ホクホクした食感が美味しいさつまいも。実は地域によって、「甘藷(かんしょ)」、「唐芋(からいも)」など、異なる呼び名があるのを知っていますか?さつまいもに様々な名称がある理由は、さつまいもの味や見た目、歴史からひも解くことができます。今回はさつまいもの様々な名称について、由来を含めてご紹介します。
さつまいもの名称と由来
さつまいもの別名称と由来について見てみましょう。
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朱薯(あかいも)、赤芋、白芋、紫芋
これらの呼び名は、さつまいもの色を表現したものです。この中で、紫いもは皮の色ではなく、中身の色を表しています。沖縄などで栽培されている、ヤムイモ系の紫色をした芋も紫芋と呼ばれますが、さつまいもとは別種です。名前だけを見て購入すると、間違えてしまうこともあるので注意しましょう。
甘藷(かんしょ)、砂糖藷(さとうしょ)、饅頭藷(まんじゅうしょ)
漢字からも分かるように、これらの呼び名はさつまいもの甘みを表しています。甘藷は元々中国での呼び名で、藷は芋を意味します。そこへ甘いという字や砂糖、饅頭など、甘いものを表す言葉を付けていることから、さつまいもが芋の中でも特に甘いということが分かりますね。他の国でもアメリカは「Sweet potato(スウィート・ポテト)」、フランスでは「patate douce(パタートゥ・ドゥース)」、イタリアでは「 patata dolce(パタータ・ドルチェ)」といずれも「甘いジャガイモ」という意味で呼ばれています。
実際、焼き芋の糖度は50度程度、特に甘い品種である紅はるかの糖度は60度以上になることもあります。
あめりか芋、唐芋、琉球芋、長崎芋、九州芋、薩摩芋
さつまいもの原産国を知っていますか?日本で古くからなじみのある野菜であり、名前に「薩摩」と入っているので、日本原産と思う人は少なくありません。しかし、実はさつまいもの原産地は、メキシコを中心とした熱帯アメリカです。サツマイモは、古くは紀元前から栽培されており、15世紀の終わりごろにコロンブスが、生でも食べられて保存がきくこと、ビタミンを多く含み壊血病を防ぐことから、船旅で重宝する野菜としてアメリカからヨーロッパへ持ち帰りました。しかし、涼しいヨーロッパの気候はさつまいもには適さず、栽培は広がりませんでした。その後、温暖なアフリカ、インド、東南アジアの植民地に持ち込まれたことで、世界中で栽培されるようになったのです。
日本には、1600年ごろに中国(唐)から今の沖縄である琉球を経て、薩摩(現在の鹿児島県)に伝わり、盛んに作られるようになりました。そしてその後、八代将軍徳川吉宗の時代に大規模な飢饉、いわゆる「享保の大飢饉」が起きた際、対策を命じられた蘭学者の青木昆陽(あおきこんよう)が、長崎ですでに栽培が広まっていたさつまいもに目を付けて関東地方に広めたと言われています。なお、さつまいもはやせた土地でも育ち、保存もきくことから、この後も度々起きた飢饉や戦争など、食糧難の際に救世主となることがありました。
これらの歴史から、主に伝わった地域である「唐」「琉球」「薩摩」が付いた名称が生まれました。現代では九州地方では「唐芋」、関東では「薩摩芋」と呼ばれることが多いようです。
ちなみに、原産国に由来して「あめりか芋」と呼ばれるものは、日本人が直接アメリカから持ち帰った種類です。この種は現在東京都の港区から南へ約160kmにある新島と式根島に伝わる希少な種であり、白っぽい皮と貯蔵後は粘質になることが特徴です。
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十三里(じゅうさんり)
この呼び名は江戸時代、江戸っ子たちによって付けられました。由来は諸説ありますが、有名なものでは以下が挙げられます。さつまいもの産地であった埼玉県川越市から江戸までが十三里あったから「焼き芋が栗より美味しい」とアピールするため、「栗(九里)より(四里)うまい」→九里(9)+四里(4)=十三里(13)という洒落から
また、栗を好む人からは、栗(九里)より少し劣るということで「八里半」と呼ばれることもあったそうです。現代では十三里、八里半という呼び方はほとんど聞きませんが、落語や歴史小説の中では触れることができます。
埼玉県川越市がさつまいもで有名なのはなぜ?江戸時代に「九里四里(栗より)うまい十三里」と江戸との距離を謳われるほどだった川越のさつまいもの歴史を紐解きます。
さつまいもの総称ではなく品種名で呼ばれることも
さつまいもは日本に伝わって以来、様々な品種が生み出されました。最近ではスーパーなどで販売される際、さつまいもという総称ではなく、「紅はるか」「安納芋」「シルクスウィート」など、品種名が記載されるケースも増えてきています。
主なサツマイモの品種
- 紅はるか
- 紅さつま
- 紅あずま
- 安納芋
- シルクスウィート
- 鳴門金時
- パープルスウィートロード
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まとめ
さつまいもには様々な名称があり、地域や世代によって呼び方が異なる場合があります。ぜひ、家族や友人にさつまいもをどう呼んでいたのか聞いてみてください。呼び方によって出身地が分かったり意外な呼名を知ったりと、きっと会話が弾むでしょう。