世界中で愛されるさつまいも。海外のさつまいもの品種と海外のさつまいも料理を紹介!そして日本国内で発掘!さつまいも郷土料理を料理研究家と一緒に紐解きます!

世界中で愛されるさつまいも

さつまいもという名前から日本生まれの野菜だと思っている方も少なくないのではないかと思いますが、さつまいもは中央アメリカで誕生したといわれています。15世紀末にコロンブスがアメリカからヨーロッパに持ち帰りましたが、温暖な気候を好むさつまいもはヨーロッパではあまり栽培が根付かず、ヨーロッパ諸国の植民地であった東南アジアやアフリカで栽培が盛んになりました。日本にやってきたのはそれから1世紀が経った頃。1600年ごろにフィリピン経由で中国に伝わり、そして中国から沖縄に伝わりました。食事からおやつまで様々な場面でさつまいもを使い、こよなくさつまいもを愛する日本ですが、世界のさつまいも生産国ランキングではこれでも18位。首位は日本のさつまいも伝達のルーツである中国です。なんと全世界の生産量の約8割を占めています。2位以降はマラウイ、タンザニア、ナイジェリアとアフリカの国々が続くように、全世界の殆どのさつまいもがアジアとアフリカ諸国で作られています。

全体の生産量としてはそこまで高くない我が国ですが、青果としての生産量はトップ。それだけにさつまいもを使用したメニューも一番多いのではないかと思います。全体的に見て、他国ではさつまいもの栄養価の高さと栽培や貯蔵性の強さから食糧難に備えた主食と位置付けられ、肥料など工業用として作られていることも多いようです。料理として工夫を凝らすというよりは、そのまま焼いて食べる、刻んで主食に混ぜ込むといった食べ方の方が多く見られます。

しかし、さつまいもを楽しむ姿は世界共通。ランキング2位のマラウイではさつまいものことを「バタタ」と呼んでいて、日本で焼き芋がスーパーで売られているように、マラウイの市場でも灰の山の中で焼かれて売られているそうです。そしてマラウイの人々にもこの焼きバタタが大人気。ミルクティーと一緒にデザートとして楽しんでいるのだそうです。さつまいもの美味しさと栄養価の高さは昔から世界各地で認められ、現在も世界各地で愛されていることが分かります。遠く離れた国の人もアツアツの焼き芋を頬張って笑顔になっていると思うと、なんだか嬉しくなりますね!

こんなにある!海外のさつまいも

さつまいもの種類はどのくらいあると思いますか?紅あずま、安納芋、紅はるか、鳴門金時などなど、いくつかの名前を聞いたことがあると思いますが、そんな数では収まりません。日本では約60種類の栽培が報告されていて、全世界に目を向けると、なんと約4000種類ものさつまいもが存在するそうです。
さつまいもといえば甘い味が特徴で、英語でもsweet potatoと呼ばれていますが、欧米で一般的に売られているさつまいもは日本のものより甘さは控えめで、ホクホク感も少ないものが主流です。色も安納芋のようなオレンジ色の物がよく出回っていますが、安納芋のようなねっとり感や甘みはありません。料理に使われるのはじゃがいもの方が主流ですが、日本のさつまいもの美味しさが伝わり、Japanese sweet potatoとして売られていていることもあります。お値段も少し高めのことが多いですが、それでも人気だそうです。美味しい日本のさつまいもがいつでもスーパーで買える環境に生まれたことに感謝ですね。

海外のさつまいもメニュー

さつまいも生産ランキング1位の中国には日本でも専門店が出来るほど大人気のメニューがあります。それがさつまいもの飴炊き=バースゥです。日本でいう大学芋なのですが、大きな違いは日本の大学芋は砂糖液をとろみがある程度にしますが、バースゥはとろみを通り越してパリパリの飴状になるまで加熱します。作りたての飴が固まる時に引っ張ると糸を引くことからこの名前が付けられました。カリカリの飴と揚げたてのさつまいものコンビネーションがとても美味しいので是非作ってみて下さい。

さつまいもの飴焚き〈バースゥ〉

〈材料〉

  • さつまいも・・・200g(中1本)
  • 砂糖・・・50g
  • 水・・・50ml
  • 揚げ油・・・適量

〈作り方〉

  1. さつまいもは皮を剥き、長めの乱切りにして水にさらす。
  2. 1の水気をキッチンペーパーでしっかり除き、160℃の油で竹串が通る程度の固さになるまで揚げる。
  3. フライパンに砂糖と水を入れて、均一になるようにならす。中火にかけ、混ぜずに端が黄色みを帯びるまで加熱する。
  4. 火から下してフライパンを回し、全体を均一にする。2を加えて木べらでよく混ぜる。
  5. 冷水にくぐらせて、固まる前にばらす。

欧米で人気なのはこちらです。じゃがいもではチーズなどを乗せて作るレシピが有名ですが、さつまいもではその甘みを生かしてスイーツ仕立てに作ると美味しいです。ステーキの付け合わせに使われることもあります。

ハッセルバックスイートポテト

〈材料〉

  • さつまいも・・・200g(中1本)
  • バター・・・20g
  • くるみ・・・3粒
  • ブラウンシュガー・・・小さじ1(なければ砂糖で可)
  • シナモンパウダー・・・適量
  • はちみつ、メープルシロップ・・・お好みの量

〈作り方〉

  1. さつまいもは皮付きのまま端から5㎜間隔で切り込みを入れる。切りにくい場合は縦半分に切ってからでも良い。
  2. 上から全体にバター、ブラウンシュガーを乗せ、200℃に予熱したオーブンで30分程度焼く。
  3. オーブンから取り出し、刻んだくるみ、シナモンパウダー、はちみつ、メープルシロップをお好みで盛り付ける。

全国発掘さつまいも郷土料理

今年はようやくコロナも落ち着き、これから訪れる夏休みやシルバーウイークシーズンには旅行に出かけられる方も多いのではないでしょうか。旅行の楽しみとして欠かせない楽しみといえば「食」ですよね!この記事では各地のさつまいもを使った美味しい郷土料理をご紹介します。旅先のアクティビティの一つとして、各地のさつまいも料理を色々食べてみるのはいかがでしょうか。きっと新たなさつまいもが見つかるのではないかと思います。 

沖縄

さつまいもが日本に初めて上陸した地が琉球王国、すなわち現在の沖縄といわれています。それだけにさつまいもを食べる習慣は現在でも根強く残っています。また、お土産としてお馴染みの紫芋もよく使われます。沖縄では年間を通して石焼き芋の移動販売車が回っているのだとか。スーパーのお惣菜コーナーにも紅芋やさつまいもを使った料理が並んでいたりと身近な食品として愛されています。

・うむくじの天ぷら

うむくじとは「芋くず」がなまった呼び方。さつまいものデンプンと裏ごしした紅芋を混ぜて、丸めて揚げたもの。モチモチとした食感が特徴で、おやつとして人気。

・カンダバージューシー


カンダバーはさつまいもの葉のこと。さつまいもの葉っぱと茎を細かく刻んで雑炊にいれたもの。

九州地方

さつまいもの栽培は鹿児島県で確立されました。その名残もあり、さつまいもの生産量は今も全国一位を誇っています。さつまいもは寒さに弱い特徴がありますが、九州地方の温暖な気候はさつまいもの栽培にも適しており、種子島の安納芋をはじめ、熊本県の紅はるか、大分県の甘太くんなど、糖度が高くてスイーツのように美味しいブランド芋も多く栽培されています。

・しんちょきもち


ふかしたさつまいもをつぶして、小麦粉、塩を加えて、よく混ぜ、丸めて蒸したもの。中にさつまいも餡や餡子をいれることもある。大分県の伝統菓子で、昔から祝いの席に欠かせず、給食にも出されている。

・石垣もち

小さく切ったさつまいもに小麦粉と水を入れて混ぜ、丸めて蒸したもの。農業の合間におやつとして食べられていた。現在は砂糖やベーキングパウダーを入れてより美味しく作られることもある。

・ねったぼ


お正月に餅をつく際に、餅と一緒に蒸したさつまいもをつき混ぜたもの。現在はさつまいもを蒸す途中で市販の切り餅を加えて蒸し、柔らかくなったらつき混ぜて作られる。名前の由来は「練ったぼたもち」という説や、練ってつく時の「ぼったぼった」という音からといった説がある。

・こっぱもち


熊本県天草地方の有名な伝統菓子。こっぱと呼ばれるさつまいもを煮干して乾燥させ、小さく切ったものともち米をつき合わせたもの。こっぱは保存食として天草地方で重宝していた。昔は各家庭で主に年末年始のおやつとして作られていたが、現在ではお土産として紅芋を使ったもの黒糖をつかったものなど様々な種類が販売されている。

中国・四国地方

四国地方の温暖な気候もさつまいもの栽培に適しています。米が貴重だった時代には主食の代わりとして大切に育てられてきました。有名なブランド芋としては徳島県の鳴門金時が代表的です。

・かいもち

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さつまいもを茹でてからつぶし、餅、砂糖を混ぜて団子にしたもの。きな粉をまぶして食べる。香川県や山口県で伝統的に食べられている。

・芋けんぴ

さつまいもを棒状に切って油で揚げ、砂糖をまぶしたもの。現在は全国的に有名な高知県発祥のお菓子。現地では道の駅など至る所で販売されている。

・いもべらあずき


さつまいもを丸ごとじっくりと煮た後に、そのまま干した「ゆでべら」と小豆を甘く似たもの。高知県伊野町の郷土菓子。

関西地方

さつまいもが九州の飢饉を救ったという話が関西にも広まり、米の生産が厳しい地域で盛んに栽培されるようになりました。

いももち

もち米とさつまいもを共に蒸してついたもの。和歌山県南部の伝統料理。主食として食べられていたが、現在は餡子を入れておやつとして食べることが多い。和歌山県ではさつまいもの栽培を広げた人物が知事から表彰されるほど大切な食物であった。

きんこ

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さつまいもの一種である隼人芋を煮てから干した干し芋のこと。きんこは本来干しナマコを意味するが、形が似ていることからこう呼ばれている。海女の文化が残る三重県志摩地方の郷土菓子。

関東地方

西の方から伝わってきたさつまいもは米の代わりもになり、甘みもあることから関東でもすぐに人気の作物となりました。現在でも千葉県や茨城県は全国トップ5に入る生産地となっています。

干し芋

さつまいもを蒸して干したもの。発祥は静岡県と言われている。全国的に知られているが、現在は干し芋の約9割が茨城県で作られている。

 こうして見ていると、名前こそ違うものの、さつまいもと餅を共について丸めたものや、干し芋にしたものが多いですね。米が貴重であった時代、米の消費量を抑えるため、主食として長持ちさせるために昔の人が各地で知恵を絞って工夫されていた背景が伝わります。そんな先代の人々の思いが詰まった味を是非味わっていただきたいです。

しかし、なかなか遠出は出来ないという方の為にもご自宅でお楽しみいただけるように、最後に著者のお勧めナンバーワンであるさつまいも郷土料理の作り方をご紹介したいと思います。

がね

発祥は鹿児島県といわれていますが、九州全域で愛されている「がね」。名前の由来はかにの形に似ていることからきています。衣にやや甘みと、モチモチ感があるところが特徴です。食事として食べてもおやつとして食べても美味しく、現地の人々にも定番人気の一品となっています。

〈材料〉

  • さつまいも・・50
  • にんじん・・・20
  • にら・・・20
  • 小麦粉・・・40
  • 小麦粉(まぶし用)・・・小さじ2
  • 米粉・・・10g
  • 卵・・・1/2
  • 水・・・60ml
  • 砂糖・・・小さじ1
  • 揚げ油・・・適量

〈作り方〉

  1. さつまいもは千切りにして水にさらす。
  2. にんじんは千切り、ニラは4cm程度の長さに切る。
  3. 水気を切った12をボウルに合わせ、小麦粉を全体にまぶす。
  4. 別のボウルに卵と水を入れてよく混ぜ、小麦粉と米粉を加えて叩くように混ぜて衣を作る。
  5. 3と砂糖を4に入れて全体が均一になるように混ぜる。

5を4等分に分け、170℃に熱した揚げ油に形を固め