さつまいもブーム、焼き芋ブームはなぜ?ブームになっているのか?

さつまいもが日本に伝わったのは江戸時代のことです。それ以来、焼き芋や干し芋、大学芋といったさまざまな料理に活用され、日本人の食卓に深く根付いてきました。その優しい甘さと豊富な栄養価から、昔から子どもから大人まで幅広い世代に親しまれてきた食材です。そして今、そのさつまいもが再び注目を集め、ブームとして盛り上がりを見せています。現代では、スイーツや料理の素材としても進化を遂げ、新たな形でさつまいもの魅力が再発見されています。例えば、専門店が続々と登場し、焼き芋の新しいスタイルや創作スイーツが話題になっています。また、健康志向の高まりもさつまいも人気の一因といえるでしょう。低カロリーで食物繊維が豊富な点が評価され、美容やダイエットに敏感な人々からも支持されています。本記事では、さつまいもが今再び脚光を浴びている背景や、現代のライフスタイルにどのように取り入れられているのか、その理由について詳しく見ていきます。

現在は第4次焼き芋ブーム

近年、街を歩いていると、焼き芋専門店や焼き芋を扱うカフェを目にする機会が増えています。かつての屋台のイメージとは異なり、洗練されたデザインの店舗や独自のこだわりを持つお店が多く、焼き芋の存在がより身近でスタイリッシュなものになりました。実は、現在は「第4次焼き芋ブーム」と言われており、さつまいもが再び注目を集める大きなきっかけとなっています。このブームを背景に、焼き芋の楽しみ方も大きく広がりました。伝統的なホクホクの焼き芋だけでなく、スイーツとしてアレンジされた新しい形のメニューが次々と登場しています。例えば、濃厚な甘さを活かした焼き芋パフェや、温かみのある風味を楽しめる焼き芋ラテなどが人気を博しています。こうした商品は、若者から年配の人々まで幅広い層に支持され、焼き芋の魅力がさらに進化し、多くの人々に愛され続けていることがわかります。

焼き芋ブームの歴史

焼き芋ブーム-焼き芋イメージ

「さつまいもアンバサダー協会」の情報によれば、現在は「第4次焼き芋ブーム」の真っ只中とされています。その歴史を振り返ると、最初の焼き芋ブームは江戸時代から明治維新にかけての時期に起こりました。当時、砂糖は非常に貴重で庶民には手が届きにくかったため、甘さを楽しめる焼き芋は貴重な食べ物として人気を集めました。さつまいもが広く栽培され、甘味を手軽に味わえることが人々の関心を引いたのです。

第2次ブームは明治時代から関東大震災(1923年)の時期にかけて訪れました。この時期、東京を中心とした都市部で人口が急激に増加したことに加え、さつまいもが安価で栄養価も高かったことから、多くの人々にとって焼き芋は身近な存在となりました。特に、家庭の台所事情が厳しい中で、手軽にエネルギー源を確保できる食材として重宝されたといわれています。

次に訪れた第3次ブームは、1951年から大阪万博が開催された1970年頃までの間です。この時期には、焼き芋の屋台が東京に登場し、その後リヤカーや軽トラックを使った移動販売が全国的に広がりました。冬の風物詩として、焼き芋屋の呼び声とともに香ばしい香りが街中を漂い、多くの人々が焼き芋を楽しむ姿が見られました。しかし、1970年以降、ファストフード店やコンビニの普及に伴い、焼き芋ブームは次第に影を潜めることになります。

コンビニで買える冷やし焼き芋

そして、2000年頃から現在に至る第4次焼き芋ブームでは、焼き芋は新たな形で進化を遂げています。焼き芋専門店が増加し、夏季限定の冷やし焼き芋や焼き芋パフェといったメニューが登場したことで、季節を問わずさつまいもを楽しめるようになりました。また、洗練されたパッケージや店舗デザインなどが注目を集め、焼き芋は単なる昔ながらの食べ物ではなく、おしゃれで現代的なスイーツとして再認識されています。このように、長い歴史の中で形を変えながらも、さつまいもは常に人々の生活に寄り添ってきたことがわかります。

 

焼き芋ブームとなった背景

焼き芋ブームの背景(ねっとり焼き芋イメージ)

現在の第4次焼き芋ブームが起こった背景には、主に二つの要因が挙げられます。

まず、一つ目の要因は、1998年に登場した業務用自動焼き芋オーブンです。この革新的な機器により、焼き芋が店舗で手軽に提供されるようになり、特にスーパーマーケットでは店頭で焼きたての焼き芋が並ぶ光景が一般的になりました。これにより、従来は屋台や家庭で楽しむものだった焼き芋が、買い物のついでに手軽に購入できる商品として多くの人々に受け入れられました。この新しい流通スタイルは、焼き芋を日常の食生活により溶け込ませるきっかけとなったのです。

二つ目の要因は、「安納芋」や「紅はるか」といったねっとり系品種の登場です。それ以前は、「紅あずま」や「高系14号」といったほくほく系品種が主流で、焼き芋の食感は軽やかで素朴なイメージが強かったのが特徴でした。しかし、ねっとり系品種の登場により、焼き芋はその甘みの強さと濃厚でしっとりとした食感が際立ち、まるでスイーツのような贅沢な味わいを楽しめる食べ物へと進化しました。特に、砂糖やバターを加えなくても十分な甘さを感じられるこれらの品種は、多くの人々に衝撃を与え、その魅力が広まることで焼き芋全体の人気を押し上げました。

これら二つの要因が相互に作用し、焼き芋がより手軽で身近なものになると同時に、品質や味わいの面でも大きく進化を遂げたことが、第4次焼き芋ブームを支える大きな力となっています。

 

焼き芋ブームで注目されるさつまいもの品種

現在の焼き芋ブームで人気となっている、ねっとり系のさつまいも品種から代表的なものをご紹介します。

焼き芋ブームの牽引品種:紅はるか

焼き芋ブームの牽引役品種-紅はるか

「べにはるか」は、独立行政法人・九州沖縄農業研究センターによって育成され、2010年に品種登録された、比較的新しいさつまいもの品種です。その特徴的な滑らかな舌ざわりは、従来のさつまいもとは一線を画し、焼き芋として調理しても口当たりが軽く、喉に詰まるような感覚がありません。そのため、幅広い年齢層から親しまれやすい品種といえます。

また、「べにはるか」の甘さの秘密は、その糖質構成にあります。豊富な糖質の中でも、特に麦芽糖の比率が高いことが特徴です。このため、口に広がる甘みは非常に強く感じられる一方で、後味はすっきりとした爽やかさを持っています。このバランスの良い甘さが、「べにはるか」を焼き芋用のさつまいもとして人気の品種に押し上げています。さらに、焼いた際に蜜がたっぷりと染み出す見た目の美しさも、「べにはるか」の魅力の一つです。その鮮やかな黄金色の断面と濃厚な甘みは、一度食べると忘れられないインパクトを与え、多くの人々を虜にしてきました。「べにはるか」は、さつまいもの可能性をさらに広げた画期的な品種といえるでしょう。

焼き芋ブームの牽引品種:安納芋

焼き芋ブームの牽引役品種-安納芋

「安納芋」の歴史は、第二次世界大戦後までさかのぼります。当時、日本兵がスマトラ島から持ち帰った芋が、種子島で栽培されたのが始まりとされています。その後、この芋の栽培が種子島内の安納地区で広がり、この地名にちなんで「安納芋」と名付けられました。その名前が示す通り、安納芋は種子島発祥の特産品として知られるようになります。

鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場では、平成元年から安納芋の改良と選抜作業が行われました。その結果、平成10年には「安納紅」と「安納こがね」という品種が正式に登録され、現在のように安納芋が広く親しまれる基盤が作られました。この品種改良の過程で、安納芋の独自の特徴が際立つようになりました。安納芋は、他のさつまいもと比べてショ糖を多く含むのが特長で、この高い糖度が焼いた際の自然な甘さを引き立てます。また、しっとりとした食感も魅力の一つで、口の中で溶けるような滑らかな舌触りを楽しむことができます。その糖度と食感のバランスが絶妙であり、焼き芋をはじめ、さまざまな調理方法でその魅力を発揮します。

焼き上げると、中から蜜がじんわりと溢れ出し、鮮やかな黄金色が目に飛び込んでくる様子も、安納芋ならではの楽しみ方です。この視覚的な美しさと濃厚な甘さが、多くの人々に感動を与え、安納芋を特別な存在へと押し上げてきた要因といえるでしょう。

焼き芋ブームの牽引品種:シルクスイート

焼き芋ブームの牽引役品種-シルクスイート

「シルクスイート」は、種苗会社によってオリジナルで開発された品種で、2018年に品種登録されたばかりの新しいさつまいもです。その名前が示すように、シルクのように滑らかな舌ざわりが大きな特徴で、甘みも非常に強く、焼き芋にするとその特性が最大限に引き出されます。この食感と甘さのバランスが、多くの人々に愛される理由となっています。

「シルクスイート」は熱を加えると鮮やかな黄色に変わる特性を持ち、この美しい色合いが見た目にも食欲をそそります。この色の変化は焼き芋としてだけでなく、干しいもやその他の加工品としても映えるため、視覚的な魅力を求める料理やスイーツの素材としても注目されています。特に、干しいもに加工された場合でも、その鮮やかな黄色がしっかりと残り、見た目と味の両方で高い評価を受けています。「シルクスイート」は、さつまいもの新しい可能性を切り開いた品種と言えるでしょう。そのしっとりとした食感と甘さ、そして鮮やかな色合いの相乗効果が、料理やお菓子作りの分野でも幅広く活用され、ますます人気が高まっています。この品種は、伝統的なさつまいもとは一味違う魅力を持ち、現代の食卓に新しい価値を提供しています。

焼き芋(さつまいも)は健康にも美容にもおすすめ

焼き芋(さつまいも)は美容にも有効

さつまいもは、焼き芋として楽しむだけでなく、その栄養価の高さから健康や美容を意識する人々の間で注目されています。この根菜には、食物繊維、カリウム、ビタミンA、ビタミンCといった多くの栄養素が豊富に含まれており、それぞれが身体に嬉しい効果をもたらします。

まず、食物繊維は腸内環境を整える働きがあり、便秘の予防や解消に役立つことが知られています。また、整腸効果だけでなく、肥満や糖尿病の予防にも繋がるとされており、健康維持には欠かせない成分です。次に、カリウムは体内の余分な水分を排出する作用があるため、むくみの予防に役立ちます。さらに、ビタミンAは皮膚や粘膜の健康を維持する役割を果たし、乾燥やトラブルから肌を守る働きを持っています。一方、ビタミンCは抗酸化作用が高く、細胞の老化を防ぐだけでなく、免疫力の向上や美肌効果も期待されています。また、さつまいもは脂質がほとんど含まれていないため、カロリーを気にする人々にとっても魅力的な食品です。ダイエット中の置き換え食としてだけでなく、ヘルシーなおやつとしても適しており、その自然な甘みが満足感を与えてくれます。

まとめ

さつまいもブーム、焼き芋ブームまとめイメージ

現在、第4次焼き芋ブームの勢いに伴い、さつまいもを使ったスイーツや新しい料理が次々と登場し、さつまいも自体の人気がますます高まっています。焼き芋だけでなく、さつまいもパフェやタルト、アイスクリームといったスイーツに進化し、その魅力が幅広い形で楽しめるようになっています。もともとさつまいもは、その甘さだけでなく、栄養価の高さからも注目されている食材です。さつまいもには、腸内環境を整える食物繊維、肌や粘膜を健やかに保つビタミンA、抗酸化作用のあるビタミンC、体内の余分な塩分を排出してむくみを防ぐカリウムなど、さまざまな健康に役立つ成分が含まれています。これらの栄養素は、体の内側から健康と美容をサポートしてくれる心強い存在です。さらに、さつまいもは脂質が少なく低カロリーでありながら、自然な甘みがしっかりと感じられるため、ヘルシー志向の人々にも好まれています。

調理法も多彩で、焼く、蒸す、揚げる、煮るなど、さまざまな方法で楽しむことができ、料理のバリエーションを豊かにしてくれます。家庭ではシンプルに焼き芋やスイートポテトとして楽しむのはもちろんのこと、煮物やお菓子、さらにはスープやサラダに取り入れることで、新しい味わいを発見することができます。このように、さつまいもは健康にも美容にもおすすめの食材です。いろいろな調理法で、さつまいもを味わいましょう!