日本では冬になると、甘くてホクホクの焼き芋を食べるのが一般的で、石焼き芋の屋台や、スーパーの焼き芋コーナーをよく見かけますよね。しかし、焼き芋を食べるのは日本だけだと思っていないでしょうか。海外の焼き芋は想像がつきにくいですよね。実は、海外でも焼き芋が食べられている国は多いのです。この記事では、海外でのいろいろな焼き芋事情をご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
焼き芋は本当に日本だけ?

寒い季節になると、石焼き芋の屋台やスーパーの焼き芋コーナーを目にするのは日本ならではの光景。甘くてホクホクした焼き芋は、冬の風物詩として親しまれてきました。では、焼き芋を楽しむ文化は日本だけのものなのでしょうか。実はそうではなく、世界各国でも焼き芋が食べられており、その形や味わい方は国ごとに大きく異なっています。この記事では、アジアからアメリカ、アフリカまで、さまざまな国での焼き芋事情を詳しくご紹介します。
焼き芋がよく食べられている海外の国
生産量が世界第1位の中国をはじめ、東アジアでは日本とよく似た焼き芋文化が根付いています。寒さが厳しくなる季節になると、街角に焼き芋の屋台が並び、人々が温かい芋を手にしてほっとひと息つく光景は、日本と非常に似ています。また、東アジアだけでなくインドやアメリカ、さらにはアフリカでも焼き芋は親しまれています。さつまいもは20℃から35℃ほどの温暖な気候に適しているため、赤道に近い地域や熱帯の国々で広く栽培されており、食卓にのぼる機会も多いのです。特にアフリカや東南アジアでは生産が盛んで、焼き芋は家庭の素朴なおやつや、屋台で手軽に買える軽食として親しまれています。さらに、ポリネシアの島々にも焼き芋を味わう習慣があり、豊富に収穫できるさつまいもを無駄なく調理する知恵として根付いてきました。こうした背景から、焼き芋は日本特有のものではなく、世界各地でそれぞれの文化に溶け込みながら楽しまれている食べ物といえるでしょう。
東アジアの国々
中国

世界で最も多くさつまいもを生産している中国では、焼き芋は冬の定番の食べ物です。寒さが増す時期になると、街角や公園の近くに焼き芋を売る屋台や小さな店舗が立ち並び、香ばしい香りに誘われて人々が列を作ります。特にリヤカーを引きながら各地を回る焼き芋屋の光景は日常的で、日本の石焼き芋販売と重なる部分が多くあります。中国の焼き芋は外側をしっかりと焼き上げ、中はねっとりとした甘さが広がり、寒い冬の体を温めてくれる庶民的な味わいとして長く愛されてきました。
台湾

台湾では焼き芋の人気が非常に高く、文化として大きく発展しています。日本と違うのは季節を問わず楽しめる点で、コンビニやスーパーの一角には一年中焼き芋が並び、夏でも冷やした焼き芋を食べられるのが特徴です。特に「黄金地瓜(台農57号)」と呼ばれる品種は、ねっとりとした食感と濃厚な甘みで人気があり、家庭でも手軽に楽しめます。台湾の人々にとって焼き芋は、季節を超えて愛される身近なおやつであり、街を歩けばその香りに出会う機会が多いのも魅力のひとつです。
韓国

韓国でも日本と同じように冬になると焼き芋の需要が高まります。屋台や専門の焼き芋店が街角に現れ、人々は冷えた体を温めるように熱々の芋を頬張ります。韓国ならではの食べ方として、焼き芋にキムチを添える習慣があり、甘さと辛さのコントラストが絶妙な味わいを生み出します。家庭でもよく親しまれており、オーブンやストーブの上で焼いた芋を食べる光景は、冬の定番の風物詩となっています。
東南アジアの国々
ベトナム

ベトナムは世界で第10位のさつまいも生産国で、街角の屋台では炭火で焼かれた焼き芋が売られています。日本の石焼き芋のように石を使うのではなく、炭火の直火でじっくり焼き上げるスタイルが一般的です。近年は石焼き芋を提供する店舗やデリバリーサービスも登場し、都市部を中心に人気が広がっています。ベトナムの焼き芋は、香ばしい香りと素朴な甘さが特徴で、屋台の煙と一緒に漂う芋の香りは人々の足を止める魅力があります。
インドネシア

インドネシアは世界で第9位のさつまいも生産国で、西ジャワ州で栽培される「チレンブ」という品種が特に有名です。この芋は糖度が非常に高く、焼くと蜜のように甘さがあふれ出し、スイーツのような感覚で楽しまれています。焼き芋は家庭でもよく作られ、道端の露店でも販売されており、日常的に親しまれている食べ物です。
タイ

タイではここ数年、日本から輸入されるさつまいもが一大ブームを巻き起こしています。特に2016年からの5年間で輸入額が5倍に増えたことが話題となり、ショッピングモールやスーパーの一角には「日本式の焼き芋」が並ぶようになりました。濃厚な甘みを持つ日本産の芋はタイの人々の舌を魅了し、屋台や専門店でも人気を集めています。甘い焼き芋がタイの食文化に新しい風を吹き込み、スイーツ感覚で楽しまれる姿は、まさに国際的な広がりを感じさせます。
インド

インドでは焼き芋の食べ方が日本とは少し異なります。さつまいもを皮ごと焼いた後に切り分け、マサラと呼ばれるスパイスやレモン、ライムを絞って味付けするのが一般的です。スパイシーさと酸味が加わることで、芋の甘みが引き立ち、インドならではの一品に変わります。屋台や路上で手軽に購入でき、特に冬の時期には多くの人に親しまれる定番の軽食です。
アメリカ

アメリカは世界第7位のさつまいも生産国で、特にオレンジ色の果肉を持つねっとりしたタイプが人気です。焼き方はオーブンを使うことが多く、日本の石焼き芋というよりは「ベイクドポテト」に近い感覚で食べられています。鮮やかなオレンジ色が料理に映えるため、家庭料理の付け合わせやホリデーシーズンのテーブルにもよく登場します。西海岸の一部では焼き芋の屋台が見られるなど、徐々に屋外で楽しむ文化も根付いてきています。
アフリカ

アフリカではさつまいもの生産が非常に盛んで、マラウイは世界第2位の生産量を誇ります。マラウイでは4月から5月にかけて収穫されたさつまいもを焼いて食べる習慣があり、ねっとりとした甘みが好まれています。そのほか、タンザニアやナイジェリア、アンゴラなども生産量が世界上位に入り、いずれの国でも日常的に焼き芋が食べられています。シンプルに炭火で焼き上げた芋は、素朴で栄養価の高い食べ物として、地域の食生活を支える存在です。
焼き芋があまり食べられていない海外の国

ヨーロッパでは、焼き芋の文化はあまり定着していません。理由のひとつは、さつまいも自体が広く栽培されてこなかったためです。大航海時代にコロンブスによってアメリカ大陸から持ち込まれたとされていますが、ヨーロッパは涼しい気候の地域が多く、さつまいもが育ちにくい環境でした。そのため栽培が広まらず、日常的な食材にはならなかったのです。現在でもスーパーに並ぶことはありますが、日本のさつまいもとは種類が異なり、水分が多く甘みが少ない品種が中心です。そのため、日本で親しまれているような「甘くてホクホクの焼き芋」とは少し違い、蒸したりスープに入れたりする調理法が一般的です。ヨーロッパの街角で日本のような焼き芋屋台を見かけることは少なく、焼き芋はやはり珍しい存在といえるでしょう。
日本から広がる焼き芋ブーム

一方で、近年は日本から世界へと焼き芋文化が広まりつつあります。さつまいもの一大産地である茨城県の「JAなめがたしおさい」では、2016年から輸出を本格的に開始し、タイやカナダ、香港、シンガポール、そしてEU諸国へと市場を拡大しました。2020年には前年度の15倍もの輸出量を記録し、その勢いは今も続いています。単にさつまいもを輸出するだけでなく、現地で本格的な焼き芋を楽しめるように焼き芋専用の機械もあわせて提供しているため、日本式の焼き芋をそのまま体験できる場が増えているのです。
さらに、アジア諸国で急速に人気を集めているのが、日本のディスカウントストア「ドン・キホーテ」の影響です。同グループは2011年から国内で焼き芋販売を拡大し、2017年以降はシンガポール、タイ、香港、台湾、マカオ、マレーシアなどへ店舗を展開しました。シンガポールでの販売が大ヒットしたことをきっかけに、各国で「日本の焼き芋」が注目を集め、特にタイでは空前の焼き芋ブームが到来しています。甘くて濃厚な日本産のさつまいもが持つ魅力が、現地の人々の食文化に新しい価値をもたらしているのです。今後も輸出や海外出店が進むことで、日本の焼き芋がさらに多くの国々で親しまれるようになると期待されています。
まとめ:焼き芋は日本だけでなく世界中で愛されている

焼き芋というと、日本の冬の風物詩を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際には、日本だけでなく世界中のさまざまな国で焼き芋が食べられてきました。中国や台湾、韓国など東アジアでは、日本とよく似たスタイルで焼き芋を楽しむ文化が根付いており、屋台やスーパーで気軽に手に入ります。ベトナムやインドネシア、タイなど東南アジアでは、炭火でじっくり焼いた芋や、日本から輸入された品種を使った焼き芋が人気を集めています。インドではスパイスや柑橘を加えて味わう独自のスタイルがあり、アメリカではオーブンで焼いたベイクドポテト風が定番です。さらにアフリカでも、収穫の季節に焼き芋を楽しむ習慣が広く見られます。
一方、ヨーロッパの多くの国では気候の影響でさつまいもの栽培が難しく、焼き芋はあまり一般的ではありません。しかし近年、日本からの輸出や専用機械の普及、そして「ドン・キホーテ」をはじめとする企業の海外進出によって、日本式の焼き芋がアジアを中心に大きなブームとなっています。濃厚な甘さを持つ日本のさつまいもは、世界の人々に新しい食の楽しみを届けており、その魅力はますます広がりを見せています。
つまり、焼き芋は決して「日本だけの食べ物」ではなく、国や地域ごとに異なるスタイルで受け継がれている世界共通の味わいといえます。そして、日本発の焼き芋文化は今、再び海外で注目を浴びながら、新たな広がりを見せているのです。次に海外を訪れる際には、その国ならではの焼き芋に出会えるかもしれません。現地の食文化を感じながら味わう焼き芋は、日本で親しんできたものとはまた違った魅力を与えてくれるでしょう。








