芋焼酎に使われるさつまいもは何が違う?黄金千貫や紫芋の特徴・品種の違いをわかりやすく解説

鹿児島を代表する名産といえば、香り豊かな芋焼酎を思い浮かべる方が多いかもしれません。焼酎の味わいを形づくる主役は、もちろんさつまいも。けれど、そのさつまいもがどんな品種なのか、と問われると意外と知られていないものです。普段の食卓に登場する甘い品種とはまったく異なる芋が使われており、その違いを知るだけで、いつもの一杯がぐっと奥深く感じられます。芋の種類によって香りや甘み、後味まで変化し、銘柄ごとに個性が生まれるのが芋焼酎のおもしろいところです。どんな芋が選ばれているのかを知ると、手に取る銘柄の世界が広がり、味わいの背景にある物語にも自然と心が向いていきます。

今回は、芋焼酎に使われる代表的な品種や、それぞれの特徴、さらに焼酎の種類に込められた魅力をやわらかく整理していきます。いつもの芋焼酎が、少しだけ特別な一杯になるきっかけになればうれしいです。

普段食べるさつまいもと、焼酎に使われるさつまいもは違うの?

普段食べるさつまいもと、焼酎に使われるさつまいもは違うの?

普段の食卓でよく見かけるさつまいもといえば、ベニアズマや鳴門金時のように、落ち着いた紫色の皮が目を引く品種が思い浮かぶかもしれません。焼いたときのほくほく感や、ほどよい甘さが楽しめる定番として親しまれていますよね。

一方、芋焼酎に選ばれるさつまいもは、姿かたちからして少し雰囲気が異なります。皮の色はじゃがいものように白っぽく、身質はさらりとしていながら、でんぷんが豊富にふくまれているのが特徴です。この特徴が、焼酎づくりの工程でしっかりと活かされ、力強い香りや深い味わいへとつながっていきます。

そのなかでも、良質な焼酎が生まれることでよく知られているのが 黄金千貫(こがねせんがん) という品種。黄金という名前のとおり、素朴な見た目の中に確かな力を秘めており、芋本来の香りをいきいきと引き出すことから多くの蔵元に選ばれています。普段食べる甘い系のさつまいもとはまったく違う個性が、芋焼酎ならではの風味を形づくっているのです。

芋焼酎の大半は「黄金千貫」から生まれている

芋焼酎の大半は「黄金千貫」から生まれている

黄金千貫は、見た目がじゃがいもに似た素朴な白い皮を持ち、切り口も淡い乳白色をしているさつまいもです。甘みの強い食用の品種とは印象が大きく異なり、その質感や風味が芋焼酎に深い魅力を添えています。この芋は、農林省九州農業試験場によって生み出された品種で、チモール島由来の芋やアメリカの品種、日本の在来種など、複数の芋を掛け合わせて誕生しました。育てやすさにも優れており、土の中から黄金色を帯びた芋が次々に掘り出される様子が名前の由来になっています。乾燥した暖かい地域では、とくに色合いが黄金色に近づくといわれ、その姿がますます誕生の物語を感じさせます。

芋焼酎と一口にいっても銘柄の幅は広く、それぞれに個性がありますが、その多くに共通して使われているのがこの黄金千貫です。適度に甘みを持ちながらもでんぷん量が豊富で、蒸したときに立ちのぼる香りがやわらかく、焼酎に仕上げると芳醇な香気へと変わるため、多くの蔵元が信頼を寄せています。

黄金千貫が主役として選ばれ続けている背景には、芋そのものが持つ静かな力強さと、焼酎にしたときの豊かな広がりがあります。まさに、芋焼酎の味わいを支える礎ともいえる存在です。

黄金千貫を食べるとどんな味?

焼酎づくりでは欠かせない存在として知られる黄金千貫ですが、ではその芋をそのまま食べた場合はどう感じるのでしょうか。芋焼酎の豊かな香りを引き出す品種と聞くと、食べてもおいしいのでは…と想像する方もいるかもしれません。

実際のところ、黄金千貫はでんぷん量が多く、加熱すると粉をまとったような質感が前に出てきます。ほくほくとした心地よさというよりは、さらりとほどけるような口当たりで、甘さも控えめです。そのため、蒸して裏ごしし、砂糖を加える料理に使えば形にはなるものの、同じ手間をかけるなら別の品種を選んだほうが仕上がりに満足しやすいかもしれません。

また、長期間保存できるタイプではないため、普段の食卓に向くさつまいもとはいえないのだそうです。こうした特徴から、黄金千貫は「食べるための芋」ではなく「焼酎を生み出す芋」として進化してきたことが伺えます。

とはいえ、まったく食べられないわけではありません。収穫期には新鮮な黄金千貫を天ぷらにして楽しむ地域もあり、衣の香ばしさと芋の素朴な風味がやさしく広がる一品に仕上がるそうです。そんな天ぷらをおつまみに、黄金千貫で造られた芋焼酎をゆっくり味わうひとときは、きっと特別な時間になりそうですね。

黄金千貫だけじゃない!芋焼酎に使われるさつまいもの品種

黄金千貫だけじゃない!芋焼酎に使われるさつまいもの品種

芋焼酎と聞くと黄金千貫の存在が広く知られていますが、焼酎に使われるさつまいもは実はそれだけではありません。焼酎専用に育てられている品種だけでも40種類以上にのぼり、白い皮を持つものから、普段食卓で見かける紫色の皮の品種まで幅広く揃っています。多彩なさつまいもがあるからこそ、芋焼酎には銘柄ごとに異なる香りや味わいが生まれるのです。

そのなかでも名前を耳にする機会が多いのは、ジョイホワイト紅さつま金時芋 など。どれも個性豊かで、焼酎の味の方向性を大きく左右する存在です。

とくにジョイホワイトは、これまでの芋焼酎の世界に新しい風を取り入れたいという想いから生まれた、いわば“芋焼酎のためのさつまいも”。従来の品種にはなかった魅力を引き出すために品種改良を重ね、1994年に誕生しました。黄金千貫よりもでんぷん量が多く、フルーティで透明感のある香りが引き立ち、華やかなタイプの芋焼酎を造る際に重宝されています。

さらに、病害虫に強い上に保存性にも優れているため、蔵元にとっては扱いやすく、生産や管理の面でも頼もしい存在です。こうした品種の多様さが、芋焼酎の奥行きのある世界を支えているといえそうです。

芋臭いだけが魅力じゃない?フルーティな吟醸香が広がる芋焼酎

芋臭いだけが魅力じゃない?フルーティな吟醸香が広がる芋焼酎

芋焼酎というと、独特の香りや深いコクがまず思い浮かぶかもしれません。あの“芋らしさ”こそが魅力だと感じる方も多いのですが、近年はそのイメージをやわらかく覆すような、新しいタイプの芋焼酎が続々と登場しています。日本酒で例えるなら「吟醸香」に近い、ふわっと華やかな香りが広がる銘柄が増え、若い世代や女性からの人気も高まっています。

さつまいも特有のクセを抑えたタイプも多く、バナナやマスカット、ライチといった果物を思わせる香りがふんわり立ちのぼる焼酎も珍しくなくなりました。香りの個性が豊かになることで、飲む人の好みに合わせた楽しみ方がしやすくなっているのも魅力です。

そのなかでも、アヤムラサキムラサキマサリ といった紫芋から造られる芋焼酎は、甘い香りが印象的で、華やかさと上品さが共存するタイプが多い傾向にあります。また、アヤコマチハマコマチ といった橙芋系の品種は、花のような香りがふんわりと際立ち、まるでアロマのような余韻を感じられます。

味わいもやさしく、フルーティな甘さがそっと広がる銘柄が多いため、普段芋焼酎を手に取らない人への贈り物にも喜ばれそうです。

さらに、特別な品種「タマアカネ」を原料にした 茜霧島 のように、独自の酵母を組み合わせて造られた焼酎も登場し、まるでフレッシュなフルーツを思わせる香りを楽しめるものも増えています。

飲み方の幅も広がり、お湯割りや水割り、ロックといった定番だけでなく、ソーダ割りやカクテルとして気軽に楽しむ人も増えました。食事に合わせたり、ゆっくりくつろぎたい時間に寄り添わせたりと、自由なスタイルで味わえるのが今の芋焼酎の大きな魅力です。

まとめ

芋焼酎に使われるさつまいもは何が違う?まとめ

芋焼酎に使われるさつまいもは、普段食卓で親しんでいる品種とはまったく異なる顔ぶれが揃っています。黄金千貫のように素朴ででんぷん質の多い芋が主役となり、そのほかにもジョイホワイトや紅さつま、紫芋など、風味や香りの個性を引き出す多彩な品種が焼酎づくりを支えています。品種ごとに香りや甘み、飲み口が変わるため、銘柄によってまったく違った表情を楽しめるのが芋焼酎の奥深さです。

華やかな香りが広がるフルーティなタイプや、ふくよかな芋らしさが味わえる昔ながらのタイプなど、選ぶ楽しみがどんどん広がっています。さつまいもの特徴を知ることで、いつもの芋焼酎がより深く味わえ、気分や食事に合わせた飲み方も自然と広がっていきます。焼酎の背景にある品種の物語に触れながら、自分好みの一杯を見つけてみるのも素敵な時間になりそうです。