糖質制限中にさつまいもはOK?太らない食べ方と糖質量を管理栄養士が解説

糖質制限中に甘くて美味しいさつまいも、食べても良いか?悩みますよね。この記事では、さつまいもの糖質量やカロリーを他の主食と比較しつつ、糖質制限中にあえて食べるメリットを解説します。結論として、さつまいもは量や食べ方を工夫すればOK。「管理栄養士が推奨する」太りにくい食べ方のルールや調理法、ご自身の糖質制限レベルに合わせた取り入れ方まで詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

糖質制限中のさつまいもは食べ方と量次第でOK

糖質制限中のさつまいもは食べ方

「糖質制限中は、甘いさつまいもは絶対にNG」そう思っていませんか?実は、正しい知識を持って量や食べ方を工夫すれば、糖質制限中でもさつまいもを食事に取り入れることは可能です。むしろ、上手に活用することでダイエットや健康維持の強い味方になってくれます。

さつまいもは確かに糖質を多く含みますが、それ以上に食物繊維やビタミン、ミネラルといった体に必要な栄養素が豊富です。また、血糖値の上昇が緩やかであるという大きなメリットも持っています。

この記事では、糖質制限中にさつまいもを安心して楽しむための具体的なポイントを、「なぜ食べても良いのか」という理由から詳しく解説していきます。まずは、さつまいもを食べる上で押さえておきたい基本ルールを確認しましょう。

糖質制限中にさつまいもを食べるための基本原則

糖質制限中にさつまいもを食べるための基本原則

糖質制限中にさつまいもを取り入れる際は、以下の4つのポイントを意識することが成功のカギとなります。これらのルールを守ることで、糖質の過剰摂取を防ぎ、さつまいものメリットを最大限に活かすことができます。

ポイント 具体的な実践方法
1. 適切な量を守る 1食あたり50g〜75g(中サイズ1/3〜半分程度)を目安にします。ご自身の糖質制限のレベルに合わせて調整することが重要です。
2. 主食と置き換える ご飯やパンなどの主食の代わりにさつまいもを食べます。主食とさつまいもを一緒に食べると糖質の摂りすぎになるため、必ず置き換えを意識しましょう。
3. 調理法を工夫する 糖質が上がりにくい「蒸す」「茹でる」といった調理法が基本です。さらに、調理後に冷やすことで、血糖値の上昇を抑えるレジスタントスターチが増加します。
4. 食べるタイミングを選ぶ エネルギーとして消費されやすい、活動量の多い日中(朝食や昼食)に食べるのがおすすめです。夜遅い時間の摂取は脂肪として蓄積されやすいため避けましょう。

これらのポイントさえ押さえれば、糖質制限中でも罪悪感なくさつまいもを楽しむことができます。次の章からは、さつまいもの具体的な糖質量や、糖質制限中に食べるメリットについて、さらに詳しく掘り下げていきます。

さつまいもの糖質量とカロリーを他の芋類や主食と比較

糖質制限中にさつまいもを取り入れる上で、まず知っておきたいのが具体的な糖質量とカロリーです。甘くて美味しいさつまいもですが、その糖質量はどのくらいなのでしょうか。ここでは、さつまいも自体の栄養価に加え、他の芋類や普段の食事で主食となる白米・食パンと比較しながら、その立ち位置を明らかにしていきます。数値を正しく把握することが、糖質コントロール成功の第一歩です。

さつまいも100gあたりの糖質量とカロリー

さつまいも100gあたりの糖質量とカロリー

まず、基本となるさつまいもの栄養価を見てみましょう。生のさつまいも100gあたりの糖質量とカロリーは以下の通りです。

食品(100gあたり) エネルギー(カロリー) 炭水化物 食物繊維 糖質(炭水化物 – 食物繊維)
さつまいも(生・皮なし) 129 kcal 32.5 g 2.8 g 29.7 g

※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出

スーパーでよく見かける中くらいのさつまいも1本が約200g〜300gなので、1本食べると約60g〜90gの糖質を摂取する計算になります。糖質制限の種類にもよりますが、1食あたりの糖質量を20g〜40gに抑える「ロカボ」の場合、1本丸ごと食べてしまうと大幅に超えてしまうことがわかります。食べる量には十分な注意が必要です。

他の芋類(じゃがいも・里芋)との糖質比較

他の芋類(じゃがいも・里芋)との糖質比較

次に、同じ芋類であるじゃがいもや里芋と比較してみましょう。料理でよく使われるこれらの野菜と比べて、さつまいもの糖質は多いのでしょうか、それとも少ないのでしょうか。

食品(100gあたり) エネルギー(カロリー) 糖質
さつまいも(生) 129 kcal 29.7 g
じゃがいも(生) 59 kcal 10.0 g
里芋(生) 53 kcal 10.8 g

※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出

表を見ると一目瞭然ですが、さつまいもはじゃがいもや里芋に比べて、糖質量・カロリーともに2倍以上高いことがわかります。芋類だからと安心せず、さつまいもは他の芋類よりも糖質が高い食材であると認識しておくことが重要です。同じ芋類でも、糖質制限中はじゃがいもや里芋を選ぶ方が糖質コントロールはしやすくなります。

主食(白米・食パン)との糖質比較

主食(白米・食パン)との糖質比較

さつまいもは糖質が高い食材ですが、糖質制限で置き換えることの多い「主食」と比較するとどうでしょうか。ここでは、調理後の「蒸しさつまいも」と、白米(ごはん)、食パンを比べてみましょう。

食品(100gあたり) エネルギー(カロリー) 糖質
さつまいも(蒸し) 131 kcal 30.5 g
白米(ごはん) 156 kcal 35.6 g
食パン(6枚切り1枚約60g換算) 248 kcal 42.2 g

※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出

この比較から、さつまいもは白米や食パンよりも100gあたりの糖質量・カロリーが低いことがわかります。この特徴を活かし、いつものご飯やパンをさつまいもに置き換えることで、満足感を得ながら総糖質量を抑えることが可能です。これが、糖質制限中にさつまいもを上手に取り入れる大きなポイントとなります。

【注意】調理法で変わるさつまいもの糖質

調理法で変わるさつまいもの糖質

さつまいもを食べる上で、もう一つ忘れてはならないのが「調理法による糖質量の変化」です。特に甘みが増す「焼き芋」は注意が必要です。

調理法(100gあたり) エネルギー(カロリー) 糖質
129 kcal 29.7 g
蒸し 131 kcal 30.5 g
焼き 151 kcal 35.5 g

※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出

さつまいもを加熱すると、β-アミラーゼという酵素の働きでデンプンが麦芽糖に分解され、甘みが増します。特に「焼き芋」のようにじっくりと時間をかけて加熱すると、この反応がより進みます。さらに、加熱によって水分が蒸発し、栄養素が凝縮されるため、同じ100gでも焼き芋の糖質量は生や蒸したものより高くなります。糖質制限中は、甘くて美味しい焼き芋の食べ過ぎには特に気をつけましょう。

糖質制限中にあえてさつまいもを食べる3つのメリット

糖質が高いというイメージから、糖質制限中は敬遠されがちなさつまいも。しかし、実は糖質制限中にこそ嬉しいメリットがたくさんあります。白米やパンなどの主食をさつまいもに置き換えることで、糖質量を抑えつつ、健康や美容に役立つ栄養素を効率的に摂取できます。ここでは、糖質制限中にあえてさつまいもを食べるべき3つのメリットを詳しく解説します。

食物繊維が豊富で腸内環境を整える

糖質制限を始めると、食事内容の変化から食物繊維が不足し、便秘に悩まされる方が少なくありません。さつまいもは、この問題を解決するのに非常に効果的な食材です。

さつまいもには、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」という2種類の食物繊維がバランス良く含まれています。

  • 水溶性食物繊維:水に溶けやすい性質を持ち、善玉菌のエサとなることで腸内環境を整えます。また、糖質の吸収を穏やかにし、食後の血糖値の急上昇を抑える働きもあります。
  • 不溶性食物繊維:水に溶けにくく、便のカサを増やして腸を刺激することで、スムーズな排便を促します。

さらに、さつまいも特有の成分である「ヤラピン」も見逃せません。ヤラピンは、さつまいもを切ったときに出る白い液体で、皮の近くに多く含まれています。このヤラピンには腸のぜん動運動を活発にする働きがあり、食物繊維との相乗効果で、便秘解消を力強くサポートしてくれるのです。糖質制限中のスッキリしないお腹の悩みに、さつまいもは最適な食材と言えるでしょう。

GI値が低く血糖値の上昇が緩やか

糖質制限において重要な指標の一つが「GI値(グリセミック・インデックス)」です。GI値とは、食後の血糖値がどれくらい上昇するかを示した数値のことで、この値が低い食品ほど血糖値の上昇が緩やかになります。血糖値の急上昇は、インスリンの過剰分泌を招き、脂肪を溜め込みやすくする原因となります。

さつまいもは甘みがあるためGI値が高いと思われがちですが、実は白米やじゃがいもといった他の主食や芋類と比較してGI値が低いという特徴があります。

主な主食・芋類のGI値比較(100gあたり)
食品名 GI値(目安) 特徴
さつまいも(蒸し) 約55 低GI食品
じゃがいも(蒸し) 約90 高GI食品
白米(ごはん) 約88 高GI食品
食パン 約95 高GI食品

※GI値は調理法や品種によって変動します。

上の表からもわかるように、さつまいもは他の主食に比べて明らかに低GI値です。糖質制限中に甘いものが食べたくなった時、お菓子やジュースに手を伸ばすのではなく、低GIなさつまいもを選ぶことで、満足感を得ながらも血糖値の乱高下を防ぎ、脂肪の蓄積を抑えることができます。

カリウムやビタミン類で美容と健康をサポート

カリウムやビタミン類で美容と健康をサポート

糖質制限中は食事のバランスが偏り、ビタミンやミネラルが不足しがちです。さつまいもは、そうした不足しがちな栄養素を補い、美容と健康をサポートしてくれる優れた食材でもあります。

特に注目したい栄養素は以下の通りです。

  • カリウム:体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する働きがあり、むくみの解消や高血圧の予防に効果的です。外食や加工食品で塩分を摂りがちな現代人には欠かせないミネラルです。
  • ビタミンC:コラーゲンの生成を助け、肌のハリや弾力を保つ働きがあります。通常、ビタミンCは熱に弱い性質がありますが、さつまいものビタミンCはデンプンに守られているため、加熱しても壊れにくいのが大きなメリットです。シミやそばかすの予防、抗酸化作用によるアンチエイジング効果も期待できます。
  • ビタミンE:「若返りのビタミン」とも呼ばれ、強い抗酸化作用で細胞の老化を防ぎます。また、血行を促進する働きがあり、冷え性の改善や肌のターンオーバーを整える効果も期待できます。

これらの栄養素を一度に摂取できるさつまいもは、ただ糖質を補給するだけでなく、糖質制限中に起こりがちな肌荒れやむくみ、体の冷えといった不調の改善にも役立ちます。美しく健康的に糖質制限を続けたい方にとって、さつまいもは心強い味方となるでしょう。

糖質制限中にさつまいもを食べる5つのルール

糖質制限中にさつまいもを取り入れる際は、やみくもに食べるのではなく、いくつかのルールを守ることが成功のカギとなります。これからご紹介する5つのポイントを意識することで、糖質を上手にコントロールしながら、さつまいもの持つ栄養の恩恵を最大限に受けることができます。ぜひ今日から実践してみてください。

1日に食べる量を守る

1日に食べる量を守る

糖質制限の基本は、糖質の摂取量を管理することです。さつまいもは美味しいですが、食べ過ぎは糖質の過剰摂取に直結します。ご自身の糖質制限のレベルに合わせて、1日に食べる量をしっかり守りましょう。

緩やかな糖質制限(ロカボ)では、1食あたりの糖質量を20g〜40gに抑えるのが一般的です。この基準に照らし合わせると、1食あたりのさつまいもの摂取量は50g〜75g程度が目安となります。これは、中くらいサイズのさつまいも(約200g)の1/4〜1/3程度の量です。毎回重さを測るのが理想ですが、難しい場合は大きさを覚えておきましょう。

さつまいもの量(生) 糖質量の目安 カロリーの目安
50g 約14.7g 約63kcal
75g 約22.1g 約95kcal
100g 約29.7g 約126kcal

※蒸しさつまいもの場合の目安値です。調理法によって変動します。

まずは少量から試してみて、ご自身の体調や体重の変化を見ながら調整していくことが大切です。

主食と置き換えて糖質をコントロールする

主食と置き換えて糖質をコントロールする

糖質制限中にさつまいもを食べる上で、最も重要なルールが「主食との置き換え」です。白米やパン、麺類などの主食に加えてさつまいもを「おかず」や「デザート」として食べてしまうと、糖質の総量が大幅に増えてしまいます。

そうではなく、いつもの主食をさつまいもに置き換えることで、全体の糖質量を効果的に減らすことができます。例えば、白米お茶碗1杯(150g)の糖質量が約53.4gなのに対し、さつまいも75gの糖質量は約22.1gです。置き換えるだけで、1食あたり約30gもの糖質をカットできる計算になります。

さつまいもは腹持ちも良いため、主食と置き換えても満足感を得やすいのが嬉しいポイント。糖質を抑えながら、食事の満足度を維持するための賢いテクニックです。

冷やしてレジスタントスターチを増やす

さつまいもをより糖質制限向きにする裏ワザが「冷やして食べる」ことです。さつまいもに含まれるでんぷんは、加熱後に冷やすことで「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」という成分に変化します。

レジスタントスターチは、消化・吸収されにくいでんぷんで、食物繊維と似た働きをします。主なメリットは以下の2つです。

  • 血糖値の上昇を緩やかにする:小腸で吸収されにくいため、食後の血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
  • 腸内環境を整える:大腸まで届き、善玉菌のエサとなることで、腸内環境の改善をサポートします。

一度加熱したさつまいもを冷蔵庫でしっかりと冷やすだけで、レジスタントスターチを増やすことができます。温かいホクホクの焼き芋も魅力的ですが、糖質制限中はあえて「冷やし焼き芋」を選んだり、蒸したさつまいもを冷やしてサラダに加えたりするのがおすすめです。

皮ごと食べて栄養を逃さない

皮ごと食べて栄養を逃さない

さつまいもを食べる際は、ぜひ皮ごと食べることを習慣にしましょう。実は、さつまいもの皮と実の間には、健康や美容に嬉しい栄養素が豊富に含まれています。

特に注目したいのが、さつまいも特有の成分である「ヤラピン」です。ヤラピンは、胃の粘膜を保護したり、腸のぜん動運動を活発にしたりする働きがあり、便秘解消に効果的とされています。このヤラピンは皮の近くに多く含まれているため、皮をむいてしまうと摂取量が減ってしまいます。

また、皮には抗酸化作用のあるポリフェノールの一種「クロロゲン酸」や、豊富な「食物繊維」も含まれています。これらの栄養素を丸ごと摂取するために、皮はむかずに食べるのが賢い選択です。もちろん、食べる前には泥や汚れをきれいに洗い流してください。

食べるタイミングは活動量の多い日中がおすすめ

同じ量のさつまいもを食べるにしても、タイミングを工夫することで太りにくくなります。糖質制限中にさつまいもを食べるなら、エネルギー消費が多い日中、特に朝食や昼食の時間帯が最適です。

日中は通勤や仕事、家事などで体を動かす機会が多いため、摂取した糖質がエネルギーとして効率良く使われます。一方、活動量が減る夜、特に就寝前に糖質を多く摂ると、エネルギーとして消費されずに脂肪として体に蓄積されやすくなってしまいます。

もし間食として取り入れる場合も、これから活動する午後3時頃までがおすすめです。運動をする習慣がある方なら、トレーニング前のエネルギー補給として少量食べるのも良いでしょう。自分のライフスタイルに合わせて、さつまいもを食べるベストなタイミングを見つけてみてください。

【調理法別】糖質制限中におすすめのさつまいもの食べ方

さつまいもは、その調理法によって糖質量や血糖値の上がりやすさ(GI値)が大きく変わる食材です。糖質制限中にさつまいもを取り入れるなら、甘みを引き出しすぎず、余計な糖質や脂質を加えない調理法を選ぶことが成功のカギとなります。ここでは、糖質制限の観点から見たおすすめの食べ方と、注意したい調理法を具体的に解説します。

おすすめの調理法は「蒸す」「茹でる」

おすすめの調理法は「茹でる」

糖質制限中にさつまいもを食べるなら、最もおすすめの調理法が「蒸す」または「茹でる」です。これらの方法は、さつまいもの糖質量を過度に増やさず、血糖値の上昇を比較的穏やかに保つことができます。

蒸す(蒸し芋)
蒸し芋は、水蒸気でじっくりと加熱するため、栄養素の流出が少なく、さつまいも本来の優しい甘みを楽しめます。焼き芋のように高温で加熱するわけではないため、でんぷんが糖に過剰に分解されるのを防ぎ、GI値の上昇を抑える効果が期待できます。電子レンジのスチーム機能や、鍋と蒸し器を使えば手軽に調理できます。

茹でる(茹で芋)
茹でる調理法も、さつまいものGI値を低く保つのに有効です。水から茹でることで、中心まで均一に火が通ります。さらに、前の章で解説したように、茹でたさつまいもを一度冷やすことで、消化されにくい「レジスタントスターチ」が増加します。レジスタントスターチは食物繊維と似た働きをし、血糖値の急上昇を抑制したり、腸内環境を整えたりする効果が期待できるため、糖質制限中には一石二鳥の食べ方と言えるでしょう。冷やした茹で芋をサラダに加えたり、間食としてそのまま食べるのがおすすめです。

糖質が高くなる「焼き芋」「干し芋」は少量にする

糖質が高くなる「焼き芋」は少量にする

甘くて美味しい「焼き芋」や「干し芋」は、糖質制限中には特に注意が必要な食べ方です。絶対に食べてはいけないわけではありませんが、その特性を理解し、量を厳密に管理する必要があります。

焼き芋
石焼き芋に代表される「焼き芋」は、60~70℃の温度帯で長時間ゆっくり加熱することで、さつまいもに含まれる酵素(β-アミラーゼ)の働きが活発になります。これにより、でんぷんが甘みの強い麦芽糖(マルトース)に分解され、蒸したり茹でたりした場合に比べて糖度が高くなり、GI値も上昇します。ねっとりとして甘みが強い焼き芋は、それだけ糖質が多くなっている証拠です。もし食べる場合は、1食あたり50g(小さな焼き芋の1/4本程度)など、ごく少量に留めましょう。

干し芋
干し芋は、さつまいもを蒸して乾燥させただけのシンプルな加工品ですが、水分が抜けている分、重量あたりの糖質やカロリーが非常に高くなっています。食物繊維も凝縮されていますが、少し食べただけでも糖質を摂りすぎてしまう危険性があります。糖質制限中は、基本的には避けるのが賢明です。どうしても食べたい場合は、1日に小さな1枚程度をご褒美として食べるなど、特別な楽しみ方をするのが良いでしょう。

砂糖や油を多く使う調理法は避ける

糖質制限中は、さつまいも自体が持つ糖質に加えて、調理で糖質や脂質を追加しないことが鉄則です。以下のような調理法は、糖質とカロリーを大幅に増やしてしまうため避けましょう。

避けるべき調理法 避けるべき理由
大学芋 さつまいもを油で揚げた上に、砂糖やみりん、水飴を煮詰めたタレを絡めるため、糖質と脂質の塊と言えます。血糖値を急激に上昇させるため、糖質制限中は最も避けたい調理法の一つです。
天ぷら 小麦粉や片栗粉で作る衣が糖質であり、油を吸収することで高カロリーになります。さつまいも自体の糖質に、衣の糖質と油の脂質が加わるため、糖質制限には不向きです。
スイートポテト 潰したさつまいもに、砂糖、バター、生クリームなどを加えて作ります。美味しさの源であるこれらの材料は、糖質と脂質を大幅に増加させる原因となります。
甘露煮 砂糖やみりんを大量に使って煮込むため、さつまいもが糖分を吸収し、非常に高糖質な一品になります。おせち料理などで見かけますが、注意が必要です。

これらの調理法は、さつまいもを「ヘルシーな食材」から「高糖質・高カロリーな食事」へと変えてしまいます。糖質制限の目的を達成するためにも、調理法は「蒸す」「茹でる」を基本とし、味付けは塩やスパイスなど、糖質を含まないものを活用しましょう。

糖質制限のレベル別さつまいもの取り入れ方

一言で「糖質制限」といっても、その厳格さには様々なレベルがあります。あなたが実践している糖質制限のレベルによって、さつまいもを食事に取り入れられるか、どのくらいなら食べても良いかが変わってきます。ここでは、代表的な2つのレベルに分けて、さつまいもとの上手な付き合い方を具体的に解説します。

厳しい糖質制限(ケトジェニック)の場合

厳しい糖質制限(ケトジェニック)の場合

1日の糖質摂取量を50g以下、場合によっては20g以下に抑え、体をケトーシス状態に導くことを目的とする厳しい糖質制限(ケトジェニックダイエットやスーパー糖質制限とも呼ばれます)。このレベルの糖質制限を実践している場合、残念ながら、さつまいもは原則として避けるべき食材と考えましょう。

さつまいもは野菜の中では糖質量が多く、少量でも1日の糖質上限量に大きく影響します。例えば、蒸したさつまいもをわずか50g(糖質約15g)食べただけで、1日の糖質摂取目標量の半分近くを消費してしまう可能性があります。これでは他の食材から摂れる栄養素が極端に制限されてしまい、栄養バランスが崩れる原因にもなりかねません。

もしケトジェニックダイエット中にどうしてもさつまいもが食べたくなった場合は、トレーニング前にエネルギーを補給する目的で少量(30g程度)を摂取するなど、明確な目的を持って限定的に取り入れるか、糖質制限を一時的に緩める「チートデイ」に楽しむ程度に留めるのが賢明です。

緩やかな糖質制限(ロカボ)の場合

緩やかな糖質制限(ロカボ)の場合

1日の糖質摂取量を70g~130g程度に設定する緩やかな糖質制限(ロカボやプチ糖質制限)であれば、さつまいもを上手に食事へ取り入れることが十分可能です。GI値が低く、食物繊維も豊富なため、むしろ健康や美容の味方になってくれます。

大切なのは、1食あたりの糖質量と1日の総量をしっかり管理することです。一般社団法人 食・楽・健康協会が提唱する「ロカボ」では、1食あたりの糖質量を20g~40gにすることを推奨しています。この基準に沿って、さつまいもを取り入れる際の目安量を以下の表にまとめました。

糖質制限レベル別 さつまいも摂取目安量(1日あたり)
糖質制限のレベル 1日の糖質目標量 さつまいもの摂取目安量(蒸した場合) 取り入れ方のポイント
プチ糖質制限 110g~130g 約80gまで お茶碗半分の白米(糖質約27g)の代わりに、蒸しさつまいも80g(糖質約24g)を食べるなど、主食との置き換えがおすすめです。
スタンダード糖質制限(ロカボ) 70g~110g 約50gまで 1食の糖質量を抑えるため、食事の一部としてではなく、活動量の多い日中の間食として取り入れるのが良いでしょう。糖質15g程度に収まります。

緩やかな糖質制限中にさつまいもを食べる際は、以下のポイントを意識しましょう。

  • 主食と置き換える:ご飯やパンの代わりにさつまいもを食べることで、全体の糖質量を増やさずに満足感を得られます。
  • 間食として食べる:小腹が空いた時に、お菓子ではなく蒸したり茹でたりしたさつまいもを選びましょう。腹持ちが良く、ビタミンやミネラルも補給できます。
  • 調理法を選ぶ:前の章でも解説した通り、シンプルな「蒸し芋」や「茹で芋」が最適です。砂糖やみりんを使う甘露煮や、油で揚げる大学芋、天ぷらなどは糖質・カロリーともに高くなるため避けましょう。

ご自身の糖質制限の目標に合わせて量を調整し、美味しく健康的にさつまいもを楽しんでください。

まとめ

糖質制限中にさつまいもを食べることは、量や食べ方を工夫すれば可能

糖質制限中にさつまいもを食べることは、量や食べ方を工夫すれば可能です。さつまいもは白米などに比べてGI値が低く、食物繊維も豊富なため、血糖値の急上昇を抑えつつ腸内環境を整えるメリットがあります。1日の摂取量を守って主食と置き換え、調理法は蒸すか茹でるのがおすすめです。さらに冷やすことで、より太りにくくなります。ご自身の糖質制限のレベルに合わせて、上手に取り入れましょう。