一言でさつまいもといっても、食感や甘さ、栽培のしやすさなど、特徴が異なるいろいろな品種があります。最近では、スーパーや八百屋などの店頭でも、見慣れない品種のさつまいもを見かけることがあるのではないでしょうか。そこで今回は、さつまいもの最新品種について紹介します。
さつまいもの品種ってどのくらいあるの?
農林水産省によると、2019(令和元)年に栽培されたさつまいもの主要な品種は、約60品種あるとされています。さつまいもの用途は、青果用以外にも、焼酎用や加工用、でんぷん用などがあって、用途に合わせてさまざまな品種が育成されています。
青果用の主要な品種
べにはるか
「べにはるか」は、高い糖度としっとりとした食感が特徴です。焼きいもにした時の甘さは「安納芋」と比較される程高く、人気を二分しています。品種登録されたのは2010年と比較的新しいのですが、品種別の作付けシェアは21.1%(令和3年度産)で、主に焼酎の原料となる「コガネセンガン」次いで第2位。青果用の品種では最も多く作付けされています。
べにあずま
「べにあずま」は、品種別の作付けシェアが9.9%(第3位)と、「べにはるか」に次いで多く作付けされている青果用さつまいもの品種です。品種登録されたのは1985年で、令和元年度産で「べにはるか」に抜かれるまでは、品種別作付けシェアは「コガネセンガン」に次いで2位でした。主に関東で多く栽培され、西の「高系14号」に対して東の「べにあずま」と言われています。甘みは「べにはるか」より少ないですが、繊維質が少なくホクホクした食感が特徴です。
高系14号
「高系14号」は、作付けシェア9.3%で第4位の品種です。デビューしたのは1945年と古いですが、各地で選抜や品種改良が行われ、いまだに四国や九州などの西日本で多く栽培されています。徳島県の「鳴門金時」や宮崎県の「宮崎紅」は、「高系14号」から派生したオリジナル品種です。ホクホクした中にもしっとりした食感があり、「べにはるか」や「べにあずま」よりは、あっさりとした甘さです。
さつまいもの新しい品種を開発する目的
食味や外観、貯蔵性の向上、早期肥大性や収量を増やす、病害虫への抵抗性を高める、などを目的としてさつまいもの育成(品種改良)は行われます。さつまいもの新しい品種を育成するには、交配採種から10年以上を要する息の長い仕事です。
さつまいもの新しい品種と特徴
最近登場した、青果用のさつまいもの品種と特徴を紹介します。
あかねみのり
「あかねみのり」は、外観と食味が良い「べにはるか」を母に、カロテンを含有し収量が多い「作系22」を父として交配し選抜育成された品種で、2020年に品種登録出願されました。カロテンを含むため、いもの肉色がオレンジ色を帯びていて、さつまいもチップスや干しいもなどの加工に適しています。収量は「べにはるか」より4〜5割程多く、ごく多収です。いもの肉色がオレンジ色(あかね)を帯びて、多収であること(みのり)から「あかねみのり」と命名されました。
ほしあかね
「ほしあかね」は、カロテンとアントシアニンを含有する「関東136号」を母に、でん粉の糊化が開始する温度がやや低く、干しいもに加工した時の品質に優れる「ほしキラリ」を父として交配し選抜した品種で、2020年に品種登録出願されました。カロテンを含んでいるため、いもの肉色がオレンジ色を帯びていて、干しいもの加工に適しています。干しいも用の品種で、いもの肉色がオレンジ色(あかね)を帯びていることから「ほしあかね」と命名されました。
あまはづき
「あまはづき」は、ねっとりとした食感で焼きいもに適して多収の「からゆたか」を母、早掘り栽培でも多収の「谷05100‐172」を父として交配し選抜した品種です。2021年に品種登録出願されました。焼きいもとして人気が高い「べにはるか」は、収穫後に一定期間貯蔵しないと、甘みが少なく粉質です。「あまはずき」は収穫後に貯蔵しなくても、糖度が高く加熱した時の肉質が粘質という特徴があります。その一方で、貯蔵性はあまり良くありません。
ゆきこまち
「ゆきこまち」は、食味が良くて病虫害抵抗性に優れている「ひめあやか」を母に、干しいも加工用の「関東134号」を父として交配し選抜した品種です。2021年に品種登録出願されました。「ゆきこまち」は収量性に優れていて、冷涼な気候の北海道においても、「べにはるか」より3割程度多収です。品質はやや粉質でホクホクした食感、「べにあずま」と同程度の食味や糖度です。
ふくむらさき
「ふくむらさき」は、糖度が高く食味の良い「九系255」を母に、アントシアニンを多く含む紫色の「パープルスイートロード」を父として交配し選抜した品種です。2018年に品種登録出願されました。いもの肉色は紫色で、「パープルスイートロード」より糖度が高く、しっとりとした食感で、焼きいもにした時の食味に優れています。
まとめ
各地で栽培されているさつまいもは、約60品種あるとされています。さらに育成(品種改良)が行われていて、次々と新しい品種のさつまいもが登場しています。もし、見かける機会があれば、食べ比べしてみてはいかがでしょうか。