収穫したらすぐ加工!さつまいもは鮮度が命
芋焼酎の原料は、その名前の通りさつまいもが使われています。さつまいもは、麦や米といった他の蒸留酒の原料と違い、水分の多い野菜でもあるので、すぐに加工しないと傷んでしまいます。そのため、さつまいもを収穫してから数日中に蒸し上げるまでの工程を行うのが一般的です。中にはさつまいもを蒸すまでの工程のみを専門に行っている業者もあるほどで、大きな焼酎蔵は収穫したさつまいもの加工を委託している場合もあります。おいしい芋焼酎を造るためには、スピーディーに行わなければいけないさつまいもの加工を、芋焼酎の故郷ではたくさんの人達が行っています。
2次もろみに使うまでのさつまいもの加工の流れ
さて、収穫されたさつまいもはどのような工程を経て2次もろみ造りに加えられるのでしょうか。その流れをご紹介します。
検品
まず最初に、収穫したさつまいもをチェックします。さつまいもにしっぽやひげ根などがなく、傷んだところがないかどうかを目で見て触って確認していきます。病気などで傷んださつまいもが入ってしまうと、もろみが腐敗してしまう可能性があるからです。収穫してから芋焼酎になるまで、常にさつまいもに傷んでいる部分がないかに目を配りながら加工が行われます。
洗浄
また、さつまいもは御存知の通り根菜で、土の中に埋まっているものを掘り出して収穫するため、表面には泥がついています。まず、その泥を洗い流さないと、焼酎を作ることは出来ません。焼酎蔵や加工業者には「ホッパー」というさつまいもの洗浄用の機械があり、ホッパーを使ってきれいになるまでさつまいもを洗います。さつまいもを洗う機械は大きなものから小さなものまであり、焼酎蔵の規模によって大きさもさまざまです。きれいに洗い終わって、ベルトコンベアに乗って出てきたものを、ここでもざっくりとチェックします。傷んだものが見つかったら取り除いて次の工程へと進みます。
選別・芋切り
ホッパーにかけてきれいになったさつまいもを、さらに人の目で確認しながら選別し、両端を切り落とし、大きなものは適当な大きさに切ります。実はこの作業は、すべて手作業で行うため非常に人手がかかり、何十人ものスタッフが一斉に取り掛かる様子は、まさに文字通りの人海戦術と言えるものです。芋焼酎の一升瓶が1本出来るには、2キロのさつまいもが必要になります。そのため、傷みやすいさつまいもを何百トンも手作業で確認しながら切っていき、それを数日中にすべて終わらせなければいけないので、とても大変な作業でもあるのです。選別や芋切りを迅速に行うには、熟練のスタッフが必要でもあり、この時期の焼酎蔵はそうした多くの人々の活気に満ちています。
蒸す
さて、たくさんの人の手で確認され、切られたさつまいもは、次に蒸す工程へと移っていきます。何百トンも蒸すには、一度に大量に蒸し器に入れてもきちんと火が通らないため、250キロほどの量が入る金属製の蒸しかごにまずさつまいもを入れていきます。芋切りがおわったさつまいもがベルトコンベアで流れてきたものを蒸しかごに入れたら、その蒸しかごを重ねてフォークリフトで運び、大きな蒸し器へと入れます。かごとかごの間には隙間があり、蒸気や熱が通るようになっています。火のとおり具合などの蒸し上がりの状態は、2次もろみの仕込みに影響するので、きちんと温度管理をしながら、時間を測って蒸し上げます。大きな蒸し器にはセンサーがついているものなどもあり、蒸しかご1つごとに温度などがモニターで確認できるようになっています。
さつまいもを冷ます
蒸し上がったさつまいもはそのまま米麹と合わせるわけではなく、きちんと冷ましてからでないと使うことが出来ません。なぜなら温度が高すぎると麹菌や酵母が死んでしまうため、蒸し器でアツアツになったさつまいもの温度をある程度まで冷まさないと使えないのです。蒸し器から出してきた、重ねてある蒸しかごに大きな扇風機を回して風を送り、2時間ほどかけてさつまいもを冷やします。さつまいもが冷めたら米麹と水とともに合わせて2次もろみの仕込みに入りますが、大きなメーカーは、このあとさつまいもを急速冷凍して保管し、1年を通して芋焼酎が仕込めるようにするところもあります。
多くの人の手を経て造られるおいしい芋焼酎
このように、さつまいもを掘り上げてから2次もろみの仕込みに移るまでの間、非常に多くの人の手を経て、芋焼酎は造られます。特に選別や芋切りといった作業は、多くの人が関わることなしには出来ない作業でもあります。そうした人たちが「おいしい焼酎になりますように」と願いながら、丹精を込めて大変な作業をすることで、私たちはさつまいものおいしさが詰まった芋焼酎を楽しむことが出来るのです。芋焼酎造りに関わる人たちに感謝しながら、おいしく芋焼酎を頂きたいですね。