さつまいも人気品種 高系14号と紅あずまの特徴や味、食感、作付け面積の違いとは?

さつまいもは、主要品種だけでも約60種類もあります。その中でも、茨城県や千葉県など関東を中心に東日本で多く作付されているのが「紅あずま」で、西の高系14号に対して東の紅あずまと呼ばれています。「べにはるか」や「安納芋」、「シルクスイート」など、新しい品種が次々と登場し、作付面積は平成12年(2000年)のピークから年々減少していますが、ホクホクした食感と、上品な甘さで今も人気のさつまいもです。本記事では「紅あずま」と「高系14号」の特徴と違いについて解説します。

さつまいも品種「高系14号」とは?

高系14号と紅あずまの違い-高系14号断面

高系14号は、「こうけいじゅうよんごう」と読みます。高系14号は、日本で古くから親しまれているさつまいもの品種のひとつです。戦後間もない頃に高知県の農業試験場で選抜・育成され、その後全国に広まりました。今では「紅さつま」や「宮崎紅」などの品種の元となったことで知られ、多くの地域で栽培が続けられています。このさつまいもは、皮の色が鮮やかな紅色をしており、見た目の美しさが特徴のひとつです。中の果肉は淡い黄色をしており、加熱するとほのかに黄金色に変わります。味わいは自然な甘さがあり、強すぎず程よいバランスが取れています。近年のねっとり系品種ほど糖度は高くありませんが、あっさりとした優しい甘みが楽しめます。

高系14号と紅あずまの違い-高系14号外見

食感はホクホクとした口当たりが特徴で、昔ながらの焼き芋のような素朴な味わいが感じられます。加熱すると適度に水分が抜け、ほろっと崩れるような食感になり、甘さとともに香ばしさが引き立ちます。そのため、焼き芋にすると一層美味しく仕上がり、食べごたえのある一品になります。また、形が崩れにくいため、さつまいもご飯や大学芋、天ぷら、煮物などの料理にも適しています。調理後も型崩れしにくく、しっかりとした食感が残るため、さまざまなレシピで活躍します。焼き芋だけでなく、料理の素材としても扱いやすく、甘さを活かしたお菓子作りにも向いています。

高系14号の作付け状況

高系14号と紅あずまの違い-高系14号作付け

焼き芋にした際、高系14号は、ほどよい甘みが楽しめます。甘すぎる焼き芋が苦手な方にも食べやすく、上品な甘さが口の中に広がります。ねっとり系のように蜜が出るタイプではありませんが、焼くことでしっとり感が加わり、香ばしさとともに甘みが引き立ちます。現在、高系14号は全国各地で栽培されており、特に九州や四国の温暖な地域で多く作られています。育てやすく収穫量が安定しているため、家庭菜園でも人気があり、農家の間でも長年にわたり愛されている品種です。伝統的な味わいを持ちつつ、料理にも幅広く活用できることから、多くの人に親しまれ続けています。焼き芋のほくほく感が好きな方や、甘さ控えめのさつまいもを好む方にぴったりの品種です。

さつまいも品種「紅あずま」とは?

高系14号と紅あずまの違い-紅あずま断面

「紅あずま(ベニアズマ)」は、茨城県の農林水産省農業研究センターで、皮の色がきれいで形が揃いやすい「関東85号」と、肉質が良く肥大しやすい「コガネセンガン」を交配して選抜育成した品種で、昭和60年(1985年)に品種登録されました。品種登録番号は「892」、農林番号は「農林36号」、地方番号は「関東91号」です。なお、育成者権は平成12年(2000年)に消滅しています。

食用のさつまいもとして人気の品種で、西の「高系14号」に対して、東の「紅あずま」と言われるように、関東を中心に主に東日本で栽培されています。令和3年(2021年)では千葉県、富山県、福井県の3県で奨励品種です。

参考:農林水産省「登録品種データベース」

紅あずまの作付け状況

高系14号と紅あずまの違い-紅あずま外見

令和3年(2021年)における全国での「紅あずま」の作付け面積は、3,153.6ヘクタールです。これは焼酎の原料として使われる「コガネセンガン」の6,759.1ヘクタール、「べにはるか」の6,698.8ヘクタールに次いで、品種別では3番目に多い作付けです。

都道府県別で作付け面積が多いのは、茨城県の1,379.4ヘクタール、次いで千葉県の1,160.5ヘクタールですが、他にも宮城県や山形県、栃木県、群馬県、長野県、愛知県、奈良県、愛媛県など、全国に広く普及しています。

「紅あずま」の作付け面積を年度別で見ると、平成12年(2000年)に13,887ヘクタールでの作付けシェア32.0%をピークに、「べにはるか」や「安納芋」「シルクスイート」などの新しい品種が次々と登場するなかで、令和3年(2021年)には作付け面積は3,153.6ヘクタール、作付けシェア9.9と年々減少しています。

紅あずまと高系14号の違い

高系14号と紅あずまの特徴

「高系14号」は、東の「紅あずま」に対して、西の「高系14号」と言われるように、主に西日本で栽培されている品種です。「高系14号」が登場したのは古く、昭和20年(1945年)に高知県の農事試験場において、「ナンシーホール」と「シャム」という品種を交配して開発されました。

デビューからもうすぐ80年を迎えますが、現在も全国の作付け面積は2,869.9ヘクタールで作付けシェアは9.3%です。都道府県別で作付け面積が多いのは、徳島県の950.0ヘクタール、鹿児島県の756.0ヘクタール、宮崎県の483.3ヘクタールの順です。

高系14号と紅あずまの違い-紅あずまイメージ

最盛期には、およそ25,000ヘクタールもの作付け面積がありましたが、「紅あずま」同様に作付け面積は年々減少しています。それでも、令和3年(2021年)においても、千葉県、福井県、香川県、長崎県で奨励品種に指定されています。

「紅あずま」は、ホクホクとした食感と、上品でしっかりとした甘さが特徴です。加熱すると甘みが増しますが、「安納芋」や「べにはるか」「シルクスイート」といった品種と比べると糖度が低いので、甘すぎるのが苦手な方には「紅あずま」がおすすめです。

高系14号と紅あずまの違い-紅あずまの天ぷら

「紅あずま」と比べると、「高系14号」の食感は、ホクホク感にしっとり感が加わっています。甘さは「高系14号」の方があっさりめです。どちらの品種も焼き芋で食べるのがおすすめですが、天ぷらやサラダ、スイーツの材料にしてもよく合います。

参考:農林水産省「令和4年度いも・でんぶんに関する資料」

高系14号と紅あずまの違いまとめ

高系14号と紅あずまの違い-まとめ

高系14号と紅あずまは、日本で長く親しまれているさつまいもの代表的な品種です。高系14号は戦後、高知県で選抜・育成され、西日本を中心に広まりました。皮の色は鮮やかな紅色で、果肉は淡い黄色。焼き芋にするとホクホクとした食感が楽しめ、甘さは控えめながらも香ばしさが引き立ちます。天ぷらや煮物、大学芋にも適しており、型崩れしにくいため料理にも使いやすい品種です。現在も九州や四国で多く栽培され、安定した収穫量を誇ります。

一方、紅あずまは茨城県で開発され、関東を中心に広がった品種です。皮の色が美しく、形が整いやすい特徴があり、焼き芋にするとホクホク感が際立ち、しっかりとした甘さが楽しめます。糖度は「安納芋」や「シルクスイート」ほど高くありませんが、甘すぎない上品な味わいが魅力です。紅あずまの作付け面積は近年減少傾向にありますが、今も関東を中心に多くの地域で栽培が続いています。

どちらの品種も焼き芋に適しており、ホクホク感のある食感を求める方におすすめです。高系14号は甘さ控えめであっさりとした味わい、紅あずまはしっかりした甘さが楽しめるため、好みに応じて選ぶとよいでしょう。伝統的な味わいを持つこの二つの品種を、ぜひ焼き芋や料理で楽しんでみてください。