芋焼酎と麹の話。さつまいもを使った芋焼酎は昔から愛飲されています!芋焼酎は麹により変わる!さつまいもに適した麹とは?その美味しさを解説

さつまいもを使ったお酒、「芋焼酎」。日本でも昔から親しまれ、晩酌には欠かせないという人も多いかもしれません。そんな芋焼酎にも欠かせない存在。それが「麹」です。今回はそんな麹の種類とそれによって芋焼酎がどう変わってくるのか、違いを説明していきたいと思います。

そもそも麹ってどんなもの?

お肉を柔らかくしてくれ、調味料としても近年よく耳にする「麹」という言葉。ではその麹とはどんなものか、みなさんは詳しくご存知でしょうか。麹は日本人の食生活に欠かせない、お醤油や味噌、そしてお酒などを造るのに欠かせない菌の一種で、麹が働くことでおいしい調味料やお酒が出来上がります。麹は糸状の菌でカビの一種なのですが、湿度の高い東南アジアや東アジアにしか生息していません。麹菌にもいろいろあるのですが、日本に生息している麹菌は「コウジカビ」という名前で、他の国には生息していないことが確認されており、日本にしかいない「国菌」として認定されています。

実際に麹菌を使うときには。蒸したお米や麦、大豆などに麹菌を付着させて、麹菌が好み、育ちやすい温度や湿度を保って培養して使います。

そのため、麹にはいろいろな種類があります。米に麹菌をつければ「米麹」、麦につければ「麦麹」、大豆につければ「豆麹」と言った具合に名前が変わります。麹菌はタンパク質を分解するプロテアーゼという酵素や、でんぷんを分解するアミラーゼという酵素など、たくさんの酵素を生み出します。そうした酵素が働くことで、タンパク質がうまみに変わったり、でんぷんが糖分に変わったりするのです。

これがさまざまな日本の食品やお酒にとって、欠かせないものになっているのです。芋焼酎でいうと、さつまいもの豊富なでんぷんを分解して、アルコールのもととなる糖分に変えるためのとても大切な役割を担っているのです。

芋焼酎に使う麹の種類

芋焼酎を造るときにも麹が使われます。芋焼酎のもととなる「もろみ」を造るとき、まず最初に米麹を作ります。米麹が出来たら最初は水と酵母だけで「酒母(もろみを発酵させる酵母を大量に培養したもの)」を造る「一次仕込み」を行い、その後、蒸したさつまいもを加えて「二次仕込み」を行います。

二次仕込みはさつまいもに含まれているでんぷんを麹に含まれている酵素が糖分に変え、その糖分を酵母が食べることでアルコールが生まれます。仕込みをするとき、芋焼酎に使われる麹には3つの種類があります。

それぞれ色の名前がついていて「黒麹」「白麹」「黄麹」と呼ばれています。麹菌の胞子の色からこの名前がついているのですが、芋焼酎に使うと、それぞれ違った個性の芋焼酎になるのです。

どっしりした呑み口になる「黒麹」

黒麹はとても古い歴史のある麹で、昔の芋焼酎は全て黒麹で造られていたと言われるほど、芋焼酎とは切っても切れない縁がある麹です。黒麹は沖縄が発祥の地と言われ、麹菌の色も文字通り真っ黒で、作業中に素手で触っていると、手が真っ黒になってしまうほどです。

麹菌の中ではクエン酸を多く含む菌なので、雑菌を防ぐ効果が非常に高いことから、九州や沖縄といった南の地域でのお酒造りには欠かせないものになっています。

とくに芋焼酎の場合、水分の多いさつまいもを使っているので、もろみを作っている最中に腐敗せずに済むのは、黒麹を選ぶとても大きな理由となっています。黒麹を使った芋焼酎は、ずっしりとした重厚感のある味わいになるといわれ、さつまいもの力強く濃厚な味わいが感じられる焼酎が生まれます。

やさしい口当たりの「白麹」

白麹は黒麹を使っている中で、突然変異で生まれた麹菌です。さつまいもの個性をそのまま活かせるよう、味わいにクセがなく、製麹しやすい麹菌はないものかと研究を続けるうち、大正時代に九州地方で発見されたのだといいます。

白麹は黒麹と違って、真っ白で布に色がついたりしないため、取り扱いがしやすいのが特徴で、お酒にすると香りや味わいが軽やかになるのだといいいます。白麹で作った芋焼酎はすっきりとした味わいと、さつまいものやさしい香りや、まろやかな口当たりになるのが特徴です。

黒麹のようなさつまいもの力強さが出るわけではないものの、しっかりとさつまいもの香りや味わいは残ることから、あまり芋焼酎を飲まない人や初心者向けの、飲む人を選ばないタイプの焼酎になるといえます。

果物のような香りが心地よい「黄麹」

黄麹はもともと醤油や味噌、日本酒を造るために使われていた麹菌です。歴史的にも一番古く、もともとは芋焼酎も明治時代までは黄麹を使って造られていました。なぜ黄麹が芋焼酎を造るときに、黒麹に取って代わられたのかといえば、やはり黒麹が豊富に含むクエン酸にその理由があるといえるでしょう。気温や湿度の高い環境では、さつまいもを加えたもろみを発酵させても、雑菌が少しでも入ってしまえば腐敗につながってしまいます。

クエン酸の強い抗菌作用は、芋焼酎の産地である鹿児島などではとても有効なものだったのです。

そのため、甕壷(かめつぼ(焼酎を作るツボ))を使って昔ながらの造り方をする場合は、黒麹のほうが管理がしやすく、傷むことがないのです。しかし、日本酒の吟醸酒にあるような、バナナやメロンなどのフルーティな香りを生むのが黄麹の良いところでもあります。

黒麹主体になった芋焼酎はどっしりと重厚感があるものでしたが、黄麹を使えば、さつまいもを使ったものとは思えないほど、呑み口もスッキリと軽やかで、あっさりとした味わいの焼酎を造ることが出来ます。現在は昔と違い、焼酎蔵も最新の設備を導入し、温度管理や衛生管理を行っているので、クエン酸が少ない黄麹でも、おいしい芋焼酎を腐敗させることなく造ることが出来るようになりました。フルーティで軽やかな味わいの芋焼酎は、さつまいもの品種によって味わいに差が出る繊細さもあるので、普段あまり焼酎を飲まない人にも勧めやすいものが多いと言えるでしょう。

麹を知ることは好みの芋焼酎を知る鍵になる

それぞれの麹が持つ、特有の味わいや香りを頭に入れておけば、芋焼酎を購入するときの目安にもなります。今日はずっしりしたものをお湯割りで飲みたいな、と思ったら、黒麹を使ったものを選べばいいですし、軽やかでフルーティなものをロックで、と思ったら黄麹のもの、料理に合わせて繊細なやさしい味のものをというときには白麹のものをと、気分で焼酎を選ぶことが出来るようになります。

まとめ

贈り物をするときにも、その人の好みを考えて麹を当てはめると、ぴったりのものが見つかります。3つの麹のことを覚えることは、芋焼酎のおいしさを語る上で欠かせないといえるでしょう。ぜひみなさんも芋焼酎選びにこの知識を活用してみてください!