
冬の五島でしか見られない「波の花」をご存じですか?強風と高波が重なると、波が砕けるたびに白い泡が舞い上がり、まるで雪のように岩肌を覆います。その神秘的な光景はまさに自然のアート。しかし、この美しい現象に出会えるのは、寒気、強風、高波の3つの条件が揃った限られた日だけです。2024年1月28日、五島・三井楽町の海岸では、まさにその条件が揃い、圧巻の波の花が観測されました。この記事では波の花の様子を実際に見てきた私がレポートしています。最後まで読むと次は自分が見てみたいと思うはずですよ
波の花とは?
皆さんは「波の花」をご存知でしょうか?これは日本海側の海岸で見られる冬の自然現象で、極寒の日に海水温が低下すると、波打ち際に泡が大量発生するものです。別名「カプチーノ」とも呼ばれています。五島では三井楽町の海岸で観測され、長崎県内のニュースで毎年冬の風物詩として紹介されます。このニュースを見るたびに「冬が来たな」と実感します。しかし、実際に見たことがなかったので、いつかは実物を見たいと思っていました。ただ、現地に行っても見られなかったらがっかりするので、タイミングを見計らっていました。
絶好のチャンス到来
2024年12月22日、五島の波の花がニュースで取り上げられました。その日は日本全体に寒気が流れ込み、五島の最低気温は5.5℃。それほど低くはなかったものの、風速7mと強風が吹き、波も高くなっていました。そして、ついに絶好のチャンスが1月28日にやってきました。ニュースでは28日から29日にかけて日本海側に強い寒気が流れ込むと報じられ、五島にも雪のマークが。最低気温は2.3℃で、風速6m。これは行くしかないと思い、15時に仕事を終えてすぐ三井楽町の海岸へ向かいました。
三井楽町柏の海岸へ
波の花が見られると言われる「柏の海岸」。まずは辞本涯の碑へ行きました。柏の高台にあるこの場所には、小さな灯台と空海の像が建ち、天気が良い日には絶景が広がります。ドライブコースとしても人気のスポットですが、この日はどんよりとした寒空。それがむしろ波の花を見に来た私には好都合でした。
灯台の下に広がる海岸に立つと、強風で波も非常に高く、しぶきが飛んでくるほど。そして、遠くに白い塊が見えました!間違いなく波の花です。黒い岩肌に白い泡が映え、遠くからでもはっきりと分かります。近づきたかったのですが、あまりにも風が強く、息をするのも大変なほどでした。さらに、歩いて行くには遠回りが必要だったため、写真だけ撮って車に戻ることにしました。
渕ノ元カトリック墓碑群で再び発見!
「もっと近くで見たい!」という思いが捨てきれず、別の場所を探してみることに。そこから10分ほどの渕ノ元カトリック墓碑群へ向かいました。ここは夕日と十字架のコントラストが美しい観光スポットで、「ばらかもん」のロケ地としても知られています。
道中のオレンジロードを進みながら海岸を注視すると、白い塊が目に飛び込んできました!急いで車を停め、走って確認すると、やはり波の花です。しかも、ここは段差がなく簡単に近づけました。岩がゴツゴツしているため、運動靴を履いて行くのがおすすめです。潮の香りが漂う中、近くで見る波の花は少し緑が混じった淡い色合い。風が吹くたびに、タンポポの綿毛のようにふわっと舞い上がり、まるで雪のような幻想的な光景でした。
触ってみた感想と波の花の仕組み
飛んでいった泡は消えずに岩に付着していました。実際に手に取るととても軽く、きめ細やかなメレンゲのような質感。泡が消えにくいのは、海藻やプランクトンが多く含まれているためだそうです。ただ、後で調べたところ、有害物質を含むこともあるため、あまり触らない方が良いとのこと。
波の花は、強風で波が岩に打ち付けられることで細かい泡が発生する現象です。特に、砂浜ではなくゴツゴツした岩場の方が発生しやすく、五島の海岸はその条件にぴったりでした。さらに、ここは火山の溶岩が固まってできた地形のため、岩の表面が荒く、波の花が発生しやすい環境が整っているのです。
五島ならではの冬の絶景
車をさらに走らせると、高波が続く海岸線のあちこちで波の花が発生していました。しかし、帰り道に立ち寄った高崎海岸は驚くほど穏やか。同じ五島でも場所によってこんなに違うのかと驚きました。この日は台風並みの高波で、長崎との高速船は全便欠航。観光客にとっては天候が悪いと残念に思うかもしれませんが、こんな日は三井楽町の海岸へ行って波の花を探す絶好のチャンスです。幻想的な光景に感動し、寒い中訪れて本当に良かったと感じました。
時折、雲の切れ間から太陽の光が差し込む様子も美しく、私の好きな藤井風さんの歌詞「晴れてゆく空も、荒れてゆく空も僕らは愛でていく」を思い出しました。
1月28日の波の花は、長崎新聞の記者も取材に訪れていたようです。
波の花を見るチャンスは?
波の花は12月から3月にかけて発生すると言われています。寒気、強風、高波の3つの条件が揃えば見られる可能性が高まります。灯台巡りが好きな方にもおすすめのスポットです。
まとめ
五島の冬を彩る「波の花」は、極寒の日に強風と高波が生み出す幻想的な自然現象です。黒い岩肌に白い泡が舞い、まるで雪のように広がるその姿は、冬の海ならではの美しさ。特に三井楽町の海岸では、条件が揃えば圧巻の景色が広がります。今回の観測では、2024年1月28日が絶好のタイミングでした。寒気が強まり、風速6mの強風が吹く中、三井楽町柏の海岸や渕ノ元カトリック墓碑群で波の花を発見。風に舞いながら儚く消えていく泡の様子は、まるで自然が生み出した芸術作品のようでした。
波の花を見られるチャンスは12月から3月にかけて。寒気、強風、高波が揃う日を狙えば、冬の五島ならではの神秘的な風景に出会えるかもしれません。寒さ対策を万全にして、特別な冬の景色を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。