石焼き芋とは?石焼き芋はなぜ?美味しい?石焼き芋の歴史や石の秘密も

今や焼き芋は自宅のトースターや電子レンジ、オーブン、炊飯器でも簡単に作れるようになりましたが、それでも石焼き芋ならではの香ばしい香りやホクホクとした甘さがたまらない、という人は多いでしょう。家庭で作る焼き芋と比べても、なぜ?石焼き芋はあれほどまでに美味しく感じられるのでしょうか。じっくり時間をかけて焼き上げることで、さつまいも本来の甘みが引き出され、外は香ばしく、中はしっとりと仕上がるのが石焼き芋の魅力です。さらに、石焼き芋には歴史や文化的な背景もあり、その独特の調理方法が昔から多くの人に愛されてきました。そもそも「石焼き芋って何?」という方もいるかもしれませんが、そこは大丈夫です。この記事を読めば、石焼き芋の美味しさの秘密から歴史、作り方、さらには自宅で楽しむためのコツまで、石焼き芋に関するあらゆることを知ることができますよ。

石焼き芋とは?

石焼き芋のイメージ

石焼き芋とは、熱した石の中にサツマイモを埋め込み、余分な水分を一切加えず、じっくりと時間をかけて焼き上げる伝統的な調理法で作られる焼き芋のことです。石の熱が均一にさつまいもを包み込むため、中までしっかり火が通り、甘みが最大限に引き出されるのが特徴です。さらに、遠赤外線効果によってさつまいものデンプンが糖に変わり、自然な甘さとホクホクとした食感が楽しめます。一方で、最近増えている壺焼き芋は、空気を伝って温める方法を採用しており、石焼き芋とは異なる仕上がりになります。石焼き芋の場合、熱した石の上で直接さつまいもが温められるため、皮の表面が少し焦げやすくなるのが特徴です。この焦げが香ばしさを引き立て、石焼き芋ならではの風味を生み出します。焼き上がった皮のパリッとした食感と、甘くしっとりとした中身のコントラストも、多くの人が石焼き芋を好む理由のひとつはこの食感と味なのです。

石焼き芋で代表的なさつまいもは?

さつまいもには多くの品種があり、それぞれ引き出される甘みや旨味などが異なります。ここでは、石焼き芋で代表的な3つのさつまいもの品種について紹介します。

紅あずま

石焼き芋の品種-紅あずま

紅あずまは、上品な甘さが特徴のホクホク系を代表するさつまいもです。果肉は鮮やかな黄色で、噛むたびに広がる昔ながらのさつまいもらしい素朴な風味が楽しめます。品種が誕生してから35年以上経った今でも、その懐かしい味わいが多くの人に愛され続けています。焼き芋にするとホクホクとした食感が際立ち、食べ応えも抜群です。一方で、水分量が少ないため、口の中が少し乾きやすいと感じることもあります。紅あずまを味わう際は、温かいお茶や飲み物と一緒に楽しむと、さらに美味しく食べられるでしょう。ホクホク派にはたまらない魅力が詰まった一品です。

安納芋

石焼き芋の品種-安納芋

安納芋は、コロンと丸みを帯びた形が特徴で、「蜜芋」という別名でも知られるほど人気の高い品種です。時間をかけてじっくりと焼き上げることで、糖度がぐっと引き出され、さつまいもとは思えないほどの濃厚な甘さとクリーミーな食感を堪能できます。特に焼いた際には、蜜のようなトロッとした柔らかさが際立ち、まるでスイーツのような味わいを楽しめるのが魅力です。水分をたっぷり含んだねっとりとした口当たりも特徴のひとつで、硬さがないため、小さな子どもや噛む力が弱い高齢者にも食べやすく、離乳食や介護食としても重宝されています。また、温かい状態はもちろん、冷やしても甘さと滑らかさが際立つため、季節を問わずさまざまな食べ方で味わえる品種です。焼き芋にした際の濃厚な甘さとねっとりとした舌触りは、一度食べたら忘れられない美味しさでしょう。

紅はるか

石焼き芋の品種-紅はるか

2007年に品種登録されて以来、急速に人気を集めているさつまいもが紅はるかです。加熱すると、その甘さは「蜜芋」と呼ばれる安納芋にも引けを取らないほど強烈で、口に入れた瞬間に広がるしっとりと滑らかな食感が魅力です。焼き芋にすると、まるでスイーツのような甘みが引き出され、口当たりの良さが際立ちます。さらに、紅はるかは味にクセがないため、どんな調理法でも楽しめる万能な品種としても知られています。濃厚な甘さがありながら後味はすっきりしているので、甘いものが得意でない人にも好まれやすいさつまいもです。

石焼き芋が美味しい理由とは?

石焼き芋が表面はこんがり、中はホクホクと美味しく出来上がるのは、「加熱時間」と「遠赤外線」という、大きな2つの理由が挙げられます。ここからは、石焼き芋が美味しい理由についてみていきましょう。

石焼き芋が美味しい理由①|長時間の加熱

石焼き芋が美味しい理由-長時間の加熱

まず、石焼き芋が美味しい理由は、長時間加熱しているからです。焼き芋を甘くするためには、さつまいもに含まれているβ−アミラーゼという消化酵素が、同じくさつまいも内のデンプンを、甘い麦芽糖に変化させる必要があります。そして、β−アミラーゼが特に活発に作用する温度は70℃前後と言われ、その時間が長いほど麦芽糖を生成します。石焼き芋では、その温度帯で長い時間をかけてゆっくりと熱せられるため、甘味や旨味が強くなるのです。


石焼き芋が美味しい理由②|遠赤外線の効果

石焼き芋が美味しい理由-遠赤外線の効果-リヤカーイメージ

遠赤外線の効果も、石焼き芋が美味しい理由の1つです。熱した石から放射される遠赤外線は、さつまいも全体のみならず、内部にも浸透します。この効果によって、必要以上に水分を蒸発させずに、さつまいもの表面と中身を同時に加熱できるため、芯までふっくらした美味しい石焼き芋ができあがるのです。


石焼き芋の歴史を解説

江戸時代後半から、庶民のおやつとして人気になったさつまいもですが、石焼き芋として登場したのは戦後からでした。最後に、石焼き芋の歴史について解説します。

石焼き芋の登場は戦後?

石焼き芋のリヤカーと価格

加熱した石を用いる石焼き芋が登場するのは、太平洋戦争が終わった1950年以降です。それ以前の江戸時代や明治時代では、かまどや壺を使った焼き芋でした。東京向島の三野輪万蔵が考案したと言われる石焼き芋は、その甘みと旨味で瞬く間に人々を魅了。さらに、石焼き芋用の道具をリヤカーに乗せて移動販売をしたことで、販売場所を選ばないというメリットもあり、一大ブームになりました。その結果、全盛期には東京に1,000人以上もの石焼き芋売りがいた、と言われています。しかしその後、大阪万博を機に、食志向の変化や海外のファストフード進出などの影響を受けたことで、石焼き芋の人気は低迷し、移動式の石焼き芋屋の数は年々減っていきました。

平成以降の石焼き芋とは?

大型石焼き芋の焼成機

平成に入ると、大阪万博以降おやつの代表から退いていた焼き芋のブームが、再熱します。焼き芋オーブンの普及によるスーパーでの販売や、品種改良によって、ホクホク系からネットリ系まで多種多様な焼き芋が食べられるようになったことで、焼き芋をより身近に楽しめる時代になっていったのです。また、現在では店頭での購入だけでなく、自宅やキャンプ場などで本格的な石焼き芋が楽しめる石焼き芋機や石焼き芋用の石なども販売されています。

石焼き芋は、秋冬限定の移動販売のおやつというイメージから、1年中気軽に楽しめるおやつに変化しつつあるのでしょう。


石焼き芋のまとめ

石焼き芋の石

石焼き芋は、熱した石の中でじっくりと時間をかけて焼き上げる伝統的な焼き芋のことで、甘みと香ばしさが最大限に引き出されるのが特徴です。石の熱が均一に伝わることで、さつまいものデンプンが糖に変わり、ホクホクとした食感と濃厚な甘みを生み出します。さらに遠赤外線効果によって内部までしっかり火が通り、しっとりとした仕上がりが楽しめます。代表的な品種には「紅あずま」「安納芋」「紅はるか」があり、それぞれ異なる甘みや食感が味わえるのも魅力です。また、石焼き芋は戦後に考案され、リヤカーでの移動販売が大流行した歴史を持ちます。平成に入り、品種改良やオーブンの普及によってブームが再燃し、現在では家庭やキャンプ場でも手軽に本格的な石焼き芋が作れるようになりました。香ばしい皮と甘い中身が織りなす絶妙なバランスこそ、時代を超えて愛され続ける理由でしょう。昭和の冬の風物詩という印象が強い、石焼き芋。しかし、石焼き芋は、絶妙な温度調整と時間で焼かれた「甘さ抜群の天然のスイーツ」であり、その魅力は令和の時代も健在です。石焼き芋に適した鍋や石などを使えば自宅でも作れるため、好みのさつまいもを使って、石焼き芋づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。