【さつまいもの別の言い方】唐芋・甘藷・十三里…地域や歴史で変わる呼び名の由来を徹底解説!

秋の味覚の代表格であり、ホクホクとした食感と優しい甘さが魅力の「さつまいも」。 スーパーやコンビニのスイーツコーナーで見かけない日はないほど身近な野菜ですが、実は「地域や時代によって呼び名が全く違う」という面白い特徴を持っています。

「甘藷(かんしょ)って何のこと?」 「九州ではサツマイモと言わないって本当?」 「十三里(じゅうさんり)ってどういう意味?」

そんな疑問を持ったことはありませんか? さつまいもの呼び名を紐解くと、この野菜がどのように海を渡って日本へやってきたのか、そして先人たちがどれほどこの「甘い芋」を愛してきたのか、その歴史と文化が見えてきます。

今回は、知れば誰かに話したくなる「さつまいもの別の言い方・別名」について、その由来や豆知識を五島のさつまいも農家が徹底解説します。

歴史とルートで変わる!さつまいもの「呼び名」の由来

歴史とルートで変わる!さつまいもの「呼び名」の由来

さつまいもは、その名の通り「薩摩(鹿児島)」から来た芋ですが、そこに至るまでの壮大な旅路が、そのまま名前に反映されています。

1. さつまいも(薩摩芋)

現在、日本で最も一般的な呼び名です。 江戸時代、薩摩藩(現在の鹿児島県)から日本各地へ広まったことに由来します。 特に、江戸幕府の命を受けた蘭学者・青木昆陽(あおきこんよう)が、飢饉対策として関東地方での栽培を普及させた際、「薩摩から来た芋」としてこの名前が定着しました。

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2. 唐芋(からいも・とういも)

主に関西、四国、そして九州地方で使われる呼び名です。 さつまいもは、1600年頃に中国(当時は「唐」)から琉球(沖縄)や長崎、薩摩へと伝わりました。「唐から伝わった芋」という意味で「唐芋(からいも)」と呼ばれます。

地域によっては里芋を「親芋・子芋」と呼ぶのに対し、外来の芋であるさつまいもを「唐芋」と区別したとも言われています。

3. 琉球芋(りゅうきゅういも)

薩摩(鹿児島)では、この芋が琉球(沖縄)から伝わったため、「琉球芋」と呼ぶことがありました。 伝言ゲームのように、「唐(中国)」→「琉球(沖縄)」→「薩摩(鹿児島)」→「江戸(東京)」と伝わる過程で、一つ前の産地の名前が付けられていったのです。

4. 甘藷(かんしょ)

これは植物学上の和名であり、少し硬い表現として使われます。 「藷(しょ)」は芋を意味する漢字です。中国ではさつまいものことを「甘藷(かんしょ)」と呼んでおり、それがそのまま日本でも学術的な名称として採用されました。 「甘い芋」という直球の意味ですが、じゃがいも(馬鈴薯)と区別する際などに使われます。 焼酎のラベルや、農業関係の書類では今でもよく目にする言葉です。

江戸っ子の洒落がきいた別名「十三里」

江戸っ子の洒落がきいた別名「十三里」

さつまいもの別名の中で、最も風流で粋なのが「十三里(じゅうさんり)」です。 これは江戸時代、焼き芋屋さんが看板に掲げたキャッチコピーのようなものでした。

「栗(九里)より(四里)うまい」

その由来には、江戸っ子ならではの言葉遊び(洒落)が隠されています。

  • 栗(クリ)= 九里
  • より = 四里
  • 9 + 4 = 13(十三)

つまり、「栗(九里)よりも(+四里)、味が良い(十三里)」という意味です。 当時、甘い食べ物が貴重だった時代、栗は高級モンブランのような存在でした。その栗よりも甘くて美味しい焼き芋であることをアピールするために、この名が付けられたのです。

川越から江戸までの距離説

もう一つの説として、名産地である「川越(現在の埼玉県川越市)」から江戸までの距離が、川を通って約十三里(約52km)だったことに由来するという説もあります。 「十三里離れた川越の芋は美味しい」という意味も込められていたのでしょう。

ライバル?「八里半」とは

ちなみに、京都などの上方(関西)では、焼き芋のことを「八里半(はちりはん)」と呼ぶことがありました。 これは「栗(九里)には少し及ばないけれど美味しい」という、謙虚な(あるいは栗への敬意を表した)表現だと言われています。江戸と上方で、焼き芋に対する自信の持ち方が違うのが面白いですね。

見た目や味で表現する呼び方

見た目や味で表現する呼び方

産地や歴史だけでなく、さつまいもの特徴そのものを表した呼び名も存在します。

赤芋・朱薯(あかいも)

さつまいもの皮が鮮やかな赤紫色をしていることからこう呼ばれます。 じゃがいも(白っぽい)や里芋(茶色い)と区別する際、見た目でパッと分かる「赤芋」という呼び方は非常に便利でした。

紫芋(むらさきいも)

紫芋(むらさきいも)

こちらは皮の色ではなく、中身(果肉)が紫色をしている品種の総称です。 ポリフェノール(アントシアニン)を多く含み、鮮やかな紫色をしているため、お菓子の材料や色素として重宝されます。

※注意点: 沖縄などで栽培される「紅芋(ベニイモ)」はヤムイモの一種で、植物学的にはさつまいもとは別種です。しかし、一般的には混同して「紫芋」と呼ばれることもあります。

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饅頭藷(まんじゅうしょ)・砂糖藷(さとうしょ)

これらは、さつまいもの「甘さ」を、当時高級品だった「饅頭」や「砂糖」に例えた呼び名です。 現代の私たちが食べても甘いと感じるさつまいもですが、砂糖が貴重だった時代の人々にとっては、まさに「畑で採れるお菓子」のような衝撃的な甘さだったに違いありません。

世界の言葉でさつまいもは何と言う?

日本だけでなく、世界中で愛されているさつまいも。海外では何と呼ばれているのでしょうか。

英語:Sweet Potato(スウィートポテト)

直訳すると「甘い芋」。日本のスイーツ「スイートポテト」の語源でもありますが、英語圏では野菜そのものを指します。 アメリカでは、水分が多くオレンジ色の果肉を持つ品種を「Yam(ヤム)」と呼ぶこともありますが、植物学上のヤム芋(長芋など)とは別物で、混同されがちです。

フランス語:Patate douce(パタートゥ・ドゥース)

こちらも「甘い芋」という意味です。フランス料理でも、ピューレやスープの材料として使われます。

中国語:地瓜(ディグァ)・紅薯(ホンシュー)

中国では地域によって呼び方が異なりますが、「地瓜」や「紅薯」が一般的です。中国は世界最大のさつまいも生産国であり、焼き芋は冬の定番おやつとして親しまれています。

現代の「呼び名」は品種名が主流に!

ここまで昔ながらの呼び名を紹介してきましたが、現代のスーパーや青果店では、「さつまいも」という総称よりも、「品種名」で呼ばれることが増えてきました。 これは、品種改良が進み、それぞれの芋に強烈な個性やブランド価値が生まれたためです。

代表的な「現代の呼び名(品種)」をご紹介します。

1. 紅はるか(べにはるか)

紅はるか(べにはるか)

今や焼き芋界の絶対王者。「はるかに甘い」ことから名付けられました。 しっとりとした食感と、ジャムのような濃厚な甘みが特徴で、第4次焼き芋ブームの火付け役です。

2. 安納芋(あんのういも)

安納芋

種子島発祥の、ねっとり系さつまいもの代名詞。 焼くとクリームのようにトロトロになり、糖度は40度を超えることも。五島列島でも盛んに栽培されており、ミネラルを含んだ土壌で育つ五島の安納芋は絶品です。

3. シルクスイート

シルクスイート

その名の通り、絹(シルク)のような滑らかな舌触りが特徴。 2012年に登場した比較的新しい品種ですが、上品な甘さと繊維の少なさで一気に人気品種となりました。

4. 紅あずま(べにあずま)

紅あずま

関東地方で長年愛されてきた、ホクホク系の代表格。 「昔ながらの焼き芋」といえばこの味。栗のような食感と香ばしさが魅力で、天ぷらや大学芋にも最適です。

5. 鳴門金時(なるときんとき)

鳴門金時

徳島県のブランド芋。 美しい紅色と、上品な甘さ、ホクホクとした食感が特徴で、関西地方では特に高級品として扱われます。

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五島列島ならではの呼び方「かんころ」

私たち五島商店佐藤の芋屋がある長崎県・五島列島には、さつまいもにまつわる独自の方言や文化があります。

「かんころ」とは?

「かんころ」とは?

五島列島では、さつまいもを薄く切って天日で干したものを「かんころ(甘古呂)」と呼びます。 冬の冷たい北風にさらして乾燥させた「かんころ」は、保存食として昔から島民の命を繋いできました。

そして、この「かんころ」をお餅に混ぜ込んでついたものが、五島列島を代表する特産品「かんころ餅」です。 焼いて食べると、さつまいもの素朴な甘さと、お餅のモチモチ感が口いっぱいに広がり、たまらない美味しさです。島の人々にとって、さつまいもは単なる野菜ではなく、ソウルフードである「かんころ」の原料として、特別な愛着を持たれています。

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珍しい別名「あめりか芋(七福)」

最後に、少し珍しい品種由来の呼び名をご紹介します。 東京都の新島や式根島には、「あめりか芋」と呼ばれる白いさつまいもが存在します。 これは明治時代、アメリカから直接持ち帰られた「七福(しちふく)」という品種が島に定着したものです。

一般的に日本へは「中国ルート」で伝わりましたが、これは例外的な「アメリカルート」。 皮が白く、貯蔵すると非常に甘くねっとりするのが特徴で、今では希少な「幻の芋」として知られています。 「あめりか芋」という名前には、原産地へのリスペクトがそのまま表れていますね。

まとめ:呼び名を知れば、さつまいもはもっと美味しい

さつまいもの様々な呼び名についてご紹介しました。

  • 歴史を旅する: 薩摩芋、唐芋、琉球芋
  • 味を自慢する: 甘藷、砂糖藷、十三里
  • 地域に根付く: かんころ(五島)
  • 個性を楽しむ: 紅はるか、安納芋、シルクスイート

名前一つとっても、飢饉を救った救世主としての歴史や、甘いものを愛する人々の想い、そして地域ごとの食文化が詰まっていることが分かります。

次にスーパーでさつまいもを手に取るとき、「これは唐芋の末裔だな」とか「十三里より甘いかな?」なんて思い出してみてください。いつもの焼き芋が、少しだけ味わい深く感じられるかもしれません。

五島商店佐藤の芋屋では、そんな歴史ある「さつまいも」を、五島の自然の中で大切に有機栽培しています。 現代の「品種名」で選ぶなら、ぜひ私たちの自慢の「安納芋」も味わってみてくださいね。