
甘くて美味しい紫芋として注目されている「ふくむらさき」。一般的に紫芋は、果肉が黄色いさつまいもに比べて甘みが控えめとされていますが、ふくむらさきはしっかりとした甘さが感じられるのが特徴です。そのため、紫芋の中でも特に食べやすく、スイーツや焼き芋など幅広い料理に適しています。しかし、まだ市場には多く出回っておらず、どのような味わいなのか気になっている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、話題の新品種「ふくむらさき」の特徴や栄養価、適した食べ方について詳しく解説します。見た目の美しさだけでなく、栄養価の高さも魅力の紫芋を知ることで、いつものさつまいもとはひと味違う美味しさが楽しめるはずです。ぜひこの機会に、ふくむらさきの奥深い甘さと鮮やかな紫色を活かした料理を味わってみてください。
ふくむらさきとは?
ふくむらさきは、高糖度で味の評価が高い「九系255」と、広く普及している紫芋「パープルスイートロード」を掛け合わせて誕生した品種です。2019年から民間の種苗会社などを通じて苗の供給が始まり、2021年には正式に品種登録されました。現在、食用として市場に多く流通している紫芋といえばパープルスイートロードですが、従来の黄色い果肉を持つさつまいもと比べると甘みが控えめな点が課題とされてきました。より甘く、美味しい紫芋を求める声に応えて開発されたのが、ふくむらさきです。
アグリ・コーポレーションでも有機栽培技術で作り始めたのでラボ長にふくむらさきの特徴、苗、栽培、収穫時期、味、糖度、食べ方、美味しいふくむらさきの見分け方を聞いてみた
パープルスイートロードよりも一層甘さが強く、しっとりとした食感が魅力で、従来の紫芋にはなかった濃厚な味わいが楽しめます。果肉は鮮やかな濃い紫色をしており、見た目にも美しく、焼き芋やスイーツにすると映えるのも特徴のひとつです。「食べた人を幸福な気持ちにできるように」という思いが込められた名前のとおり、クセのない味わいで多くの人に親しまれています。甘さと食感のバランスが良く、料理にも取り入れやすいふくむらさきは、紫芋の新たな代表格として今後さらに注目されるでしょう。
栄養価、食味、甘さ、主な産地等を比較して「パープルスイートロード」と「ふくむらさき」の美味しさの違いまで解説します。
ふくむらさきの特徴
あまり見かけることのないふくむらさきは、どのような品種なのでしょうか。ここでは、ふくむらさきの特徴についてご紹介します。
名前 | ふくむらさき |
食感 | しっとり系 |
収穫時期 | 10月下旬〜 |
主な産地 | 茨城県・千葉県など |
ふくむらさきの味、甘さ、糖度、食感
ふくむらさきは、一般的に甘さが控えめとされる紫芋の中で、特に強い甘みを持つ品種として注目されています。その甘さを示すBrix値(糖度)は、広く流通しているパープルスイートロードが約18であるのに対し、ふくむらさきは約22と、紅はるかに匹敵する高さを誇ります。そのため、焼き芋や蒸し芋にすると、甘さが一層際立ち、口に入れた瞬間に豊かな風味が広がります。紫芋は色鮮やかで栄養価が高いものの、甘さが物足りないと感じることも多かった中で、ふくむらさきはそのイメージを覆す存在となっています。
あやむらさきの旬の時期、美味しい調理法、調理のコツやふくむらさきの糖度、食感、美味しい調理法まで徹底解説
さらに、食感にも優れており、粘質でしっとりとした仕上がりが魅力です。柔らかくなめらかな舌触りとクリーミーな味わいをあわせ持ち、まさに紫芋の良さを活かしながらも、より多くの人が食べやすいバランスに仕上げられています。加熱すると蜜があふれ出し、しっとりとした果肉が甘さを引き立てるため、焼き芋にするとこれまでの紫芋とはまったく異なる味わいを楽しめます。ねっとりとした口当たりと濃厚な甘みが特徴のふくむらさきは、紫芋の新たな魅力を感じさせてくれる品種といえるでしょう。
参考資料:茨城県農業総合センター農業研究所|甘みが強く食味に優れる、有望な紫いも品種「ふくむらさき」
ふくむらさきの収穫時期
ふくむらさきの収穫は、一般的に10月下旬から始まります。栽培の適期としては、5月下旬に挿苗を行うと最も品質が安定しやすいとされ、収穫までにはおよそ160日間の在圃期間を確保する必要があります。
ふくむらさきは焼き芋に向いているのはなぜ?栄養価、糖度、入手方法は?焼き芋に向いている品種は〇〇が必要!焼き芋にして美味しいふくむらさきを徹底解説
そのため、ふくむらさきが最も美味しく食べられる旬の時期は、10月下旬から11月上旬以降となります。
参考資料:農林水産省|良食味紫芋「ふくむらさき」安定生産技術の開発
ふくむらさきの主な産地
農研機構の発表によると、ふくむらさきは主に茨城県を含む関東地域を中心に普及していく予定とされていました。しかし、現在ではその栽培地域が広がりつつあり、茨城県をはじめとして、千葉県や熊本県など、関東地方や九州地方の主要なさつまいも産地でも生産が進められています。特に茨城県は、国内有数のさつまいも生産地として知られ、品質の高いふくむらさきの供給地のひとつとなっています。最近では五島列島で有機栽培でふくむらさきの栽培も始まっており、今後は全国各地でふくむらさきの栽培が拡大すると身近な紫芋になる日も近いはずです。
ふくむらさきに含まれる栄養成分
ふくむらさきには、栄養がたっぷり含まれています。ここでは、ふくむらさきに含まれる栄養をいくつかご紹介します。
アントシアニン
ふくむらさきは、パープルスイートロードよりも果肉の紫色が濃く、その色素には豊富なアントシアニンが含まれています。アントシアニンとは、ブルーベリーや赤ワインなどにも含まれるポリフェノールの一種で、抗酸化作用が高い成分として知られています。摂取することで、以下のような働きが期待されています。
- 目の機能回復:眼精疲労を和らげ、視力の低下を防ぐサポートをする
- 抗酸化作用:細胞の酸化を抑え、老化の進行を遅らせる
- 免疫力向上:体の抵抗力を高め、健康維持に役立つ
特に、日々のパソコンやスマートフォンの使用で目の疲れが気になる人には嬉しい成分といえるでしょう。また、アンチエイジングや健康維持に関心のある方にも適しており、毎日の食事に取り入れることで、美容や健康をサポートする役割を果たしてくれます。鮮やかな紫色が特徴のふくむらさきは、栄養価が高いだけでなく、見た目にも美しく、料理の彩りとしても優れた食材です。
ビタミン
ふくむらさきには、アントシアニンに加えて、美肌効果が期待されるビタミンCも豊富に含まれています。ビタミンCは、美白やハリのある肌を保つために欠かせない栄養素であり、コラーゲンの生成を助ける働きがあります。そのため、日常的に摂取することで、肌の健康をサポートし、紫外線などの外的ダメージから肌を守る効果も期待されます。さらに、抗酸化作用をもつ脂溶性のビタミンEも含まれており、細胞の酸化を防ぎ、血流を促進する役割を持つことから、美容だけでなく健康維持にも役立ちます。
βカロテン
ふくむらさきには、ビタミンAの作用を持つβカロテンも含まれています。βカロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、視力の維持や皮膚・粘膜の健康を保つ働きがあるとされています。さらに、強い抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を抑えることで老化防止や生活習慣病の予防にも役立つ栄養素です。また、βカロテンには免疫機能を高める働きもあり、体調を崩しやすい季節の変わり目や、風邪を引きやすい時期には積極的に摂取したい成分の一つです。継続的に摂ることで、体の抵抗力を維持し、健康をサポートする効果が期待されます。
ふくむらさきはどこで販売している?買える?
ふくむらさきは、オンライン通販を利用して購入可能です。まだ市場にはあまり出回っておらず、一般的なスーパーではほとんど見かけることがないため、手に入れるには産地直送の販売ルートを活用するのが賢い方法です。各地のJAや生産農家の公式サイトでは、新鮮なふくむらさきを直接取り扱っていることが多く、品質の良いものを探しやすいでしょう。
また、Amazonや楽天市場などの大手ECサイトでも販売が確認されており、選択肢の幅が広がっています。これらの通販サイトでは、購入者のレビューや商品情報を比較しながら選べるため、自分の好みに合ったものを見つけやすいのも利点です。自宅にいながら全国各地の生産者が育てたふくむらさきを取り寄せられるため、希少な紫芋の魅力を気軽に楽しめるでしょう。焼き芋や蒸し芋、スイーツ作りにぴったりなふくむらさきを、ぜひチェックしてみてください。
紫芋の希少品種「種子島紫」と紫芋の新新種「ふくむらさき」はどんなさつまいも?見た目の特徴や美味しさ、味の特徴、旬の時期を徹底解説
ふくむらさきのまとめ
これまでの紫芋は、見た目の美しさが際立つ一方で、黄色い果肉のさつまいもに比べて甘さが控えめと感じることが多かったかもしれません。しかし、ふくむらさきの登場によって、その印象が大きく変わろうとしています。従来の紫芋にはなかった強い甘みと、しっとりとした食感をあわせ持つふくむらさきは、焼き芋や蒸し芋にすると一層甘みが際立ち、さつまいも本来の旨みを存分に楽しめる品種です。
また、紫芋ならではの栄養価の高さも魅力のひとつです。ポリフェノールの一種であるアントシアニンを豊富に含み、抗酸化作用や健康維持に役立つといわれています。さらに、ビタミンCやβカロテン、食物繊維も含まれており、美容や体調管理を意識する人にもぴったりです。これまで紫芋に馴染みがなかった方も、見た目の美しさだけでなく、濃厚な甘さとしっとりとした口当たりを楽しめるふくむらさきをぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。