芋焼酎の作り方とは?麹(こうじ)や蒸留の違いで味が変わる!製造工程を徹底解説

独特の甘い香りと、深いコクで多くのファンを魅了する「芋焼酎」。 居酒屋でロックやお湯割りを注文する際、「これはどうやって作られているんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?

実は、芋焼酎は「世界でも類を見ないほど高度な技術」で作られているお酒です。 デリケートな生のさつまいもを使い、南国の暑い気候の中で腐らせずに発酵させる先人の知恵。そして、蒸留方法ひとつで味わいを激変させる職人の技。

今回は、知れば知るほど奥が深い「芋焼酎の作り方(製造工程)」について、さつまいものプロである五島商店佐藤の芋屋が徹底解説します。 「黒麹」「常圧蒸留」といったラベルの用語の意味が分かれば、明日からの晩酌がもっと美味しくなるはずです。

芋焼酎ができるまでの全工程フロー

まず、芋焼酎造りの全体像を把握しましょう。 芋焼酎は、収穫したさつまいもをすぐに仕込む必要があるため、スピード感が命の酒造りです。

  1. 原料処理(芋の選別・洗浄・蒸し)
  2. 製麹(せいきく・麹造り)
  3. 一次仕込み(酒母造り)
  4. 二次仕込み(芋投入・もろみ造り)
  5. 蒸留(アルコール抽出)
  6. 貯蔵・熟成
  7. 割り水・瓶詰め

一般的に、これらの工程を経て、私たちの手元に届くまでには数ヶ月から数年の歳月がかかります。 それでは、各工程の秘密を詳しく見ていきましょう。

工程① 原料処理と麹(こうじ)造り

原料処理と麹(こうじ)造り

美味しい焼酎造りは、良いさつまいもと、元気な「麹(こうじ)」を育てることから始まります。

さつまいもの選別と洗浄

芋焼酎のメイン原料となるさつまいも(黄金千貫やジョイホワイト、安納芋など)は、鮮度が非常に重要です。収穫した芋は傷みやすいため、すぐに蔵へと運ばれます。 土をきれいに洗い落とし、手作業で両端(ヘタ)や傷んだ部分を切り落とします。この丁寧なトリミングが、雑味のないクリアな焼酎を生む秘訣です。

焼酎の土台「麹(こうじ)」の役割

焼酎造りの最初のステップは、「米(または芋)」に「麹菌」を振りかけて繁殖させる「製麹(せいきく)」です。 なぜ、いきなり芋を発酵させないのでしょうか?

それは、さつまいものデンプンを「糖」に変えるためです。 アルコール発酵を行う「酵母」は、糖分しか食べられません。しかし、米や芋の成分はデンプンです。そこで、麹菌が出す酵素の力でデンプンを糖に分解(糖化)させる必要があるのです。

黒麹・白麹・黄麹の違い

この時使う「麹菌」の種類によって、焼酎の味わいが大きく変わります。

  • 黒麹(くろこうじ): どっしりとしたコクとキレ、強い芋の香りが特徴。クエン酸を多く出すため、雑菌の繁殖を防ぐ力が強く、南国の酒造りに適しています。
  • 白麹(しろこうじ): 黒麹の変異株から生まれた菌。穏やかでマイルド、すっきりとした優しい味わいになります。現在の焼酎の主流です。
  • 黄麹(きこうじ): 本来は日本酒用。フルーティーで華やかな香りが特徴ですが、温度管理が難しいため、高度な技術が必要です。

工程② 一次仕込みと二次仕込み(並行複発酵)

麹ができたら、いよいよ発酵の工程「仕込み」に入ります。焼酎造りの最大の特徴は、仕込みを2回に分ける「二次仕込み法」です。

一次仕込み:最強の酵母軍団を育てる

まずは、できた「米麹」に水と「酵母」を加えて、約1週間発酵させます。これを「一次仕込み」と呼びます。 ここで造られるのは「酒母(しゅぼ)」と呼ばれる、いわば酵母の培養液です。 麹菌が出すクエン酸によって酸性に保たれたタンクの中で、アルコール発酵を行う酵母を大量に増殖させます。腐敗を防ぎながら、元気な酵母を育てる重要な期間です。

二次仕込み:主役のさつまいも投入

酵母が十分に育った酒母の中に、蒸して破砕した「主原料のさつまいも」と水を投入します。これが「二次仕込み」です。 ここから約10日〜2週間かけて、さつまいものデンプンが糖に変わり、その糖を酵母が食べてアルコールに変えるという反応が一気に進みます。

このタンクの中では、

  1. 糖化(デンプン→糖)
  2. 発酵(糖→アルコール) という2つの反応が同時に行われています。これを「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼び、世界的に見ても非常に珍しい、日本の酒造り特有の高度な醸造技術です。

なぜ「もろみ」は腐らないのか?

さつまいもは腐りやすい食材ですが、もろみ(発酵中の液体)の中で腐らないのはなぜでしょうか? それは、一次仕込みで麹菌が作った「クエン酸」のおかげです。酸性の環境下では雑菌が繁殖できないため、高温多湿な九州や五島列島でも、安全にお酒を造ることができるのです。

工程③ 味の方向性を決める「蒸留」

味の方向性を決める「蒸留」

発酵が終わった「もろみ」は、アルコール度数13〜15度程度の、ドロドロとした液体です。これを加熱してアルコール分だけを取り出す作業が「蒸留」です。

水とアルコールでは沸点が違います(水は100℃、アルコールは約78℃)。 この差を利用し、アルコールを先に蒸発させ、その蒸気を冷やして液体に戻すことで、高濃度の焼酎(原酒)が生まれます。

単式蒸留と連続式蒸留の違い

単式蒸留と連続式蒸留の違い

焼酎には「甲類」と「乙類(本格焼酎)」がありますが、これは蒸留方法の違いで分けられます。

  • 連続式蒸留(甲類焼酎): 巨大な蒸留器で何度も蒸留を繰り返す方法。純度が高くクセのないアルコール(約96度)ができます。チューハイのベースなどに使われます。
  • 単式蒸留(乙類焼酎・本格焼酎): 昔ながらのポットスチルで1回だけ蒸留する方法。アルコール以外の香味成分も一緒に抽出されるため、原料(さつまいも)の風味や個性が色濃く残ります。 私たちが普段楽しむ「芋焼酎」のほとんどは、この単式蒸留で造られる本格焼酎です。

さらに、単式蒸留には「気圧」の違いによる2つの手法があり、これが味の決め手となります。

伝統の「常圧蒸留」:芋の個性をダイレクトに

古くから行われている、通常の大気圧の下で蒸留する方法です。 90℃〜100℃という高い温度でもろみが沸騰するため、多くの成分が蒸気に含まれます。

  • 味の特徴: 原料の風味、旨味、雑味を含めた複雑な成分が抽出されます。 「芋臭い」「コクがある」「飲みごたえがある」と言われる、昔ながらのどっしりとした芋焼酎になります。お湯割りにすると香りが立ち、最高に美味しいタイプです。

現代の「減圧蒸留」:すっきりクリアな飲み口

1970年代以降に普及した、蒸留器の中の空気を抜いて真空に近い状態にする方法です。 気圧が下がると沸点も下がるため(富士山の頂上でお湯が早く沸くのと同じ原理)、40℃〜50℃という低い温度でアルコールが沸騰します。

  • 味の特徴: 沸点が低いため、雑味や重たい成分が蒸発せず、クリアな成分だけが抽出されます。「華やか」「フルーティー」「すっきりして飲みやすい」焼酎になります。ロックやソーダ割りに合う、現代的な味わいです。

工程④ 熟成・割り水・瓶詰め

蒸留したての焼酎(原酒)は、アルコール度数が37〜40度前後あり、ガス臭や刺激的な味が残っています。 これをタンクや甕(かめ)、樽などで最低でも数ヶ月、長ければ数年間寝かせることで、ガスを抜き、成分を安定させます。これを「熟成」と言います。

熟成によって角が取れ、まろやかになった原酒に、仕込み水などを加えてアルコール度数を調整(通常25度や20度)する「割り水」を行い、ようやく瓶詰めされて出荷されます。

芋焼酎の「新酒」とは?

通常は熟成させますが、秋に収穫・蒸留した焼酎を、年内にすぐ出荷する「新酒(ヌーヴォー)」もあります。 新酒ならではの、できたて荒々しい香りと、濃厚な芋の風味は、この時期だけの楽しみです。

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五島列島の芋焼酎造り「島の風土を醸す」

長崎県・五島列島も、独自の芋焼酎文化を持つ地域です。 五島列島酒造などの蔵元では、島特有のミネラル豊富な赤土で育った「五島産さつまいも(黄金千貫、紅はるか、安納芋)」を100%使用し、島内の湧き水で仕込んでいます。

五島の芋焼酎の特徴は、なんといっても「豊かな甘みとキレ」。 潮風を受けて育ったさつまいもは、糖度が高く、ミネラルを含んでいます。それを丁寧に醸し、蒸留することで、魚料理にも肉料理にも合う、島ならではの味わいが生まれます。

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まとめ:作り方を知れば、芋焼酎はもっと旨くなる

作り方を知れば、芋焼酎はもっと旨くなる

芋焼酎の作り方、いかがでしたでしょうか。 たった一杯の焼酎の中には、農家が育てたさつまいもの命、麹菌と酵母の働き、そして杜氏(とうじ)の蒸留技術が凝縮されています。

  • 黒麹か白麹か(コクか、すっきりか)
  • 常圧か減圧か(芋らしいか、フルーティーか)

次に焼酎を選ぶときは、ぜひラベルの裏側を見て、その背景にある「作り方」に想いを馳せてみてください。きっと、いつもの一杯がさらに味わい深く感じられるはずです。