芋焼酎をつくる時の「発酵(一次発酵、二次発酵)」とは?芋焼酎で使用されるさつまいもの種類、品種や芋焼酎の蒸留、熟成まで。芋焼酎の種類や飲み方、本場鹿児島の飲み方をまとめてみた

日本でかなり親しまれている芋焼酎。そんな芋焼酎の作り方、主に「発酵」について詳しく説明していきたいと思います。「発酵」の後は、芋焼酎の「楽しみ方」「芋焼酎の種類」「蒸留」「熟成」「芋焼酎通の飲み方」「本場、鹿児島の飲み方」をまとめています。

目次
  1. 芋焼酎の基礎を作る「発酵」という仕事
    1. 発酵は2回行われる。その1次発酵と2次発酵とは、何が違う?
    2. 芋焼酎を造るときは何日くらい発酵させるの?
    3. 発酵中のもろみにとって、重要な「櫂入れ(かいいれ)」
    4. 発酵の要になる酵母の存在
  2. 芋焼酎は麹により変わる!さつまいもに適した麹とは?その美味しさを解説
    1. そもそも麹ってどんなもの?
    2. 芋焼酎に使う麹の種類
  3. 芋焼酎は知ってるけど、どうやって造るの?芋焼酎の造り方を知って芋焼酎を選ぶコツ、楽しみを知ろう!
    1. 芋焼酎はそもそもどんなお酒?
    2. さつまいもから造る「芋焼酎」は鮮度が命
    3. 芋焼酎の味の決め手になる、2種類の蒸留方法
    4. もろみが蒸留されるまでの製造工程
    5. もろみから酒へ……蒸留して初めて生まれる芋焼酎
    6. ゆっくりと眠らせて目覚める時を待つ「貯蔵」という時間
  4. 芋焼酎の種類を知ればさらに美味しく感じるはず!芋焼酎の種類とその特徴を徹底解説!
    1. 普段食べるさつまいもと、焼酎になるさつまいもの種類って違うの?
    2. 黄金千貫だけじゃない!芋焼酎に使われるさつまいもの品種
  5. さつまいもを収穫してから数日中に蒸し上げるまでの工程の時間、加工方法が芋焼酎の美味しさを決める
    1. 収穫したらすぐ加工!さつまいもは鮮度が命
    2. 2次もろみに使うまでのさつまいもの加工の流れ
  6. その数なんと40種類以上!芋焼酎に使われるさつまいもとは?
    1. 黄金千貫
    2. ジョイホワイト
    3. 紅あずま
    4. 安納芋
    5. 綾紫
  7. 芋焼酎は蒸したさつまいもの入ったもろみを使う「蒸留酒」
    1. 2種類の蒸留器による、2種類の蒸留方法で造る芋焼酎
  8. 芋焼酎を蒸留し始めた最初の部分、初留
    1. 蒸留にかかる時間と、それぞれの呼び名
    2. 芋焼酎の初留の魅力とは
  9. 大半の芋焼酎は熟成を経て出荷される
    1. 熟成することでまろやかになる芋焼酎
    2. 4段階ある芋焼酎の熟成期間
    3. 貯蔵する容器で変わる芋焼酎の味わい
  10. 黒ぢょか(黒千代香)って知っている?芋焼酎が何倍もおいしく飲むならこれ!
    1. 黒ぢょかってどんな道具?
    2. 黒ぢょかを使った熱燗の作り方
  11. 芋焼酎のふるさと「鹿児島県」の人たちは、芋焼酎をどうやって飲んでいる?
    1. 鹿児島県の人たちは、芋焼酎をどんな飲み方で楽しんでいるの?

芋焼酎の基礎を作る「発酵」という仕事

どんな種類のお酒も、原料からお酒になるのに避けて通ることの出来ない工程が「発酵」です。

発酵のメカニズムは、細かく説明しようとすると難しくなってしまいますが、簡単に言うと、人間にとって良い微生物が働くことで、食べ物や飲み物に含まれている栄養素を分解し、別の成分にすることが「発酵」になります。見た目や味が変わることを考えると、発酵と腐敗はよく似ていますが、腐敗したものは人間にとって毒となり食べられなくなります。そういう意味では発酵と腐敗は紙一重でもあるのですが、お酒造りにとって発酵は、原料の糖分をアルコールと炭酸ガスに変える大切な工程でもあり、さつまいもの風味がギュッと詰まった、芋焼酎のおいしさの基礎を作るのものだと言えるでしょう。

発酵は2回行われる。その1次発酵と2次発酵とは、何が違う?

芋焼酎を造るとき、発酵の工程は2回あります。米麹に酵母と水を加えて行う1次発酵と、1次発酵で出来た「1次もろみ」に蒸したさつまいもと水を加えて行うのが2次発酵にあたります。

1次発酵と2次発酵の違いは、さつまいもを入れるか入れないかということになります。しかし、このように発酵を2回に分けて行うようになったのは、大正時代になってからのことだと言われています。それまでは最初から蒸したさつまいもも加えて発酵させる「どんぶり仕込み」という方法が主流でした。

しかし、当時は腐敗に弱い黄麹を使っていたことや、さつまいもそのものが傷みやすい性質があることから、上手く発酵せずに雑菌が入って腐敗することが多かったのです。そのため、さつまいもを入れずに米麹のみで発酵を行い、それから蒸したさつまいもを加えるようになりました。

発酵を2回に分けることで芋焼酎の生産そのものが安定し、味も安定するようになったため、この方法が主流になったのです。

芋焼酎を造るときは何日くらい発酵させるの?

原料と水、酵母を加えて発酵を行うとお酒が出来上がるわけですが、発酵にかける日数はそのお酒によっても違います。日本酒でも、2週間ぐらいで発酵を終えるものから、低温管理して1ヶ月かけて発酵させるものもあります。これはワインも同様です。

日本酒やワインといった醸造酒は、酵母が原料の液体に含まれる糖分を食べ尽くしてしまうと発酵が止まるので、それを温度管理することで発酵期間をコントロールしたりといったことが行われています。

一方の芋焼酎も、現在ではもろみが腐敗したりしないように、衛生環境に気をつけるだけでなく、温度管理を行って発酵をコントロールします。米麹を発酵させる1次発酵では、温度管理を行いながら6日ほどかけて発酵を行います。出来上がった1次もろみに蒸したさつまいもと水を加え、温度管理をしながら2週間ほどの発酵を行います。

発酵が終わってから蒸留し、芋焼酎が出来上がります。

発酵中のもろみにとって、重要な「櫂入れ(かいいれ)」

発酵といっても、米麹と水と酵母をタンクに入れて、温度管理下でそのままにしておけばきちんと発酵するわけではないのです。発酵している最中のもろみは、アルコールと炭酸ガスが発生するため、炭酸ガスの力で原料の米麹がタンクの上の方に、まるでふたをするように舞い上がって固まってしまうのです。

そのままでは全体が均一に発酵しないだけでなく、ふたになっている米麹やさつまいものかすの部分から腐敗が始まってしまいます。

そのため、そのふたを崩して全体を混ぜ合わせる「櫂入れ」が行われます。

表面にできているふたのような層は、水分を沢山含んださつまいもで出来ているので、かなり厚くて重たいこともあり、櫂入れはとても力のいる作業でもあります。

二次もろみがしっかりと発酵をするまでの2週間ほどの間、さつまいもで出来るふたの部分から腐敗が始まってしまわないように、1日に何回かの櫂入れは欠かせない重要な作業であり、こうした丹念な作業があるから、おいしい芋焼酎が出来るのです。

発酵の要になる酵母の存在

発酵は米麹と水だけでは起こすのが難しく、酵母は専用のものを添加して発酵させるのが通常の芋焼酎の造り方です。麹もカビの一種であるように、酵母も菌の一種で、カビやきのこの仲間になります。英語では酵母のことをイーストといいます。

ドライイーストやイースト菌という言葉は、パンに使ったりするので耳馴染みがあるかも知れません。米麹に水を加え、酵母を添加することで初めて発酵が起きるのですが、芋焼酎の場合、焼酎専用に開発された酵母を使用するのが一般的です。

芋焼酎なら「鹿児島2号」など、数字の付いた酵母が何種類かあり、その酵母によって焼酎になったときにどんな香りが出るか違ってきます。そのため、蔵によってはいろいろな酵母を試している場合もあり、日本酒用の酵母やワイン用の酵母などを使ったものも最近は出てきています。

酵母は発酵の要でもあり、芋焼酎の味わいを左右する大切な存在でもあります。芋焼酎を選ぶときに、どんな酵母を使っているか書いてあるものもあるので、他のものとどう違うのか、試してみるのも楽しいですよ。ぜひその違いを飲み比べて楽しんでみてくださいね。

芋焼酎は麹により変わる!さつまいもに適した麹とは?その美味しさを解説

さつまいもを使ったお酒、「芋焼酎」。日本でも昔から親しまれ、晩酌には欠かせないという人も多いかもしれません。そんな芋焼酎にも欠かせない存在。それが「麹」です。今回はそんな麹の種類とそれによって芋焼酎がどう変わってくるのか、違いを説明していきたいと思います。

そもそも麹ってどんなもの?

お肉を柔らかくしてくれ、調味料としても近年よく耳にする「麹」という言葉。ではその麹とはどんなものか、みなさんは詳しくご存知でしょうか。麹は日本人の食生活に欠かせない、お醤油や味噌、そしてお酒などを造るのに欠かせない菌の一種で、麹が働くことでおいしい調味料やお酒が出来上がります。麹は糸状の菌でカビの一種なのですが、湿度の高い東南アジアや東アジアにしか生息していません。麹菌にもいろいろあるのですが、日本に生息している麹菌は「コウジカビ」という名前で、他の国には生息していないことが確認されており、日本にしかいない「国菌」として認定されています。

実際に麹菌を使うときには。蒸したお米や麦、大豆などに麹菌を付着させて、麹菌が好み、育ちやすい温度や湿度を保って培養して使います。

そのため、麹にはいろいろな種類があります。米に麹菌をつければ「米麹」、麦につければ「麦麹」、大豆につければ「豆麹」と言った具合に名前が変わります。麹菌はタンパク質を分解するプロテアーゼという酵素や、でんぷんを分解するアミラーゼという酵素など、たくさんの酵素を生み出します。そうした酵素が働くことで、タンパク質がうまみに変わったり、でんぷんが糖分に変わったりするのです。

これがさまざまな日本の食品やお酒にとって、欠かせないものになっているのです。芋焼酎でいうと、さつまいもの豊富なでんぷんを分解して、アルコールのもととなる糖分に変えるためのとても大切な役割を担っているのです。

芋焼酎に使う麹の種類

芋焼酎を造るときにも麹が使われます。芋焼酎のもととなる「もろみ」を造るとき、まず最初に米麹を作ります。米麹が出来たら最初は水と酵母だけで「酒母(もろみを発酵させる酵母を大量に培養したもの)」を造る「一次仕込み」を行い、その後、蒸したさつまいもを加えて「二次仕込み」を行います。

二次仕込みはさつまいもに含まれているでんぷんを麹に含まれている酵素が糖分に変え、その糖分を酵母が食べることでアルコールが生まれます。仕込みをするとき、芋焼酎に使われる麹には3つの種類があります。

それぞれ色の名前がついていて「黒麹」「白麹」「黄麹」と呼ばれています。麹菌の胞子の色からこの名前がついているのですが、芋焼酎に使うと、それぞれ違った個性の芋焼酎になるのです。

どっしりした呑み口になる「黒麹」


黒麹はとても古い歴史のある麹で、昔の芋焼酎は全て黒麹で造られていたと言われるほど、芋焼酎とは切っても切れない縁がある麹です。黒麹は沖縄が発祥の地と言われ、麹菌の色も文字通り真っ黒で、作業中に素手で触っていると、手が真っ黒になってしまうほどです。

麹菌の中ではクエン酸を多く含む菌なので、雑菌を防ぐ効果が非常に高いことから、九州や沖縄といった南の地域でのお酒造りには欠かせないものになっています。

とくに芋焼酎の場合、水分の多いさつまいもを使っているので、もろみを作っている最中に腐敗せずに済むのは、黒麹を選ぶとても大きな理由となっています。黒麹を使った芋焼酎は、ずっしりとした重厚感のある味わいになるといわれ、さつまいもの力強く濃厚な味わいが感じられる焼酎が生まれます。

やさしい口当たりの「白麹」

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白麹は黒麹を使っている中で、突然変異で生まれた麹菌です。さつまいもの個性をそのまま活かせるよう、味わいにクセがなく、製麹しやすい麹菌はないものかと研究を続けるうち、大正時代に九州地方で発見されたのだといいます。

白麹は黒麹と違って、真っ白で布に色がついたりしないため、取り扱いがしやすいのが特徴で、お酒にすると香りや味わいが軽やかになるのだといいいます。白麹で作った芋焼酎はすっきりとした味わいと、さつまいものやさしい香りや、まろやかな口当たりになるのが特徴です。

黒麹のようなさつまいもの力強さが出るわけではないものの、しっかりとさつまいもの香りや味わいは残ることから、あまり芋焼酎を飲まない人や初心者向けの、飲む人を選ばないタイプの焼酎になるといえます。

果物のような香りが心地よい「黄麹」

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黄麹はもともと醤油や味噌、日本酒を造るために使われていた麹菌です。歴史的にも一番古く、もともとは芋焼酎も明治時代までは黄麹を使って造られていました。なぜ黄麹が芋焼酎を造るときに、黒麹に取って代わられたのかといえば、やはり黒麹が豊富に含むクエン酸にその理由があるといえるでしょう。気温や湿度の高い環境では、さつまいもを加えたもろみを発酵させても、雑菌が少しでも入ってしまえば腐敗につながってしまいます。

クエン酸の強い抗菌作用は、芋焼酎の産地である鹿児島などではとても有効なものだったのです。

そのため、甕壷(かめつぼ(焼酎を作るツボ))を使って昔ながらの造り方をする場合は、黒麹のほうが管理がしやすく、傷むことがないのです。しかし、日本酒の吟醸酒にあるような、バナナやメロンなどのフルーティな香りを生むのが黄麹の良いところでもあります。

黒麹主体になった芋焼酎はどっしりと重厚感があるものでしたが、黄麹を使えば、さつまいもを使ったものとは思えないほど、呑み口もスッキリと軽やかで、あっさりとした味わいの焼酎を造ることが出来ます。現在は昔と違い、焼酎蔵も最新の設備を導入し、温度管理や衛生管理を行っているので、クエン酸が少ない黄麹でも、おいしい芋焼酎を腐敗させることなく造ることが出来るようになりました。フルーティで軽やかな味わいの芋焼酎は、さつまいもの品種によって味わいに差が出る繊細さもあるので、普段あまり焼酎を飲まない人にも勧めやすいものが多いと言えるでしょう。

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芋焼酎は知ってるけど、どうやって造るの?芋焼酎の造り方を知って芋焼酎を選ぶコツ、楽しみを知ろう!

普段飲んでいる芋焼酎が、どうやって造られているかご存知ですか?さつまいもを使って造っているのは知っているけれど、細かいことはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。造り方を覚えると、普段の芋焼酎の選び方に差が出ます。ぜひ覚えておいしく芋焼酎を楽しみましょう。

芋焼酎はそもそもどんなお酒?

お酒にはさまざまな分類がありますが、どんなカテゴリーに入るのでしょうか。芋焼酎は、さつまいもを原料にアルコール分を含んだ液体を造り、それを蒸留することで出来上がる「蒸留酒」と呼ばれるもののひとつです。分類としては、ウイスキーやウォッカ、テキーラやブランデーなどと同じ分類になります。

芋焼酎はアルコール度数が20度~25度と、ウイスキーやブランデーなどと比較するとアルコール分は低めで、さつまいも由来の香りや味わいを、水割りやお湯割りなどにして食事とともに楽しむ、世界ではあまり例のない蒸留酒です。

1本の芋焼酎をさまざまな飲み方で楽しめることを考えると、とても多様な魅力のあるお酒なのです。

さつまいもから造る「芋焼酎」は鮮度が命

芋焼酎はさつまいもと水、麹から作った「もろみ」を蒸留することで出来上がるお酒です。同じようにもろみを作ってから蒸留するお酒には、麦焼酎や米焼酎などがありますが、原料となる穀物が水分を含んでいないため、貯蔵してからもろみ作りをすることができます。

しかし、さつまいもは水分を含んだ野菜で、イモ類のなかでも傷みやすいのです。そのため、芋焼酎を造るときは、前日か当日の朝に収穫をして、土がついたまま焼酎蔵へ運び、焼酎蔵についてからきれいに土を洗い流します。

そして、人の目で、さつまいもに傷んだところがないかをひとつひとつ見ながら選別します。選別が終わったさつまいもは両端を切り落として、傷んだり変色したりしているものはその部分もきれいに切り落とします。さつまいもは、傷んだところがあると、そこから抗菌性の物質が分泌される性質があり、それが臭みのもとになってしまうため、ていねいに選別とカットをするのです。丹精込めて育てたさつまいもに、多くの人の手間がかかっておいしい芋焼酎が出来上がるのですね。

芋焼酎の味の決め手になる、2種類の蒸留方法

芋焼酎を購入するときに、ラベルをよく見ると「焼酎乙類」「焼酎甲類」といった記載があるのに気が付きます。甲類と乙類の2つの違いは、芋焼酎の蒸留方法の違いによるものです。

甲類に分類される焼酎

甲類に分類される焼酎はもろみを蒸留するときに、「連続式蒸留機」というもので蒸留が行われ、乙類に分類されるものは「単式蒸留器」でもろみを蒸留したものをいいます。

連続式蒸留機は比較的新しい技術から生まれたもので、1900年頃に日本では取り入れられるようになりました。連続式蒸留機はその名の通り、連続的に蒸留を行えるもので、さつまいもで作ったもろみから、短い時間でアルコールを抽出することが出来ます。

そのため、大量生産の焼酎によく使われています。

繰り返し蒸留されることもあり、さつまいも特有の味や香りはそれほどせず、雑味がなくスッキリとした味わいの焼酎が出来上がります。

また、原酒のアルコール度数も36度未満と、少し低めのものになります。

乙類に分類される焼酎

一方、乙類の焼酎は、昔ながらの単式蒸留機で造られる、原酒のアルコール分は45度以下のものをいいます。そのなかでも、酒税法で決められた条件をクリアしたものは「本格焼酎」として販売されます。本格焼酎と呼ばれるものは、さつまいも由来のゆたかな香りと重厚な味わいがするものが多いのが特徴です。

単式蒸留機の歴史は非常に古く、メソポタミア文明の頃まで遡るのだといいます。

日本に単式蒸留機を使用した焼酎造りが伝わってきたのは15世紀半ばのことなのですが、連続式蒸留機が伝えられるまでは、焼酎はすべて単式蒸留機で造られていました。単式蒸留機での蒸留は、連続式蒸留機に比べると時間がかかり、大量に焼酎を作るのには向いていません。

しかし、さつまいもがもつ本来の味わいや香りを引き出し、特徴のある個性的な芋焼酎を生み出すことが出来ます。

もろみが蒸留されるまでの製造工程

さて、蒸留の仕方とそれで出るお酒の違いはわかりましたが、実際に蒸留器にかける「もろみ」とはどんなもののことを言うのでしょうか。

単式蒸留の場合を例にとって説明をしていきましょう。

まず、収穫したさつまいもをきれいに洗浄してから選別し、両端と傷んだ部分などを切り落とします。そのさつまいもを蒸して、蒸しあがったものを粉砕機にかけて細かくします。それと並行して製麹(せいきく)という作業をします。蒸したお米を冷ましたものに麹菌をふりかけ、米麹を作るのです。お米は冷めているとはいっても、35℃位あるので、麹室に人が入って蒸したお米に麹菌が行き渡るように返す作業をするのは大変な作業です。

芋焼酎の場合、それぞれのさつまいもに合わせて、白麹、黒麹、黄麹と3つの麹を使い分けるのが一般的で、麹の種類によって味わいも変わります。

そして、まず米麹、水と酵母を合わせたものをタンクや甕壷に入れ、1次発酵が進むのを待ちます。1週間ほど発酵させて1次もろみが出来上がったら、そこに粉砕したさつまいもと水を加えて混ぜ合わせ、2次発酵を行います。

2段階で発酵を行うことで、香りの良い芳醇な芋焼酎が生まれます。

ちなみに、なぜお米で麹を作るかというと、さつまいもは水分が多くて傷みやすいため、麹菌がしっかりと育ちにくいためです。しかし最近では「全量芋」といって、さつまいもを使って麹を作る焼酎蔵も出てきました。さつまいもを使った麹を使った芋焼酎は、米麹を使ったときとは違い、さつまいもの濃厚な味わいを楽しむことが出来ます。

もろみから酒へ……蒸留して初めて生まれる芋焼酎

2段階で発酵を終えたもろみは、蒸留器に入れられ、熱せられます。蒸留器に入れられて熱せられたもろみは、蒸留器の中で蒸気となり、その蒸気を冷やすと再び液体に戻ります。もろみに含まれている水とアルコールは沸点が違いますが、この差を利用して、水とアルコールを分離させるのです。そうして1滴ずつ落ちてくるアルコールを集めたものが、私達が日頃親しんでいる芋焼酎です。厳密に言うと単式蒸留にも種類があり、常圧蒸留と減圧蒸留という違う気圧で行う蒸留方法がありますが、それもまた芋焼酎の味わいの個性を作っています。

ゆっくりと眠らせて目覚める時を待つ「貯蔵」という時間

芋焼酎は、蒸留されたばかりの原酒のときは、炭酸ガスが少しですが含まれています。そのため、そのまま飲むと荒々しい感じがしますが、ゆっくりと貯蔵して寝かせることで炭酸ガスが落ち着き、芋焼酎が本来持っているさつまいもならではの味わいや香りが姿を表すようになります。

貯蔵は短いものでも1~3ヶ月、長いものになると数年単位で「熟成」され、尖って感じたアルコール分がまろやかに変わったり、華やかな香りが出てきたりします。熟成された原酒は、酒質が一定になるようにすべてのタンクや甕壷のものを合わせ、水を加えてアルコール度数を調整していくのです。

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芋焼酎の種類を知ればさらに美味しく感じるはず!芋焼酎の種類とその特徴を徹底解説!

鹿児島県の特産でもあり、さつまいもを使って作られる芋焼酎。でも、芋焼酎に使われるさつまいものことは、意外と知らないのではないでしょうか。実は焼酎に使われるさつまいもは、日常的に食べられているものとは全く違う品種、さつまいもの品種を知ることで、芋焼酎がさらにおいしく楽しめるようになります。そこで今回は芋焼酎の種類とその特徴、さつまいもの種類などについて紹介したいと思います!

普段食べるさつまいもと、焼酎になるさつまいもの種類って違うの?

さつまいもというと、ベニアズマや鳴門金時のように、紫がかった皮をしたものを思い浮かべる人が多いのではないかと思います。焼酎に使われるさつまいもは、じゃがいものような白っぽい皮をしているものが多く、他のさつまいもよりもでんぷんが多いのが特徴です。なかでも良い焼酎が造られることで知られているのが「黄金千貫」という品種です。

芋焼酎の大半は「黄金千貫」で出来ている

黄金千貫はじゃがいものような色をしたさつまいもで、切った断面も白っぽいさつまいもです。農林省九州農業試験場で、チモール島の品種やアメリカの品種、そして日本の品種をかけあわせて作られたさつまいもです。育てれば、黄金色の芋がザクザクとれる、という由来から黄金千貫という名前が付きました。

実際、乾燥した暖かいところで栽培すると、黄金色がかった芋が取れるそうで、これが名前の由来にもつながっています。

芋焼酎といっても様々なものがありますが、焼酎造りに使われるさつまいもの大半が、この黄金千貫なのです。

黄金千貫は、適度な糖度とでんぷんに加え、焼酎にしたときに芳醇な香りが出ることから焼酎造りに重用されています。

黄金千貫、食べるとどんな味?

焼酎に使うとその個性が生きる黄金千貫ですが、食べることはないのでしょうか。

黄金千貫はでんぷんが多いために、火を通すと粉っぽさが目立つようになります。ホクホクしているというよりは、サラサラと粉っぽく、甘みもそれほど強くありません。蒸して裏ごしして砂糖を加えるような料理には使えるかもしれませんが、それなら他のさつまいもを使ったほうが良さそうです。さらに、他のさつまいものように長期間保管ができないので、食用には向かないのだといいます。

ただ、天ぷらにするとおいしいため、さつまいもの収穫時期になると、黄金千貫も天ぷらにしてよく食べるのだそうです。黄金千貫の天ぷらを食べながら、芋焼酎を楽しんでみたいですね。

黄金千貫だけじゃない!芋焼酎に使われるさつまいもの品種

芋焼酎に使われるさつまいもの品種は黄金千貫だけではありません。

専用の品種だけでも40種類を超え、黄金千貫のように白っぽい皮を持つ品種だけでなく、私達が普段食べている紫色の皮をした品種ももちろんあります。なかでも良く知られているのは「ジョイホワイト」や「紅さつま」、「金時芋」などが挙げられます。

ジョイホワイトはこれまでの芋焼酎とは違ったバリエーションのものを作るために、品種改良によって生まれた「芋焼酎のためのさつまいも」です。

黄金千貫よりもでんぷんの量が多く、フルーティな味わいの焼酎ができるため、1994年に作出されてから、華やかな芋焼酎が造られるようになりました。病害虫にも強く、保存性も高いのが特徴で、焼酎蔵にとっては使いやすい品種だと言えるでしょう。

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さつまいもを収穫してから数日中に蒸し上げるまでの工程の時間、加工方法が芋焼酎の美味しさを決める

収穫したらすぐ加工!さつまいもは鮮度が命

芋焼酎の原料は、その名前の通りさつまいもが使われています。さつまいもは、麦や米といった他の蒸留酒の原料と違い、水分の多い野菜でもあるので、すぐに加工しないと傷んでしまいます。そのため、さつまいもを収穫してから数日中に蒸し上げるまでの工程を行うのが一般的です。中にはさつまいもを蒸すまでの工程のみを専門に行っている業者もあるほどで、大きな焼酎蔵は収穫したさつまいもの加工を委託している場合もあります。おいしい芋焼酎を造るためには、スピーディーに行わなければいけないさつまいもの加工を、芋焼酎の故郷ではたくさんの人達が行っています。

2次もろみに使うまでのさつまいもの加工の流れ

さて、収穫されたさつまいもはどのような工程を経て2次もろみ造りに加えられるのでしょうか。その流れをご紹介します。

検品

まず最初に、収穫したさつまいもをチェックします。さつまいもにしっぽやひげ根などがなく、傷んだところがないかどうかを目で見て触って確認していきます。病気などで傷んださつまいもが入ってしまうと、もろみが腐敗してしまう可能性があるからです。収穫してから芋焼酎になるまで、常にさつまいもに傷んでいる部分がないかに目を配りながら加工が行われます。

洗浄

また、さつまいもは御存知の通り根菜で、土の中に埋まっているものを掘り出して収穫するため、表面には泥がついています。まず、その泥を洗い流さないと、焼酎を作ることは出来ません。焼酎蔵や加工業者には「ホッパー」というさつまいもの洗浄用の機械があり、ホッパーを使ってきれいになるまでさつまいもを洗います。さつまいもを洗う機械は大きなものから小さなものまであり、焼酎蔵の規模によって大きさもさまざまです。きれいに洗い終わって、ベルトコンベアに乗って出てきたものを、ここでもざっくりとチェックします。傷んだものが見つかったら取り除いて次の工程へと進みます。

選別・芋切り

ホッパーにかけてきれいになったさつまいもを、さらに人の目で確認しながら選別し、両端を切り落とし、大きなものは適当な大きさに切ります。実はこの作業は、すべて手作業で行うため非常に人手がかかり、何十人ものスタッフが一斉に取り掛かる様子は、まさに文字通りの人海戦術と言えるものです。芋焼酎の一升瓶が1本出来るには、2キロのさつまいもが必要になります。そのため、傷みやすいさつまいもを何百トンも手作業で確認しながら切っていき、それを数日中にすべて終わらせなければいけないので、とても大変な作業でもあるのです。選別や芋切りを迅速に行うには、熟練のスタッフが必要でもあり、この時期の焼酎蔵はそうした多くの人々の活気に満ちています。

蒸す

さて、たくさんの人の手で確認され、切られたさつまいもは、次に蒸す工程へと移っていきます。何百トンも蒸すには、一度に大量に蒸し器に入れてもきちんと火が通らないため、250キロほどの量が入る金属製の蒸しかごにまずさつまいもを入れていきます。芋切りがおわったさつまいもがベルトコンベアで流れてきたものを蒸しかごに入れたら、その蒸しかごを重ねてフォークリフトで運び、大きな蒸し器へと入れます。かごとかごの間には隙間があり、蒸気や熱が通るようになっています。火のとおり具合などの蒸し上がりの状態は、2次もろみの仕込みに影響するので、きちんと温度管理をしながら、時間を測って蒸し上げます。大きな蒸し器にはセンサーがついているものなどもあり、蒸しかご1つごとに温度などがモニターで確認できるようになっています。

さつまいもを冷ます

蒸し上がったさつまいもはそのまま米麹と合わせるわけではなく、きちんと冷ましてからでないと使うことが出来ません。なぜなら温度が高すぎると麹菌や酵母が死んでしまうため、蒸し器でアツアツになったさつまいもの温度をある程度まで冷まさないと使えないのです。蒸し器から出してきた、重ねてある蒸しかごに大きな扇風機を回して風を送り、2時間ほどかけてさつまいもを冷やします。さつまいもが冷めたら米麹と水とともに合わせて2次もろみの仕込みに入りますが、大きなメーカーは、このあとさつまいもを急速冷凍して保管し、1年を通して芋焼酎が仕込めるようにするところもあります。

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その数なんと40種類以上!芋焼酎に使われるさつまいもとは?

芋焼酎の原料となり、その個性を形作るさつまいも。芋焼酎には昔ながらのずっしりとした癖の強いタイプもあれば、華やかでフルーティな香りが楽しめるものもあります。その個性は、麹の種類や使われている酵母、蒸留したときのどの部分を使うかといったことや、熟成するときにどのような容器でどれくらい寝かせているかでも違ってきますが、非常に大きな要素となるのがさつまいもの品種です。芋焼酎の原料となるさつまいもの品種の数は、なんと40種類以上にも及びます。芋焼酎を飲むときに、さつまいもの品種ごとの個性を知っていると、さらに芋焼酎を親しむのが楽しくなります。ここではさつまいもの品種ごとに、どのような芋焼酎が生まれるかを紐解いていきます。

黄金千貫

芋焼酎を語る上で絶対に外せない、一番メジャーな品種でもあるのが、この「黄金千貫」という品種です。1966年に生まれた交配品種で、皮が黄色く、中身は白いタイプのさつまいもです。1株の苗から千貫(4トン弱)ものさつまいもがとれることから、この名がついたと言われています。多産なだけでなく、他のさつまいもに比べるとでんぷんを多く含み、そのため蒸してでんぷんを糖化させると糖分が多くなるため、2次もろみを造る際にアルコールを生成しやすいのが特徴です。そのため芋焼酎を造るのに効率がよく、生まれてから長い間多く用いられてきました。また、アルコールを生むのに使い勝手が良いだけでなく、他のさつまいもと比べると、上品でふんわりとやさしい甘みのバランスが良い味わいの芋焼酎が生まれます。黄金千貫はでんぷんを多く含みますが、でんぷんの粒子が細かく、サラサラと舌触りも良いため、食用としても親しまれています。秋になり収穫期を迎えると、芋焼酎の仕込みとともに、鹿児島の家庭では黄金千貫の天ぷらが食卓に登場するようになります。ぜひ芋焼酎と合わせて楽しんでみたいですね。

ジョイホワイト

ジョイホワイトは芋焼酎を造るために生まれた交配品種のさつまいもです。名前の通り、皮も中身も白いさつまいもで、1994年に生まれた比較的新しい品種で、黄金千貫を上回るでんぷんを含むため、効率よくアルコールを造れるのが特徴です。また、害虫に強く貯蔵性も高いため、栽培しやすく収穫後の扱いが楽だというメリットもあります。ジョイホワイトで造られる芋焼酎の特徴は、フルーティな香りとすっきりとしたマイルドな呑み口。これまでのさつまいもとは違う、ライトでさわやかな味わいを楽しめる品種です。

紅あずま

食用のさつまいもとして作付面積が最も多く、焼き芋などで多くの人に親しまれている紅あずま。関東地方を中心に栽培されているさつまいものため、芋焼酎に使われているイメージがあまりないかも知れませんが、南薩で作られる紅あずまは、特に質が高いことでも知られています。いわゆるさつまいもらしい、赤紫色をした皮と明るい黄色をした中身で、ほくほくとした食感とほどよい甘みがあることで、食用として親しまれてきました。紅あずまを使った芋焼酎は、さつまいもならではの甘さやコクが感じられ、風味も豊かなものに仕上がります。

安納芋

近年、スイーツや焼き芋として、絶大な人気を誇るさつまいもとして知られるのが安納芋です。種子島特産のさつまいもとして知られる品種で、品種を細かく分けると4種類ほどの系統があります。安納芋は登録品種だったことから、種子島以外での栽培は認められていませんでしたが、2013年に栽培の制限が解け、日本各地で育てられるようになりました。ねっとりとした食感と、蜜のような甘さがあることで一躍人気となり、今ではコンビニスイーツなどでも楽しむことが出来ます。安納芋を使った芋焼酎は、甘い香りと深い味わい、しっかりとしたコクのある濃醇なタイプのものになるのが特徴です。

綾紫

綾紫は名前の通り紫芋の一種で、これまでのさつまいもの中でも、紫色の色素が多く含まれ、1999年に品種登録されたさつまいもです。皮も中身も紫色をしていて、ポリフェノールの一種として知られるアントシアニンが豊富に含まれています。芋焼酎の2次もろみに使用すると、鮮やかな赤紫色のもろみが出来上がり、それを蒸留すると、ライラックのような華やかな香りと、ライチを思わせる甘みを感じるなめらかな口当たりの芋焼酎が出来上がります。

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芋焼酎は蒸したさつまいもの入ったもろみを使う「蒸留酒」

アルコール分の高いお酒としても知られている芋焼酎ですが、芋焼酎がどうやって造られるかご存知でしょうか。米麹を使って蒸したさつまいもに水を加えたものを発酵させ、2次もろみを造るのが、仕込みの第一段階であることを、発酵についてのページで触れていますが、そのもろみを蒸留器で熱し、蒸留したものが芋焼酎になります。蒸留と一口に言っても、どういう機械を使ってどうすれば芋焼酎が造れるのか、イメージするのはなかなか難しいかも知れません。今回は芋焼酎を造る上で非常に大切な工程でもある「蒸留」について解説していきます。

2種類の蒸留器による、2種類の蒸留方法で造る芋焼酎

さて、蒸留といってもいろいろ種類があります。その種類について紐解いていきましょう。

蒸留器の種類で芋焼酎の味が変わる

蒸留器の種類を説明をする前に、まず、そもそも蒸留ってどういうことなのかを最初に解説しましょう。蒸留は、液体を熱して湯気になった蒸気を、冷やすことでさらに純度の高い液体にすることをいいます。基本的にはアルコール度数を高くするために行われるのですが、水とアルコールは沸点が違い、アルコールのほうが沸点が低いため、アルコールだけを蒸発させることが可能なのです。そのため、蒸したさつまいもと水を加えて作る2次もろみを熱すると、2次もろみに含まれるアルコールだけを集めることができ、純度の高い芋焼酎を得ることが出来るのです。さらに、単式蒸留器と連続式蒸留器という、2種類の蒸留器があります。

単式蒸留器とは

単式蒸留器はウイスキー工場などで見かける「ポットスチル」と呼ばれるもので、蒸留器の中に入れたもろみの分だけが蒸留されるシンプルなものです。もろみのアルコール度数の3倍程度の度数をもつ蒸留酒を造ることができます。芋焼酎の場合、さつまいものでんぷんを蒸すことで糖分に変わったものを、酵母が食べて分解することで、2次もろみにアルコールと炭酸ガスが生まれます。2次もろみのアルコール度数は18度程度。そのため、単式蒸留器で蒸留すると、50度を超えるお酒が出来ることになります。出荷するときは水を加えて、アルコール分を調えてから瓶詰めされるのです。主に「乙類焼酎」に分類される芋焼酎が単式蒸留器で造られます。

連続式蒸留器とは

もうひとつの連続式蒸留器は、「パテントスチル」と呼ばれる蒸留器で、効率よく高いアルコール分のお酒を造るためのものです。簡単に説明すると、ひとつの大きな蒸留器の中に、たくさんの単式蒸留器があることをイメージしてもらうとわかりやすいかも知れません。2次もろみを連続式蒸留器に入れると、沸騰したものを冷やしてアルコールを得て、さらにそれを蒸留して、もっと高い度数のアルコールを造る、という仕組みを繰り返すようになっています。2次もろみを入れるのも1回だけではなく、何度も繰り返し入れることが出来、蒸留器の中で繰り返し蒸留が行われているため「連続式蒸留器」という名前になりました。連続式蒸留器で造ることのできる芋焼酎のアルコール度数は90度程度。効率は良いですが、何度も2次もろみを蒸留し続けるので、さつまいもの持つ個性的な香りや味わいは削ぎ落とされ、クリアでクセのない味わいの芋焼酎ができあがります。主に「甲類焼酎」に分類される芋焼酎が連続式蒸留器で造られます。

単式蒸留器を使った2種類の蒸留方法とは

連続式蒸留器を使うよりも、さつまいもの味わいや香り、旨みがしっかりと残る単式蒸留器を使った焼酎造りには、さらに2種類の蒸留方法があります。それは、常圧蒸留と減圧蒸留という方法。原料のさつまいもの持つ、どういう味わいや香りを出したいかで、焼酎蔵では蒸留方法を選びます。

常圧蒸留とは

常圧蒸留は古くからある蒸留方法で、その歴史は500年ほど前に遡ります。2次もろみを蒸留器に入れてから、90~100度程度で熱してアルコールを抽出します。この方法では、原料となるさつまいもの持つコクや旨み、さつまいもならではの香りや味わいをしっかりとアルコールに残すことが出来ます。さつまいもの良さを引き出すことが出来る、昔ながらの蒸留方法です。

減圧蒸留とは

減圧蒸留は1970年代に広まった蒸留方法で、蒸留器の中の空気を抜くことで蒸留器内の気圧を下げ、アルコールの沸点を下げて芋焼酎を抽出する方法です。この蒸留方法が生まれたことで、短い時間で量を造ることが可能になったことから、焼酎そのものが全国区になるきっかけにもなりました。蒸留器の中の気圧が下がったときの、アルコールの沸点は40~50度程度。温度が低い分、時間をかけることなく芋焼酎を造ることが出来るようになったのです。2次もろみが低い温度で沸騰することから、常圧蒸留で造る芋焼酎と比べると、さつまいもの香りや味わいがソフトな感じに仕上がります。また、雑味も少なくすっきりとした、モダンな雰囲気の芋焼酎が生まれます。

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芋焼酎を蒸留し始めた最初の部分、初留

芋焼酎の造り方にはさまざまな工程がありますが、蒸したさつまいもと水を加えた2次もろみをどのように蒸留するかだけでなく、蒸留器にかけてからアルコールが出てくる最初の1滴から、最後のひとしずくまでをどのように使うかで味わいがまた違ってきます。中でも「初留」と呼ばれる、蒸留し始めに出て来るアルコールは、さつまいもの香りの中でも華やかな香りが感じられます。その香りに魅せられ、マニアの人達がこぞって買い求めることでも知られています。

蒸留にかかる時間と、それぞれの呼び名

芋焼酎は、米麹に蒸したさつまいもと水を加えて醸した2次もろみを蒸留器に入れ、蒸気を蒸留器の中に入れると、2次もろみが蒸気で熱されて、水より沸点の低いアルコールが抽出されます。単式蒸留器を使って芋焼酎を常圧蒸留をするとき、1度の蒸留には2~3時間かかります。蒸留された芋焼酎が出てくる順番は、時間ごとに「初垂れ」「中垂れ」「末垂れ」と名前がついています。初垂れは蒸留を始めたばかりの時間帯に取れるものなので、アルコール度数が高いですが、中垂れ、末垂れと時間が経つに連れて、アルコール度数は十数度まで下がっていきます。この3種類の焼酎はそれぞれに味や香りが違い、それをブレンドすることでおいしい芋焼酎が出来上がりますが、どこをどのように使うかで、原料のさつまいもの風味がどのように現れるかが変わってきます。それまでは3種類をブレンドして芋焼酎を造るのが一般的でしたが、ある時から初垂れのみを瓶詰めしたものを販売する焼酎蔵が現れるようになりました。

その華やかな香りに誰もが驚いた、芋焼酎の「爆弾ハナタレ」

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最初に芋焼酎の初垂れを瓶詰めしたものを販売したのは、宮崎県にある黒木本店です。初垂れの呼び名であるハナタレを名前に冠した「爆弾ハナタレ」という芋焼酎を、1997年から販売を開始しました。焼酎のうち、初留そのものの分量が非常に少なく希少なことや、その華やかでフルーティな香りと、冷凍庫に入れてもウォッカと同様に凍ることがなく、とろりとした口当たりになることが評判を呼び、芋焼酎マニアの間で話題になりました。その後他の芋焼酎を造る蔵も追随する形で初留を瓶詰めした製品を造るところが現れ、2000年代にちょっとしたブームになりました。

初留の分量は芋焼酎全体のどれくらいの割合?

芋焼酎の中でも取れる分量が少ないと言われる初留ですが、実際にどのくらいの割合なのでしょうか。実は中垂れと末垂れを加えた芋焼酎全体のうち、初留と呼ばれる部分はほんの1~3%しかありません。時間にすると、蒸留し始めてからわずか10分ほどの間しか、初留は取ることが出来ないのです。分量が少なく希少なため、数量限定や季節限定での販売をするところが多く、小さな瓶に入ったものが多いのもうなずけます。

芋焼酎の初留の魅力とは

さて、芋焼酎マニアがこぞって購入したことで有名になった初留を使った芋焼酎の魅力とはどんなものだと思いますか?蒸留の一番最初の部分は、揮発性の強い華やかな香りが強く、バナナのようなフルーティな香りや、フローラルな香りが強く感じられます。芋焼酎なのに花の香り?と思うかも知れませんが、実際に飲んでみると、今度は原料に使われているさつまいもの特徴がしっかりと感じられ、香りの余韻に残ります。アルコール度数が高いため、冷凍庫でよく冷やすととろみが出て、それをショットグラスやノージンググラスなどに注いで、香りと味わいを楽しむのがおすすめです。とろりとした口当たりだけでなく、甘露とも言える甘やかな舌触りは他の焼酎にはない魅力でもあります。もちろん、ストレートで飲むのはアルコール度数が高くてちょっと、という方は、水割りやお湯割りで楽しむのもおすすめです。水割りにするとより華やかさが強調され、フローラルな香りが引き出されるだけでなく、やさしいさつまいもの甘みが余韻に残ります。また、お湯割りで楽しむと、さらに華やかな香りが強調され、フルーティでフローラルな香りと、さつまいもの甘みが感じられるまろやかな口当たりを楽しむことが出来ます。初留だからと必ず凍らせて飲む、といった決まりはないので、好みの飲み方を探して見るのも良いと言えるでしょう。

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大半の芋焼酎は熟成を経て出荷される

蒸留酒で熟成をするというと、ウイスキーやブランデーを思い出す人も多いかも知れませんが、実は芋焼酎も、大半のものが熟成の工程を経て出荷されているのをご存知でしょうか。芋焼酎は透明なお酒のイメージがあるので、熟成をしているとは思っていない人が多いかも知れませんね。蒸留したての芋焼酎は、そのまま瓶詰めすることはなく、ほぼすべての焼酎が最低でも1~3ヶ月熟成してから瓶詰めし、出荷されます。芋焼酎は新酒でもおいしく飲めるお酒なのですが、その短い熟成期間がとても大切な工程となっています。なぜ芋焼酎は熟成してから出荷されるのか、ご紹介していきましょう。

熟成することでまろやかになる芋焼酎

蒸留したての芋焼酎は、アルコール分が高いだけでなく、独特の香りが残っています。その香りのことを「ガス臭」や「ムレ臭」などといいますが、それは芋焼酎に含まれている成分によるもので、刺激の強い匂いとクセがあることで、そのまま飲むには飲みづらいものです。そこでまず、アルコール分を整えるために加水をしてから熟成を行うと、1~3ヶ月の間に匂いのもととなる成分が揮発し、ガス臭やムレ臭は消えていきます。熟成して癖のある余分な匂いを飛ばすことで、原料のさつまいもの個性が感じられる、風味豊かな芋焼酎に仕上がるのです。また、蒸留したての焼酎には、匂いの成分の他にも含まれているものがあります。それは「フーゼル油」と呼ばれる油分で、これが空気に触れて酸化すると、ガス臭や油の匂いが生まれ、品質の劣化にも繋がります。そのため、蒸留した芋焼酎をタンクに入れて置いておくと、毎日うっすらと芋焼酎の表面に油の膜ができるため、それを取り除く作業を繰り返します。中には、芋焼酎をタンクに入れてから冷やすことで、フーゼル油を固めて取り除く場合もあり、その方法では1度に全て取り除けるため効率よく次の濾過の工程に移すことが出来ます。タンクなどで熟成し、油を取り除くことでさつまいもの風味がたっぷりと感じられるまろやかな芋焼酎が出来上がります。

4段階ある芋焼酎の熟成期間

芋焼酎の熟成期間には4段階あり、その熟成期間によって風味が変わってきます。先に説明した1~3ヶ月の熟成は「蒸留後熟成」というもので、油を取ることとワンセットになっているものです。さらに6ヶ月まで熟成するものを「初期熟成」、3年未満の熟成期間のものを「中期熟成」、3年以上のものを「長期熟成」と分類しています。芋焼酎のラベルに「古酒」と記載したい場合は、瓶詰めする芋焼酎の半分以上、3年以上の長期熟成を行ったものを使わなくてはいけない決まりがあります。熟成期間が長いほど、刺激的な匂いや癖がとれ、丸みのあるやわらかな味わいの芋焼酎が出来上がります。

貯蔵する容器で変わる芋焼酎の味わい

芋焼酎を熟成するとき、どのような容器を使うかで味わいもまた変わってきます。貯蔵容器には、ステンレスタンクや甕壷、木樽などがあり、容器によって中に入っている芋焼酎が影響を受け、独特の風味がつくものもあります。それぞれの容器について解説していきましょう。

ステンレスタンク

ステンレスで出来た大きなタンクで、日本酒やワインを造るときにも使われているものです。何と言っても容量が大きく、ステンレスで出来ていることもあり、中に入っている芋焼酎の風味を損なわないよう、空気に触れないようにして保存することが出来ます。また、低温で熟成することが出来るなど、さまざまな特徴がありますが、かめや壺に比べると熟成のスピードが遅く、まろやかな味わいになるまでに時間がかかる傾向があります。

甕壷

甕壷は古くから芋焼酎の貯蔵をするために使われている容器で、甕壷を使った熟成は昔ながらのものだと言えるでしょう。甕壷は焼き物でできているので、表面に気孔があることから、その気孔を通して芋焼酎が呼吸しながら熟成が進んでいきます。甕壷は昔ながらの容器でもあり、大きさもステンレスタンクのように大きくはないので、少量ずつ熟成して、ブレンドしてから瓶詰めして出荷されます。甕壷熟成の芋焼酎のファンは多く、さつまいものやわらかな香りと、甕壷熟成ならではの旨みや味わいを楽しむことが出来ます。

木樽

ウイスキーやブランデーと同じように、木でできた樽を使って熟成する方法です。主にウイスキーを熟成させたものや、シェリー酒を熟成させた古樽を使うのが一般的で、素材は樫や楢で出来ています。木樽で熟成すると、樽に含まれる成分や香りが芋焼酎に溶け出し、樽の個性がプラスされたものが出来上がります。ただ、木樽熟成をする場合、樽から出る色素が芋焼酎に移り、その色が濃すぎると、酒税法上焼酎として分類されず、スピリッツ扱いになってしまいます。そのため、色が濃くなりすぎないように熟成期間を見定めたり、色が濃すぎてしまった場合は色素だけを抜く濾過を行ったりします。

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黒ぢょか(黒千代香)って知っている?芋焼酎が何倍もおいしく飲むならこれ!

ストレートやロック、水割りなど、さまざまな飲み方で楽しむことの出来る芋焼酎。熱燗にしておいしく飲めるのは、数ある焼酎の中でも芋焼酎がダントツだと言えるでしょう。温めることでさつまいもの香りが強く立ちのぼり、その豊かな風味を存分に感じることが出来る飲み方でもあります。芋焼酎のお膝元である鹿児島県では、芋焼酎を熱燗にするときに「黒ぢょか」という道具を使います。ここでは黒ぢょかについて、また黒ぢょかを使った熱燗の飲み方についてご紹介します。

黒ぢょかってどんな道具?

黒ぢょかは元々「千代香」という漢字表記で、芋焼酎のふるさとである鹿児島県の土瓶のことを言います。土瓶だけでなく、急須や鉄瓶など、お茶を淹れるときに使う道具を表す鹿児島県の方言でもあり、茶道具であることから「茶家」と表記することもあります。鹿児島県で作られる陶磁器というと薩摩焼が有名です。その中でも庶民が使うために焼かれる黒いものを「黒薩摩」と呼びます。日常食器として使われている黒薩摩のちょかのことを、鹿児島の人々は次第に親しみを込めて「黒ぢょか」と呼ぶようになりました。黒ぢょかは厚手で耐熱性が高く、直にお酒を燗付けするのに使いやすいことから、芋焼酎を熱燗にするのに使われるようになりました。薄く平べったい形をしているのが特徴で、蓋と土瓶のつるがついています。もちろん、黒薩摩の酒器は黒ぢょか以外にも、ぐい呑みやお猪口なども作られているため、最近はセットになったものが売られていたりします。雰囲気を楽しむ酒器としても持っているといいかも知れませんね。

黒ぢょかを使った熱燗の作り方

芋焼酎を熱燗にするというと、アルコール度数が高いまま黒ぢょかに入れて火にかけるのかと思う方もいるかも知れません。芋焼酎はアルコール度数が低くても20~25度程度あるので、そのまま熱燗にするのではなく、前もって水を加える「前割り」にしたものを熱燗にするのが一般的な飲み方です。

お湯割りと前割りの熱燗の違いは?

焼酎をあたたかい状態で飲むというと、お湯割りを真っ先に思い出す方が多いのではないでしょうか。お湯割りであれば、わざわざ火にかけて熱燗にする手間も省け、簡単に楽しむことが出来ます。しかし、お湯割りにするにしても、お湯を先、芋焼酎をあとの順番でグラスやカップに入れたほうが香りが強く感じられるなど、芋焼酎の場合、ちょっとした手間がそのおいしさを左右します。芋焼酎の前割りは3日前~前日には作っておき、それを熱燗にするため、少し手間がかかりますが、前割りをすることでまろやかさを増した芋焼酎を、熱燗にして飲むことで、芋焼酎から香り立つさつまいものやさしい香りや、甘みのある味わいがさらに引き立ち、さつまいも由来の特徴や個性を存分に味わうことが出来ます。前割りにする割合も、熱燗にしたときに好みの濃さになるように、いろいろ試して自分流の割合を見つけるのも楽しいのが、芋焼酎の熱燗の良さです。ちょっといい芋焼酎が手に入ったときなど、ぜひ試して欲しい飲み方の1つでもあります。

黒ぢょかを使うことでさらに芋焼酎をおいしく

酎の前割りを温めるとき、黒ぢょかを直火にかけますが、強火だと芋焼酎のアルコール分が飛んでしまい、さらには黒ぢょかが割れてしまう可能性があるため、必ず弱火でじわじわと温めます。桜島がもたらす火山灰の影響を受けた粘土を使って作られる黒ぢょかは、遠赤外線効果があるため、芋焼酎の前割りを入れておくだけでも口当たりがまろやかになります。ゆっくりとあたためることでアルコールの角や刺激的な匂いが取れ、さつまいも由来の味わいが引き出されます。囲炉裏の灰の中で昔はあたためていたそうで、それを冷ました「燗冷まし」を飲むのが昔は一般的だったと言われています。燗冷ましの芋焼酎はさつまいもの甘みやうまみが豊かで、水割りなどで飲むよりおいしかったからだそうです。卓上で使える小型の七輪や火鉢などを使って、黒ぢょかに入った芋焼酎をあたためれば、昔ながらの飲み方を楽しむこともできそうです。

黒ぢょかの扱い方

さて、芋焼酎をおいしく飲むのに、揃えておくとちょっと贅沢な気分になれそうな黒ぢょかですが、扱い方にもちょっとした決まりがあります。先にも書いたように、急激な温度変化に弱いため、中に芋焼酎を入れてあたためるときは弱火であたためることと、洗うときは洗剤を使わずに洗うことです。薩摩焼の黒ぢょかは、表面に無数の細かな気孔があるため、使うほどに芋焼酎が黒ぢょかに染み込み、香りやうまみが移るのです。少しずつさまざまな芋焼酎のもつ、さつまいも由来の香りやうまみが染み込んだ、黒ぢょかで作る熱燗は、他の酒器で飲むよりもおいしさが際立つといいます。その分洗ったあとにきれいな布巾で拭き上げないと、カビなどのもとになるので、しっかりと水分を取るようにしましょう。

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芋焼酎のふるさと「鹿児島県」の人たちは、芋焼酎をどうやって飲んでいる?

芋焼酎が盛んに作られていることでよく知られている鹿児島県は、桜島からの火山灰の影響で、お米を作るのには向かない土地でした。そこで、琉球から伝わってきたさつまいもを育てるようになり、造るお酒の原料もさつまいもを使うようになったことから、自然と芋焼酎が造られて、鹿児島の地に根付いていきました。今でも芋焼酎は、鹿児島県の重要な特産品のひとつとして、全国にその名を知られています。

鹿児島県の人たちは、芋焼酎をどんな飲み方で楽しんでいるの?

さて、鹿児島県を中心に造られる芋焼酎ですが、ご当地ではどのように楽しまれているのでしょうか。飲み方自体は全国どこでもそれほど変わりはありませんが、ちょっとしたコツを覚えるだけで、地元の人達のようにおいしく芋焼酎を楽しむことが出来ます。ここではその飲み方をご紹介します。

ストレート

芋焼酎が持つさつまいも由来の香りや味わい、瓶詰めして出荷されるまでに経てくる、芋焼酎造りのさまざまな条件が生み出す風味など、その芋焼酎本来の香りと味わいをしっかりと楽しめる飲み方です。芋焼酎はアルコール分が高いお酒なので、チェイサーとしてお水を別に用意することも忘れないようにしましょう。薩摩切子などのショットグラスで飲むと雰囲気も高まっていいかも知れませんね。

ロック

東京などの都市部では、比較的ポピュラーな焼酎の飲み方として知られているのがロックかもしれません。氷を入れて飲むだけのシンプルな飲み方ですが、芋焼酎に氷が溶けていくにつれて、さつまいも由来の香りや甘みが感じられ、味わいも変化していくのが楽しい飲み方です。焼酎用に作られたロックグラスなども販売されているので、グラス選びも楽しいと言えるでしょう。

水割り

ウイスキーなどで馴染みのある飲み方ですが、鹿児島では芋焼酎も水割りで味わう人も少なくないといいます。水割りの良いところは、何より自分の好みの濃さで芋焼酎を楽しめることでしょう。氷水を使って芋焼酎を割ることで口当たりがやわらかくなり、さつまいもの持つ甘みや香りを強く感じることが出来ます。よく冷やしたグラスでいただくと一層おいしく感じますよ。

お湯割り

おそらく、芋焼酎の楽しみ方で一番ポピュラーで、鹿児島県の人が最も好む飲み方がお湯割りではないでしょうか。お湯から出る湯気とともに、さつまいもの香ばしい匂いや、やわらかな香りが楽しめるだけでなく、さつまいも由来の甘みや風味が特に引き立つ飲み方だと言えるからです。割り方にもご当地ルールがきちんとあり、それに倣って飲むのがおすすめです。まず、お湯割り用のグラスや陶器のカップなどにお湯を入れ、芋焼酎を注ぐのはあとから。こうすることで香りが引き立ち、風味が増します。お湯と芋焼酎の割合は6対4か7対3が良いとされ、少し濃い目でいただくのがおいしい飲み方です。薩摩焼のそば猪口などを用意して、お湯割りにして楽しむのもいいかも知れませんね。

前割り

前割りは、もともとは黒ぢょかを使って芋焼酎を燗酒にして楽しむときに、用いられる飲み方でした。それが現在では、水割りの1種のような感覚で芋焼酎を味わう方法の1つとなっています。前もって芋焼酎と水を割ったものを瓶に入れ、冷蔵庫で寝かせてからグラスにそのまま注いで飲みますが、黒ぢょかや徳利に入れて燗酒にしてもおいしく楽しむことが出来ます。前割りの魅力は、アルコール分を抑えられることもありますが、水を加えることで口当たりがまろやかになり、さつまいものやさしい甘みや穏やかな香りを感じることが出来ることでしょう。前割りにするときの割合は、芋焼酎と水を5対5で瓶などに入れます。できれば3日以上冷蔵庫で寝かせたほうがよく、5日以上経つと口当たりはさらに丸く、バランスも整った味わいを体感できます。毎日少しずつ飲んで、日々の変化を確認するのも面白いですよ。

炭酸割り

麦焼酎などではおなじみの飲み方である炭酸割りですが、芋焼酎を炭酸水で割って飲むようになったのは、意外かもしれませんが比較的最近のことです。夏の暑い季節に、これも最近流行りの華やかでフルーティなタイプの、新しいさつまいも品種を使った芋焼酎を炭酸割りにすると、さわやかな味わいに気分もリフレッシュします。割り方はとてもシンプル。グラスに氷と芋焼酎を入れ、炭酸水を加えてマドラーで軽く混ぜるだけです。水割りと同様に自分で好みの濃さにして味わうことが出来るので、あまり量を飲めない人にはうってつけかもしれませんね。

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