秋になると当たり前のようにスーパーに並ぶさつまいも。さつまいもが日本へ伝来したルートは?苦戦したさつまいも栽培、現在の日本ではさつまいもの生産量は減少?さつまいもの歴史を調べてみた

今では、秋になると当たり前のようにスーパーなどで手に入れられる「さつまいも」。日本では、焼き芋やスイーツとして楽しまれることが多い野菜ですが、どのような歴史があるのかをご存じない方は多いかもしれません。さつまいもはどこの国で誕生し、どのようなルーツで日本へやってきたのでしょうか?今回はそんな「さつまいもの歴史」について深掘りしていきます。

さつまいもの原産地は熱帯アメリカ

さつまいもの原産地は日本だと思っている方もいるかもしれませんが、実は、メキシコを中心とする熱帯アメリカであると言われています。日本では、冬から秋にかけての寒い時期に楽しまれるさつまいもは、意外にも気温が高い地域が原産国だったのです。

もちろん、初めから今のようなホクホクとした食感で、甘みのあるさつまいもができあがっていたわけではありません。長い時間をかけ、突然変異や他の野生種と交雑などを繰り返し、その中から人為的に選ばれたものが、今のさつまいもとなりました。

さつまいもが日本へ伝来したルートは何種類かある

では熱帯アメリカで生まれたさつまいもは、どのようにして日本へやってきたのでしょうか。

日本への伝来ルートは何種類かあると言われていますが、すでに紀元前1,000年頃には南米から海路ポリネシアへ、16世紀にはインドやフィリピン、1584年には中国に伝来していたようです。日本へは、1597年頃に宮古島へ初めてさつまいもがやってきたと言われています。その後、1605年に琉球で栽培がスタートし、1609年以降には九州地方で栽培されるようになりました。江戸時代の初めから中期になると、救荒作物として注目されたことにより、栽培は日本全国に広がるようになったのです。つまり、日本全国でさつまいもが食べられるようになったのは、今から何百年も前の江戸時代からだった、ということですね。

初めは苦戦したサツマイモの栽培

しかし、海外からやってきたさつまいもは、初めから順調に栽培されたわけではありません。現在のように、外国の方から栽培方法を細かく説明してもらうことは難しい時代ですから、あれこれと方法を試してみるしかありませんでした。

江戸時代の中頃は、栽培方法がまだ全く不明な時期だったため、さつまいもをカットして植え付けていたようです。ところがこの方法ではさつまいもが腐敗してしまうことが多く、せっかく栽培しても、少量しかさつまいもは収穫できませんでした。そこで現在と同じ方法である、苗の移植栽培を試したところ大成功。江戸時代の後期には苗床で苗を作ったり、収穫したさつまいもを貯蔵したりして、収穫量は10アールあたり1,500kgと、現在に近い量となっていたそうです。

今のように農作機械がなく、人手も多くはない江戸時代後期で、現在と同等の量が収穫されていた事実にはおどろきを隠せません。

現在日本ではサツマイモの生産量は減少!しかしながら重要度は高い野菜

2006年時点で、さつまいもの作付面積は世界全体で約900万ヘクタールとなっています。生産量は1億2,400万トンとなっており、中国では1億トン、つまり世界の81%の収穫量を誇っているのです。では日本では現在、どれくらいのさつまいもが収穫されているのでしょうか?

日本でのさつまいもの作付けのピークは、昭和30年頃と言われており、その後は食生活の変化により生産量は低下しました。ピーク時は約700万トンであった収穫量は、現在では100万トン程度と、7分の1程度にとどまっています。だからと言って、さつまいもが好まれなくなったというわけではありません。昔はさつまいもが主食の一つのような位置づけであったとも言え、食材の種類もそう多くはありませんでしたので、必然的に収穫量は多くなっていました。

現在はさつまいもに変わる食材が多くあり、主食ではないため、自然と食べる量が減ったというわけです。さつまいもはそのまま食べるためだけでなく、焼酎やでん粉の原料として、お菓子などの加工食品用として、なくてはならない存在。南九州地方にとっては、地場産業の振興として重要な作物なのです。みなさんも、秋や冬の時期には、たくさんさつまいもを食べていることと思います。さつまいもを使ったスイーツだけでなく、近年は、焼き芋が海外でも大ブームを巻き起こしていることはご存じでしょうか。

このように、昭和30年以降は生産量が減少しているさつまいもですが、これからも日本のみならず、世界で愛され続ける食材であることには変わりません。

さつまいもの食文化は幅広い

熱帯アメリカで生まれたさつまいもは、今では「秋・冬の味覚」として日本全国で親しまれています。さつまいもの食文化は幅広く、王道の焼き芋やねりくり、いきなり団子、かんころ餅、スイートポテト、さつまいもご飯など、数え切れないほどの食べ方がある野菜です。お気に入りの食べ方を見つけ、さつまいもの歴史を振り返りながら食べてみると、これまでよりも深い味わいとなるのではないでしょうか。