
糖尿病の方にとって、「焼き芋」は控えるべき食べ物だと思っていませんか?実は、適切な量と選び方を守れば、焼き芋は健康的な食事の一部として楽しむことができます。この記事では、焼き芋の糖質量をご飯と比較しつつ、糖尿病の方が安心して食べられる方法を管理栄養士が解説します。また、焼き芋が持つ食物繊維やビタミンCなどの栄養素が、血糖値コントロールや腸内環境にどのようなメリットをもたらすのかも詳しく紹介します。
糖尿病でも焼き芋を食べても大丈夫?
結論から言うと、糖尿病を抱えている人は、焼き芋を全く食べてはいけないというわけではありません。しかし、焼き芋には多くの糖質が含まれているため、食べる量には注意が必要です。では、なぜ糖尿病を持つ人が糖質の摂取量を特に気にする必要があるのでしょうか。それは、糖質が直接血糖値の上昇に関与し、体内で適切にコントロールされない場合、高血糖状態を招いて症状が悪化する可能性があるからです。日常的な食事の中で血糖値の管理を徹底することが、糖尿病の進行を防ぐために重要とされています。では糖尿病について解説していきます。
糖尿病とはどのような病気?
焼き芋の話の前に、糖尿病について少し触れておきましょう。
糖尿病とは血糖値が高い状態が続く病気
糖尿病は、血糖値が通常よりも高い状態が慢性的に続く病気です。健康な人の場合、体内で分泌されるホルモンであるインスリンが血糖値を適切な範囲内に保つ役割を果たします。しかし、糖尿病の方はインスリンの分泌量が不足したり、その効果が十分に発揮されなかったりするため、血液中の糖分が異常に多い状態が続いてしまいます。このような状態が続くと、高血糖と呼ばれる状況が引き起こされ、体にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
妊娠糖尿病とは?
妊娠中に初めて確認された糖代謝の異常は、「妊娠糖尿病」と呼ばれます。この状態は、妊娠期間中の血糖値が基準値を超える場合に診断されます。特に、血糖値がわずかに高いだけでも、胎児の成長や健康に影響を及ぼす可能性があるため、糖尿病と診断されないレベルの異常であっても「妊娠糖尿病」として注意が必要とされています。妊娠期間中の血糖管理は、母体と胎児の健康を守るために非常に重要です。
「糖尿病」は三大合併症がある
糖尿病は、サイレントキラーと言われ、発症初期にはほとんど自覚症状が現れないため、気付かないまま進行してしまうことが少なくありません。しかし、血糖値が高い状態が長期間続くと、血管が傷つきやすくなり、その影響が全身に広がります。これにより、多量に水分を摂取しても喉の渇きが収まらない、多尿が続く、疲労感が強まるなどの症状が見られるようになる場合があります。また、進行すると糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症といった三大合併症が突然現れるリスクも高まります。症状が見られない初期段階であっても、適切な食事管理や生活習慣の見直しに取り組むことが、健康維持のために非常に重要です。
糖質制限
糖尿病の病気の仕組みをお話ししました。糖尿病を抱えている方が、炭水化物の量を気にしなければいけないのは、「血糖値を上げ過ぎないよう」にするためです。では、糖尿病を抱えている人にとって、どれくらいの焼き芋の摂取量が適切なのでしょうか。
焼き芋とご飯の糖質の量を比べてみよう
ここで、焼き芋100gとご飯100gの、糖質やカロリーを比べてみましょう。
焼き芋 ご飯(白米) カロリー(kcal) 151 156 糖質(g) 35.5 35.6 脂質(g) 0.2 0.2 たんぱく質(g) 1.2 2.5
表から見ていただくとわかるように、焼き芋とご飯の100gあたりの糖質やカロリーは、ほとんど変わりません。糖質が気になるという方が、さつまいもを食べたいときは、100gのご飯と置き換えて食べるといいでしょう。ちなみに100gの焼き芋は、だいたい小さいサイズ一本、100gのご飯は、お茶碗に6~7分目くらいの量です。脂質やたんぱく質も、同じ量の焼き芋とご飯では、それほど変わらないので、気にする必要はないでしょう。
最近流行りの糖度の高いさつまいもには注意!
ただし、焼き芋に使用するさつまいもを選ぶ際には、注意が必要なポイントがあります。それは、安納芋や紅はるかといった糖度の高い品種を避けることです。これらの品種は甘みが強く、美味しさでは人気がありますが、その分糖質の含有量も高くなります。そのため、糖尿病の方や血糖値を気にする人にとっては、血糖値の急激な上昇を引き起こす可能性があるため、これらの品種の摂取は控えることが推奨されます。適切な品種を選ぶことで、健康を損なうことなく焼き芋を楽しむことができます。
焼き芋にするとカロリーが上がる?
生のさつまいもに比べて、焼いた場合、カロリーが上がってしまうのが心配な方もいるでしょう。結論から言うと、さつまいもは、焼き芋にしてもカロリーは上がらないので、気にしなくても大丈夫です。
さつまいも(生)100g さつまいも(焼き芋)100g カロリー(kcal) 126 151 糖質(g) 29.7 35.5
上の表を見ると、生のさつまいもに比べて、焼いたさつまいもは、カロリーや糖質が上がってるように見えます。これは、生のさつまいもと、焼いたさつまいもに含まれる水分の違いに原因があります。含まれている水分が焼き芋の方が少ないため、同じ量を比べたときに糖質やカロリーが高いように見えるだけなのです。
ご飯の替わりに焼き芋に置き換える
前章では、同じ量であれば、ご飯と焼き芋を置き換えて食べるとよいという話をしました。実は、ご飯を焼き芋に置き換えることには、さらなるメリットがありました。
ご飯に含まれない栄養素が摂取できる
焼き芋100g ご飯(白米)100g 食物繊維(g) 3.5 1.5 カリウム(mg) 540 29 ビタミンC(g) 23 0 ビタミンB6(g) 0.33 0.02
上の表を見ると、ご飯に比べて焼き芋は、食物繊維やカリウム、ビタミンC、ビタミンB6の数値が高いことがわかります。食物繊維には、便のかさを増やすことによって便通を良くし、腸内環境を整えてくれる働きがあります。また食物繊維には、血糖値が急に上がるのを防ぐ働きが期待されています。カリウムには、ナトリウムを体外に排出する働きがあるので、むくみや高血圧を防ぐ効果が期待されており、ビタミンCとビタミンB6は、ともに免疫力アップに効果があります。血糖値に悩まされている人にとって、さつまいもは多くの健康効果が期待できるのです。
焼き芋を食べるときは皮も一緒に
ご飯の代わりに焼き芋を食べるときは、皮も一緒に食べることをおすすめします。皮を食べることによって、より多く食物繊維が摂れるという利点があります。また焼き芋の皮に含まれるアントシアニンは、ポリフェノールの一種であり、抗酸化作用が認められているのです。
焼き芋は冷やして食べよう
最近では、スーパーやコンビニで「冷やし焼き芋」に人気が高まっています。食べたことがある人もいるのではないでしょうか。焼き芋は冷やすと、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)という成分が増加します。これは食物繊維と同じような働きを持っています。
まとめ
焼き芋と糖尿病についてお話ししましたが、いかがだったでしょうか。糖尿病を抱えている方でも、焼き芋を楽しむことは可能です。ただし、糖質量が高い食品であるため、食べる量や品種の選び方には注意が必要です。例えば、安納芋や紅はるかなどの糖度が高い品種は避け、小ぶりなサイズの焼き芋を選ぶことで血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。また、ご飯と焼き芋を比較した場合、同じ100gあたりの糖質量はほとんど変わりませんが、焼き芋には食物繊維やビタミンC、カリウムなど、ご飯には含まれない栄養素が豊富に含まれています。これらの栄養素は腸内環境を整えたり、血圧を安定させたりと健康面で多くのメリットをもたらします。皮を一緒に食べたり、冷やして食べることでさらに健康効果を高めることもできます。適切な選択と工夫を取り入れて、焼き芋を楽しみながら健康を維持していきましょう。