越冬の為、東南アジアへ渡る「ハチクマ」福江島(五島)の秋の風物詩「ハチクマの渡り」を見てきた

ハチクマの渡り

今日は少し早起きをして6時に玉之浦・大瀬崎に集合!大瀬崎は福江島でも人気の観光スポット、特に「大瀬崎灯台」は映画「悪人」や、NHK朝の連ドラ「舞いあがれ!」でも撮影地となったロケーション抜群の場所です。展望所から見る灯台は、今朝も東シナ海を背景にその堂々とした佇まいを見せています。

福江島(五島)ハチクマの渡り-大瀬崎灯台

その「大瀬崎灯台展望所」からさらに車で1分、道を行くと「祈りの女神」展望所の入り口に着きます。

福江島(五島)ハチクマの渡り-展望所へ

その駐車場には既に乗用車はもちろんのこと、キャンピングカーなどもひしめき合うように停まっています。一体何のためでしょう?
そう、島内だけではなく、日本全国からたくさんの人々が「ハチクマの渡り」を見るために集まっているのです。

福江島(五島)ハチクマの渡り-ハチクマ(C)出口敏也

撮影:出口敏也(無断転載禁止)

「ハチクマ」って一体何でしょう?熊ではありませんよ(五島には熊は生息していないのです)。ハチクマは、タカ科の鳥の一種。蜂の幼虫や蛹を好んで食べる、同じ猛禽類の「クマタカ」に似たタカなので、「ハチクマ」と名付けられたそうです。翼を広げると約130cmにもなる大型の鳥。春に夏鳥として日本にやってきて全国に飛んで行った後、繁殖をし、秋には大陸を経由して東南アジア方面へと向かう渡り鳥です。そして日本を最後に飛び立つのが、ここ「大瀬崎」。ここまでの旅の疲れを癒すため森で一泊し、その後は上昇気流を待って大陸へと渡っていくのです。その群れは素晴らしく、ハチクマが作る「タカ柱」を見るためにたくさんの人々が集まります。

福江島(五島)ハチクマの渡り-ハチクマが見れる場所

駐車場から階段を登って展望所へ行くと

福江島(五島)ハチクマの渡り-展望所には人が多い

既にハチクマファンの人たちが、巨大な望遠レンズ付きのカメラや望遠鏡を構えてハチクマの登場を待っていました。

あ、見えました!ハチクマです!

福江島(五島)ハチクマの渡り-ハチクマ

そして集まってきたハチクマ!すごい数です!

福江島(五島)ハチクマの渡り-大量のハチクマ

ハチクマは輪を描きながら舞い上がっていき、上昇気流に乗ると一気に大陸へ向かって飛んでいきます。飛び始めると2〜3日の間、飲まず食わず、眠らずにひたすら大陸を目指すのですが、空の彼方へ向かうハチクマの姿が見えなくなると、とても神妙な気持ちになります。「ハチクマ、頑張って飛んで、無事大陸に着いてね!」

この季節、大瀬崎でハチクマの数をカウントしている専門家の方によると、今日は天候や風向きが絶好のコンディションだったので、ハチクマの群れを十分に見ることが出来たのだそうです。とてもラッキーだったのですね。

大瀬崎灯台までトレッキング

さて、ハチクマを見終わった後は、灯台までのトレッキングです。駐車場からさらに車で1分先へ行った場所に、大瀬崎灯台まで続く遊歩道の入り口があります。

福江島(五島)ハチクマの渡り-大瀬崎灯台までトレッキング

灯台まではずっと下りの道なので約20分、そして帰りは登りとなるので40分。休憩なども含めると1時間半〜2時間の行程です。道は整備されているので、スニーカーなど歩きやすい靴であればOK。しばらくは広葉樹の森の道が続きます。

道の途中、森の空気を感じたり、木々の間から火山で出来た島「嵯峨ノ島」を見たりしながら進んでいくと

ひらけた明るい道に出ますが、灯台までは後少し。

ついに現れました、大瀬崎灯台です。

そして灯台の麓の階段を登り始めると、その周りは紫の可憐な花が、、、

「シマシャジン」です。キキョウ科の大陸系の花ですが、何とこの植物は、ここ大瀬崎と長崎県の平戸、そして韓国の済州島(チェジュ島)の世界で3箇所しか見られない植物なのだそうです。

とても珍しいシマシャジンですが、実は環境省と長崎県の絶滅危惧種に指定されている貴重な植物。草むらの中にひっそりと咲いているシマシャジンを、写真を撮るために踏みつけたり、採取したりしないように気をつけなければなりません。既に年々その数が少なくなっているという報告もありますが、この植物がなくならないよう、大切に守っていきたいですね。

そして灯台に到着!ここで東シナ海と断崖の織りなす絶景や、風に負けじと頑張って目づいている可愛い植物を楽しみ見ながら、持ってきたコーヒーを飲んで一息‥美味しいですね。

昭和の中頃まで、ここには灯台守の方が住んでいたそうで、その跡地を歩きながら帰路に着きます。

同じ道を戻りますが、今度は登りとなり、休み休み歩いていきます。でも道端にはたくさんの草花があり、目を楽しませてくれますよ。

夢の駅でジビエ料理を満喫

さて、そうこうしているうちにランチタイムも間近に…福江の街に戻る途中、玉之浦・中須にあるジビエとリユースのお店「夢の駅」に立ち寄ります。

夢の駅では、獣害対策としてジビエを利用したメニュー、「ジビエバーガー(鹿肉)」や「ロースト丼(鹿肉)」「焼肉丼(猪肉)」などを提供していますが、どれも肉の臭みは全くなく、むしろあっさりとしていて美味しくいただけます。

私は、「チリソース」「トマトソース」「レモングラスソース」と3種類あるジビエバーガーのうち、今日は「レモングラスソース」を注文しました。バーガーもバンズも美味しく、あっという間にぺろり!アイスコーヒーも、入っている氷はコーヒーを冷やしたものとなっていて、そのような細かな心遣いが伺える、素敵なお店です。

リユースコーナーは、家電品や家具から食器、衣類、おもちゃ、本など様々な品がずらりと並んでいて、見ているだけで楽しくなりますし、何かしらお気に入りや気になる品も!
また店の方達はお話がとても上手、そして話す人の事情を考えながら話を聞いてくれます。島の場所や、わからないことなど尋ねると、すぐに答えてくださるのもこのお店にまた行きたくなる理由の一つかもしれません。昼の休憩時間無しに夕方まで通しで営業しているので、お昼ご飯を食べ損ねた時など本当に助かります。(4月〜10月までは10:00〜17:00 11月〜3月までは10:00〜15:00まで営業。水曜定休)

閉校跡地(平成小学校跡地)を活用したジビエ料理が食べられる「夢の駅(五島列島・福江島)」。ランチだけでなく、雑貨も見て買って楽しめるフラッと寄りたいまさに夢の駅なのだ。

楽しく過ごした時間を振り返りながら、玉之浦を後にします。玉之浦は福江島の中でも、最も西にある地域。特にハチクマの飛び立つ大瀬崎は、「西の果て」とも言える場所、大陸に近いからこそハチクマの渡りや、大陸系の植物・シマシャジンを楽しむことが出来るのでしょう。大瀬崎の秋、ハチクマの渡りは10月初旬まで、またシマシャジンは11月頃までと、期間は短いですが、来年はぜひ見に行かれてくださいね!

この季節以外でも、大瀬崎灯台へのトレッキングコースは、四季を通じて楽しむことが出来ます。また「大瀬崎灯台展望所」付近で毎年大晦日に行われる「九州で今年最後に沈む夕日を見る会」も、天気に恵まれれば最高です。玉之浦の楽しみ方は他にもありますが、これから少しずつご紹介したいと思います。

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