オーブンで簡単！天日干し不要でできる、しっとり甘い干し芋の作り方

冬が近づくと、あのねっとりと甘い干し芋が恋しくなりますね。手作りしてみたいけれど、何日も天日干しするのは大変そう、と諦めていませんか。実は、ご家庭にあるオーブンを使えば、天候に左右されることなく、思い立ったその日にしっとり甘い干し芋作りを始められるのです。焼き芋・さつまいもの専門メディア「五島商店 佐藤の芋屋」では、過去、様々な家庭で作れる干し芋の記事を紹介してきました。今回は、今までの干し芋の作り方とは少し変わった方法になります！この記事を読めば、さつまいもの選び方からオーブンでの詳しい手順、さらにはお店のような仕上がりにする秘訣、正しい保存方法まで、干し芋作りの全てが分かります。無添加で美味しい自分だけの干し芋を、ぜひご家庭で楽しんでみてください。

オーブンでできる簡単干し芋の作り方

秋から冬にかけて旬を迎えるさつまいも。その素朴で濃厚な甘さをぎゅっと凝縮した干し芋は、多くの人に愛されるおやつではないでしょうか。 干し芋は天日でじっくりと干して作りますが、天候に左右されたり、完成までに時間がかかったりと、家庭で作るには少しハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、ご家庭にあるオーブンを使えば、天日干しは不要。思い立った時に、誰でも手軽にしっとり甘い絶品の干し芋を作ることができるのです。ここでは、オーブンを使った基本的な干し芋の作り方を、一つひとつの工程を丁寧に解説していきます。

まずは材料のさつまいも選びから

美味しい干し芋作りの旅は、主役となるさつまいもを選ぶところから始まります。どの品種を選ぶかによって、仕上がりの甘さや食感が大きく変わってくるため、ここはじっくりと選びたいところです。干し芋に加工すると、さつまいも本来の味がより一層際立ちます。

近年人気を集めているのは、「紅はるか」や「安納芋」といった、水分が多くて粘質、そして糖度が高い「ねっとり系」の品種です。これらを使うと、まるでスイーツのような、とろりとして濃厚な甘さの干し芋に仕上がります。一方で、昔ながらの素朴な味わいがお好みであれば、「玉豊（たまゆたか）」のような「ほくほく系」の品種もおすすめです。こちらは上品な甘さと、噛むほどに味わい深い、しっかりとした食感が楽しめます。

形は、あまり太すぎず、全体的に均一な太さのものを選ぶと良いでしょう。火の通りが均一になり、乾燥させる際にもムラなく仕上がります。手に持ったときにずっしりと重みがあり、表面に傷や黒ずみがない、新鮮なさつまいもを見つけてください。

作り方の手順を写真付きで解説

さつまいもが手に入ったら、いよいよ調理の始まりです。難しい工程は一切ありませんので、どうぞご安心ください。ここでは、オーブンで干し芋を作るために必要な材料と道具、そして具体的な手順を写真とともにお伝えします。一つひとつのポイントを押さえれば、きっとお店で売っているような本格的な干し芋が完成するはずです。

工程1 さつまいもを蒸すか茹でる

最初の工程は、さつまいもに火を通すことです。この加熱こそが、干し芋の甘さを決定づける最も重要な作業といっても過言ではありません。さつまいもに含まれるでんぷんは、ゆっくりと時間をかけて加熱されることで、甘い麦芽糖へと変化します。この性質を最大限に活かしましょう。

おすすめは「蒸す」方法です。さつまいもをよく洗い、蒸し器に入れて、竹串が抵抗なくスッと中心まで通るようになるまで、40分から1時間ほどじっくりと蒸し上げます。蒸すことで、さつまいもの水分が保たれ、旨味や栄養が逃げ出すことなく、甘みが内側に凝縮されます。もし蒸し器がなければ、鍋にさつまいもと少量の水を入れ、蓋をして弱火で蒸し焼きにする方法でも構いません。

「茹でる」場合は、皮付きのまま、たっぷりの水から茹で始めます。沸騰させずにじっくりと火を通すのがコツです。こちらも竹串がすっと通るのが目安です。

工程2 皮をむいてスライスする

じっくりと火を通したさつまいもは、とても熱くなっています。火傷をしないよう、触れるくらいまで粗熱を取りましょう。熱が少し落ち着いたら、手で優しく皮をむいていきます。十分に加熱されたさつまいもは、皮がつるりと気持ちよくむけるはずです。もし冷ましすぎてしまうと、皮が実にくっついてむきにくくなることがあるので、ほんのり温かさが残っているうちが作業のしやすいタイミングです。

皮をむき終えたら、いよいよスライスです。干し芋の食感を決める大切な工程なので、お好みの厚さに切り分けていきましょう。しっとりとした食感を楽しみたいなら7mmから1cm程度の少し厚めに、カリッとした食感がお好みなら5mm程度の薄めにするのがおすすめです。形は定番の平干し（縦にスライス）でも、手軽な輪切りでも構いません。スティック状に切る「角干し」も食べやすくて人気があります。

工程3 オーブンでじっくり水分を飛ばす

スライスしたさつまいもを、いよいよオーブンで乾燥させていきます。これが天日干しの代わりとなる、このレシピの核となる部分です。オーブンの天板にクッキングシートを敷き、スライスしたさつまいも同士がくっつかないように、間隔をあけて丁寧に並べてください。

準備ができたら、オーブンを100℃に予熱し、さつまいもを入れます。ここでのポイントは、高温で焼くのではなく、100℃という低温で、熱風を送りながらじっくりと水分を飛ばしていくことです。時間は60分を目安に設定し、まずは片面を乾燥させます。60分経ったら一度天板を取り出し、さつまいもをすべて裏返しましょう。そして、再びオーブンに戻し、さらに30分から60分ほど乾燥させます。

表面が乾き、指で軽く押してみて、内側に少し弾力のある柔らかさが残っている状態が完成の合図です。乾燥時間はお使いのオーブンの性能や、さつまいもの厚さによって変わってきますので、時々様子を見ながら、お好みの硬さに調整してください。

お店のような干し芋に仕上げる作り方の秘訣

せっかくご家庭で干し芋を手作りするのですから、お店で売っているような、あのしっとりとして甘い逸品を目指したいものです。実は、いくつかの簡単な秘訣を知っているだけで、いつもの干し芋が格段に美味しく仕上がります。さつまいものポテンシャルを最大限に引き出し、思わず笑みがこぼれるような、そんな特別な干し芋を作るための秘訣を、ここでじっくりとご紹介しましょう。

さつまいもの種類で仕上がりが変わる

干し芋作りの旅は、主役であるさつまいもを選ぶところから始まります。スーパーの店頭には様々な品種のさつまいもが並んでいますが、どれを選ぶかによって完成した干し芋の食感や甘さが大きく変わってくるのです。まるで土の中で育まれた個性そのものが、仕上がりの違いとなって現れるかのようです。ご自身の好みに合わせて、最高のパートナーとなるさつまいもを選んでみてください。

近年人気を集めているのは、水分量が多く、加熱すると蜜があふれるような「ねっとり系」の品種です。まるでスイーツのような濃厚な甘さと、絹のような滑らかな舌触りの干し芋を目指すなら、これらの品種が最適と言えるでしょう。

一方で、昔ながらの素朴で優しい甘さを楽しみたい場合は、「ほくほく系」の品種を選ぶのも一つの手です。鳴門金時などで作ると、噛むほどにさつまいも本来の風味が広がる、懐かしい味わいの干し芋に仕上がります。

甘さを最大限に引き出す加熱方法

さつまいもが持つ甘さの秘密は、でんぷんを糖に変える「β-アミラーゼ」という酵素の働きにあります。この酵素が最も活発に仕事をしてくれる温度帯が、60℃から70℃の間なのです。つまり、この温度帯をいかにゆっくりと通過させるかが、さつまいもの甘さを最大限に引き出すための最も重要な鍵となります。

ご家庭のオーブンに低温調理機能があれば、ぜひ活用してください。設定温度を70℃前後にして、90分から120分ほどじっくりと時間をかけて加熱することで、β-アミラーゼが存分に働き、さつまいもの中で甘みがゆっくりと育まれていきます。このひと手間が、まるで熟成させたかのような深い甘みを生み出すのです。

また、加熱方法としては「茹でる」よりも「蒸す」ことを強くおすすめします。茹でてしまうと、せっかくの甘みや栄養が水分と一緒に流れ出てしまいがちです。蒸し器や電子レンジのスチーム機能を使い、旨味をぎゅっと閉じ込めるように加熱しましょう。竹串がすっと抵抗なく通るくらいまで、優しく火を通すのが目安です。

切り方の厚みで食感をコントロールする

加熱を終えたさつまいもを、どのような厚さにスライスするか。この工程は、完成する干し芋の食感を決定づける、いわば設計図のようなものです。理想の食感を思い描きながら包丁を入れる厚さを決めるのも、手作りならではの楽しみの一つと言えるでしょう。

食べ応えのある、しっとりもっちりとした食感がお好みであれば、1.5cmから2cmほどの厚切りにしてみてください。噛みしめるたびに、さつまいもの濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。まるで高級な和菓子をいただいているかのような、満足感のある仕上がりになります。

反対に、表面は少し歯ごたえがありつつ、中はねっちりとした食感を楽しみたい場合は、7mmから1cm程度の少し薄めにスライスするのがおすすめです。乾燥時間も短縮できるうえ、つまみやすく、ついつい手が伸びてしまうような軽やかな干し芋が出来上がります。ご自身の好みや、食べるシーンに合わせて厚さを調整し、あなただけの最高の干し芋を完成させてください。

オーブン以外の干し芋の作り方も紹介

ご家庭にオーブンがない場合や、もっと手軽に作りたいという時でも、美味しい干し芋作りを諦める必要はありません。実は、私たちの暮らしに身近な道具を使っても、さつまいもの甘みを引き出した自家製の干し芋は作れるのです。特に、天日干しが難しい都市部の住環境や、天候が不安定な時期には、これからご紹介する方法がきっと役立つはずです。

電子レンジを使った時短干し芋の作り方

「今すぐ、少しだけ食べたい」そんな気持ちに応えてくれるのが、電子レンジを使った方法です。オーブンでじっくりと水分を抜いたものに比べると、ねっとり感は控えめになりますが、思い立った時にすぐ作れる手軽さは何よりの魅力と言えるでしょう。

作り方は驚くほど簡単です。まず、基本の作り方と同じように、さつまいもを蒸かすか茹でるかして、竹串がすっと通るまで柔らかく加熱します。熱いうちに皮をむき、7mm〜1cm程度の厚さにスライスしてください。

次に、クッキングシートを敷いた耐熱皿に、スライスしたさつまいもを並べていきます。この時、芋どうしが重ならないように必ず間隔をあけてください。これがムラなく仕上げるための大切な一手間です。

あとは電子レンジで加熱するだけですが、ここでのコツは焦らず、低いワット数で加熱すること。まずは解凍モードや200Wといった低い設定で3〜4分加熱し、一度取り出して裏返します。再び同じように3〜4分加熱。これを2〜3回繰り返し、表面が乾いて少し硬さが出てきたら完成の合図です。高ワット数で一気に加熱すると焦げ付いてしまうので、必ず様子を見ながら少しずつ進めてくださいね。

エアコンや扇風機で室内干しする方法

時間はかかってもいいから、より天日干しに近い、ねっとりとした食感を目指したい。そんな方には、エアコンや扇風機の風を利用した室内干しがおすすめです。天候に左右されることなく、夜間も干し続けられるのが大きな利点です。ホコリや虫がつく心配も少ないため、衛生面でも安心感があります。

こちらも同様に、蒸したさつまいもをスライスするところから始めます。干し網やザルといった、風通しの良い道具の上に並べていきましょう。風が芋の表と裏、両面にしっかりと当たるように、ここでも芋どうしがくっつかないように気を配ります。

準備ができたら、エアコンや扇風機の風が緩やかに当たる場所に置きます。直接強風を当て続けると表面だけが硬くなってしまうことがあるので、部屋の空気が循環しているような場所に置くのが理想的です。特に、空気が乾燥しやすい冬場は、エアコンの暖房が効いた部屋が干し芋作りに最適な環境になります。

あとは、1日に1〜2回、忘れずに裏返しながらじっくりと水分を抜いていくだけ。お部屋の湿度や温度にもよりますが、2〜3日もすれば、お店で売っているような本格的な干し芋が出来上がります。表面は少し乾いていても、中はしっとり。この食感の変化を待つ時間も、また楽しいものですよ。

各作り方の特徴比較

ご自身の環境や、どのくらいの時間をかけられるかに合わせて、最適な方法を選んでみてください。それぞれの方法に良さがありますから、特徴を下の表にまとめてみました。

作った干し芋の美味しい食べ方アレンジ

手塩にかけて作った干し芋だからこそ、その美味しさを余すことなく味わい尽くしたいものですよね。もちろん、そのまま食べてもさつまいもの自然な甘みが口いっぱいに広がって格別ですが、ほんの少し手を加えるだけで、また違った表情を見せてくれます。ここでは、いつもの干し芋がもっと好きになる、とっておきのアレンジ方法をご紹介します。

トースターやフライパンで軽く炙る

まず試していただきたいのが、シンプルながらも効果は絶大な「炙る」という一手間です。軽く熱を加えることで干し芋が柔らかくなり、眠っていた甘い香りがふわりと立ち上ります。表面は少しカリッとして香ばしく、中はより一層もっちりとした食感に。まるで作りたてのような、温かくて優しい味わいが蘇ります。

オーブントースターを使う場合は、アルミホイルを敷いて2〜3分ほど加熱するだけ。焦げ付かないように、時々様子を見てあげてください。フライパンであれば、油を引かずに弱火でじっくりと両面を焼き付けるのがおすすめです。香ばしい匂いがしてきたら、食べごろの合図です。

バターやクリームチーズを添えて

干し芋の素朴な甘さに、何かを「添える」だけで、驚くほどリッチなデザートに早変わりします。特におすすめしたいのが、乳製品との組み合わせです。干し芋の濃厚な甘みに、バターの塩気やクリームチーズの爽やかな酸味が加わることで、互いの風味を引き立て合い、複雑で奥深い味わいを生み出します。軽く炙った温かい干し芋の上にのせれば、とろりと溶けて見た目にも食欲をそそります。

おやつにはもちろん、少し意外かもしれませんが、ワインやウイスキーのお供としても素晴らしい相性を見せてくれます。組み合わせ次第で楽しみ方は無限に広がりますので、ぜひお好みのトッピングを見つけてみてください。

カビさせないための正しい保存方法

丹精込めて作った干し芋、せっかくなら最後まで美味しくいただきたいものですよね。手作りの干し芋は、市販品と違って保存料を一切使っていません。そのため、実はとてもデリケートで、カビが生えやすいという側面も持っています。美味しさを長持ちさせるための、正しい保存方法を覚えておきましょう。

基本は冷蔵庫で保存

数日から1週間ほどで食べきる予定でしたら、冷蔵庫での保存が基本となります。干し芋に残っているわずかな水分が、カビの原因となってしまうことがあるのです。常温での放置は避け、必ず冷蔵庫に入れてくださいね。

まず、干し芋を1本ずつキッチンペーパーで丁寧に包みます。これは余分な湿気を吸い取り、カビの発生を防ぐための大切なひと手間です。その上で、ジップロックのような密閉できる保存袋やタッパーなどに入れ、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。野菜室は、他の場所よりも温度が少し高めで湿度も保たれているため、干し芋が硬くなりすぎるのを防いでくれるんですよ。この方法で、およそ1週間は美味しくいただけます。

すぐに食べない分は冷凍がおすすめ

たくさん作って、ゆっくり楽しみたいという場合には、冷凍保存が断然おすすめです。冷凍することで、風味や食感を損なうことなく、1ヶ月から2ヶ月ほど美味しさを保つことができます。

保存する際は、1回に食べる分ずつ小分けにして、空気に触れないようにラップでぴったりと包みます。冷凍焼けを防ぐための重要なポイントです。その後、冷凍用の保存袋にまとめて入れ、袋の中の空気をできるだけ抜いてから口を閉じて冷凍庫へ。こうすることで、他の食品からの匂い移りを防ぎ、品質の劣化を最小限に抑えられます。

食べる時は、冷蔵庫に移して自然解凍するか、凍ったままオーブントースターで軽く焼くと、表面はカリッと、中はもっちりとした食感が蘇り、まるで作りたてのような味わいを楽しめます。

それぞれの保存方法の特徴を、分かりやすく表にまとめてみました。ご自身の食べるペースに合わせて、最適な方法を選んでくださいね。

まとめ

天日干しは天候に左右され、時間もかかるため、干し芋作りは少し敷居が高いと感じていた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この記事でご紹介したように、ご家庭のオーブンを使えば思い立った時にいつでも、しっとり甘い干し芋を作ることができます。さつまいもの種類選びや、甘さを引き出すための低温加熱、食感を決める切り方の厚みなど、少しのこだわりが仕上がりを格段に良くする秘訣です。出来上がった干し芋は、正しい方法で保存すれば長く楽しめます。ぜひ、自分だけの特別な干し芋作りを始めてみてはいかがでしょうか。