高系14号と安納芋の違いとは?さつまいも品種の特徴や産地、作付け面積、食感、美味しさの違い、向いている料理は?徹底解説

鹿児島県種子島の特産品として知られる「安納芋(あんのういも)」は、濃厚な甘みとねっとりとした食感が特徴のさつまいもです。焼くと糖度がさらに引き立ち、蜜があふれるような濃厚な味わいが楽しめるため、焼き芋やスイーツの材料として高い人気を誇ります。一方、西日本で広く栽培されている「高系14号」は、ほくほくとした食感と上品な甘さが特徴の品種です。昭和20年(1945年)に高知県で育成されて以来、長年にわたり焼き芋や加工食品の原料として親しまれてきました。表皮は赤紫色を帯び、果肉は明るい黄色をしており、焼くと黄金色に変化します。同じさつまいもでも、「安納芋」と「高系14号」では甘さや食感が大きく異なり、適した料理も違います。本記事では、それぞれの特徴や魅力を詳しく解説し、用途に応じた選び方を紹介します。

安納芋とは

安納芋と高系14号さつまいもの違い-安納芋とは?

「安納芋」は、第二次世界大戦後にインドネシアのスマトラ島から帰還した兵隊が、現地で見つけた芋を持ち帰り、鹿児島県種子島の安納地区で栽培を始めたのが起源とされています。糖度が高く、ねっとりとした食感が特徴のこの芋は、次第に種子島の他の地域へも広がり、安納地区の名前を取って「安納芋」と呼ばれるようになりました。長年にわたり種子島の島内で在来種として栽培され、地元の食文化に根付いてきましたが、やがて本州をはじめとする他の地域でも広く生産されるようになりました。

平成元年(1989年)には、鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場が、より優れた品質のものを選び出し、改良を進めるための育成を開始しました。約10年にわたる研究と選抜を経て、平成10年(1998年)に「安納紅」と「安納こがね」の2品種が正式に品種登録されました。こうした改良により、甘みや食感に優れた品種としての評価が高まり、全国各地での生産が拡大していきました。

安納芋の主な品種と特徴

鹿児島県が品種登録した「安納芋」には、「安納紅」と「安納こがね」という2つの品種があります。

安納芋と高系14号さつまいもの違い-安納芋の主な品種、特徴、見た目

一般的に「安納芋」として広く知られているのは、「安納紅」と呼ばれる品種で、表皮が赤く、内部の果肉は鮮やかな黄色をしています。甘みが強く、加熱するとしっとりとした食感になり、その濃厚な味わいが多くの人に親しまれています。

一方、「安納こがね」は、在来種の安納芋の突然変異から発見された白っぽい芋をもとに、選抜育成によって誕生した品種です。表皮は薄い黄褐色をしており、果肉の色はオレンジ色で、加熱することでより鮮やかになります。甘さや食感の特徴は「安納紅」と共通するものの、「安納こがね」は皮が非常に薄く、掘り起こす際や輸送中に傷つきやすいため、取り扱いには細心の注意が必要です。そのため、栽培には高度な技術と丁寧な管理が求められ、種子島内でもこの品種を生産する農家は限られています。希少性が高く、市場に出回る量も少ないため、「安納芋」の中でも特に貴重な存在となっています。「安納紅」と「安納こがね」のどちらも、糖度が非常に高く、じっくりと加熱することで甘みが一層引き立ちます。焼き芋にすると、蜜があふれるほどのねっとりとした食感になり、その濃厚な味わいは他のさつまいもとは一線を画すものです。

農林水産省の品種登録データベースに記載されているそれぞれの特徴は以下の通りです。

・安納紅 登録番号6862
鹿児島県種子島で収集した皮色が紅の在来系統から選抜して育成されたものであり、いもの形状が長紡錘形、いもの皮色は基本色が褐、補助色が紅の青果及び加工向きの品種である。

・安納こがね 登録番号6863
鹿児島県種子島で収集した皮色が紅の在来系統から発見された変異株であり、いもの形状が円筒形、いもの皮色は基本色が黄、補助色が褐の青果及び加工向きの品種である。

引用:農林水産省「登録品種データベース」より

高系14号の品種と特徴

安納芋と高系14号さつまいもの違い-高系14号とは?

「高系14号」は、現在広く栽培されているさつまいもの主要品種の一つで、焼き芋や加工食品に適した品種として知られています。元々は高知県農業試験場で育成された品種であり、「高系」という名称は「高知系統」の略称です。その中でも特に品質が優れていた「高系14号」は、次第に全国へと広まり、多くの農家で栽培されるようになりました。高系14号の特徴として、まず外観が挙げられます。表皮はやや赤紫色を帯びており、果肉は明るい黄色をしています。焼き芋にすると果肉の色が黄金色に変わり、見た目にも美味しそうな色合いとなることから、焼き芋用としての人気が高まっています。「高系14号」の美味しさは、ほくほくとした食感と、加熱によって引き出される自然な甘みです。高系14号は、さつまいも本来の素朴な風味が楽しめる品種であり、口に入れた瞬間、ほどよい甘さが広がります。焼き芋としてそのまま食べるだけでなく、天ぷらや大学芋、スイートポテトなど、さまざまな料理にも適しています。特に焼き芋にした際には、ホクホク感と香ばしさが際立ち、噛むほどに自然な優しい甘さが感じられます。

安納芋と高系14号さつまいもの違い-高系14号の特徴、見た目

また、「高系14号」は栽培のしやすさでも知られています。さつまいもは一般的に痩せた土地でも栽培が可能で病気に強く育てやすい作物ですが、高系14号は特に耐病性に優れており、収量も多いため、多くの農家が生産しやすい品種となっています。そのため、日本全国で広く栽培され、安定した供給が可能となっています。市場では、「紅あずま」や「べにはるか」と並び、焼き芋用の定番品種として流通しています。甘みとほくほく感のバランスが良く、昔ながらの「さつまいもらしい風味」を楽しめることから、今でも根強い人気を誇っています。現在では「紅はるか」や「安納芋」など、より甘みが強くねっとり・しっとりとした食感を持つ品種が登場しているものの、「高系14号」は素朴な甘さやほくほく感を好む人々に支持され続けています。

安納芋と高系14号の違い

安納芋と高系14号さつまいもの違い-ほくほく系食感の高系14号

「高系14号」は、高知県の農事試験場(現在の高知県農業技術センター)で選抜育成された品種で、昭和20年(1945年)に登場しました。歴史のある品種ながら、現在も西日本を中心に広く栽培されており、「東の紅あずま・西の高系14号」と称されるほど、地域によって親しまれています。この品種は肥大性に優れているため、比較的早い時期に収穫が可能で、9月から11月にかけて収穫の最盛期を迎えます。

安納芋と高系14号さつまいもの違い-高系14号の見た目の特徴

農林水産省の資料によると、令和3年の「高系14号」の作付け面積は全国の都道府県を合計して2869.9ヘクタールとなっており、作付けシェアは9.3%を占めています。最盛期には全国で約25,000ヘクタールもの作付け面積があり、かつては市場の中心的な品種として扱われていました。

安納芋と高系14号さつまいもの違い-安納芋(安納紅)のねっとり食感と糖度

一方、「安納紅」の作付け面積は479.2ヘクタール、シェアは1.5%、「安納こがね」に至っては34.0ヘクタール、シェアは0.1%と非常に限られた面積でしか栽培されていません。こうした状況から、「安納芋」が市場で希少な品種とされ、「幻のさつまいも」と呼ばれる理由にもなっています。「高系14号」は、各地で品種改良や選抜が行われ、それぞれの地域独自のブランドとして展開されています。代表的なものとして、徳島県の「なると金時」、宮崎県の「宮崎紅」、鹿児島県の「べにさつま」などがあり、いずれも地域の特産品として広く知られています。

「安納芋」と「高系14号」には、大きな違いがあり、その一つがショ糖の含有量です。「高系14号」の代表的な銘柄である「なると金時」のショ糖含有量は1.54%ですが、「安納紅」や「安納こがね」では、それぞれ4.80%と、3倍以上の差があります。この成分の違いが、甘さの感じ方や食感に大きく影響を与えています。「安納芋」は、濃厚な甘さとしっとり・ねっとりとした食感が特徴的で、水分量が多いため、まるで蜜が入っているかのような口当たりの良さがあります。そのため、「蜜芋」と呼ばれることもあり、加熱することで甘みがさらに引き立つため、焼き芋にすると最もその魅力が際立ちます。じっくりと火を通すことで、内部からとろりとした蜜があふれ、濃厚でクリーミーな味わいが楽しめます。

安納芋と高系14号さつまいもの違い-ほくほく食感の高系14号は天ぷら向き

一方、「高系14号」は、甘みの印象が安納芋ほど強くなく、あっさりとした上品な甘さが特徴です。食感はしっとりとホクホクの中間にあり、繊維質が少なく、肉質はなめらかです。そのため、焼き芋だけでなく、天ぷらやサラダなど、さまざまな料理にも適しています。

安納芋と高系14号さつまいもの違い-ほくほく食感の高系14号はポテトサラダ向き

ホクホク感を生かして大学芋やスイートポテトにしたり、しっとり感を生かしてポタージュやペースト状にしてパンやお菓子の材料にするなど、料理の幅が広いことも魅力の一つです。

参考資料:農林水産省「令和4年度いも・でんぶんに関する資料」より

まとめ

安納芋と高系14号さつまいもの違い-糖度の高さとねっとり食感の安納芋

安納芋は、第二次世界大戦後にインドネシアから持ち帰られた芋が鹿児島県種子島の安納地区で栽培されたことが始まりとされ、糖度の高さとねっとりした食感が特徴です。平成10年(1998年)に「安納紅」と「安納こがね」の2品種が品種登録され、それぞれ異なる外観と特性を持ちながらも、甘みの強さと焼き芋に適した食感が評価されています。特に「安納こがね」は希少性が高く、市場に出回る量が限られています。

安納芋と高系14号さつまいもの違い-ほくほく食感で自然な甘さの高系14号

一方、「高系14号」は昭和20年(1945年)に高知県で育成された品種で、現在も広く栽培されています。表皮は赤紫色、果肉は明るい黄色をしており、焼くと黄金色に変化します。ほくほくした食感と控えめな甘さが特徴で、焼き芋だけでなく、天ぷらやスイートポテトにも適しています。かつては作付け面積が25,000ヘクタールに達したこともありましたが、現在は9.3%のシェアを占めています。

「安納芋」と「高系14号」ではショ糖の含有量に大きな違いがあり、安納芋は非常に高い糖度を持つため、焼き芋にすると蜜が溢れるような濃厚な甘さになります。対して「高系14号」は甘さが控えめで、しっとり感とほくほく感のバランスが良いのが魅力です。それぞれの特性を活かし、料理の用途に応じて使い分けることで、さつまいもの持つ多彩な味わいを楽しめます。