さつまいもを育てるのは意外と難しい?失敗しないためのさつまいも栽培のコツとは?

さつまいも栽培に挑戦したものの、「つるばかり伸びてイモが育たない」「収穫したら小さくてガッカリ」といった失敗を経験したことはありませんか?実は、さつまいもは育て方のちょっとしたコツを押さえれば、家庭でも立派なさつまいもを収穫できます。成功の鍵となるのは、適切な土選びと植え付け方、そして管理方法。肥沃な土が必ずしも良いわけではなく、むしろ養分が少なめの土が向いています。また、適切な植え付け時期や方法を知ることで、つるぼけを防ぎ、大きく甘いさつまいもを育てることが可能です。この記事では、初心者でも失敗せずに美味しいさつまいもを育てるための具体的なポイントを解説。苗の選び方から植え付け、つる管理、収穫まで、成功のコツをしっかりと押さえていきましょう。

さつまいもの栽培時期は?

さつまいもの栽培は、植え付け時期や育成期間によって収穫のタイミングが異なります。早堀り栽培を行う場合は、5月中旬から6月前半にかけて苗を植え付け、成長を見守りながら10月頃に収穫を迎えます。通常よりも早い時期に収穫することで、小ぶりながらも甘みのあるさつまいもを楽しめるのが特徴です。

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-さつまいも栽培の時期は?

一方、普通栽培では、6月下旬から7月上旬に植え付けを行い、じっくりと育てて11月頃に収穫を迎えます。この方法では生育期間が長くなるため、大きく育ったさつまいもを収穫しやすくなります。いずれの栽培方法でも、適切な時期に植え付けを行い、日々の管理を続けることで、美味しいさつまいもを収穫できるでしょう。

さつまいもの苗の選び方

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-さつまいも苗の選び方

さつまいもの苗は、4月下旬頃からホームセンターや種苗店などで販売が始まります。元気な苗を選ぶことが、健康に育てるための第一歩です。良い苗の特徴としては、まず茎がしっかりと太く、丈夫であることが挙げられます。また、葉の色が濃く鮮やかで、しっかりと厚みがあるものを選ぶと、植え付け後の成長も順調になりやすいです。さらに、節の数が4~5つ程度あり、節間が間延びせず適度に詰まっている苗が理想的です。

 

購入した苗の葉が萎れていた場合は、そのまま植え付けず、事前に水につけておくと回復しやすくなります。バケツや浅めの容器に水を張り、苗の根元をしばらく浸しておくと、水分が行き渡り、葉の張りが戻ることが多いです。このひと手間を加えることで、植え付け後の活着が良くなり、しっかりと根を張りやすくなります。元気な苗を選び、適切な下準備をすることで、育ちの良いさつまいもを収穫しやすくなるでしょう。

さつまいもに適した土・肥料とは?

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-さつまいもに適した土は?

さつまいもを育てる際には、通気性が良く乾燥しやすい土を選ぶことが重要です。一般的に作物を育てる場合は、栄養豊富な土のほうが成長に適していると思われがちですが、さつまいもは例外です。肥沃な土壌では茎や葉が過剰に育ち、肝心のイモが十分に大きくならない「つるぼけ」という現象が起こりやすくなります。そのため、栄養が少なめの痩せた土を使用し、適度に水はけの良い環境を整えることが大切です。

つるぼけを防ぐためには、肥料の使用を極力抑えるか、まったく使わない方法が適しています。特に、窒素分が多い肥料を与えると葉や茎の成長が促進され、さつまいもの発育が妨げられる原因になります。もし肥料を加える場合は、バランスの取れた配合肥料を控えめに使用するか、さつまいもの肥大化を助けて甘みを増す効果がある「草木灰」を活用するとよいでしょう。草木灰にはカリウムが豊富に含まれており、根の発育を促しながら糖度の向上にもつながります。適切な土と肥料の管理を行うことで、甘くて美味しいさつまいもを育てやすくなります。

さつまいもの植え付け方法

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-さつまいもの定植方法

植え付けの10日ほど前になったら、土をしっかりと耕し、幅約50cm、高さ20~30cmほどの畝を作ります。畝に高さをつけるのは、雨が降った際の排水を良くし、土の通気性を高めるためです。水はけの悪い環境では根腐れを起こしやすくなるため、畝の高さを確保することが重要になります。畝を整えたら、雑草の繁殖を防ぎ、地温を上げる効果があるマルチシートをかぶせておきましょう。マルチシートを使用することで、乾燥を防ぎながらも適度な湿度を保ち、発芽しやすい環境を作ることができます。植え付け時には、30cmほどの間隔をあけてマルチシートに穴を開け、10cm程度の植え穴を掘ります。穴を掘る際は、先端のとがった棒や専用の植え付け補助器具を使うと、均一な深さの穴を作りやすくなり、作業がスムーズに進みます。

さつまいもの主な植え付け方法には3種類あり、それぞれ適した環境や特性があります。

  • 水平植え:苗が短い場合や畑が乾燥している場合に適し、広い範囲で養分を吸収しやすい。
  • 斜め植え:比較的細長いさつまいもが数多く育ちやすく、バランスの取れた生育が見込める。
  • 垂直植え:収穫できるさつまいもの数は少ないものの、一つ一つが大きくなりやすい。

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-さつまいも定植中

どの植え方にもメリットがありますが、初心者には管理がしやすく収穫量も安定しやすい斜め植えが向いています。植え付けの際は、切り口に近い2~3節がしっかりと土の中に入るようにし、葉が埋もれないよう注意しましょう。葉まで埋めてしまうと光合成がうまく行えず、苗の成長が遅れてしまうことがあります。また、植え穴が深すぎると地温が上がりにくくなり、発育が遅れる原因になるため、適切な深さで植え付けることが大切です。苗を植えた後は、根がしっかりと張るまでに約2週間かかります。この間に強い風が吹くと、苗が倒れたり、飛ばされたりする危険があります。さらに、植え付け直後は直射日光が強く当たりすぎると苗が弱りやすいため、根が定着するまでは新聞紙などをかぶせて軽く土をのせ、重しをしておくと活着しやすくなります。植え付け後の適切な管理を行うことで、健全に育ち、元気なさつまいもを収穫できる環境を整えられます。

さつまいもの栽培管理ポイント

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-つる返し

さつまいもは成長がゆっくりなため、定植後の1か月間は雑草の管理が重要になります。苗がまだ小さいうちは、土の表面に光が当たりやすく、雑草が発生しやすい環境になりがちです。雑草が繁殖すると、さつまいもが必要とする養分や水分を奪われてしまい、生育が遅れる原因になります。そのため、植え付け後の初期段階では、こまめに草取りを行い、苗が健全に育つように管理しましょう。定植から2か月ほど経つと、つるが伸びて地面を覆うようになります。この時期になると雑草が生えにくくなり、草取りの手間は減りますが、新たな問題として「不定根」が発生しやすくなります。つるが土に密着した状態が続くと、新しい根が発生し、そこに栄養が分散してしまうことで、肝心のイモが十分に育たなくなります。この現象を防ぐために、適切な時期につるを持ち上げてひっくり返し、不要な根を取り除く「つる返し」を行うことが大切です。

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-つる返しは7月~8月

つる返しの作業は、7~8月頃の生育が盛んな時期に実施すると効果的です。無駄な根が成長するのを防ぐだけでなく、日光が土に当たりやすくなることで、地温が上がり、イモの肥大が促進されます。ただし、つるを無理に引っ張ると、傷がついたり、株が弱ってしまう恐れがあるため、慎重に行いましょう。また、さつまいもは基本的に追肥を必要としない作物ですが、生育途中に葉の色が薄くなったり、黄色く変色したりする場合は、肥料が不足している可能性があります。特に7~8月頃に葉の色が悪くなった場合は、適量の追肥を行い、栄養バランスを整えてあげると良いでしょう。ただし、肥料を与えすぎると「つるぼけ」を引き起こし、イモの生育に悪影響を及ぼすため、必要最低限の量を意識することが重要です。

さつまいもの収穫方法

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-さつまいもの収穫方法

植え付けから100~120日ほど経過すると、いよいよ収穫の時期を迎えます。収穫が早すぎるとさつまいもが十分に成長せず、甘みや食感が物足りなくなることがあります。一方で、収穫が遅れすぎると、さつまいもの形が変形しやすくなったり、皮が傷つきやすくなったりするため、適切なタイミングを見極めることが大切です。収穫の目安としては、株元の土を少し掘り、さつまいもの表面を確認します。皮がしっかりとしていてむけにくく、色が濃くなっているようであれば、収穫のサインです。

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-掘り出したさつまいも

収穫を行う際は、さつまいもの品質を保つために、晴れた日を選びましょう。雨が降った後や湿った土壌では、さつまいもに余分な水分が含まれ、保存性が落ちやすくなります。土が乾燥している日を選ぶことで、掘り上げたさつまいもの表面が乾きやすくなり、保存の際に傷みにくくなります。収穫の手順としては、まず株元のつるを刈り取り、作業しやすい状態に整えます。次に、マルチシートを使用している場合は、これを慎重にはがします。その後、スコップやクワを使いながら、さつまいもを傷つけないように慎重に掘り上げていきます。特に、さつまいもの周囲を掘る際は、つるからさつまいもが無理に引き離されないように注意が必要です。力を入れすぎると、さつまいもの表面に傷がつき、保存性が低下してしまうため、慎重に作業を進めましょう。

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-掘り出したさつまいもは半日くらい天日に干す

掘り上げたさつまいもは、すぐに収穫袋に入れるのではなく、土の上に並べて半日程度天日干しをします。こうすることで表面の余分な水分が抜け、保存時の傷みを防ぐことができます。日光に長時間当てると乾燥しすぎてしまうため、皮が軽く乾いたら風通しの良い場所に移して保管するのが理想的です。適切に収穫し、しっかり乾燥させることで、さつまいもをより美味しく、長期間楽しめるようになります。

さつまいもの追熟・貯蔵方法

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-さつまいもの追熟方法

さつまいもは収穫後すぐに食べるよりも、一定期間追熟させることで甘みが増し、より美味しくなります。そのため、適切な方法で貯蔵し、熟成させるのがおすすめです。貯蔵する際は、さつまいもを乾燥させた後に段ボールや木箱にもみ殻を詰め、その中に埋めるようにして保管するとよいでしょう。新聞紙で一つずつ包んでから箱に入れるのも効果的です。これにより湿度を適度に保ち、腐敗や乾燥を防ぎながら長期間保存しやすくなります。適切に保存すれば翌年の春頃まで美味しさを保つことができますが、時間が経つにつれて10~20%程度は消耗してしまうため、早めに食べるのが理想的です。保存する環境として、温度管理も重要なポイントとなります。12~14℃の範囲を維持すると、品質が安定し、さつまいもが適切に熟成されます。10℃以下の低温にさらされると変色や腐敗が起こり、低温障害を引き起こす原因となります。一方で、15℃以上になると発芽しやすくなり、さつまいもの風味や食感に影響を与えてしまいます。

また、さつまいもは収穫後も生きており、呼吸を続けています。そのため、完全に密閉された環境で保存すると二酸化炭素がこもり、腐敗を早める原因となります。箱に入れて保存する場合は、通気性を確保するために空気穴を開けておくのが適切です。風通しの良い冷暗所で保存しながら、適切な温度と湿度を維持することで、さつまいもを長く美味しく楽しむことができます。

まとめ

失敗しないためのさつまいも栽培のコツ-焼き芋イメージ

さつまいもは栽培に手間がかかりにくく、初心者でも育てやすい作物です。さつまいもを上手に育てるには、適切な栽培時期の見極めと、環境に合った管理が重要です。早堀り栽培なら5月中旬~6月前半、普通栽培なら6月下旬~7月上旬に植え付けを行い、それぞれ秋に収穫します。苗選びでは、茎が太く葉に厚みがあり、節間が間延びしていないものを選ぶと生育が安定しやすくなります。育てる土は痩せたものが適しており、過剰な肥料はつるばかり成長してしまう「つるぼけ」の原因となるため、使用を控えるのが基本です。植え付けは、畝を高く作り、マルチシートで保温・保湿をしながら、苗の種類に応じた植え方を選ぶのがポイント。生育期間中は雑草管理や「つる返し」を行い、イモに十分な栄養を行き渡らせます。

収穫のタイミングは、植え付けから100~120日後が目安。掘り上げた後は半日ほど天日干しをして水分を飛ばすことで保存性が向上します。さらに、追熟させることで甘みが増し、より美味しく楽しめます。また、さつまいもを使った料理はおかずからスイーツまで幅広いため、収穫後も様々な料理にして楽しむことができます。ぜひ、今回ご紹介した栽培方法やコツを参考にして、美味しいさつまいもを育ててみてくださいね。