焼き芋ブームは終わり?第4次焼き芋ブームは今がピークなのか?調べてみた

「焼きいもブーム」は、ここ数年で一大現象となっており、専門店が続々と登場し、街中でその香りに引き寄せられる人も多く見かけます。2024年2月にさいたまスーパーアリーナで開催された「さつまいも博」では、全国各地の人気店が一堂に会する「全国やきいもグランプリ」も行われ、焼きいもファンたちが集い、その魅力を共有する場となりました。このような盛り上がりを背景に、焼きいもが新たな食のトレンドとして定着しつつあります。とはいえ、ブームは移り変わるもの。焼きいも人気も例外ではなく、これからどう推移していくのかは注目されています。果たして焼き芋ブームにも終わりは来るのでしょうか?調べてみました。

さつまいもと焼きいもの歴史

いも類振興会理事長の狩谷昭男氏が書いた「焼きいもブームの歴史とその背景」によると、現在は第4次の焼きいもブームだそうです。

さつまいもの歴史

さつまいもの歴史

さつまいもは、メキシコを中心とした熱帯アメリカを原産地とする植物で、日本へは1600年頃に中国経由で伝来しました。最初は琉球(現在の沖縄県)に伝わり、その後、薩摩(現在の鹿児島県)へと広まったため「さつまいも」と呼ばれるようになりました。この作物は、食糧難を救うための重要な食材とされ、八代将軍徳川吉宗の時代に蘭学者の青木昆陽が全国的な普及を推進しました。青木昆陽の尽力により、さつまいもは飢饉対策として日本各地に根付いていきました。

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特に、現在の埼玉県川越市はさつまいもの一大生産地として知られていました。江戸から川越までの距離が13里(約52㎞)であったことから、川越からやって来る焼きいも屋は「十三里」と呼ばれ、「栗(九里)より(四里)うまい十三里」という洒落が生まれ、焼きいも人気を高める要因にもなりました。このように、日本の食文化においてさつまいもは重要な役割を果たしてきたのです。

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江戸時代から始まった焼きいもブーム

前述の「焼きいもブームの歴史とその背景」によると、第1次ブームは江戸時代の文化・文政期から明治維新まで(1804年~1868年)、第2次ブームは明治時代から関東大震災まで(1868年~1923年)、第3次ブームは1951年~1970年、そして第4次ブームが2003年から始まったとされています。

石焼き芋を焼いている風景

第3次ブームのきっかけは、1951年に東京向島の三野輪万蔵という人が「石焼きいも」を発明したことによります。江戸時代の焼きいもは、かまどに焙烙(ほうろく)を置いて焼くなどの調理方法が一般的でした。関東大震災の後には、インド料理で使うタンドールのような直火オーブンの「つぼ焼き」が流行しました。それらの方法に対して「石焼きいも」は、熱した小石でさつまいもを包むことによって、均等に熱を通しやすい特徴があります。さらに三野輪万蔵氏は、「石焼きいも」専用の調理機をリヤカーに乗せて移動販売を行いました。このスタイルによって「石焼きいも」は人気となりました。

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2003年から始まった第4次焼きいもブーム

第四次ブームはねっとり系焼き芋を生み出した

第4次焼きいもブームは、2003年に静岡県のスーパーが、オーブンを使って焼きいもの販売を行ったことに始まった、と言われています。この焼きいものオーブンは、改良を重ねながら、他のスーパーにも普及していきました。また、1999年に品種登録された安納芋も、第4次焼きいもブームが広まるきっかけのひとつと言えるでしょう。それまでの焼きいもに使われていたさつまいもは、ホクホクとした食感が特徴の「べにあずま」が主流でした。ねっとりした食感と蜜のような甘さが特徴の「安納芋」が話題となり、さらに2010年にはしっとり・ねっとり系の「紅はるか」が品種登録されたことで、第4次焼きいもブームが起こり、今も継続しているのです。

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今が焼き芋ブームのピーク?

焼き芋を食べている風景

第3次焼きいもブーム(1951年〜1970年)は約20年で終わっています。この点から考えると、2003年から始まった第4次焼きいもブームもすでに20年が経過して、ピークを過ぎている可能性があります。しかし、現在も続いている第4次焼きいもブームは、ピークを過ぎても長期間にわたって今後も静かに続いていくとみられています。その理由としては次の3つがあげられます。

  • 焼きいもが、添加物などを使わない自然な健康食品の一つとして支持されている
  • しっとり、ねっとり系のおいしい品種が普及したことで、老若男女を問わず焼きいもの愛好者が増えた
  • 高品質のさつまいもを周年で供給する体制が確立されて、夏でも焼きいもが食べられる

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海外で日本の焼きいもがブーム

海外での焼き芋ブームイメージ

さらに焼きいもは、日本だけではなくシンガポールなどの海外でも人気が高まっています。そのきっかけは、ドン・キホーテが、2017年にシンガポールの「DON DON DONKI」で日本の焼きいもの販売を始めたことです。できたての焼きいもが手軽に食べられると評判になって、およそ30分〜1時間は並ばないと手に入らないほどの人気となり、焼きいも専門店までオープンしています。シンガポールで日本の焼きいもが人気になっている理由には、次の2つがあります。

  • 日本産のさつまいもを使用している
  • 手ごろな価格で日本の食が楽しめる

シンガポールにおいて日本の食品は高級品であり、特に新鮮な野菜や果物は、高価な値段で取り引きされています。シンガポールで販売されている焼きいもは、比較的低価格で販売されているので、たくさんの人が焼きいもの美味しさを味わうことができます。コロナ禍で日本への旅行ができなかったこともあって、少しでも日本の文化を楽しみたいという人が多かったこともあるのでしょう。

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まとめ

ねっとり系焼き芋のイメージ

2003年から始まった第4次焼きいもブームは、今後も静かに続いていくとみられています。また、シンガポールなどの海外でも日本の焼きいもが人気となっています。日本産のさつまいもの海外輸出量は2013〜2022年の10年間で年平均20%上昇しています。焼きいもは、日本国内はもちろんのこと、シンガポールを中心に他の国でもブームになる可能性があります。

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