芋ようかんを自宅で作ってみた!目指せ!船和の芋ようかん。どのレシピより再現度が高い!さつまいもの品種から徹底的に選んでみた。あの味を再現できるのか?検証してみた。

さつまいもを使ったお菓子の代表格、といっても過言ではないほどの人気を誇る、舟和の芋ようかん。芋ようかんといえば、舟和が頭に浮かぶほど、舟和イコール芋ようかん、とも言えるだろう。今回は、その舟和の芋ようかんを、自作でどこまで再現できるか、に挑戦してみた。これから、芋ようかんを作ろうとしている方は、最後まで読んでぜひ参考にしていただきたい。

舟和の芋ようかんとは?

舟和の創業は、なんと明治35年。120年続く老舗和菓子店である。とある調査によれば、100年続く企業の割合(企業存続率)は、わずか0.03%だそうで、この数字を見ただけで、舟和がどれだけ貴重な存在で奇跡的なことか、がわかってもらえるだろう。120年もの長い間、愛され続けてきた舟和の芋ようかんとは、どのようなものなのか。舟和の創業者である小林和助が、創業当時高価だった練羊羹の代わりに、沢山の人たちが手軽に楽しめる羊羹を提供したいと、芋ようかんを考案したらしい。明治時代から関東大震災(大正12年)までは、第二次焼き芋ブームだったので、もしかしたらその影響もあって、安価なさつまいもに目を付けたのかもしれない。

一般的に、練羊羹と言えば、小豆と寒天、砂糖を主原料とする和菓子である。これに対して、舟和の芋ようかんの原材料は、「さつもいも(国産)、砂糖、食塩」のみ。練羊羹に倣って芋羊羹をつくる場合、寒天を使用して固めている芋羊羹も巷には存在するが、舟和では寒天を使用していない。そのため、さつまいもそのものの美味しさを、より楽しめるのだ。舟和の芋ようかんを食べると、羊羹というよりは、スイートポテトに近いと感じる方も多いのではないだろうか。仮に、芋ようかんにパラメータを設けるのであれば、舟和は練羊羹寄りの芋羊羹ではなく、スイートポテト寄りの芋羊羹、という内容になるだろう。

シンプルな原材料で作られた、飾らない見た目だが洗練されていて、素朴で飽きない、さつまいもの美味しさがぎっしり詰まっている。これが舟和の芋ようかんだと思う。

舟和が使用しているさつまいもの品種は?

舟和の芋ようかんは、先に述べた通り「さつもいも(国産)、砂糖、食塩」からできている。ここで気になるのが、どんな品種のさつまいもを使っているのか?だ。品種によって、甘さや食感、色合いなどが異なるからである。舟和の公式ホームページをくまなく見てみると、「甘藷の検査結果についてのお知らせ」という案内があった。甘藷とは、さつまいものことで、東日本大震災における、福島原子力発電所爆発事故の影響を鑑み、放射性物質の分析結果をアップしているのだ。ヨウ素、セシウムともに検出されていない、という測定結果(平成23年と平成24年のもの)とともに、下記の品種名が記載されている。

・紅あずま(茨城県産)
・紅まさり(茨城県産)
・クイックスイート(茨城県産)

引用:株式会社舟和本店

もしかしたら現在は変わっているかもしれないが、舟和の芋ようかんには、上記品種を使用している、と考えてよいだろう。これは、今回の挑戦の大きな手掛かりとなるに違いない。早速スーパーに行ってみた。

芋ようかんを作ってみた

近所のスーパー、というよりは3つ4つ街をまたいでスーパーを探してみたが、入手できたのは「紅あずま(茨城県産)」「紅まさり(茨城県産)」の2種類。「クイックスイート」は残念ながら入手できなかった。今回は、この2品種を使って、芋ようかんを作ることにした。なお、各品種の特徴を簡単にまとめてみた。

  • 紅あずま…ホクホク系さつまいもの代表。茨城県や千葉県など、関東地方で主に生産されている。栗のような甘味と香りが楽しめる。
  • 紅まさり…しっとり系のさつまいも。程よく水分を含んでいてバランスの良いタイプ。茨城県で最も生産されている品種。
  • クイックスイート…ねっとり系のさつまいも。短時間の加熱でも甘くなる性質で、電子レンジでもおいしく食べられる品種と言われている。

タイプの異なる3種類だ。おそらく舟和の芋ようかんは、これらの品種をブレンドしてできたものであると推測される。が、そのブレンド比率は不明だ。舟和の美味しさの黄金比を知りたい…。

それでは、いざ調理。

ちなみに、今回使用したのは下記の材料だ。

・さつまいも(紅あずま)…1kg
・さつまいも(紅まさり)…500g

・砂糖(三温糖)…150g※さつまいも100gに対して10g目安
・塩…少々

①まずは、さつまいもを洗って皮をむき、1cmほどの厚さに切ったものを、15分から20分ほど水にさらしてアクを抜く。変色を防ぐためだ。

②アク抜きしたさつまいもを、水を多めに張った鍋に移して、コトコト煮る。竹串がすっと通るようなればOK。

③鍋のお湯を捨てて、煮たさつまいもを、熱いうちにフードプロセッサーでなめらかにする。フードプロセッサーにかける際に、砂糖と塩を加えてよく混ぜ、味を調整しながら、なめらかにする。…その予定だったが、家にあったフードプロセッサーが小さく、準備したさつまいもの量が入りきらなかったため、マッシャーで潰して、ざるで裏ごしを行った。(フードプロセッサーがなくても、この方法でOK。)

この工程は、熱いうちに行わないと、なめらかにならないので注意。裏ごしでなめらかになったさつまいもは、そのまま食べても十分に美味しいので、この状態もぜひ味わってみてほしい。

③-2 ③で作った2種類のさつまいもを均一に混ぜ合わせる。あればフードプロセッサーで、もしくはざるで裏ごししながら混ぜ合わせる。

④なめらかになったさつまいもを、型(タッパー)などに入れて、ラップをかけてギュッと押す。今回は、使用していない同じサイズのタッパーの底を乗せて、押した。※かなり強めに押した方がよい。

今回作ったのは、3パターンで、画像で見て左から下記の並びになっている。

1 紅あずまのみで作った芋ようかん

2 紅あずま50%+紅まさり50%のブレンド芋ようかん

3 紅まさりのみで作った芋ようかん

⑤冷蔵庫で、4~5時間ほど冷やし固めたら、切り分けて完成。(タッパーのまま夢のような大人食いをしても良し)

作ってみた感想は、フードプロセッサーがあった方が良い、ということ。今回は、使用したさつまいもが2種類だったので、上記の工程を2回行わなければならず、予想以上の時間と、手が痛くなるほどの労力をかなり要してしまった。しかしながら、③を手作業を行ったおかげで、紅あずまと紅まさりの触感などの違いを、身をもって感じることができた。2品種を比べると、紅まさりの方が、水分が多くねっとりしているが、繊維質はやや多いようだ。まさに、ケガの功名、である。

自作の芋ようかんを食べてみた!

さて、冷蔵庫で冷やして固めた芋ようかんを見てみよう。タッパーから取り出し、切り分けてみた。そして、舟和の芋ようかんと並べてみた。縦に3本並んでいるのが自作のもの、横向きのものが舟和だ。見比べてみると、やはり、舟和の芋ようかんは美しい。角が立ったフォルム。密度の高さ。表面のツヤ感。ただ、我が芋ようかん達も可愛らしいではないか。色合いはどうだろう。画像だとわかりづらいかもしれないが、2番(紅あずまと紅まさりのブレンド)の色合いが最も近いようだ。

そして、味は…。悪くない、いや、うまい!さつまいもそのものの美味しさを損なうことなく仕上がっている。素朴だが、また食べたくなる味。それは舟和の芋ようかんにも通じる部分だ。舟和インスパイア系芋ようかんの出来上がり、と言ってよいだろう。どれが最も舟和に近いかと言えば、それは1番と2番の間、である。今回は、紅あずまと紅まさり、2種類のさつまいもを50%ずつブレンドしたが、この割合では紅まさりの比率が多すぎて、それゆえに水分が多くなった感じがした。また、自作したものは柔らかく、型に入れて押し固める力がもっと必要だったと思う。

舟和の芋ようかんをあらためて食べ比べてみると、さつまいもの風味が強烈だった。そして、ポクポクとしたこの食感はどうやって生まれるのか。さすが舟和、120年の歴史、である。一朝一夕で再現できるものではないが、私が進む方向は間違っていないと思った。

まとめ

やはり、舟和の芋ようかんの秘密の一つは、さつまいものブレンドにあるといってよいだろう。今回入手できなかったさつまいも、「クイックスイート」をどうブレンドしたら、より舟和に近づくことができるのだろうか。自作の楽しさ、それは、味を自分の好みで調整できること。

また、今回のように舟和に近づけるという目標を設定すること、もしくは舟和から遠ざかって、市販の商品とは別の味を開拓できること、ではないだろうか。使用するさつまいもの品種によって、また、同じ品種を使用しても調理方法によって、仕上がりが変わるだろう。こういった選択肢の自由度から生まれる過程を楽しむことができるかどうか、がポイントだと思う。

次回は、「紅あずま」「紅まさり」「クイックスイート」この3品種を揃えて舟和の壁に立ち向かいたい。そして、その時は、必ずフードプロセッサーを準備して臨みたいと思う。