
近年、ローストビーフやレアチャーシューなど、低温調理された食材を提供する店や、自宅で低温調理する方が増えてきています。お肉がしっとりと柔らかく仕上がり、口当たりがなめらかになる低温調理ですが、さつまいもに応用したら一体どうなるのでしょうか?本記事では、さつまいもを「低温調理」「オーブン」「電子レンジ」で加熱した仕上がりの違いと、低温調理における温度(70~90℃)を比較しました。ご自宅で低温調理をされる方、ぜひ参考にしてみてください!
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低温調理とは?
低温調理は1979年にフランスで開発された、「真空調理」ともいわれる調理法で、「焼・蒸・煮」に次ぐ「第4の調理法」と呼ばれています。
調理方法は、下処理をした食材(+調味液)を専用のフィルムで真空密封し、最適の温度と加熱時間で調理するといったものです。加熱後そのまま使用しない場合は、細菌の繁殖を防ぐために、2時間以内に10℃以下にする必要があるとされています。
最近では「家庭用低温調理器」や、電気調理鍋の「低温調理機能」など、自宅で手軽に低温調理ができる商品も普及しており、低温調理がより身近な技法になってきています。
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低温調理のメリット
低温調理最大のメリットは、何といっても柔らかな食感です。肉に含まれるタンパク質は、62℃から固くなり、68℃から水分を失い始めます。低温調理は、素材の種類や大きさごとに温度・時間を変え、適切に管理することによって、肉の水分を保ったまま「しっとり」と、柔らかく仕上げることが可能です。
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低温調理のデメリット
タンパク質の硬化を意識しすぎて十分な加熱をしないと、「寄生虫」や「細菌」を死滅できずに食中毒を起こす恐れがあります。また、「水分を保つ」ということは、同時に「臭み」も抜けにくくなるので、独特の臭いが残る場合があります。
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野菜の低温調理
野菜の場合は、加熱によって粘り気や甘さが出る、「デンプン」「β-アミラーゼ」「ペクチン」を含んでいるので、肉よりも高い温度で調理する必要があります。
野菜の一般的な温度変化は以下の通りです。
デンプンの糊化(粘度):70~75℃
β-アミラーゼの活性化(甘さ):65~80℃
ペクチンの軟化(柔らかさ):80℃~
また、70℃以下ではペクチンが逆に硬化するといわれており、野菜の低温調理は80℃前後が理想的のようです。
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低温調理vsオーブンvs電子レンジ
さつまいもを、「低温調理」「オーブン」「電子レンジ」で加熱し、それぞれの味や食感を実際に比べてみました。下準備として、ラップで覆った「電子レンジ用」、フリーザーバッグで真空にした「低温調理用」、アルミホイルで覆った「オーブン用」を用意しました。今回使用したさつまいもの品種は「鳴門金時」です。
左から「電子レンジ用」「低温調理用」「オーブン用」です。
低温調理方法として、電気調理鍋の「低温調理モード」を使用しています。
具体的な加熱条件は以下の通りです。
電子レンジ:500W/6分
低温調理:80℃/120分
オーブン:180℃/60分
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【結果①】見た目
加熱した結果、以上のような断面になりました。電子レンジで加熱したものは、ご覧の通り中身がひび割れています。低温調理したものは全体的に鮮やかな黄色で、オーブンで加熱したものは黄色が濃く半透明な部分が多く見受けられます。
電子レンジ500Wで6分加熱したもの。
低温調理80℃で120分加熱したもの。
オーブン180℃で60分加熱したもの。
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【結果②】味・食感
電子レンジ:調理時間が一番短く手軽だったのですが、見た目の通りボソボソしていて、甘さもそれほど強くは感じられませんでした。
低温調理:最も甘さを強く感じたのが低温調理でした。ただし、食感は鳴門金時特有の「ホクホク」というよりは、やや歯触りがあり水々しさを感じる、「しっとり」とした印象です。
オーブン:低温調理より甘さはやや少ない気がしましたが、栗のようにホクホクしており「THE・鳴門金時」といった感じです。
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【感想】
今回の3種類で順位をつけるなら、最下位は「電子レンジ加熱」です。決して美味しくないわけではないのですが、他2種類と比べると「甘さ」が劣っていたため最下位としました。しかし、手軽に作れるという点においては最も優れていました。1位と2位は非常に悩みましたが、個人的な好みで順位をつけるなら1位は「低温調理」です。理由は甘さを最も強く感じたからです。ただし、さつまいもらしい食感で順位をつけるなら、「オーブン」に軍配が上がります。「甘さ」をとるか、「食感」をとるかによって好みが分かれるように感じました。(ちなみに私の妻はオーブン派でした)
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さつまいもの低温調理は何℃が正解?
低温調理によって、さつまいもの甘さを強く引き出せることが分かりました。それでは、一体何℃の加熱が最もサツマイモを美味しくするのでしょうか?同じ品種のさつまいもを70℃、80℃、90℃で2時間加熱してみました。
【結果】見た目
見た目の違いは画像の通りです。温度が高くなるにしたがって色味が濃くなっているのが一目瞭然です。
【結果②】味・食感
70℃:触った感じは柔らかく、熱は通っているようなのですが、食感は若干「サクサク感」が残る感じでした。甘さはそれなりといった印象です。
80℃:こちらは先に述べた通り、やや歯触りはありますが、しっとりしており甘さが強く引き出されています。
90℃:甘さは80℃とほとんど違いはありませんでした。食感は80℃よりも「ホクホク感」が強くなった印象です。
【感想】
70℃は甘さがあったのですが、食感が蒸し芋・焼き芋とはかけ離れており、そこまで美味しいとは思いませんでした。80〜90℃は甘さの変化はほとんどなく、食感が「しっとり」から「ホクホク」へ変化する温度帯のように感じました。個人的な好みとしては1位90℃、2位80℃、3位70℃です。
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まとめ
低温調理を中心にさつまいもの加熱方法をご覧いただきました。同じさつまいもでも、わずかな温度変化や加熱方法によって味・食感が大きく変わるなんて驚きませんか?先にも記した通り、味や食感の好みには個人差があります。今回は種類や温度を変えた加熱はしませんでしたが、低温調理→オーブン、オーブン低温→高温といったように、変化させながら美味しく仕上げる方法もあるようです。加熱方法、温度、時間、バリエーションを変えながら、お好みの味を試行錯誤してみるのも楽しいかもしれませんね。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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