寒さが深まる季節になると、ほっと温まる焼き芋の甘い香りが恋しくなりますね。スーパーの店頭や屋台から漂う香ばしい匂いにつられて、つい手に取ってしまう…そんな経験がある方も多いでしょう。焼き芋は、ほくほくとした口あたりとやさしい甘みが魅力ですが、いざ食べるときに「皮はどうする?」と迷うことがあります。多くの人は皮をむいて捨ててしまう傾向がありますが、実は皮まで食べる人も少なくありません。
意外かもしれませんが、この“皮ごと焼き芋”にはうれしい効果がたくさんあります。さつまいもの皮には、美容や健康を支える成分が豊富に含まれており、食べないのはもったいないほど。ビタミンやポリフェノール、食物繊維など、日々の元気づくりに役立つ栄養がぎゅっと詰まっています。
今回は、焼き芋の皮を食べることで得られるメリットや、そこに秘められた栄養素について、やさしく丁寧にご紹介していきます。
焼き芋の皮は食べてもいいの?

焼き芋の皮は、実はそのまま食べても問題ありません。むしろ、皮には栄養がたっぷりと詰まっているため、上手に取り入れたい部分でもあります。ただし、「本当に食べても大丈夫なの?」と気になる方も多いですよね。最終的には好みや食感の感じ方によりますが、まずは安心して食べられる理由や、よくある不安点を知っておくと迷わずにすみます。
ここからは、焼き芋の皮を普段あまり食べない方が感じやすい疑問や懸念について、ひとつずつわかりやすくお話ししていきます。
焼き芋の皮の衛生面について

焼き芋の皮を食べる際にまず気になるのは、「土や汚れが残っていないか」という点ではないでしょうか。確かに、さつまいもは畑で育つため、掘りたての状態では土がついていることがあります。でもご安心ください。出荷までの過程で、産地では丁寧な洗浄作業が行われています。そのため、スーパーや八百屋さんに並ぶ頃には、すでにきれいに洗われた状態になっているのです。
また、もし微量の菌や汚れが付着していたとしても、焼く・蒸すといった加熱工程でしっかりと火が通ることで、自然に殺菌されます。つまり、衛生面での心配はほとんどありません。ほんのり香ばしく焼けた皮ごと味わえば、さつまいもの風味をより深く楽しむことができますよ。
焼き芋の皮の毒性について

焼き芋の皮を食べることに抵抗を感じる理由のひとつに、「ジャガイモのように毒があるのでは?」という心配があります。確かに、ジャガイモの芽や緑色に変色した皮にはソラニンという有害成分が含まれており、調理の際には取り除く必要がありますよね。
ですが、さつまいもはジャガイモとはまったく別の植物です。ジャガイモがナス科に属するのに対し、さつまいもはヒルガオ科。分類からしてまったく異なるため、同じような毒性を心配する必要はありません。さつまいもの皮や芽の部分には有害な成分は含まれておらず、安心して皮ごと食べることができます。
むしろ、皮の部分にはポリフェノールや食物繊維など、体にうれしい栄養が詰まっています。無理にむいてしまうのは、ちょっともったいないかもしれませんね。
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さつまいもの皮に含まれる栄養素

さつまいもの皮には、実はうれしい栄養がたっぷりと詰まっています。そのため、「皮をむいてしまうのはもったいない」と言われるのも納得です。見た目は薄くて地味に感じるかもしれませんが、この部分こそが健康や美容を支えてくれる大切な栄養の宝庫なのです。
ここからは、さつまいもの皮に含まれている主な栄養素を取り上げながら、その働きや魅力をわかりやすくご紹介していきます。
食物繊維

さつまいもの皮には、豊富な食物繊維が含まれています。もちろん実の部分にも繊維はありますが、皮ごと食べることでその量をぐっと増やすことができます。食物繊維は腸の動きを助け、便のかさを増やしてくれるため、便秘の予防や解消に役立つ存在です。さらに、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内フローラのバランスを整える働きも期待できます。
それだけではありません。食物繊維は糖や脂質の吸収をゆるやかにするため、食後の血糖値の上昇を抑えたり、コレステロール値の上昇を防いだりする効果もあります。そのため、健康を意識している方や、ダイエット中の方にも皮ごと食べるスタイルはぴったり。香ばしい皮の風味とともに、体にもやさしいひと口を楽しめます。
クロロゲン酸

さつまいもに含まれる「クロロゲン酸」も、ぜひ注目したい成分のひとつです。クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用を持つことで知られています。この働きにより、体内で発生する活性酸素を取り除き、老化の進行をゆるやかにしたり、動脈硬化や免疫力の低下を防いだりする効果が期待できます。
また、クロロゲン酸は料理の際にアクとして現れる成分でもあり、特に皮の近くに多く含まれています。そのため、皮をむかずに焼き芋を楽しむことで、効率よくこのポリフェノールを摂取できるのです。香ばしい皮の香りを味わいながら、体の内側からキレイをサポートできるのはうれしいポイントですね。
アントシアニン

さつまいもの皮がほんのり紫色をしているのは、「アントシアニン」という成分によるものです。アントシアニンはブルーベリーや赤ワインにも多く含まれていることで知られるポリフェノールの一種で、鮮やかな色合いとともに、体にうれしい働きを持っています。
このアントシアニンには、クロロゲン酸と同じく強い抗酸化作用があり、体内の細胞を酸化ストレスから守ってくれます。さらに、目の疲れを和らげ、視力の維持をサポートする効果も期待できるのが特徴です。日常的にパソコンやスマートフォン、タブレットなどの画面を見る時間が長い方にとっては、積極的に摂りたい成分のひとつですね。
焼き芋を皮ごと味わうことで、このアントシアニンも無駄なく摂取できます。見た目の美しさだけでなく、体にもやさしい紫色なのです。
ヤラピン

さつまいもを包丁で切ったときに、表面からにじむように出てくる白い液体…それが「ヤラピン」と呼ばれる成分です。あまり聞き慣れないかもしれませんが、ヤラピンはさつまいも特有の消化酵素の一種で、体にうれしい働きをしてくれます。
このヤラピンには、胃の粘膜をやさしく守り、腸のぜん動運動を促す効果があります。さらに便を柔らかくして排出をスムーズにしてくれるため、便秘が気になる方にもぴったりの成分です。焼き芋に豊富な食物繊維と一緒に摂ることで、腸内環境の改善効果がより高まるのも魅力です。
昔から「さつまいもの皮ごと食べると胸やけしにくい」と言われるのは、このヤラピンの働きによるもの。やさしい甘みの中に、体を整える自然の力がしっかりと息づいているのです。
さつまいもを皮ごとおいしく食べられる調理法

焼き芋を皮ごと楽しむかどうかは、「その皮をおいしいと感じられるかどうか」がポイントになります。香ばしく焼けた皮のパリッとした食感や、ほんのり焦げた香りが好きな方にとっては、そのまま食べるのがいちばんのごちそうでしょう。
一方で、「皮が少し硬い」「焦げの風味が苦手」と感じる方もいますよね。そんなときは、焼き芋以外の調理法を試してみるのがおすすめです。たとえば、蒸し芋にすれば皮がしっとりやわらかくなり、口当たりがぐっと良くなります。また、茹でたさつまいもを皮付きのまま角切りにして、マヨネーズや枝豆と和えたサラダにするのも人気の食べ方。彩りも良く、自然な甘みとまろやかさが引き立ちます。
少し工夫するだけで、皮付きのさつまいもがもっと身近でおいしく感じられるはずです。
そのほか、さつまいもを皮ごとスティック状に切り、フライパンで少量の油で揚げ焼きにすれば、簡単にスティック大学芋が完成します。甘くてサクサクなのでお子様ウケも抜群ですよ。
まとめ

ここまで、焼き芋の皮にまつわる魅力をたっぷりとご紹介してきました。読んでみて、「皮ってこんなにすごいんだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。さつまいもの皮には、食物繊維をはじめ、ビタミンやミネラルなど、体にうれしい栄養素がぎゅっと詰まっています。むいて捨ててしまうのは、まさに宝を見逃しているようなもの。特に食物繊維は、腸内環境を整えて便秘の解消を助けるほか、ダイエット中の食事にもぴったりです。
とはいえ、「焼き芋の皮はちょっと硬くて食べにくい」と感じることもありますよね。そんなときは、少し工夫して調理法を変えてみるのがおすすめです。例えば、皮付きのまま薄くスライスしてチップスにすれば、パリッと軽やかな食感に。煮物やスープに入れれば、皮が柔らかくなって自然に食べやすくなります。また、フライパンで揚げ焼きにすると香ばしさが引き立ち、皮ならではの風味を楽しめます。
次にさつまいもを味わうときは、ぜひ皮までまるごと食べてみてください。ひと口ごとに、これまで気づかなかった新しいおいしさと、自然の恵みの深さを感じられるはずです。








