パープルスイートロードとふくむらさきの違いとは?栄養価、食味、甘さ、主な産地等を比較してパープルスイートロードとふくむらさきの美味しさの違いまで解説します。

現在、全国で栽培されているさつまいもの主要品種は約60種類あります。一般的なさつまいもの品種は果肉が黄色をしていますが、オレンジ色や白色、紫色をしたものもあります。このうち紫色のさつまいもは、美味しさだけでなく鮮やかな色も楽しめることから、スイーツやサラダの材料として人気です。本記事では、紫さつまいもの品種である「パープルスイートロード」と「ふくむらさき」の特徴と違いについて解説します。

パープルスイートロードとは

「パープルスイートロード」は、果肉にアントシアニン色素を含む紫色をしたさつまいもの品種で、別名「紫芋の王様」と呼ばれています。

パープルスイートロードの歴史と名前の由来

「パープルスイートロード」は、2002年(平成14年)に「農林56号」として認定品種に登録された、青果用さつまいもの品種です。抗酸化力が強く、機能性に富んだアントシアニン色素を含んでいます。青果用で良食味の紫サツマイモが少なかったことから、アントシアニン色素を含む「九州119号」に、外観と食味に優れた「関東85号」「関東99号」「関東103号」「九州105号」「ベニオトメ」の花粉を混合して交配された中から、選抜して開発されました。パープルスイートロードの「ロード」は、英語で「lord:称号の卿」から名付けているそうです。

パープルスイートロードの特徴

「パープルスイートロード」は、収量が多く外観が優れていて、イモの形状や大きさの揃いが良い紫さつまいもの品種です。主な特徴は次の通りです。

果肉にアントシアニンを豊富に含んでいる

「パープルスイートロード」の果肉には、アントシアニン色素が含まれています。アントシアニン色素は、ポリフェノールの一種の天然色素です。強い抗酸化作用があり、目の機能回復や、身体の老化防止が期待できる栄養素です。

果肉はやや粉質

紫さつまいもは甘みが弱い品種が多いですが、「パープルスイートロード」には十分な甘さがあります。肉質はやや粉質ですが、ねっとり系よりほくほく系のさつまいもが好きな方にはおすすめです。

パープルスイートロードの主な産地

「パープルスイートロード」の主な産地は千葉県です。農林水産省が発表した「令和4年度いも・でん粉に関する資料」によると、千葉県の作付け面積は13.4ヘクタールで奨励品種になっています。次いで茨城県が1.0ヘクタール、鹿児島県が1.0ヘクタールです。

ふくむらさきとは

「ふくむらさき」も、「パープルスイートロード」同様に紫色をしたさつまいもの品種です。

ふくむらさきの歴史と名前の由来

青果用の紫さつまいもの品種としては、「パープルスイートロード」が最も多く栽培されています。しかし肉質がやや粉質のため、黄肉色のさつまいも品種に比べると、食味の評価が低く、より食味の良い紫肉色のさつまいも品種を求める生産者の声が高まっていました。そこで、独立行政法人農研機構・九州沖縄農業研究センターが、糖度が高く食味に優れる「九系255」と、「パープルスイートロード」を交配して開発した品種が「ふくむらさき」です。2018年に登録出願され、2021年に品種登録された新しい品種です。「ふくむらさき」の名前は、美味しさで食べた人を幸福な気持ちにすることができる、ということから付けられました。

ふくむらさきの特徴

「ふくむらさき」は、果肉が濃い紫色をしていて、食味が良い紫さつまいもの新品種です。主な特徴は次の通りです。

「べにはるか」並に糖度が高い

「ふくむらさき」は、焼きいもにすると肉質が粘質でしっとりとしていて、強い甘味があります。糖度は「べにはるか」と同じぐらいです。

紫芋で焼き芋に向いている品種とは?
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さつまいもの王道の食べ方と言えば、焼き芋ではないでしょうか。さつまいもを焼き芋にする場合、安納芋や紅はるかのような品種が人気です。焼き芋の専門店も存在するほどで、焼き芋はもはやスイーツのような存在ですね。ところで、紫芋を焼き芋にするならば、どのような品種が向いているのでしょうか。今回の記事を読むと、どのような品種が焼き芋に向いているのか、紫芋で焼き芋におすすめの品種、栄養価や入手方法がわかります。焼き芋ファン、さつまいも通の方は要チェックです。

結論から言うと、焼き芋に向いているのは、「糖度が高い」品種であると考えられます。理由は2つあります。1つ目の理由は、風味の良さです。焼き芋のおいしさの幹となるのは、なんといってもほっこりとした甘さです。さつまいも自体の糖度が十分にあることで、加熱により甘味が引き出され、あのほっこりとした焼き芋ならではのおいしさを作り出します。2つ目は、糖分が香ばしい香りの材料になることです。さつまいもに含まれる糖分は、焼くことで皮の表面がキャラメリゼ(カラメル化)します。そこに特有の香ばしい香気成分が発生します。この現象により、あのこんがりとしたおいしい香りが出るのです。

紫芋の中でも「糖度の高さ」に注目をして、焼き芋に向いている品種をご紹介したいと思います。

紫色が濃い

「ふくむらさき」の果肉は濃い紫色をしていて、機能性成分であるアントシアニン色素を豊富に含んでいます。

ふくむらさきの主な産地

「ふくむらさき」の苗の供給がスタートしたのは2019年と比較的新しく、これから普及することが期待されている品種です。品種を開発した独立行政法人農研機構・九州沖縄農業研究センターが発表した資料によると、茨城県など関東を中心に普及する予定となっています。

パープルスイートロードとふくむらさきの違い

これまで、「パープルスイートロード」と「ふくむらさき」の特徴について解説してきました。「パープルスイートロード」は、肉質がやや粉質で、黄肉色のさつまいも品種に比べると、食味の評価があまり高くありませんでした。

購入した紫芋を長持ちさせるコツ

なかなか手に入らない紫芋を購入したら、大切に保管しすぎてうっかり腐らせてしまわないように注意しましょう。紫芋は冷蔵庫のような冷気は苦手な野菜なので、常温で保存してください。このとき必ず新聞紙で包みましょう。新聞紙には適度な通気性があるだけでなく、紫芋が乾燥するのを防いでくれます。大量に購入した場合は、1本ずつ新聞紙で包み、段ボールなどで保管して長持ちさせましょう。購入した紫芋を長持ちさせるコツはこちら

一方で、「パープルスイートロード」に糖度が高く食味に優れる「九系255」を交配して開発した「ふくむらさき」は、焼いもにすると肉質が粘質でしっとりとしていて、強い甘味があります。また、果肉の紫色も「パープルスイートロード」より「ふくむらさき」の方が濃く、アントシアニン色素が豊富です。このような特徴の違いから、ほくほく系のさつまいもが好きな方には「パープルスイートロード」が、しっとり系で甘いさつまいもが好きな方には「ふくむらさき」がおすすめです。機会があれば食べ比べしてみてください。

紫芋に含まれるアントシアニンとは?

紫芋といえば、目を惹く鮮やかな紫色が特徴。この紫色の理由は、アントシアニンが豊富に含まれているからです。アントシアニンは、ブルーベリーなどにも含まれるポリフェノールの一種です。同じ紫芋でも微妙に紫の色味が違うのは、アントシアニンにも複数の種類があるためです。青味が強いタイプと、青味が少ないタイプ、大きく分けると2種類あります。品種によっての微妙な紫色の違いを楽しむのも良いですね。

アントシアニンで期待できる健康効果

「色素」としてだけでなく、れっきとした「栄養成分」であるアントシアニン。ここでは、期待できる健康効果をご紹介します。

抗酸化作用

私たちの健康面への効果にも注目される成分の一つです。期待できる効果としては、強い抗酸化作用が挙げられます。私たちの体内でエネルギーを作り出すときに生じる活性酸素は、本来、病気をやっつける働きを持ちますが、増えすぎると体内を傷つけ、老化やがん、糖尿病などの生活習慣病の原因となります。活性酸素は年齢とともに増えますが、ストレスや食品添加物の摂取、大気汚染、喫煙、紫外線などによって多くなります。アントシアニンには、この活性酸素を除去する力があり、結果的にアンチエイジング、病気の予防、疲労回復などが期待できるのです。

生活習慣病予防

アントシアニンには、生活習慣病の予防効果も期待されています。ブルーベリーを使った動物実験ではありますが、アントシアニンを定期的に摂ることで、心血管疾患、2型糖尿病リスクの低下、体重維持に効果があることが報告されています。紫芋に含まれるアントシアニンについて詳しくはこちら