芋焼酎の個性は「さつまいも」が9割?
「芋焼酎」と聞いて、どんな味を思い浮かべますか? かつては「独特の臭みがある」「おじさんの飲み物」といったイメージを持たれることもありましたが、それはもう過去の話。現在は、「まるでライチのような香り」「マスカットのような爽やかさ」「焼き芋そのままの甘み」など、驚くほど多様な芋焼酎が登場し、第4次焼酎ブームとも言われる盛り上がりを見せています。
この劇的な進化の鍵を握っているのが、原料となる「さつまいもの品種」です。 ワインが「ブドウの品種(カベルネやシャルドネなど)」で味が決まるように、芋焼酎も「さつまいもの品種」によって、その味わいや香りが大きく変化します。
その数はなんと40種類以上。 この記事では、芋焼酎の原料となるさつまいもの品種ごとの特徴を紐解きながら、あなた好みの1本を見つけるためのヒントをご紹介します。五島列島で作られる希少な焼酎の話も交えながら、奥深い芋焼酎の世界へご案内しましょう。
芋焼酎の王道!まずは押さえたい定番品種
まずは、芋焼酎の歴史を支えてきた、いわゆる「ザ・芋焼酎」とも言える王道の品種から見ていきましょう。
黄金千貫(コガネセンガン):不動のセンター

芋焼酎を語る上で絶対に外せない、最もメジャーな品種が「黄金千貫(コガネセンガン)」です。 1966年に生まれたこの品種は、皮が黄金色(白っぽい黄色)で、中は白いのが特徴。「1株から千貫(約3.75トン)もとれるほど豊作になる」という願いを込めて名付けられました。
- 味わいの特徴: ふんわりとした優しい芋の香りと、シャープなキレの良さが同居しています。 でんぷんの粒子が細かいため、発酵させると非常にバランスの良い、食事に合う焼酎になります。
- おすすめの飲み方: お湯割りにすると、ほっこりとした芋の甘い香りが立ち上り、黄金千貫の良さを最大限に感じられます。
食用としても美味しく、収穫期の鹿児島や五島列島では、黄金千貫の天ぷらが食卓に並ぶこともあります。
ジョイホワイト:焼酎のために生まれたサラブレッド

「芋焼酎独特の臭みが苦手…」という方のイメージを覆したのが、1994年に登場した「ジョイホワイト」です。 その名の通り、皮も中身も真っ白。食用には向かないほど甘みが少ないのですが、焼酎にするとその真価を発揮します。
- 味わいの特徴: 柑橘系や洋梨を思わせる、非常にフルーティーで爽やかな香りが特徴です。 芋っぽさが少なく、クリアで洗練された味わいになるため、焼酎初心者や女性にも大人気です。
- おすすめの飲み方: ソーダ割り(炭酸割り)やロックで、キリッとした清涼感を楽しむのがおすすめです。
紅あずま:食用ならではの「ほっこり感」

スーパーの焼き芋コーナーでもおなじみの「紅あずま」。関東を中心に広く栽培されている、皮が赤紫色で中が黄色い、いわゆる「普通のさつまいも」です。 食用として美味しいお芋は、焼酎にしてもやはり美味。特に南九州や五島などの温かい地域で作られた紅あずまは、デンプン質もしっかりしており、良質な焼酎になります。
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味わいの特徴: 焼き芋を食べた時のような、素朴で厚みのある甘みとコクが感じられます。 黄金千貫よりも「芋の甘み」をしっかり感じたい方に向いています。
トレンド最前線!「蜜芋」&「香り系」品種
近年、芋焼酎業界で最も注目されているのが、「甘い蜜芋系」と「華やかな香り系」の品種です。これらは従来の焼酎の常識を次々と塗り替えています。
安納芋(アンノウイモ):濃厚な甘みの極致

第4次焼き芋ブームの火付け役、種子島特産の「安納芋」。 ねっとりとした食感と、溢れ出る蜜のような甘さは、焼酎の原料としても超一級品です。以前は栽培地域の制限がありましたが、現在は五島列島など各地で栽培され、そのポテンシャルを活かしたプレミアムな焼酎が作られています。
- 味わいの特徴: とにかく濃厚で、クリーミー。 口に含んだ瞬間に広がる甘みと、余韻の長さは他の品種と一線を画します。コクのある「濃醇(のうじゅん)」なタイプに仕上がります。
- 五島列島との関係: 五島列島酒造が手がける「五島芋」など、島特有のミネラル豊富な土壌で育った安納芋を使った焼酎は、通常の安納芋焼酎よりもさらに塩気と甘みのバランスが良いと評判です。
紅はるか・シルクスイート:次世代の甘味系エース
安納芋に続いて登場した「紅はるか」や「シルクスイート」も、焼酎蔵がこぞって採用している人気品種です。 これらは高い糖度を持ちながらも、後味は上品。焼酎にすると「蜜のような甘い香り」と「すっきりとした飲み口」の両立が可能になります。
特に、収穫後に一定期間貯蔵して糖度を高めた「熟成芋」や、一度焼き芋にしてから仕込む「焼き芋焼酎」の原料として使われることが多く、スイーツのような味わいを楽しめます。
綾紫(アヤムラサキ)・ムラサキマサリ:ワインのようなポリフェノール系

「赤霧島」などで一躍有名になったのが、中身まで鮮やかな紫色をした「紫芋」系の品種です。 アントシアニン(ポリフェノール)を豊富に含んでおり、焼酎のもろみも鮮やかな赤紫色になります。
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味わいの特徴: ヨーグルトや赤ワインを思わせる、独特の華やかな香りが特徴です。 味わいは意外にもスッキリしており、脂っこい料理の口直しにも最適。 「綾紫」を使うと、ライラックの花のような香水のような香りが楽しめます。
タマアカネ・ハマコマチ:紅茶やトロピカルフルーツの衝撃
今、最も新しいトレンドが「オレンジ芋(βカロテン系)」と呼ばれる品種群です。 「タマアカネ(玉茜)」や「ハマコマチ」などが代表格で、中身が鮮やかなオレンジ色(人参色)をしています。
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味わいの特徴: これまでの芋焼酎にはなかった、「紅茶(アールグレイ)」「南国のトロピカルフルーツ」「金木犀の花」のような爆発的な香りを放ちます。 「これが焼酎!?」と驚くような、香水のような華やかさがあり、ソーダ割りにするとカクテルのように楽しめます。若者や海外の方に爆発的にヒットしているのがこのタイプです。
品種だけじゃない!味を決める「麹(こうじ)」の魔法
品種選びと同じくらい重要なのが、発酵に使われる「麹(こうじ)」の種類です。 ラベルに「黒麹仕込み」や「白麹」と書かれているのを見たことがありませんか?
| 麹の種類 | 特徴 | 味わいの傾向 |
|---|---|---|
| 黒麹 | どっしりとしていて、力強さがあります。 | 芋の個性が際立ち、コクと甘みが強い、昔ながらの味わいです。 |
| 白麹 | すっきりとしており、マイルドな印象です。 | 軽快で飲みやすく、シャープなキレがあります。食事に合わせやすいタイプです。 |
| 黄麹 | フルーティーで、華やかな香りが出やすいのが特徴です。 | 本来は日本酒用の麹で、吟醸酒のような果実香が出ますが、製造が難しいとされています。 |
例えば、「黄金千貫×黒麹」なら王道のガツンと系、「安納芋×白麹」なら甘いけれど後味スッキリ系、「ジョイホワイト×黄麹」なら白ワインのような系、といった掛け合わせで無限の味が生まれます。
五島列島は「知る人ぞ知る」芋焼酎の聖地
私たち五島商店佐藤の芋屋がある長崎県・五島列島も、実は焼酎造りが盛んな地域です。 五島列島は、四方を海に囲まれたミネラル豊富な赤土の大地を持ち、さつまいもの栽培に最適な環境です。
島内の酒造メーカー(五島列島酒造など)では、島で育った「紅はるか」や「黄金千貫」を使い、手作業で丁寧に選別して仕込んだ焼酎が作られています。 五島の芋焼酎の特徴は、潮風を受けて育った芋ならではの「甘みの中に感じる微かな塩味(ミネラル感)」。これが魚介料理との相性が抜群なのです。
もし「五島芋」という名前の焼酎を見かけたら、ぜひ手にとってみてください。島の風土が詰まった、優しい味がしますよ。
初心者におすすめ!タイプ別・美味しい飲み方チャート

最後に、品種の個性に合わせたおすすめの飲み方をご紹介します。
香り系(タマアカネ、ハマコマチ、ライチ系)
- おすすめ:ソーダ割り(強炭酸)
- 炭酸の泡と一緒に華やかな香りが弾け、クラフトジンのような感覚で楽しめます。レモンを絞っても◎。
甘味系(安納芋、紅はるか、焼き芋焼酎)
- おすすめ:ロック または バニラアイスがけ
- 氷が溶けるにつれて変化する甘みを楽しんでください。バニラアイスにかけると大人のデザートになります。
王道系(黄金千貫、紅あずま)
- おすすめ:お湯割り(ロクヨン)
- 焼酎6:お湯4の割合で。温めることで芋のホクホクとした香りが立ち、身も心も温まります。
まとめ:品種を知れば、芋焼酎はもっと美味しい
芋焼酎は、原料である「さつまいも」の個性がダイレクトに伝わるお酒です。
- 王道の味を知りたいなら「黄金千貫」
- スッキリ飲みたいなら「ジョイホワイト」
- 濃厚な甘みに溺れたいなら「安納芋・紅はるか」
- 新しい香りを体験したいなら「タマアカネ・紫芋」
次に居酒屋や酒屋さんに行ったときは、ぜひボトルの裏ラベルを見て、使われている品種をチェックしてみてください。「この品種だから、こんな味がするんだ!」という発見があれば、芋焼酎ライフが今の何倍も楽しくなるはずです。
五島商店佐藤の芋屋では、焼酎の原料としても最高のパフォーマンスを発揮する、こだわりの有機さつまいもを皆様にお届けしています。








