強い甘さと、しっとり・ねっとり食感が魅力の、紅はるか。焼き芋に使われることも多い品種で、その味わいや食感の虜になる人もたくさんいます。しかし、ほかにも甘い品種がある中で、紅はるかがなぜこんなに人気なのか、その理由を知りたい人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、紅はるかの魅力や味・食感の特徴についてご紹介します。さらに、おいしい食べ方もご紹介しますので、栄養も豊富な紅はるかをぜひ味わってみてくださいね。
濃厚な甘さ!紅はるかとは?
紅はるかはさつまいもの品種のひとつで、甘く、独特な食感が魅力です。鮮やかな黄色の果肉で、見た目が美しい「九州121号」と、ほのかな甘みで優れた味わいの「春こがね」を掛け合わせて生まれた品種です。見た目も味も、既存品種よりも「はるかに優れている」ため、紅はるかの名前がつきました。
紅はるか
ねっとり系さつまいも好きの間では、安納芋と人気を二分すると言われている紅はるか。他のさつまいもよりも、食味や外観が「はるかに優れている」から紅はるかという名前になったんだとか。紅はるかは、形のよい「九州121号」と、皮の色や食感の良さが魅力の「春こがね」を交配させ育成したものです。その生まれの由来の通り、形は「The さつまいも」といった細長い紡錘形で、皮は鮮やかな紫色。味も、スイーツをそのまま食べているかのようなクリーミーさと、濃厚な甘みが魅力です。糖度は生の状態でも約35度、加熱後は50〜60度にまでアップします。主に九州地方や関東地方で生産され、旬の時期は11〜1月頃となります。
紅はるかは、水分が多く、糖度が高いのが特徴。加熱すると蜜のような甘みと、しっとりなめらかな口あたりが楽しめるので、今では焼き芋ブームを牽引するほど人気の品種です。九州などの地域では10月ごろから、本州では11月初めごろからが収穫時期。収穫後1か月ほど経った11月〜1月ごろに、追熟して甘みを増した紅はるかが市場に出回ります。熱に強く、便秘解消に役立つといわれる「ヤラピン」が豊富な紅はるかは、食物繊維との相乗効果で腸内環境の改善が期待できるため、いつまでも若々しくありたい人におすすめです。
紅はるかが多く作付けされている地域
全国で作付けされているさつまいもの主要な品種は、およそ60品種もあります。農林水産省が公表している「令和3年度いも・でん粉に関する資料」によると、「紅はるか」の作付けシェアは、芋焼酎の原料として利用されることが多い「コガネセンガン」の21.5%に次いで、2番目に多い18.2%でした。紅はるかが、品種登録されたのは2010(平成22)年で、まだ比較的新しい品種ですが、2016(平成28)年の全国での作付面積は3,737haから、2020(令和2)年には5,799haと急激に作付けが拡大しています。紅はるかの作付面積が多い都道府県は、次の通りです。
驚きの蜜芋!紅はるかの味・食感の特徴
「九州121号」と「春こがね」のよいところを兼ね備えた、おいしい紅はるか。その味わいや独特の食感に、虜になる人もたくさんいます。気になる味わいや、食感の特徴をチェックしてみましょう。
もはやスイーツ!濃厚で強い甘み
紅はるかは、安納芋と比較されるほど、蜜たっぷりの甘いさつまいもです。加熱すると甘みが増し、口の中に蜜のような味わいが広がります。高い糖質の中でも麦芽糖の占める割合が高く、濃厚な甘みでありながら、後味はすっきりしているのも魅力です。昔ながらのさつまいもに蜜を加えたような上品な甘さは、子どものおやつにはもちろん、大人のスイーツとしてもぴったり。焼く・蒸すなどシンプルな調理法で、和菓子のようなやさしい甘さを楽しめます。
蜜たっぷり!しっとりなめらか食感
なめらかな舌触りでありつつ、ほくほく感もしっかり残っているところも人気の理由です。安納芋のようなねっとり感に加えて、従来のさつまいもの風味を残した、まさにいいとこ取りのさつまいも。焼き芋にすると、ねっとり系のしっとりした食感が楽しめます。蜜がたっぷり感じられるやわらかい食感が特徴で、水分が多く、口の中がパサパサしないので年配の人にもおすすめ。やわらかいだけではなく、昔ながらの食感を持つさつまいもが好きな人にもおすすめです。ここからは、紅はるかのおいしい食べ方をご紹介します。おいしい紅はるかを、日々の食事に取り入れて楽しみましょう。
紅はるかの独自ブランド4選
紅はるかには、企業・地域が独自にブランド化したものがあります。ここからは、こだわり抜いたブランドの中から厳選した、5つの紅はるかをご紹介。それぞれの特徴をチェックしてみましょう。
紅天使|茨城県(ポテトかいつか)
紅天使は、茨城県の「カルビーかいつかスイートポテト株式会社(旧社名:ポテトかいつか)」が販売しているブランド。温度・湿度調整された貯蔵庫などで熟成させることで、甘みをアップしています。焼き芋にすると最高糖度50度近くになる強い甘みと、ねっとりした食感が特徴。濃厚な味わいと、ねっとりした食感のため冷蔵庫で冷やしてもおいしく、暑い季節にはなめらかな舌触りのスイーツとしても楽しめます。青果としての紅天使は、市場にはあまり出回らないため、公式サイトやふるさと納税を利用しましょう。カルビーかいつかスイートポテト株式会社では、青果の出荷時期を過ぎても、冷凍焼き芋や干し芋などを販売しています。
紅優甘|茨城県(JAなめがたしおさい)
紅優甘(べにゆうか)は、さつまいもの一大産地である茨城県のブランド。水あめのように自然な甘さと、しっとりした食感で人気があります。紅はるかは、収穫後すぐだとまだ甘みもなく、熟成することで糖化が進む品種ですが、紅優甘は掘り出し直後から甘く、糖化も早いのが特徴です。焼き芋にすると、糖化した紅優甘からたっぷりの蜜がジュワッとしみでて、口いっぱいに広がります。安納芋にも負けない甘さと、なめらかな口あたりも魅力。栄養豊富な皮ごと食べてもやわらかく、いもそのものの味わいを感じられます。出荷時期は8月〜1月ごろ。時期が過ぎても、冷凍の焼き芋を取り寄せできるので、気になる人はチェックしてみましょう。
甘太くん|大分県(JAおおいた)
甘太くんは、大分県産のJAおおいたが手がけたブランドです。「甘い」という字が名前に入っているほど、しっかりとした甘みが魅力。焼き芋にすると、糖度が40度に届くとも言われています。スイーツのような甘さと、焼き上がりのねっとり・しっとりした食感が人気です。
品質チェックをクリアした圃場で、40日以上貯蔵されたものが出荷されます。通常は種芋から繰り返し栽培できるさつまいもですが、甘太くんは毎年「ウィルスフリー苗」を購入した農家が栽培するのが特徴。手間がかかる方法を徹底することで、品質を維持しています。
いもジェンヌ|新潟県(JA新潟かがやき)
いもジェンヌは、JA新潟かがやきが商標登録したブランド。ちょっと上品なさつまいもをコンセプトにしており、驚くほど甘く、ねっとりとほくほくの中間のような食感が魅力です。
収穫したいもは、温度・湿度が一定に管理された貯蔵庫で、1か月ほど追熟することで糖化が進み、濃厚な甘みを引き出します。出荷時期は、10月〜2月上旬ごろ。新潟県内のスーパーを中心に出回りますが、首都圏でも人気が高まりつつあるため、都内のアンテナショップでも購入可能です。
葵はるか|宮崎県(くしまアオイファーム)
葵はるかは、宮崎県串間市にある「くしまアオイファーム」が販売しているブランド。減農薬栽培に取り組み、自然なおいしさを追求しています。しっとりとした果肉と、高い糖度が特徴で、加熱すると非常に甘く、蜜のような味わいを体験できるのも人気の理由です。収穫後には、温度13℃・湿度80%以上に調整できる最新型の貯蔵庫で1か月ほど熟成。糖度をめいっぱい高めるので、出荷されるころには糖度が60度に達するほど甘くなります。旬が長く、11〜6月ごろまでおいしく食べられる葵はるかは、くしまアオイファームのオンラインショップから購入できますよ。
強い甘みとねっとり食感を楽しむなら|焼き芋
強い甘みと、ねっとりした食感を楽しみたい人には、焼き芋がぴったり。紅はるかの濃厚な甘さをしっかり引き出し、極上のスイーツとして味わえます。口の中に蜜の甘みが広がり、しっとりなめらかでありつつ、ほくほく食感も感じられる焼き芋は、紅はるかの魅力を存分に楽しめる食べ方です。最近では、スーパーの焼き芋コーナーで見かけることもありますが、確実に食べたいなら、通販で紅はるかの焼き芋をお取り寄せして楽しみましょう。
やさしい甘さを味わえる|スイートポテト
紅はるかのやさしい甘さを楽しむなら、スイートポテトもおすすめ。ほとんどさつまいもでできたスイーツは、紅はるかのおいしさをダイレクトに味わえます。
紅はるかは濃厚な甘さが特徴なので、あえて砂糖なしで試してみてもよいでしょう。
ほっくり甘い|ポテトサラダ
甘い紅はるかは、ポテトサラダとして食べるのもおすすめです。甘じょっぱい味わいが楽しく、子どもにも喜ばれます。献立の一品にプラスすると、いつものポテトサラダとは違う味わいが楽しめるので、一度試してみてくださいね。
おいしい紅はるかの見分け方は?
紅はるかは、甘くおいしい品種ですが、個体によっては甘みの少ないものもあります。特にスーパーなどで購入する際には、以下のポイントを参考においしい紅はるかを選んでみましょう。ポイントは大きく分けて3つあります。
- 皮がきれいな赤紫色で、全体にハリのあるもの
- 適度にふっくらして、ひげ根の少ないもの
- 皮の表面に蜜のような黒い液がしみでているもの
表面に傷がなく、皮の色が鮮やかでふっくら楕円形のものを選ぶのがコツ。細長すぎるものや、色の悪いものは甘みが少なく、旨みを感じられない場合があるため注意しましょう。
また、皮に蜜のような黒いもの(ヤラピンが酸化したもの)がついているものは、鮮度が高いと言われています。できるだけおいしい紅はるかを選ぶために、チェックしてみてくださいね。
焼き芋ブームとなった背景
現在の第4次焼き芋ブームが起こった背景として、2つの要因が考えられます。一つ目は、1998年に登場した、業務用の自動焼き芋オーブンです。この登場によりスーパーでも、焼き芋が気軽に購入できるようになりました。もう一つの要因は、「安納芋」や「べにはるか」に代表される、ねっとり系品種の登場です。それまでは、「紅あずま」や「高系14号」といった、ほくほく系の品種が主流でした。甘みが強く、しっとりした食感のねっとり系品種が登場したことで、デザート感覚で焼き芋が食べられると、人気となったのです。
焼き芋ブームで注目されるさつまいもの品種
現在の焼き芋ブームで人気となっている、ねっとり系のさつまいも品種から代表的なものをご紹介します。
べにはるか
「べにはるか」は、独立行政法人・九州沖縄農業研究センターが育成し、2010年に品種登録された比較的新しい品種のさつまいもです。「べにはるか」は、滑らかな舌ざわりが特徴で、焼き芋にしても、喉に詰まりません。また、高い糖質の中でも麦芽糖が占める比率が高いため、強い甘さがありながらも、後味はさっぱりとしています。
まとめ
濃厚な甘さでありながら、後味がさっぱりしているのが特徴の紅はるか。焼き芋にすると安納芋より甘さが際立ち、蜜たっぷりのしっとりなめらかな舌触りも魅力です。
おいしいだけではなく、腸内環境の改善に役立つ紅はるかは、体の中からきれいになりたい人にもぴったり。仕事や家事の合間に、ほっと一息つきたいリフレッシュタイムのお供に、ぜひ役立ててくださいね。