仁田美鈴
五島列島で生まれ育って40年。地元の雄大な自然や人の温かさはもちろん、島暮らしならではの「不便さ」さえも愛する生粋の五島人です。幼少期から、小学校のアルバムに食べている写真が残るほどの無類のさつまいも好き。「焼き芋にキムチをトッピング」という通な食べ方をこよなく愛しています。地元民だからこそ知るディープな情報や、観光・出張で訪れる方に本当に役立つ現地のリアルな魅力を、心を込めてお届けします。
長崎県の西の果てに浮かぶ、大小140余りの島々からなる五島列島。透き通るような青い海と、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産である教会群が織りなす風景は、一度は見たいと願う人も多いのではないでしょうか。でも、いざ行こうと思うと、フェリーや飛行機といったアクセスの比較や、島内での移動手段、広範囲に点在する観光スポットをどう効率よく巡るかなど、計画には少し頭を悩ませるかもしれません。そこでこの記事では、福江島や上五島を中心としたおすすめのモデルコースから、失敗しない交通手段の選び方、絶対に食べておきたい五島うどんなどのグルメ情報までを余すことなくまとめました。読み終える頃には、初めての五島旅でも迷うことなく、心に残る最高の休日プランがきっと完成しているはずです。
五島列島旅行の計画を立てるための基礎知識
五島列島への旅を考えるとき、まず私たちが知っておくべきなのは、その地理的な広がりです。長崎県の西、約100キロメートルの海上に浮かぶこの場所は、単一の島ではありません。大小あわせて約140もの島々からなる列島であり、その全域が「西海国立公園」に指定されています。美しい海と豊かな自然、そして歴史的な背景を持つこの島々は、私たちが日常の喧騒を離れて深呼吸をするのに、まさにうってつけの場所だと言えるでしょう。
上五島と下五島、大きく2つのエリアに分かれる島々

地図を広げてみるとよく分かりますが、五島列島は北東から南西にかけて長く伸びています。旅行の計画を立てる際、私たちはこの列島を大きく2つのエリア、「上五島(かみごとう)」と「下五島(しもごとう)」に分けて考える必要があります。北側に位置する中通島を中心としたエリアが「上五島」、南側に位置する福江島を中心としたエリアが「下五島」と呼ばれています。
意外と見落としがちなのが、この2つのエリア間の距離感です。同じ五島列島内とはいえ、上五島と下五島の間は海で隔てられており、移動には船を使うしかありません。橋では繋がっていないため、エリアをまたいで観光する場合は、船の時刻表に合わせた綿密なスケジュール調整が必要になるのです。「せっかくだから全部見て回りたい」という気持ちも湧いてきますが、移動時間を考慮すると、どちらか一方に絞るか、あるいは十分な日数を確保するかが、満足度の高い旅にするための鍵となります。
温暖な気候ですが、季節ごとの服装には注意が必要
対馬暖流の影響を受ける五島列島は、年間平均気温が約17℃と、比較的温暖な気候に恵まれています。冬でも雪が積もることはめったにありませんが、だからといって油断は禁物です。冬場は北西からの季節風が海を越えて吹き付けるため、実際の気温以上に寒く感じることが多々あります。冬に訪れる際は、風を通さないしっかりとしたアウターや防寒具を準備しておくことをおすすめします。
一方で、夏は四方を海に囲まれているため、海風が心地よく吹き抜けます。日本一美しいとも称される高浜海水浴場などを目当てに訪れるなら、夏こそがベストシーズンと言えるでしょう。また、春先には島全体に椿の花が咲き誇り、秋にはコスモス畑や豊かな田園風景が楽しめるなど、四季折々の表情を見せてくれます。
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旅行日数は最低でも2泊3日、できれば3泊4日が理想

五島列島への旅行を計画する際、最も悩ましいのが日数の設定かもしれません。本土からの移動時間や、島内での移動スピード(信号が少なく快適ですが、島自体が広いため時間はかかります)を考えると、1泊2日ではあまりに駆け足すぎて、移動だけで終わってしまったという感覚になりかねません。
ゆったりとした島時間を味わい、主要な観光スポットや教会を巡るためには、最低でも2泊3日の日程を確保することをおすすめします。さらに、上五島と下五島の両方を巡りたいと考えるなら、3泊4日以上の日程がないと厳しいのが現実です。天候によって船が欠航するリスクもゼロではないため、余裕を持ったスケジュールを組むことが、心にゆとりを持って旅を楽しむための秘訣です。
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」としての顔

五島列島を語る上で欠かせないのが、2018年に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産としての側面です。禁教期に弾圧を逃れて海を渡ったキリシタンたちが、厳しい環境の中で信仰を守り抜いた歴史が、この島々の風景に深く刻まれています。
島内には50を超えるカトリック教会が点在しており、その佇まいは自然の風景と美しく調和しています。しかし、忘れてはならないのは、これらが単なる観光スポットではなく、現在も信者の方々が祈りを捧げる神聖な場所であるということです。教会内部を見学する際は、帽子を脱ぎ、静かに過ごすなど、マナーを守って敬意を払うことが、私たち訪問者に求められる最も大切な作法です。
五島列島を満喫するおすすめモデルコース
五島列島は南北に長く、島によって全く異なる表情を持っています。すべての島を一度に巡ろうとすると移動だけで時間が過ぎてしまうこともあるため、目的に合わせてエリアを絞ったり、余裕を持ったスケジュールを組んだりすることが大切です。ここでは、初めての方からリピーターの方まで楽しめる、とっておきのモデルコースをいくつかご紹介します。
福江島を一周する王道観光コース

初めて五島列島を訪れるなら、まずは玄関口である下五島の「福江島」を一周するコースがおすすめです。福江島は列島の中で最も大きく、観光スポットや宿泊施設、飲食店が充実しています。移動手段としては、自由に立ち寄りスポットを選べるレンタカーを利用するのが一番の近道です。
空港や港を出発したら、まずはシンボル的な存在である「鬼岳」へ向かいましょう。芝生に覆われた美しい火山の風景は、まるで異国に迷い込んだかのよう。そこから島の西側へ車を走らせれば、断崖絶壁に立つ「大瀬崎灯台」が待っています。特に夕暮れ時の景色は圧巻で、東シナ海に沈む夕日と灯台のコントラストは一生の思い出になるはずです。
また、島の北西部にある「高浜海水浴場」も見逃せません。日本一美しいとも称されるその透明度は、見る人の心を一瞬で奪います。白い砂浜とエメラルドグリーンの海を眺めながら、波の音に耳を傾ける時間は何よりの贅沢と言えるでしょう。
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上五島と下五島を巡る2泊3日の旅

せっかく五島列島まで来たのなら、下五島だけでなく上五島も楽しみたいという欲張りな方には、2泊3日で南北を縦断するプランがぴったりです。上五島と下五島の間は海で隔てられているため、フェリーや高速船での移動が必須となります。
1日目は福江島を観光し、2日目の朝に福江港から船で上五島の奈良尾港や有川港へ渡ります。上五島エリアは、複雑に入り組んだリアス式海岸が特徴で、下五島とはまた違った荒々しくも美しい自然景観が広がっています。特に「矢堅目公園」から望む奇岩と海の風景は迫力満点です。
上五島での移動もレンタカーが便利ですが、島が縦に長いため移動時間には注意が必要です。船の時刻表を事前にしっかりと確認し、余裕を持った行動計画を立てるようにしましょう。また、上五島は「五島うどん」の本場でもあります。ランチには、椿油を塗って熟成させたツルツルのうどんをぜひ味わってみてください。
世界遺産の教会群をじっくり巡るプラン

五島列島への旅の目的が「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」巡りであるなら、教会建築と集落の歴史に焦点を当てたプランが良いでしょう。五島には50を超えるカトリック教会が点在しており、その多くが海辺や山間の静かな場所にひっそりと佇んでいます。
このコースでは、重要文化財や世界遺産の構成資産となっている教会を中心に巡ります。例えば、上五島の「頭ヶ島天主堂」は、珍しい石造りの教会で、重厚な外観と内部のパステルカラーの装飾とのギャップが印象的です。また、奈留島の「江上天主堂」や久賀島の「旧五輪教会堂」など、二次交通(海上タクシーなど)を使わないと行けない場所にある教会も、その手間に見合うだけの感動を与えてくれます。
ただし、教会は信者の方々にとって大切な祈りの場です。教会行事のため、内覧不可の日もあります。見学の際はマナーを守り、事前にインフォメーションセンターなどを通じて見学予約を行うことを忘れないでください。静寂の中で祈りの歴史に触れる旅は、きっと心洗われる深い体験となることでしょう。
五島列島への行き方と交通手段の選び方
五島列島への旅を思い立ったとき、まず私たちが直面するのは「どうやって島へ渡るか」という選択です。地図で見ると九州の西の果て、長崎県のさらに西に浮かぶ島々ですから、少し遠いように感じるかもしれません。しかし、その距離こそが日常から切り離された特別な時間への入り口なのです。アクセス方法は大きく分けて「空路」と「海路」の2つ。そして出発地は主に「福岡」か「長崎」になります。旅の予算や時間の使い方に合わせて、最適なルートを選び出しましょう。
福岡と長崎からのアクセス比較

まずは福岡を経由するルートです。都市部からのアクセスが良い福岡空港からは、五島つばき空港(福江空港)への直行便が飛んでいます。福岡空港から飛行機を使えばわずか40分ほどで島に到着できるため、移動時間を極力短くして、現地での滞在時間をたっぷりと確保したい方にはこの空路が最もおすすめです。あっという間に眼下に広がる青い海と島々の緑は、何度見ても感動します。

また、福岡の博多港からは、夜に出発して翌朝に五島へ到着する「フェリー太古」も運航しています。寝ている間に移動できるので、時間を有効に使いたいバックパッカーや、船旅の情緒を味わいたい方にはたまらない選択肢と言えるでしょう。

一方、長崎を経由するルートは、五島列島への「王道」とも言えます。長崎空港からの飛行機はもちろんですが、長崎港からはジェットフォイルとフェリーが頻繁に行き来しています。特に海の上を飛ぶように走るジェットフォイルなら、長崎港から福江港まで最速で約1時間25分という速さです。揺れも少なく快適な船内で過ごしていると、窓の外に五島の島影が近づいてくるワクワク感は、海路ならではの醍醐味です。もっとのんびりと旅情に浸りたいなら、3時間以上かけて進むフェリーを選び、甲板で潮風を感じながら過ごすのも贅沢な時間の使い方です。
五島列島内の移動はレンタカーが便利

無事に島へ降り立ったあと、私たちの足をどうするかは非常に重要な問題です。五島列島は想像以上に広く、観光スポットや美しい教会、ビーチは島内に点在しています。路線バスも走ってはいますが、本数は決して多くありません。バスの時刻表を気にしながらの観光は、どうしても行動範囲が限られてしまいますし、炎天下でバスを待つのは体力も消耗します。そのため、五島列島を自由に満喫するならレンタカーの利用がほぼ必須だと考えておいたほうが良いでしょう。

特に福江島や中通島(上五島)では、電気自動車(EV)の普及が進んでおり、静かで環境に優しいドライブが楽しめます。起伏のある島の道も、パワフルなモーターなら快適です。教会群を巡る細い山道や、海沿いの絶景ロードを自分のペースで走る爽快感は、車があってこそ味わえるものです。ただし、ゴールデンウィークや夏休みなどの繁忙期は予約がすぐに埋まってしまうため、旅行の日程が決まったらすぐにレンタカーの手配を済ませておくことを強くおすすめします。
もちろん、運転免許を持っていない場合や、運転に自信がない場合は、観光タクシーや定期観光バスを利用する手もあります。地元のドライバーさんならではの濃い話を聞けるのは、タクシー旅ならではの魅力です。また、福江島と上五島の間など、島から島への移動には定期船を利用することになりますので、島内移動と島間移動をうまく組み合わせて計画を立ててみてください。
また、教会巡りを中心に楽しみたい方におすすめするのが、五島市観光協会が運営している日帰り教会巡りツアーです。五島の島を縦断するいくつかのコースと出発日があります。現地のガイドと五島の魚を使ったランチがついているので大満足いただけます(要予約)
五島列島の各エリアと観光の見どころ
長崎県の西、およそ100kmの海上に浮かぶ五島列島は、大小あわせて140余りの島々からなる多島海です。この美しい列島は、大きく分けて南西側の「下五島(しもごとう)」と北東側の「上五島(かみごとう)」という2つのエリアで構成されています。それぞれのエリアには異なる歴史的背景や自然の表情があり、旅の目的によって訪れるべき場所も変わってきます。ここでは、五島列島を訪れるなら絶対に外せない主要なエリアと、それぞれの必見観光スポットについて詳しくご紹介していきましょう。
城下町の風情が残る福江島エリア

下五島の中心であり、五島列島全体の玄関口とも言えるのが福江島です。かつては五島藩の城下町として栄えた歴史を持ち、石垣塀が続く武家屋敷通りなど、往時の面影を色濃く残しています。また、島全体が西海国立公園に指定されており、歴史散策だけでなくダイナミックな自然景観も楽しめるのが大きな魅力です。初めて五島列島を訪れる方には、観光施設や宿泊施設が充実している福江島を拠点にすることをおすすめします。
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日本一美しいとも称される「高浜海水浴場」

福江島の西側に位置する高浜海水浴場は、そのあまりの美しさに言葉を失うほどの絶景スポットです。きめ細やかな白い砂浜と、透明度抜群のエメラルドグリーンの海が織りなすコントラストは、まさに南国の楽園そのもの。環境省の「快水浴場百選」や「日本の渚百選」にも選ばれており、日本一美しいビーチと称されることも多い五島を代表する景勝地です。遠浅で波も穏やかなため、夏場は多くの海水浴客で賑わいますが、シーズンオフに訪れてただ海を眺めるだけでも、心が洗われるような時間を過ごすことができます。
悲しい歴史と信仰を守り抜いた「堂崎教会」
福江島のシンボル的な存在である堂崎教会は、禁教令が解かれた後に五島で最初に建てられた聖堂です。赤レンガ造りの重厚なゴシック様式の外観は、青い海と空に映えて非常に美しく、訪れる人々を魅了します。現在は資料館として公開されており、内部では潜伏キリシタンの歴史や弾圧の記録を学ぶことができます。美しい建築の裏側にある、信仰を守り抜いた人々の苦難と希望の歴史に触れることで、五島列島の旅はより深みのあるものになるはずです。
映画の舞台にもなった「大瀬崎灯台」

島の最西端、断崖絶壁の上にそびえ立つのが大瀬崎灯台です。東シナ海に突き出した岬の先端に白亜の灯台が立つ姿は、映画『悪人』のロケ地としても知られ、その荒々しくも美しい風景は見る者を圧倒します。特に夕暮れ時の景色は格別で、水平線に沈む夕日が海面と灯台を黄金色に染め上げる様子は、息をのむほどの美しさです。展望台までの道のりは少し歩きますが、眼下に広がる紺碧の海と断崖の絶景は、歩いた疲れを吹き飛ばすほどの感動を与えてくれます。渡り鳥ハチクマの飛来地としても有名で、多くの写真家が訪れる地でもあります。
教会と自然が調和する上五島エリア
中通島(なかどおりじま)を中心とする上五島エリアは、複雑に入り組んだリアス式海岸が続く美しい景観が特徴です。平地が少なく山がちな地形のあちこちに集落が点在し、その多くに教会が建てられています。29もの教会が現存しており、「祈りの島」としての側面をより強く感じられるエリアと言えるでしょう。信号機が少なく、海沿いのドライブコースが充実しているため、レンタカーで教会巡りをしながら、手つかずの自然をのんびりと満喫したい方に最適です。
世界遺産の構成資産「頭ヶ島天主堂」

上五島エリアを訪れる最大の目的の一つが、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産である頭ヶ島天主堂(かしらがしまてんしゅどう)でしょう。全国的にも極めて珍しい石造りの教会で、島内で切り出された砂岩を積み上げて作られています。重厚感のある外観とは対照的に、堂内はパステルカラーの花柄装飾が施され、華やかで温かい雰囲気に包まれています。信徒たちが自らの手で石を運び積み上げたという血と汗の結晶を目の当たりにすると、静かな感動が胸に広がります。
蛤浜海水浴場の絶景と透明度

上五島を代表するビーチといえば、蛤浜(はまぐりはま)海水浴場です。干潮時には広大な砂紋が現れ、まるで鏡のように空を映し出す光景は幻想的ですらあります。遠浅の海はどこまでも透き通り、その美しさは福江島の高浜海水浴場にも引けを取りません。毎年夏には「蛤浜で遊ぼデー」というイベントも開催され、地元の人々にも愛されています。白い砂浜に座って波の音に耳を傾けていると、時間の流れを忘れてしまうほどの癒しを感じられる場所です。
キリシタンの歴史を物語る「キリシタン洞窟」

若松島の断崖にある「キリシタン洞窟」は、明治初期の弾圧「五島崩れ」の際、迫害を逃れた信徒たちが隠れ住んだ場所です。陸路からはアクセスできず、船でしか行くことができないこの場所には、現在も白い十字架とキリスト像がひっそりと安置されています。遊覧船ツアーに参加することで、海上からその姿を拝むことができます。厳しい環境の中で信仰を貫いた先人たちの思いに馳せ、五島列島が歩んできた歴史の重みを肌で感じることができる貴重なスポットです。
五島列島で買いたい人気のお土産
旅の締めくくりに欠かせないのが、その土地ならではのお土産選びです。五島列島の豊かな自然と歴史が育んだ特産品には、島の人々の知恵と温かさが詰まっています。自宅に戻ってからも島の風を感じられるような、とっておきの逸品を探しに行きましょう。ここでは、五島を訪れたら絶対に手に入れたい、定番かつ評判の良いお土産をご紹介します。
椿油を使ったコスメや食品

五島列島を訪れると、いたるところで濃い緑の葉に赤い花をつけた藪椿(ヤブツバキ)の姿を目にします。古くから「椿の島」として知られる五島列島は、日本有数の椿油の生産地です。厳しい自然の中で育った椿の実から採れる油は、オレイン酸を豊富に含み、保湿力が非常に高いことで知られています。
肌や髪に潤いを与えるスキンケアアイテム
まず手に取っていただきたいのが、純度100%の椿油です。昔ながらの製法で丁寧に搾油・濾過されたオイルは、さらりとした使い心地で肌馴染みが良く、髪の毛のケアはもちろん、顔や全身の保湿にも安心して使えます。最近では、椿油を配合したハンドクリームやリップクリーム、石鹸なども数多く販売されており、パッケージも洗練された可愛らしいものが増えてきました。自分用にはもちろん、女性への贈り物としても大変喜ばれるアイテムです。
体の中から美しくなる食用の椿油
椿油の魅力は美容だけにとどまりません。実は、食用としても非常に優秀なオイルなのです。熱に強く酸化しにくい特長があるため、揚げ油として使うとカラッと軽く仕上がりますし、生のままドレッシングとしてサラダにかけても美味しくいただけます。クセが少なくナッツのような香ばしい風味があり、いつもの料理をワンランク上の味わいにしてくれるでしょう。また、椿油を練り込んだ「つばき飴」なども、手軽なお土産として人気があります。
名物のかんころ餅と五島うどん
五島列島の食文化を語る上で外せないのが、素朴ながらも深い味わいを持つ郷土の味です。島の人々が昔から大切に守り続けてきた伝統の味は、誰に差し上げても喜ばれる間違いのないお土産と言えるでしょう。
懐かしい甘さが広がる「かんころ餅」

五島地方の冬の風物詩とも言えるのが「かんころ餅」です。「かんころ」とは、サツマイモを薄く切って天日干しにしたもののこと。これを餅米と一緒に蒸してつき合わせたのがかんころ餅です。砂糖や水飴、胡麻などが加えられており、サツマイモ本来の優しい甘さとモチモチとした食感が口いっぱいに広がります。
そのまま食べることもできますが、おすすめは少し厚めに切ってトースターやフライパンで軽く焼く食べ方です。表面が香ばしくなり、中はとろりと柔らかく、焼きたての焼き芋のような風味が楽しめます。お店によって芋と餅の配合や甘さが微妙に異なるため、いくつかのお店の商品を食べ比べてみるのも旅の楽しみの一つです。
ツルッとした喉越しが自慢の「五島うどん」

日本三大うどんの一つに数えられることもある「五島うどん」は、麺好きならずとも一度は味わいたい逸品です。その特徴は、麺の細さと強いコシ、そして滑らかな喉越しにあります。手延べの工程で、麺同士がくっつかないように島特産の椿油を塗って熟成させるのが五島うどんならではの製法です。これにより、煮込んでも伸びにくく、つるりとした独特の食感が生まれます。
お土産として購入したら、ぜひ現地で親しまれている「地獄炊き」という食べ方を試してみてください。たっぷりの湯で茹でたうどんを、鍋から直接箸ですくい上げ、生卵やあごだし(トビウオの出汁)のつゆに絡めて食べる豪快なスタイルです。シンプルだからこそ、麺そのものの旨味と香りを存分に堪能できます。
五島列島のベストシーズンとイベント
五島列島への旅を計画する際、いつ訪れるのが正解なのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。実は、この島々は季節ごとに全く異なる表情を見せてくれます。私たちが畑仕事を通じて四季の移ろいを肌で感じるように、五島列島もまた、訪れる時期によって味わえる感動の種類が変わってくるのです。ここでは、旅の目的ごとのベストシーズンと、絶対に外せない主要なイベントについてご紹介します。
目的によって変わる?あなたにぴったりのベストシーズン
「最高の休日」の定義は人それぞれです。とにかく海で泳ぎたいのか、静かに教会を巡りたいのか、あるいは美食に酔いしれたいのか。まずはご自身の旅のテーマに合わせて、最適な時期を見極めることが大切です。
【夏】「高浜海水浴場」など美しい海で泳ぐなら7月〜8月
五島列島といえば、やはり息をのむほど美しい「五島ブルー」の海は外せません。もしあなたが、白い砂浜と透き通る海での海水浴を一番の目的にするなら、梅雨明けの7月中旬から8月が間違いなくベストシーズンです。特に福江島の「高浜海水浴場」や「蛤浜海水浴場」などは、日本にいることを忘れてしまうほどの絶景が広がります。
ただし、この時期の日差しは強烈です。照りつける太陽と海面からの照り返しは、まさに覚悟が必要なレベル。日焼け止めや帽子などの対策は万全にして、水分補給を忘れないようにしましょう。また、夏休み期間は観光客で賑わうため、レンタカーや宿泊施設の予約は早めに済ませておくことを強くおすすめします。
半夏生(はんげしょう)をご存じですか?現在も半夏生餅を作ってお供えをする行事も残っています。五島では「ふくれ餅」と言われています。そんなふくれ餅を食べてみた!
【春・秋】教会巡りやトレッキングを楽しむなら快適な気候の時期
世界遺産に登録された教会群をじっくり巡ったり、九州オルレなどのトレッキングコースを歩いたりしたい場合は、暑すぎず寒すぎない春(3月〜5月)や秋(10月〜11月)が最適です。心地よい海風を感じながら自転車で島内を巡るサイクリング旅にも、この季節が最も適しています。
春には菜の花や桜が島を彩り、秋にはススキが風に揺れる情緒的な風景に出会えます。教会建築の静謐な空気感と、島の豊かな自然が調和する様子をゆっくりとカメラに収めるなら、観光客のピークを少し外したこの時期が、心洗われる時間を過ごすにはぴったりかもしれません。
【冬】幻の高級魚「クエ」と椿の花を愛でる旅

冬の五島列島は、北西からの季節風が強く吹き付け、海が荒れる日も少なくありません。しかし、食通にとってはこの冬こそが真のベストシーズンと言えるでしょう。なぜなら、五島では「アラ」と呼ばれる幻の高級魚クエや、脂の乗ったブリなどの魚介類が最も美味しくなる季節だからです。
また、五島列島を象徴する花である「椿(つばき)」が見頃を迎えるのも冬です。厳しい寒さの中で凛と咲く赤い椿の姿は、見る人の心に強い印象を残します。温泉に浸かって冷えた体を温め、絶品の鍋料理に舌鼓を打つ。そんな大人の贅沢な過ごし方ができるのが、冬の五島の魅力です。
旅の思い出を彩る五島列島の主なイベント
島の人々の熱気や伝統文化に触れることができるイベントに合わせて旅程を組むのも、旅の醍醐味の一つです。ここでは、特に人気のあるイベントをピックアップしました。
熱気あふれる「バラモンキング」と伝統の「チャンココ」

スポーツ好きなら一度は耳にしたことがあるかもしれない「五島長崎国際トライアスロン大会」、通称「バラモンキング」。毎年6月に開催され、島全体が熱気に包まれます。スイム、バイク、ランで過酷なコースに挑む選手たちを、島民が総出で応援する光景は感動的です。
また、お盆の時期(8月中旬)には、五島独自の念仏踊りである「チャンココ」が行われます。腰蓑をつけ、太鼓を抱えた踊り手たちが鉦(かね)の音に合わせて踊り歩く姿は、先祖の霊を供養する厳かさと、五島の歴史の深さを感じさせる伝統行事です。夏の夜に響く太鼓の音は、旅の記憶に深く刻まれることでしょう。
冬の夜を照らす教会イルミネーションと五島椿まつり

冬のイベントも見逃せません。12月に入ると、島内の各教会が信徒の方々の手によって美しくライトアップされ、「五島列島教会イルミネーション」として親しまれています。星空の下、闇夜に浮かび上がる教会の姿は幻想的で、神聖な気持ちにさせてくれます。

そして2月末から3月初旬にかけては「五島椿まつり」が開催されます。島中に自生する椿の花を愛でるだけでなく、椿油を使った体験イベントや郷土芸能の披露などが行われるため、島の文化を深く知る良い機会となります。この時期限定のツアーなども組まれることがあるので、冬の旅を計画する際はぜひチェックしてみてください。
島旅ならではの気候の特徴と服装の注意点
最後に、服装選びのヒントをお伝えします。五島列島は海に囲まれているため、年間を通して風が強いのが特徴です。特に冬場は体感温度がぐっと下がりますので、防寒対策はしっかりとしていく必要があります。
また、春や秋であっても朝晩は冷え込むことがありますし、夏場でも冷房の効いた室内やフェリーの中では肌寒く感じることがあります。ですので、どの季節に行くとしても、さっと羽織れる上着やウインドブレーカーを一枚持参することをおすすめします。天候によっては船が欠航することもあるため、余裕を持ったスケジュールで、島の自然に身を委ねるような気持ちで旅を楽しんでください。
まとめ

五島列島への旅を振り返ると、やはり一番心に残るのは、祈りの歴史と豊かな自然が溶け合う風景です。世界遺産の教会群を巡り、透き通る海を眺めていると、日常の喧騒が嘘のように消えていきます。
福岡や長崎からのアクセスも整い、レンタカーを使えば島内を自由に巡れるのも嬉しいポイントです。名物の五島うどんやかんころ餅を味わい、椿油のお土産を選ぶ時間もまた、旅の醍醐味と言えるでしょう。どの季節に訪れても、島に流れる穏やかな時間は、訪れる人の心を優しく解きほぐしてくれるはずです。








