安納芋の産地はどこかご存知でしょうか?鹿児島県種子島発祥の「蜜芋」とも称される安納芋は、なめらかで濃厚な甘さが人気のさつまいもです。近年、長崎県の五島列島や鹿児島県の一部地域では、化学肥料や農薬を使わない有機栽培が行われており、豊かな風味をもつ自然な甘さがさらに注目されています。しかし、一般的な慣行栽培と比べると有機栽培の生産量は少なく、希少性が高いのが現状です。安納芋の特徴や育成方法、特に有機栽培のメリットや手間を知ることで、味わいの奥深さを楽しめるでしょう。この記事を読み進めると、安納芋が育まれる産地と有機栽培がより詳しくわかり、有機栽培の魅力を存分に感じていただけるはずです。
安納芋とは?
安納芋(あんのういも)と読みます。鹿児島県種子島の安納地区で生まれたさつまいもの品種で、クリーミーでねっとりとした食感と濃厚な甘さ特徴です。外観は、コロンとした丸みを帯びた形状のものが多く、褐紅色の外皮で中は鮮やかなオレンジ色の果肉をしており、焼き芋にすると蜜が溢れるほどの高い糖度を持つため、「蜜芋」とも呼ばれています(焼き芋にすると糖度40度を超えるものも)。安納芋は、通常のさつまいもよりも糖度が高く、焼くことでその甘さがさらに引き立つため、焼き芋やスイーツ加工に適しています。さつまいも、焼き芋のイベントの「さつまいも博」でもこの安納芋の焼き芋や安納芋を使用したスイーツが多々、出品されており、安納芋の人気が際立っていました。安納芋は高級さつまいもと言われる品種のひとつに分類されています。
有機栽培とは?
有機栽培とは、簡単に言えば「化学肥料や農薬に頼らない」栽培方法で、自然の力を活かして作物を育てる手法です。家庭菜園においては、農薬を使わずに土壌や堆肥の工夫をしながら野菜を育てるイメージが一般的ですが、農業の分野ではさらに厳格な基準が設けられています。たとえば、使用可能な肥料や資材も限られており、土壌環境や生態系への影響を最小限に抑え、自然循環を重視した方法が推奨されています。このため、有機栽培には持続可能な農業の一環としての意義があり、環境への負荷が少なく安全性が高いとされています。
- 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
- 遺伝子組換え技術を利用しない
- 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する
そして、有機農産物として出荷するためには、農林水産省が定める有機JAS規定に適合する必要があります。有機JAS規定では、種まきや植え付けを行う時点で、少なくとも2年、場合によっては3年以上前から、化学肥料や農薬を一切使用せずに土づくりを行い、作物を育てることが基本条件とされています。この基準を満たした農産物には「有機JAS認定」が与えられ、有機JASのシールを貼り、有機農産物として市場に流通します。厳しい条件をクリアして栽培されていることから、消費者にとって安全性が高く、安心して食べられる農産物としての信頼性が高まるのです。
安納芋の有機栽培はあるの?
結論から言うと、安納芋は有機栽培で育てられているものがあります。一般的な栽培方法である慣行栽培と比べると、まだ生産量は少なめですが、有機栽培に取り組んでいる生産農家も増えてきています。有機栽培の安納芋は、化学肥料や農薬を使用せず、自然に近い環境で丁寧に育てられるため、より安心して食べられると評価されています。こうしたこだわりを持つ農家によって生産される安納芋は、環境への配慮や品質の高さも意識され、消費者の関心を集めています。
有機栽培を行っている安納芋の産地は?
有機栽培される安納芋の主な産地は、長崎県の五島列島や鹿児島県といった地域が中心です。これらの地域は、もともと安納芋の栽培に適した風土を持ち、土壌や気候が芋の生育に理想的な条件が整っています。特に、安納芋の発祥地でもある鹿児島県では、その土地の特性を生かした栽培が行われ、安納芋本来の甘みや食感が最大限に引き出される環境が整っています。さらに、こうした理想的な土地で有機栽培を取り入れることで、化学肥料や農薬に頼らず、より豊かな風味や栄養価を備えた美味しい安納芋が育てられます。また、近年は全国各地でも有機栽培に取り組む生産者が増えており、それぞれの土地ならではの個性を持った有機安納芋が各地で育てられ、消費者に届けられています。
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有機栽培された安納芋はどこで買えるの?
有機栽培された安納芋は、主にインターネット通販を通じて購入するのが一般的です。一部の大型スーパーや有機野菜を専門に取り扱う店舗でも手に入ることはありますが、取り扱い量はまだ限られており、地域や店舗によっては入手が難しい場合もあります。楽天市場などの大手通販サイトでも購入可能で、種類や価格を比較しながら選べるため便利です。さらに最近では、生産農家が自ら専用の販売サイトを開設し、直接消費者に届ける動きも増えています。こうした農家直販のサイトでは、作り手のこだわりや育成過程が詳しく紹介されていることが多く、購入者も作り手の顔を感じながら、安心して手に取ることができます。消費者にとっては、信頼感や安心感が高まり、有機栽培の安納芋をより身近に感じられる良い機会となっています。
安納芋の有機栽培の方法は?
有機栽培で育てられる安納芋は、自然の力を最大限に活用し、手間と時間をかけて丁寧に作られています。まず、化学肥料や農薬を使わず、堆肥や有機肥料を中心とした土づくりから始まり、健康な土壌環境を整えることが重要視されています。土づくりは作物の品質を左右するため、微生物が豊富に生息できる土壌を維持するなど、細やかな管理が行われています。また、害虫対策も農薬に頼らず、天敵となる昆虫を活用したり、適切な間隔で植えることによって風通しを良くし、病害虫の発生を抑える工夫が施されています。では細かく、見て行きましょう!
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安納芋の伏せ込み・育苗
まず苗を育てるため、前年に収穫し大切に保管しておいた親芋を「伏せ込み」という手法で苗床に植え付けます。この伏せ込み作業では、慣行栽培の場合、苗床に移す前に殺菌剤を使用することが一般的ですが、有機栽培では自然の方法で対応し、親芋を熱湯消毒して衛生管理を行います。
消毒が終わった親芋は、苗床に伏せ込んでから軽く土をかぶせ、発芽に適した環境を整えるために、ビニールトンネルやマルチと呼ばれる保温資材、または稲わらなどを用いて温度を保ちます。
育苗期間中は、安定した成長を促すため、温度や水分を毎日細かく管理しながら世話を続けます。約40日後には丈夫な苗が育ち、切り取って植え付けの準備が整いますが、さらに親芋から新しい苗が次々に伸びてくるため、この作業を繰り返して必要な苗の数を確保します。
こうした丁寧な苗づくりが安納芋の栽培の第一歩であり、収穫時の品質にも直結するため、栽培者は一つひとつの作業に細やかな注意を払っているのです。
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安納芋の土づくり
有機栽培では、多くの農家が用いる化学肥料を一切使用せず、植物由来や動物由来の有機肥料を活用して土壌を整えます。この有機肥料に使われる素材も厳格に管理され、肥料となる動物の飼料には薬や農薬が含まれていないものが選ばれます。こうして慎重に選定された有機肥料を、苗の植え付け前に畑全体にまき、トラクターで十分に耕すことで、土の中にいる微生物が活性化され、ふかふかで栄養豊富な土壌環境が整います。こうした土壌が、甘みや風味豊かな安納芋を育てるための基盤となり、これが美味しさの秘訣ともいえます。
さらに、有機栽培では除草剤も一切使用しないため、雑草対策として「黒マルチ」と呼ばれる黒いビニールシートを畑に敷きます。この黒マルチは、雑草の生育を抑える効果があるだけでなく、太陽の熱を吸収して地温を上昇させる働きも持っており、安納芋がしっかりと育つための温暖な環境を保ちます。こうした工夫を重ねることで、自然に寄り添いながら、手間ひまをかけた有機栽培が実現されているのです。
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安納芋の定植
育苗した苗を採苗し、畑への植え付けに移ります。まずビニールマルチに30~40cm間隔で穴を開け、そこへ苗を挿し込むように植え付けていきます。この植え付け方法は生産者によって少しずつ異なりますが、一般的には苗を斜めにし、5節程度が土に埋まるようにするのが標準的です。苗を浅く植えすぎると根がしっかり張らず、逆に深く植えすぎると成長に影響が出るため、適切な深さと角度で植え付けることが非常に重要な作業とされています。
植え付け直後の苗は、しばらくの間はぐったりと萎れているように見えますが、数日も経つと根が土にしっかりと活着し、元気な姿に戻ります。その後の管理として、雑草が成長するのを防ぐために、畝の間に黒マルチや防草シートを敷くことが多く、このシートが地面を覆うことで雑草の発芽と成長を抑制します。また、黒マルチの使用によって地温も上昇し、安納芋が育つための環境がさらに整います。もしシートを張らない場合には、定期的な除草作業が欠かせません。手間をかけて草を取り除くことで、安納芋の健やかな成長が維持されるのです。
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安納芋の収穫
苗の植え付けから約120日が経過すると、いよいよ収穫の時期を迎えます。まず、収穫準備として刈り払い機を使い、畑全体のつるを丁寧に刈り取ります。この作業は、収穫作業をスムーズに行うために欠かせない工程で、つるが残ったままでは作業が進めにくくなるため、しっかりと片付けます。
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その後、畝に敷いてあったマルチをはがし、収穫の準備が整ったら、いよいよ安納芋を掘り出します。
多くの中・大規模な農家では、収穫用の機械を使用し、数人の作業員が機械に乗り込んで一気に芋を掘り上げていきます。収穫機械を使用することで短時間で効率よく作業が進みますが、小規模な農家の場合は、一本一本を手作業で丁寧に掘り起こして収穫することも多くあります。手作業での収穫は非常に労力がかかりますが、安納芋を傷つけないように慎重に掘り出すことができ、品質を保ちながら収穫を行えるのが特徴です。
こうして収穫された安納芋は、さらに追熟させることで甘みが増し、出荷準備が整えられます。収穫までの手間ひまと愛情を込めて育てられた安納芋は、風味豊かな味わいが楽しめるものとなるのです。
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安納芋の保管・貯蔵
収穫後には、「キュアリング」と呼ばれる工程を行い、30~33℃の高温と90~95%の高湿度環境で数日間安納芋を保管します。このキュアリングによって、収穫時に芋にできた傷が癒え、かさぶたのような保護層が形成され、傷口が広がらないように保護されます。さらに、この工程の間にでんぷんの一部が分解されて糖に変化することで、安納芋独特の甘みが引き出され、味わいが豊かになります。
キュアリングを終えた安納芋は、出荷までの間、適切な13~14℃の温度で慎重に管理されます。この温度管理により、長期間保存しても風味や品質が保たれ、熟成が進むとともに甘味も徐々に増していきます。一部の生産農家では、安納芋を翌年の夏までじっくりと保存し、「熟成安納芋」として販売することもあります。こうした熟成された安納芋は、通常よりも深い甘みと独特の風味が感じられ、時間をかけた手間ひまが加わった特別な味わいが楽しめます。
安納芋の有機栽培のまとめ
安納芋は、鹿児島県種子島で生まれた、甘さとクリーミーな食感が際立つさつまいもの品種です。有機栽培で育てられた安納芋は、化学肥料や農薬を使わず、自然環境に配慮しながら育てられており、消費者にとって安心できる選択肢となっています。安納芋の産地は、種子島をはじめ、栽培に適した土壌や気候を持つ地域が多く、特に鹿児島県や長崎県の五島列島では、有機栽培が盛んに行われています。さらに収穫後は「キュアリング」という工程で甘さが引き出され、出荷まで丁寧に管理されるため、独特の甘みが楽しめる一品となるのです。今回、有機栽培された安納芋も流通していることが分かり、有機栽培された安納芋は、化学肥料や農薬を使用していないので、小さなお子さんからお年寄りまで、安心して食べられます。スーパーなどでは取り扱いが少ないですが、ネット販売している農家さんも多いので、ぜひ探してみてください。