芋焼酎は熟成したほうが美味しいの?市場に出回っている芋焼酎のほとんどが熟成を経てから出荷されます!芋焼酎の四段階の熟成期間とは?その美味しさとは?

大半の芋焼酎は熟成を経て出荷される

蒸留酒で熟成をするというと、ウイスキーやブランデーを思い出す人も多いかも知れませんが、実は芋焼酎も、大半のものが熟成の工程を経て出荷されているのをご存知でしょうか。芋焼酎は透明なお酒のイメージがあるので、熟成をしているとは思っていない人が多いかも知れませんね。蒸留したての芋焼酎は、そのまま瓶詰めすることはなく、ほぼすべての焼酎が最低でも1~3ヶ月熟成してから瓶詰めし、出荷されます。芋焼酎は新酒でもおいしく飲めるお酒なのですが、その短い熟成期間がとても大切な工程となっています。なぜ芋焼酎は熟成してから出荷されるのか、ご紹介していきましょう。

熟成することでまろやかになる芋焼酎

蒸留したての芋焼酎は、アルコール分が高いだけでなく、独特の香りが残っています。その香りのことを「ガス臭」や「ムレ臭」などといいますが、それは芋焼酎に含まれている成分によるもので、刺激の強い匂いとクセがあることで、そのまま飲むには飲みづらいものです。そこでまず、アルコール分を整えるために加水をしてから熟成を行うと、1~3ヶ月の間に匂いのもととなる成分が揮発し、ガス臭やムレ臭は消えていきます。熟成して癖のある余分な匂いを飛ばすことで、原料のさつまいもの個性が感じられる、風味豊かな芋焼酎に仕上がるのです。また、蒸留したての焼酎には、匂いの成分の他にも含まれているものがあります。それは「フーゼル油」と呼ばれる油分で、これが空気に触れて酸化すると、ガス臭や油の匂いが生まれ、品質の劣化にも繋がります。そのため、蒸留した芋焼酎をタンクに入れて置いておくと、毎日うっすらと芋焼酎の表面に油の膜ができるため、それを取り除く作業を繰り返します。中には、芋焼酎をタンクに入れてから冷やすことで、フーゼル油を固めて取り除く場合もあり、その方法では1度に全て取り除けるため効率よく次の濾過の工程に移すことが出来ます。タンクなどで熟成し、油を取り除くことでさつまいもの風味がたっぷりと感じられるまろやかな芋焼酎が出来上がります。

4段階ある芋焼酎の熟成期間

芋焼酎の熟成期間には4段階あり、その熟成期間によって風味が変わってきます。先に説明した1~3ヶ月の熟成は「蒸留後熟成」というもので、油を取ることとワンセットになっているものです。さらに6ヶ月まで熟成するものを「初期熟成」、3年未満の熟成期間のものを「中期熟成」、3年以上のものを「長期熟成」と分類しています。芋焼酎のラベルに「古酒」と記載したい場合は、瓶詰めする芋焼酎の半分以上、3年以上の長期熟成を行ったものを使わなくてはいけない決まりがあります。熟成期間が長いほど、刺激的な匂いや癖がとれ、丸みのあるやわらかな味わいの芋焼酎が出来上がります。

貯蔵する容器で変わる芋焼酎の味わい

芋焼酎を熟成するとき、どのような容器を使うかで味わいもまた変わってきます。貯蔵容器には、ステンレスタンクや甕壷、木樽などがあり、容器によって中に入っている芋焼酎が影響を受け、独特の風味がつくものもあります。それぞれの容器について解説していきましょう。

ステンレスタンク

ステンレスで出来た大きなタンクで、日本酒やワインを造るときにも使われているものです。何と言っても容量が大きく、ステンレスで出来ていることもあり、中に入っている芋焼酎の風味を損なわないよう、空気に触れないようにして保存することが出来ます。また、低温で熟成することが出来るなど、さまざまな特徴がありますが、かめや壺に比べると熟成のスピードが遅く、まろやかな味わいになるまでに時間がかかる傾向があります。

甕壷

甕壷は古くから芋焼酎の貯蔵をするために使われている容器で、甕壷を使った熟成は昔ながらのものだと言えるでしょう。甕壷は焼き物でできているので、表面に気孔があることから、その気孔を通して芋焼酎が呼吸しながら熟成が進んでいきます。甕壷は昔ながらの容器でもあり、大きさもステンレスタンクのように大きくはないので、少量ずつ熟成して、ブレンドしてから瓶詰めして出荷されます。甕壷熟成の芋焼酎のファンは多く、さつまいものやわらかな香りと、甕壷熟成ならではの旨みや味わいを楽しむことが出来ます。

木樽

ウイスキーやブランデーと同じように、木でできた樽を使って熟成する方法です。主にウイスキーを熟成させたものや、シェリー酒を熟成させた古樽を使うのが一般的で、素材は樫や楢で出来ています。木樽で熟成すると、樽に含まれる成分や香りが芋焼酎に溶け出し、樽の個性がプラスされたものが出来上がります。ただ、木樽熟成をする場合、樽から出る色素が芋焼酎に移り、その色が濃すぎると、酒税法上焼酎として分類されず、スピリッツ扱いになってしまいます。そのため、色が濃くなりすぎないように熟成期間を見定めたり、色が濃すぎてしまった場合は色素だけを抜く濾過を行ったりします。

いろいろな熟成をした芋焼酎を飲んでみよう!

芋焼酎が原料のさつまいもが持つ個性を発揮するために、行われるのが熟成です。熟成することで口当たりがやわらかくまろやかになり、さつまいもらしい個性的な香りが楽しめるようになります。熟成の方法によっても味が変わるので、いろいろな熟成方法の芋焼酎にトライして、ぜひお気に入りの芋焼酎を見つけてくださいね。