食用であれば150日ぐらいで収穫する。

2019年に沖縄で発生し、さつまいもの産地である鹿児島県が大被害にあった。鹿児島県では焼酎用の品種と、食用の紅はるかを植えているのでどちらも大被害になったが、安納芋も紅はるかも病害虫の耐性に大きな違いはない。この時期はヨトウムシが大量に発生する時期だが、どちらも葉っぱを食べられる。アグリコーポレーションは有機安納芋のため農薬を使用することはないので、酢酸カルシウム液肥を自社製造し散布することにより、筋肉質の葉っぱに育て食害の被害にあわないようにしている。これは、安納芋が強いのではなく、アグリ・コーポレーションの栽培技術によるところが大きい。

収穫量について。収穫量に違いはある?

さて、収穫量はどうか。違いはあるのか。さつまいもは品種により収穫量に大きな差が生まれる。その差はすごく大きい。安納芋と紅はるかはどちらが多く収穫できるのか。それは、紅はるかである。植付時期、収穫時期を同じにすれば、ざっと1.5倍の差がある。あくまで当社比である。紅はるかは10a当たり(1反、1,000㎡)3,000kg収穫できるのに対し、安納芋は2,000kg。先に書いたように用途によって栽培日数が変わり作り手の農家によっての違いあることは言うまでもないが、総じて安納芋の収穫量が低くなる。ふくむらさき芋も同様に収穫量は低い。紫芋のなかでは圧倒的な糖度の高さと美味しさが評価されているが、作り手が増えない理由は安納芋同様の収穫量の低さにある。だから希少性が高いのである。

そして、収穫量の違い以外に大きな差が他にもある。それは、土地柄を選ぶことである。土地柄とは土壌の特性や地域である。安納芋の生まれは鹿児島県種子島であることから、島の気候が合う。海に近い畑が美味しくなる傾向が強い。私は五島市福江島で安納芋を栽培する傍ら、農産物直売所「旬の駅」を奈良・大阪・京都に6店舗経営している。登録農家は3,000件あり、安納芋や紅はるかといった品種を栽培している農家も当然いるが、安納芋は全く美味しくない。糖度も低く、色も薄く、おそらくミネラル系の成分が必要な気がする。これは調べた限りではないが、関西地区では安納芋を栽培するのは難しい。一方紅はるかは北海道でも栽培されているので作りやすく、企業的見地でいうとライバルが多い。五島市福江島は安納芋の栽培は適地である。糖度も高く、色も黄金色に輝き、最高の焼き芋ができる。

さらに、安納芋の難さはもう一つある。さつまいもは収穫して貯蔵すると糖度が上がって美味しくなるが、その貯蔵中に萌芽がしやすいもの安納芋の特徴の一つ。じゃがいもの芽は毒成分があり絶対に食べてはいけないが、さつまいもの芽は問題なく、また簡単に芽がとれるので大きな問題ではないように思えるが、年間500トンを収穫するアグリコーポレーションにとっては余計な仕事になってしまうため、温度管理と遮光が大事になってくる。

収穫した安納芋自体が種芋になるため、種芋はわざと萌芽させるのも技の一つである。

安納芋と紅はるかの違いをまとめると、紅はるかは萌芽の量も多いため栽培面積を増やしやすく、どこでも栽培できて収穫量は多いがら企業的見地でいうとライバルが多い。一方、安納芋は五島市福江島のような海に囲まれた畑が適地で、収穫量が少ないが希少性が高くブランド力が強いが収穫量が少ない。多く収穫するには技術が必要になる。