
しっとり系のさつまいもにはさまざまな品種がありますが、中でも「クイックスイート」と「シルクスイート」は、そのなめらかな食感と甘みの強さから人気を集めています。名前が似ているうえに、どちらもしっとりとした口当たりが特徴のため、違いが気になる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、それぞれの特徴を詳しく紹介し、味わいや食感の違いを比べながら、それぞれの魅力を深掘りしていきます。焼き芋やスイーツ作りに適した品種を探している方や、新しいさつまいもを試してみたい方にとって、お気に入りの品種を見つけるきっかけになれば幸いです。
クイックスイートとシルクスイートの違いは?
よく似た名前を持つ「クイックスイート」と「シルクスイート」ですが、それぞれの特徴には大きな違いがあります。クイックスイートは、電子レンジで加熱しても甘みがしっかり引き出される品種で、短時間でおいしく仕上がるのが魅力です。オーブンや炭火を使わなくても手軽に調理できるため、忙しい日の簡単な軽食や、子どものおやつとしても重宝します。
一方のシルクスイートは、名前の通りシルクのようになめらかな舌触りが特徴で、しっとり感の中にほのかなホクホク感も残る、独特の食感が楽しめます。焼き芋にすると上品な甘みとクリーミーな口当たりが際立ち、そのまま食べるだけでなくスイーツ作りにも適しています。
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それぞれの個性を知ることで、用途や好みに合わせた楽しみ方が広がります。クイックスイートは手軽に味わいたいときに、シルクスイートはじっくりと甘さと食感を堪能したいときにおすすめです。どちらも魅力的な品種なので、気分や料理に合わせて選んでみるのもよいでしょう。
それぞれの特徴について、くわしく見ていきましょう。
クイックスイートの特徴
名称 | クイックスイート |
産地 | 主に静岡県、熊本県 |
収穫時期 | 9月〜11月ごろ |
糖度 | 16度前後 |
食感 | ねっとり・しっとり |
クイックスイートは、短時間の加熱調理でおいしく食べられるめずらしい品種です。ここでは、クイックスイートの特徴についてご紹介します。
クイックスイートの味と食感
クイックスイートは、農研機構によって「紅あずま」と「九州30号」を交配して誕生した品種で、最大の特徴は電子レンジ調理でもしっかり甘みを引き出せる点にあります。従来のさつまいもは、電子レンジで加熱すると甘みが十分に引き出されないことが多いものの、クイックスイートはその点が大きく異なります。
この品種は、デンプンが糊化する温度が一般的なさつまいもよりも約20℃低く、50℃程度で糊化が始まるため、低温で加熱しても甘みがしっかり感じられます。電子レンジ調理でも十分においしく仕上がるため、焼き芋用のオーブンや炭火を使う手間を省きながら、甘みの強いさつまいもを楽しめるのが魅力です。
また、短時間の加熱で甘みが引き出されるため、忙しい日の食事や、小腹がすいたときの軽食にもぴったり。火を使わずに調理できるので、小さな子どもや高齢者のおやつとしても取り入れやすく、日常的に楽しめる品種といえます。食感はしっとりとしており、ねっとり感の中に適度なみずみずしさが加わっているのが特徴。ホクホク系のさつまいもよりも水分が多く、なめらかな口あたりを求める人にぴったりの品種です。そのまま食べるのはもちろん、スイーツの材料としても活用しやすく、さまざまな楽しみ方が広がります。
クイックスイートの主な産地
クイックスイートの主な産地は静岡県と熊本県で、これらの地域を中心に生産が行われています。近年では全国各地で栽培が広がっており、さつまいもの名産地として知られる茨城県や鹿児島県でも生産されるようになりました。ただし、生育環境や流通の難しさから、ほかの品種ほど広く出回っているわけではありません。この品種は水分量が多いため、生の状態での流通が難しいとされています。そのため、市場に並ぶ機会は少なく、一般のスーパーでは見かけることがほとんどありません。限られた農家や産地直送のルートで取り扱われることが多く、出回る量も限られているため、全国的に見ても希少な品種といえます。
手に入れるためには、産地の直売所や特定の農家が運営するオンラインショップを利用するのも一つの方法。収穫時期を事前にチェックし、予約販売や通販を活用すると、新鮮な状態で手元に届きやすくなります。市場に出回る量が少ないからこそ、見つけたときに試してみる価値のある品種です。
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クイックスイートの糖度・カロリー
クイックスイートの糖度は、生の状態で16度前後、加熱すると38度前後まで上がるといわれています。この数値は一般的なさつまいもと比べても高く、加熱することで一層強い甘みが引き出されるのが特徴です。焼き芋にすると、まるでスイーツのような濃厚な甘さを楽しめるため、砂糖を加えなくても十分に満足感のある味わいになります。
また、クイックスイートは冷めても甘さが変化しにくい点も魅力のひとつ。通常、さつまいもは温かいうちが最も甘みを感じやすく、冷めると甘さがやや落ちることがありますが、この品種は時間が経っても甘みがしっかりと残ります。そのため、お弁当や作り置きのおかず、冷やして食べるスイーツなどにも適しており、幅広い用途で楽しめます。カロリーに関しては、公表された数値はないものの、糖度が近い安納芋が100gあたり約140kcalとされていることから、クイックスイートも同程度のカロリーであると考えられます。食べ応えがありながらヘルシーな食材としても優秀で、健康的なおやつや主食代わりに取り入れるのにも適した品種といえるでしょう。
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クイックスイートの収穫時期
クイックスイートは、一般的なさつまいもと同様に8月下旬から11月ごろにかけて収穫の最盛期を迎えます。収穫されたばかりの状態でも甘みが感じられますが、多くのさつまいもと同じく、一定期間貯蔵することでさらに甘さが増していきます。そのため、出荷のピークは10月から11月ごろとなり、この時期が最もおいしく味わえる旬とされています。
一般的に、さつまいもは収穫後に熟成期間を設けることで、デンプンが糖に変わり、甘みや風味が増すといわれています。特に、一部の品種は長期間熟成しないと本来の甘みが引き出されにくいものもありますが、クイックスイートは収穫後すぐでも十分に甘さを感じられるのが特徴です。掘りたての状態でも美味しく、時間をかけて熟成させることでさらに甘みが深まるため、収穫直後と熟成後の違いを楽しむのも面白いでしょう。出荷量が比較的少ない品種のため、一般的なスーパーなどではあまり見かけることがなく、手に入れるには産地直送の販売サイトや農家の直売所を利用するのがおすすめ。秋口に入ったら、取り扱いのある店舗やオンラインショップをチェックし、収穫シーズンに合わせて購入のタイミングを逃さないようにすると、新鮮なクイックスイートを手に入れやすくなります。
シルクスイートの特徴
名称 | シルクスイート |
産地 | 千葉・茨城県など |
収穫時期 | 11月〜2月ごろ |
糖度 | 約8.8度 |
食感 | しっとりなめらか |
シルクスイートは、ほど良い甘さと口どけのよさが魅力のさつまいもです。ここでは、シルクスイートの特徴についてチェックしてみましょう。
シルクスイートの味と食感
シルクスイートは、「春こがね」のほどよい甘さと、「紅まさり」のしっとりとした舌ざわりを受け継ぎ、交配によって生み出された品種です。正式名称は「HE306」といい、従来のさつまいもよりも甘みが強く、食感のなめらかさが際立つのが特徴。焼き芋にするとしっとりとした質感がより一層引き立ち、まるでシルクのようななめらかな口あたりが楽しめます。
水分量が多いため、ホクホク系のさつまいもとは異なり、スプーンですくって食べられるほどのスムースな舌ざわりが魅力。口の中で優しくとろけるような食感で、焼き芋にするとまるでスイートポテトやクリームのような仕上がりになります。そのため、一般的なさつまいもよりもスイーツ感覚で味わえるのが特徴的。甘さは上品でくどさがなく、しっとりとした質感と相まって、シンプルに焼くだけでも十分に満足感が得られます。食べたときのなめらかさと甘さのバランスの良さから、高級スイーツを味わっているような特別感を楽しめる品種。和菓子や洋菓子の材料としても適しており、焼き芋以外にもスイーツ作りや料理への活用の幅が広がります。甘みと食感の両方にこだわりたい人や、口どけの良いさつまいもを求める人にぴったりの品種です。
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シルクスイートの主な産地
シルクスイートの主な産地として知られているのは、千葉県・茨城県・福島県の3県。特に茨城県はさつまいもの名産地としても有名で、全国的に見ても生産量が多い地域のひとつです。これらの地域では、シルクスイートのしっとりとした食感と上品な甘さを活かした栽培が行われており、品質の高いさつまいもが出荷されています。
近年では、さつまいもの一大産地である鹿児島県でもシルクスイートの生産が増えてきました。温暖な気候と適した土壌条件のもとで栽培が進み、少しずつ市場に出回る機会も増えています。ただし、鹿児島県では安納芋や紅はるかといった人気品種の栽培が中心となっているため、シルクスイートの栽培面積はまだ限られたものにとどまっています。全国的に見ると、安納芋や紅はるかに比べて生産量は少なく、流通量も控えめ。そのため、スーパーなどの店頭で見かける機会は限られ、確実に手に入れるには産地直送の販売サイトや専門店をチェックするのが良いでしょう。
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シルクスイートの糖度・カロリー
一般的なさつまいもの糖度が約6.9度なのに対し、シルクスイートの糖度は約8.8度と、やや高めの数値を示しています。数字だけを見ると、そこまで大きな違いはないように思えますが、実際に食べてみるとしっかりとした甘さが感じられ、なめらかな食感と相まってスイーツのような満足感を味わえます。特に焼き芋にすると甘みがより引き立ち、素材そのものの美味しさが存分に楽しめるのが特徴です。
シルクスイートのカロリーは100gあたり約160kcalとされており、さつまいもの中ではやや高めの部類に入ります。しかし、自然由来の甘さがあるため、砂糖を加える必要がなく、ヘルシーなおやつや軽食として取り入れやすいのが魅力。食物繊維も豊富に含まれているため、腸内環境を整えたい人や健康的な食生活を意識している人にも適しています。また、スプーンですくえるほどのしっとりとした口あたりが特徴で、焼き芋にするだけでまるでスイートポテトのような仕上がりに。甘いものが食べたくなったときに、罪悪感なく楽しめる自然のスイーツとしてもぴったり。ダイエット中でも満足感のあるおやつを探している人にとって、シルクスイートは強い味方となるでしょう。
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シルクスイートの収穫時期
シルクスイートの収穫時期は地域によって多少異なりますが、一般的には8月下旬から10月ごろにかけて最盛期を迎えます。掘りたての状態では、粉質でホクホクとした食感が特徴的で、一般的なさつまいもに近い口あたりになります。しかし、この品種の魅力が最大限に引き出されるのは、収穫後にしばらく熟成させたタイミング。貯蔵することでデンプンが糖へと変化し、甘さが増すとともに、食感も粘質へと変わっていきます。
しっかりと熟成されたシルクスイートは、水分を多く含み、しっとりとなめらかな口あたりが際立ちます。そのため、市場に本格的に出回るのは11月から2月ごろが中心。この時期に流通するものは、しっかりと甘みが引き出され、シルクのような滑らかさを存分に堪能できる状態になっています。焼き芋にするとクリーミーでスイートポテトのような食感が楽しめるため、冬の時期には特に人気が高まります。また、農家によっては、熟成を待たずに収穫後すぐ出荷するケースもあります。この場合、ホクホクとした食感とほどよい甘さが楽しめるため、粘質なめらか系とは異なるシルクスイートの一面を味わうことが可能。掘りたてのホクホク感と、熟成後のしっとり感を食べ比べることで、同じ品種でも異なる風味や食感を堪能できるのが魅力のひとつ。販売方法は農家や販売店によって異なるため、気になる人は収穫シーズンを迎えた頃にチェックし、好みに合ったタイミングで手に入れてみるのもおすすめです。
まとめ
クイックスイートとシルクスイートは、名前の響きがよく似ていますが、それぞれの特徴には大きな違いがあります。クイックスイートは、電子レンジで手軽に調理しても甘みがしっかり引き出せるのが最大の魅力。短時間で仕上がるため、忙しいときや手軽にさつまいもを楽しみたいときにぴったりの品種です。しっとりとした食感の中に適度なみずみずしさがあり、小腹がすいたときの軽食や、お子さんのおやつにも向いています。
一方のシルクスイートは、上品な甘さとシルクのようになめらかな口あたりが特徴的。水分をたっぷり含み、焼き芋にするとスプーンですくって食べられるほどのスムースな食感に仕上がります。焼き立てはもちろん、冷めても甘みがしっかり残るため、スイーツ感覚で楽しめるのもポイント。自然な甘さとクリーミーな口どけを求める人にぴったりの品種です。
どちらも個性豊かで、それぞれに違ったおいしさがあるため、どちらを選ぶか迷ったときは、実際に食べ比べてみるのもおすすめ。クイックスイートの手軽さとしっとり感、シルクスイートのなめらかさとスイーツのような甘み、その両方を楽しめば、自分の好みにぴったり合う品種が見つかるかもしれません。秋から冬にかけての旬の時期には、どちらもおいしさが際立つので、この季節ならではのさつまいもを存分に味わってみてください。
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