さつまいもを使った郷土料理、ご当地料理はどれくらいあるの?

秋になると、思わず恋しくなるのが、ほくほく甘いさつまいも。いまや「さつまいも展」が開催されるほどの人気ぶりで、まさにブームといえる盛り上がりを見せています。昔から日本人に親しまれてきた秋の味覚ですが、地域ごとにその食べ方や楽しみ方はさまざま。

旅行先で食べた焼き芋やスイートポテトの味が忘れられない…そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。日本各地には、土地の風土や文化の中で育まれた“ご当地さつまいも料理(郷土料理)”がたくさんあります。素朴で懐かしい家庭料理から、創意工夫あふれるスイーツまで、その種類は数えきれないほど。

今回は、そんな全国各地で愛されるさつまいも料理をまとめてご紹介します。さらに、家庭でも気軽に作れる簡単レシピも最後に掲載しました。秋の味覚を通して、地域の温もりとお芋の奥深い魅力を一緒に味わってみましょう。

さつまいも郷土料理・ご当地料理の数は?

さつまいも郷土料理・ご当地料理の数は?

今回の調査で確認できたさつまいものご当地料理や郷土料理は、約40種類にも上りました。しかし、実際にはそれ以上に多くの料理が各地に存在していると考えられます。というのも、地域によって料理名や作り方が少しずつ異なり、同じ料理でも呼び名がまったく違うケースが多いからです。

たとえば「いももち」と呼ばれる料理ひとつをとっても、「ねったぼ」「ねったくり」「ねりくり」「ねったんぼ」「からいもねったぽ」「からいも餅」など、多彩な呼称があります。まるで方言や擬音語のような響きをもつ名前が並び、「これもさつまいも料理なのか?」「同じものを指しているのか?」と迷ってしまうほど。その土地ならではの言葉や文化が、料理名にも色濃く表れているのです。

たとえば「いももち」と呼ばれる料理ひとつをとっても、「ねったぼ」「ねったくり」「ねりくり」「ねったんぼ」「からいもねったぽ」「からいも餅」など、多彩な呼称があります。

こうした多様性が生まれた背景には、さつまいもの長い歴史があります。1600年頃、中南米から中国を経て日本に伝わったさつまいもは、やせた土地でもよく育つことから、食糧難を救う作物として全国に広まりました。そして、各地域の風土や気候、食文化に合わせて少しずつ形を変えながら、独自の料理として根づいていったのです。

今回の調査で改めて感じたのは、さつまいもご当地料理の正確な数を把握するのは難しいということ。そして、地域ごとに工夫されながらも、基本の材料や作り方には共通点が多いということでした。さつまいも料理は、長い年月の中で土地の人々に寄り添い、ゆっくりと姿を変えながら受け継がれてきた、まさに“日本の食文化そのもの”といえるのかもしれません。

ご当地料理にはどんなものがある?

ここでは、全国各地で今も受け継がれている、昔ながらの郷土料理を中心にご紹介します。どの料理にも、地域の風土や人々の暮らしが息づいており、さつまいもがいかに日本の食文化に深く根づいてきたかが感じられます。家庭の食卓で代々作られてきた素朴な味わいや、祝い事など特別な日に振る舞われてきた一品など、それぞれの土地の物語とともにお楽しみください。

鬼まんじゅうと石垣もち

鬼まんじゅうと石垣もち

愛知県の「鬼まんじゅう」と大分県の「石垣もち」は、どちらもさつまいもと小麦粉を使って作られる、素朴で温かみのある郷土菓子です。見た目はまるで蒸しパンのようで、ふっくらとした生地の中に、角切りのさつまいもがごろごろと詰まっています。

鬼まんじゅうは、角ばったさつまいもが生地の表面に顔を出す様子が「鬼のツノ」に見えることからその名がついたといわれています。一方の石垣もちは、石垣のようにゴツゴツとした見た目が特徴で、もちもちとした食感とやさしい甘さが魅力です。どちらも素材の味を生かした飽きのこないおいしさで、子どもからお年寄りまで幅広く愛されています。

いももち

いももち

蒸したさつまいもに、もち米やきな粉を合わせて作るお餅は、日本各地で親しまれている郷土の味です。ふんわりやわらかく、ほのかな甘みが口いっぱいに広がるこのお餅は、どの地域でも家庭のぬくもりを感じさせてくれる一品。基本の作り方は似ていますが、あんこを包む地域もあれば、素朴にきな粉をまぶすだけの地域もあり、その土地ごとに少しずつ個性があります。

呼び名も実にさまざまで、和歌山県・徳島県・高知県では「いももち」、宮崎県では「ねったぼ」、鹿児島県では「からいもねったぽ」などと呼ばれています。名前を聞くだけでも、地域の言葉や風土が伝わってくるようですね。

さらに、もち米の代わりに小麦粉を使ったものや、さつまいもを粉状にして練り上げた団子もあり、どれもその土地ならではの工夫と知恵が感じられます。シンプルな材料ながら、食べるとほっとする味わい…さつまいもと共に受け継がれてきた日本の郷土食の温かさを感じることができます。

かんころもち

かんころもち

長崎県の五島列島には、世界遺産にも登録された地域で今も受け継がれている、伝統的なさつまいも料理があります。それが、乾燥させたさつまいもともち米を使って作る保存食のお餅です。五島の厳しい自然環境の中で生まれたこのお餅は、飢饉や戦時中、そして作物が育ちにくいやせた土地において、命をつなぐ大切な食糧として重宝されてきました。

長期保存ができるよう工夫されており、噛むほどに広がるやさしい甘みと、どこか懐かしい素朴な味わいが特徴です。現在では、ネット通販や五島のお土産としても販売されており、遠方からでもその伝統の味を楽しむことができます。

また、同じように保存に適した郷土食として「こっぱ餅(熊本県)」などもあり、これらの餅はどれも“暮らしの知恵”から生まれた日本の貴重な食文化といえるでしょう。興味のある方は、ぜひ一度その味を確かめてみてください。

ろくべえ

「ろくべえ」は、長崎県の対馬や島原地方に伝わる伝統的なさつまいも麺で、その独特な見た目と味わいが地元の人々に長く親しまれています。さつまいものでんぷんから作られる麺は、やや黒みがかった色合いで、日本そばのような落ち着いた風合いが特徴です。

地域によって作り方に少し違いがあり、発酵させた芋団子「せん」を使うところもあれば、山芋を加えてコシを出すところもあります。スープに合わせると、もちもちとした食感とやさしい甘みが広がり、素朴ながらも深みのある味わいを楽しめます。

また、大分県には「ろくべえ」によく似た「いもきり」と呼ばれるさつまいも麺も存在します。どちらも、さつまいもを主原料とした昔ながらの知恵から生まれた料理で、地域ごとの工夫が光る一品です。食べ比べをしてみると、それぞれの土地の風土や味の違いが感じられておもしろいですよ。

地域別・お馴染みのさつまいもを使った菓子

地域別・お馴染みのさつまいもを使った菓子

全国には、さつまいもを使ったご当地スイーツや名物料理がたくさんあります。たとえば、東京の「芋ようかん」は上品な甘さと滑らかな口あたりで知られ、高知の「芋けんぴ」はカリッと香ばしく素朴な味わいが魅力です。熊本の「いきなり団子」は、さつまいもとあんこを小麦粉の生地で包んで蒸した温かいおやつとして人気。さらに、沖縄では美しい紫色が目を引く「紅いもタルト」が観光土産の定番となっています。

驚くことに、洋風スイーツの定番として知られる「スイートポテト」も、実は日本で生まれたお菓子。戦後の洋菓子文化が広がる中で、和の食材であるさつまいもを使って工夫されたのが始まりといわれています。

このように、全国を見渡すとさつまいも料理の種類は数え切れないほど。すべてを紹介しきれないほど豊富であることこそ、さつまいもが日本の食文化の中にしっかりと根づいている証です。どの地域にも、その土地ならではの工夫と温かさがあり、さつまいもがいかに愛され続けてきたかが伝わってきます。

さつまいもはどこで生まれた?

みなさんは、どんなさつまいも料理が好きですか?焼き芋や大学芋、スイートポテト…。どれも甘くておいしいですよね。毎年秋になると登場する、期間限定スイーツやドリンクを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。ところで、私たちが普段食べているさつまいものルーツについて、疑問に思ったことはありませんか?

さつまいもの歴史 ~誕生から世界へ広まるまで~

さつまいもは紀元前800~1000年頃に、熱帯アメリカで誕生しました。「熱帯アメリカ」とは、メキシコから南米ペルーあたりを指します。根拠として、紀元前200~600年にペルー北側で栄えた「モチーカ文化」のものとされる、さつまいも型の土器が発見されています。15世紀後半には、あの有名な探検家「コロンブス」がさつまいもをヨーロッパに持ち込みました。しかし、ヨーロッパの寒冷な気候がさつまいもの栽培に向かず、あまり普及しませんでした。その後、ヨーロッパが植民地にしていた暖かい国(インド、アフリカ、東南アジア)へ渡り、全世界へ広まったとされています。

さつまいもが日本にやって来た

さつまいもはどこで生まれた?

さつまいもは、1600年頃に中国福建省から琉球大国(沖縄)へ伝わりました。その後、1705年に「前田利右エ門」という船乗りによって、薩摩(鹿児島)へ持ち込まれたといわれています。※諸説あり

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30分で完成!さつまいも郷土料理「いももち」令和版

30分で完成!さつまいも郷土料理「いももち」令和版

もちもちとした食感がたまらない「いももち」は、素朴でやさしい甘さが魅力の一品です。ここでは、手軽に作れるように「市販のお餅」を使った簡単レシピをご紹介します。

蒸したさつまいもをなめらかに潰し、温かいうちに角餅をちぎって加え、弱火でじっくりと混ぜ合わせるだけ。餅がやわらかく溶け、さつまいもと一体になったら、丸めて形を整えます。仕上げにきな粉をたっぷりまぶせば、香ばしさと甘みが引き立ち、どこか懐かしい味わいに。

外はもちっと、中はほくっとした食感で、冷めてもおいしくいただけます。時間がない日でもすぐ作れるので、おやつにもぴったり。お餅とさつまいもの自然な甘さが調和した、心温まる家庭の味をぜひお試しください。

さつまいもとお餅で作る「いももち」

【 材料 】

  • さつまいも 約210g(中1本)
  • 餅(市販)70g
  • あんこ・きな粉(市販)適量ずつ

さつまいもと餅の割合は、3:1くらいが良いという

引用:農林水産省 うちの郷土料理「からいもねったぼ 鹿児島」より

※さつまいもと餅の分量は、農林水産省サイトを参考にしました。

【 アレンジした作り方 】

  1. さつまいもを洗い、皮をむく
  2. さつまいもを小さくカットして、耐熱容器に入れる
  3. ふんわりラップして500Wレンジ7分加熱する
  4. 加熱したさつまいもをマッシュポテト状につぶす
  5. 餅を小さめにカットして水でぬらした後、耐熱容器に入れる
  6. ふんわりラップして500Wレンジ約50秒~1分加熱する
  7. 麺棒などを利用して、柔らかくなった餅とサツマイモがなじむように突いたり混ぜたりする※餅がくっつかないように、ときどき麺棒の先を水でぬらす
  8. 餅がくっつかないように、ときどき手を水でぬらしながら7の餅を丸める※好みで餅の中にあんこを入れて丸める
  9. 仕上げにきな粉をまぶし、皿に盛りつける

まとめ

さつまいもを使った郷土料理まとめ

食欲の秋になると、ほくほくと甘いさつまいもが恋しくなりますよね。各地のさつまいも料理を食べ比べながら、その土地ならではの味や文化に触れてみるのも、この季節ならではの楽しみ方です。旅好きの方や歴史に興味がある方は、ぜひ本場で伝統の味を堪能してみてください。きっと、地域ごとに異なる風味や食感の違いから、新しい発見があるはずです。

もし旅行が難しい場合でも大丈夫。今は通販や物産展などで、全国各地のさつまいも料理をお取り寄せすることができます。家庭にいながらご当地グルメを味わえば、まるで小さな旅をしているような気分になれます。

また、手軽に楽しみたい方には、無添加のカットさつまいもや、ペースト・パウダー状になったさつまいももおすすめ。スープやスイーツ、パン生地に練り込むなど、アレンジ次第で新しいおいしさが広がります。

秋の味覚の主役・さつまいも。食べ方ひとつで印象ががらりと変わる奥深い食材です。今年の秋は、あなたらしい“さつまいもの楽しみ方”を見つけてみてくださいね。