ますます注目される「腸活」とは?
最近よく耳にするようになった「腸活」。一言でいうと、腸活とは「腸内環境を整える」取り組みのことです。以前から腸の調子を整えることの大切さは認識されていたのですが、近年、様々な実験から健康や美容の維持と向上に腸内環境が密接に関わっていることが分かってきて、更に注目を高めていました。そして、新型コロナウイルスの流行により、腸の免疫力に関して注目が高まり、腸活はさらに話題にされるようになりました。筆者は以前から予防医療研究協会の栄養士として腸活の発信をしてきましたが、実際に新型コロナウイルスの流行後は一層多くの反響があり、世間の注目度が高まっていることを実感しています。
その腸活の要となるのが何といっても食事です。腸に良い食品と聞くと、なんとなくヨーグルトや納豆といった発酵食品が浮かんでくるのではないかと思いますが、実はさつまいもも腸に良い成分が様々含まれている腸活食材なのです。この記事では腸活の基本的な知識から、何故さつまいもが腸活に良いのか、どのように食べると効果的?そのさつまいもを使用したオススメレシピまでお伝えしていきます。
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腸内フローラを整えることが全てを制する
さて、「腸内環境が整っている」とはどんな状態でしょうか。私たちの腸には約100兆個、種類にして約1,000種もの細菌が隙間なく棲みついています。この様子を顕微鏡で見ると、お花畑(flora)のように見えることから腸内フローラと呼ばれるようになりました。これらの腸内細菌は大きく分けて「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分けられ、善玉菌;悪玉菌;日和見菌のバランスが2:1:7の腸内フローラが理想のバランスとされています。
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文字の通り善玉菌の割合が多いと、腸内細菌が良好に働いてくれるのですが、残念ながら暴飲暴食、ストレスや生活習慣の乱れなどの影響で簡単に崩れ、悪玉菌優位に傾いてしまいます。悪玉菌が優勢になると、通常は無害である日和見菌も悪玉菌の味方をするようになってしまいます。そして腸内環境の乱れた状態が続くと、便秘や肌荒れといった分かりやすい症状のほか、全身の不調や病気にも繋がっていってしまうので、日頃から心がけが必要です。
こんなにある!腸活のメリット
先ずは腸活で腸内フローラが理想のバランスを維持出来ている=腸内環境が良好な状態であると、どのような効果が期待できるのかをご紹介していきます。
便秘解消
腸内環境の乱れによって悪玉菌が増えると、腸の蠕動運動が鈍くなります。これが便秘の原因の1つです。逆に善玉菌の一種である乳酸菌は、乳糖やブドウ糖を分解して乳酸を作り、腸内を善玉菌にとって良好な状態である酸性に保ちます。善玉菌が良好な環境になると、悪玉菌の増殖が抑制されて。腸の蠕動運動が活性化され、便秘解消に繋がります。
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美肌効果
腸内環境が乱れると、悪玉菌が増加することは前述でもお伝えしましたが、この悪玉菌がタンパク質を分解する過程でアンモニアや硫化水素などの有害物質を発生させます。これらは腸から吸収されて血液中に流れ、皮膚組織にも到達します。人間の体には有害物質を体外へ排出する働きがあり、それは肌も例外でなく皮膚からも排出しようとします。その結果、キメが乱れたり、古い角質がたまることによって肌荒れが生じると考えられています。逆を言えば、腸内環境が整うと有害物質の発生を抑え、肌トラブルの影響を減らすことが出来ます。また、善玉菌が優位な腸内環境になるとビタミンの吸収率も上がるため、肌に必要な栄養もより吸収することが期待できます。
ダイエット効果
腸内細菌には摂取したオリゴ糖や食物繊維から短鎖脂肪酸を作り出す働きがあります。肥満は脂肪細胞が血中の脂肪を取り込み、肥大化することで生じますが、脂肪細胞にあるセンサーが短鎖脂肪酸を感知すると、脂肪の取り込みをブロックするので過剰な脂肪の蓄積を抑制することに繋がります。
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免疫力向上
体の中で免疫のシステムを主に担っているのは免疫細胞です。そして免疫細胞の約7割が腸に存在するといわれています。腸内環境が良いと免疫細胞も活性化され、ウイルスや病原体と戦う抗体を効率よく生産出来るようになります。先にお話しした短鎖脂肪酸も免疫と関りが深く、腸粘膜を丈夫にしてバリア機能を高める、過剰な免疫反応を抑える細胞を増やして免疫機能を調節し、アレルギー疾患などを抑えるといった働きがあり、全身の免疫力アップに影響を及ぼすといわれています。
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幸せ効果
腸内細菌は神経伝達物質であるセロトニンの合成にも大きく関わっています。この物質は「幸せホルモン」とも呼ばれており、精神を安定させる働きがあり、逆に不足するとイライラしたり落ち込んだり、さらにはうつ病の発症や不眠を引き起こしてしまいます。体内のセロトニンの9割が腸に存在するといわれていることからも、良好な腸内環境でセロトニンの分泌が活発になると精神的な安定や幸福感を得られやすいと考えられています。
睡眠の質を高める
腸内細菌はタンパク質を分解・合成して「トリプトファン」というアミノ酸をつくります。このトリプトファンは前述のセロトニンやメラトニンの生成に関わっています。メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれており、眠りを誘う作用があります。そのため腸内細菌の働きを良くすると睡眠の質が高まるといわれています。
腸内環境が整うと様々なメリットが享受出来ることがお分かりになられたと思います。説明の中に「善玉菌」や「腸内細菌」という言葉が何度か出てきたと思いますが、これらの菌とさつまいもには深い係りがあります。それでは、さつまいもと腸活の関係について説明していきます。
理想の腸内環境をつくる食品
腸活で積極的に摂りたい食材は大きく分けて2つの部類に分けられます。一つは善玉菌そのものを含んでいる食品、もう一つは難消化性デンプンや食物繊維に代表される善玉菌の餌になる食品です。前者は「プロバイオティクス」後者は「プレバイオティクス」と呼ばれ、これらをセットで摂ることを「シンバイオティクス」と呼びます。効果的に腸内環境を整えるためには「シンバイオティクス」が役立つと考えられています。それぞれに該当する食品は下記のとおりです。
プロバイオティクス
納豆、キムチ、チーズ、ぬか漬け、ヨーグルト、乳酸菌飲料、甘酒、塩麹、醤油、味噌、酢、ザワークラフト、等
プレバイオティクス
大豆、根菜類、海藻類、きのこ類、アスパラガス、バナナ、りんご、はちみつ、等
そして、さつまいもはこのプレバイオティクスに該当します。
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さつまいもは食物繊維の宝庫
さつまいもの凄い点は食物繊維も難消化性デンプンも豊富に含有されている点です。食物繊維はじゃがいもの約2倍の量を含んでいます。更に、食物繊維は水に溶ける水溶性食物繊維と水には溶けない不溶性食物繊維に分類されますが、さつまいもはその両方を含んでいます。食物繊維の種類別の働きは次の通りです。
主な成分 | 働き | |
水溶性食物繊維 | ペクチン グルコマンナン アルギン酸 |
腸内環境の改善 血中コレステロール低下 血糖上昇の抑制 中性脂肪低下 |
不溶性食物繊維 | セルソース リグニン キチン |
排便促進 過剰脂肪分の排出 腸内トキシン(毒素)排出 |
この全ての働きが期待できるさつまいもは、腸活は勿論のこと健康の維持に大変優れた食品であることが分かります。食物繊維は皮に豊富に含まれているので、良く洗って皮ごと食べることがお勧めです。皮の紫色の成分であるアントシアニンやポリフェノールも同時に摂取することが出来ます。
レジスタントスターチで腸内細菌のパワー全開に
少し聞きなれない言葉かもしれないですが、「レジスタントスターチ」は最近腸活でも注目されているデンプンの一種です。難消化デンプンとも呼ばれ、大腸まで届き腸内細菌の餌となります。デンプンは通常は小腸で消化・吸収されるのですが、大腸まで届くデンプンがあることが分かってきました。これらは食物繊維と似たような働きをしていますが、水溶性食物繊維の生理機能と不溶性食物繊維の生理機能の両方の働きを兼ね備えているといわれています。つまり両方の良いとこ取りをしたような機能をもつ成分です。さつまいもはこのレジスタントスターチが豊富で、ご飯の約1.5倍含まれているといわれています。腸内細菌がレジスタントスターチを餌にして活発に働くようになると、上の項目でお伝えした腸活の様々なメリットが期待できます。
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さつまいもで手軽に美味しく腸活
それではいよいよさつまいもを使用して腸活を実践していきましょう。
近年は腸活向けの商品が様々出ていますが、さつまいもであればどこのスーパーでも手に入り、美味しく手軽に腸活をスタート出来ます。腸活は難しく捉える必要はありません。一度の食事で腸内環境が変わるわけではなく、継続することで少しずつ腸内環境は変化していきます。あまり難しいことから始めてしまうと、始めたばかりの時は良いのですが、毎日のことなので挫折してしまいがちです。小さなことからで良いので毎日続けていけることから意識していきましょう!腸活の効果は早い人では2週間程度から実感する人もいるとも言われています。
今回ご紹介するのは簡単で一品の中にプロバイオティクスとプレバイオティクスの両方が摂取できるシンバイオティクスレシピです。腸は朝が一番よく動くと言われているので朝食に取っていただくのがお勧めです。お弁当にも入れやすいので、隙間おかずとして使っていただいたり、夕食のプラス一品にも役立ちます。
さつまいもと大根の味噌きんぴら
〈材料〉
2人分
- さつまいも・・・80g
- 大根・・・40g
- ☆味噌・・・大さじ1
- ☆きび砂糖・・・小さじ2
- ☆みりん・・・小さじ1
- ☆酒・・・小さじ2
- ごま油・・・小さじ2
- いりごま・・・適量
〈作り方〉
- さつまいもは良く洗って皮付きのまま千切りにする。
- 大根は千切りにする。
- フライパンにごま油を熱し、1と2を加え、弱火でさつまいもが柔らかくなるまで炒める。
- フライパンを中火にし、☆の材料を混ぜ合わせて加える。さっと炒めて火を止める。
過度に炒めると善玉菌がなくなってしまうので、調味料を加えたら、さっと全体に絡めて火を止めることが腸活のポイントです。
以下はもっと効果を高めるさつまいも腸活応用編です。
さつまいもでもっと美味しくもっと綺麗に
これまでの記事で腸活のメリットや食事のポイント、さつまいもと腸活の関係をお伝えしてきました。今回の記事ではよりさつまいもの腸活パワーを引き出す応用編をご紹介していきます。
最強のさつまいもの食べ方
元々さつまいもは腸活において大変優れた食品ですが、実は更にその利点を引き出す食べ方があります。それは「加熱してから冷やすこと」です。前回のお話にも登場した「レジスタントスターチ」は冷やすと増えるという不思議な特性があります。冷ましている間に増えるので、冷やす時は急冷するのではなく、常温でゆっくりと冷ました方が効果的です。冷やしたさつまいもとプロバイオティクスの食品を組み合わせてシンバイオティスクに出来ると、最高の腸活メニューになります。早速すぐにトライ出来るレシピをご紹介します。
冷やしさつまいもの腸活ボウル
〈材料〉
2人分
- さつまいも・・・60g
- バナナ・・・1/2本
- オートミール・・・大さじ4
- プレーンヨーグルト・・・200g
〈作り方〉
- さつまいもは良く洗い、皮付きのまま竹串が通る固さまで蒸す。蒸し上がったら常温で冷まし、1cm角に切る。
- バナナは5㎜の厚さに切る。
- 器にヨーグルトを入れて、その上から1、2、オートミールを乗せる。最後にはちみつを上からかける。
ヨーグルトは砂糖の添加されていないプレーンのものを選ぶようにしましょう。
さつまいもにしか含まれない腸活成分
さつまいもを切ったときに、切り口から白っぽい液体のようなものが出てきた経験はございませんか?これはさつまいも特有の成分であるヤラピンです。さつまいもの皮に黒っぽい汚れのようなものがついている時がありますが、これは決して汚れではなく、ヤラピンが同じくさつまいもに含まれるクロロゲン酸という成分によって黒く変色したものです。ヤラピンにも腸の動きを促進する、便を柔らかくするといった働きがあり、腸活に一役買っています。色が乳白色であるため調理の際には色が濁ることから、さつまいも料理のレシピでは「切ってから水にさらしておく」といった工程が入ることが多いのですが、腸活の面からは水にはさらさずにそのまま調理する方が理想的です。ヤラピンは熱に強く、加熱調理しても崩れにくいといわれています。ちなみに、クロロゲン酸も抗酸化作用や脂肪の蓄積を抑えるといった働きがある有効な成分です。それでは水にさらさなくても見た目も損なわず、美味しいシンバイオティクスレシピをご紹介します。
さつまいもの和風ポタージュ
〈材料〉
2人分
- さつまいも・・・80g
- 長ねぎ・・・30g
- オリーブオイル…小さじ1
- 味噌・・・小さじ1/2
- 無調整豆乳・・・200ml
- 水・・・100ml
- 塩・・・少々
- ブラックペッパー・・・適量
〈作り方〉
- さつまいもは皮を除き、5㎜程度のいちょう切りにする。長ねぎは斜め薄切りにする。
- 鍋にオリーブオイルの熱し、1と塩少々を入れてしんなりするまで炒める。長ねぎはトッピング用に少量残しておく。
- 水を加えて蓋をし、さつまいもが柔らかくなるまで火にかける。
- 火を止めて粗熱を取り、ミキサーにかける。
- 4を鍋に戻し、無調整豆乳を加えて弱火にかけ、味噌を溶き入れる。塩で調味し、器に盛り付け、お好みでブラックペッパーをかける。アクセントに炒めた長ねぎをトッピングする。
ポタージュは逆に水にさらさない方がとろみが出て美味しく仕上げることが出来る料理です。冷製スープにしても美味しいので、レジスタントスターチの増加を狙うのであれば温め直さずに食べましょう。
運動時にもWITHさつまいも
最後にお伝えするのは腸活において食事と共に大切な運動についてです。運動により物理的に腸に刺激を与えることで、腸の蠕動運動の促進が期待できます。また、運動をすると善玉菌が増えるともいわれています。実際にアスリートの腸内環境を調査すると、善玉菌が多かったという報告もあるそうです。腸活としては、体を捻るようなストレッチやヨガのポーズなど、腹部を動かす運動は特に効果的でしょう。食事と同様にハードな運動より、日頃から生活に取り入れやすいものを続けることが大切です。最近はさつまいもの栄養価の高さがアスリートからも人気で、トレーニングの際の軽食としてジムに焼き芋やふかし芋を持っていく人が増えているそうです。運動時にはさつまいもにプラスしてタンパク質含有量の高い食品も組み合わせると筋力アップにも繋がります。
著者もよく作っているのは蒸したさつまいもを潰し、きなこを混ぜた「さつまいもペースト」です。きなこは質量に対してタンパク質の含有量がとても高く、さつまいもと非常に相性が良い食品です。食物繊維も豊富なので腸活にもぴったりです。更に腸活効果を狙うのであれば、甘酒で伸ばし、シェイク風にする食べ方もお勧めです。甘酒はさつまいもともよく合い、プロバイオティクス食品でもあり、「飲む点滴」と言われるほど栄養価が高いので運動時の栄養補給にも最適です。