
さつまいもには多くの品種があり、それぞれ異なる味や食感が楽しめます。特に近年は、なめらかな舌触りと濃厚な甘さが特徴の「ねっとり系」が人気を集めています。その代表的な品種が「安納芋」です。加熱するとまるでハチミツのような甘さになり、焼き芋にするととろけるような食感が楽しめるため、多くの人に愛されています。例えば、スーパーやディスカウントストアの焼き芋コーナーを覗いてみると、安納芋を使った焼き芋が多く並んでいるのを見かけることも増えてきました。一方で、昔ながらのさつまいもといえば、甘さが控えめでホクホクとした食感の品種が思い浮かびます。例えば、「紅あずま」や「なると金時」は、ホクホク感が強く、甘みも優しく、昔ながらの焼き芋や天ぷらに適した品種です。しかし、最近はこのねっとり系とホクホク系の中間に位置する「しっとり系」の品種も注目されています。しっとりとした舌触りで、甘さと食感のバランスが良いことから、幅広い料理に活用しやすいのが特徴です。
その中でも、近年人気がじわじわと広がっているのが「紅まさり」です。安納芋ほどのねっとり感はないものの、しっとりとした食感があり、甘さもしっかりと感じられます。焼き芋にすると適度に水分が残り、ホクホク系よりもしっとりとした口当たりが楽しめるのが特徴です。今回は、この「安納芋」と「紅まさり」、それぞれの品種の違いや特徴を詳しく説明していきます。
ねっとり系の安納芋とはどんなさつまいも?
近頃、焼き芋の代表格として人気がある安納芋は、なぜこんなにたくさんの人から愛されているのでしょうか。その理由はやはり「食感と甘さ」にあるでしょう。この食感の秘密は、含まれている水分量にあります。この水分のおかげで、焼き方によりさつまいもに含まれるデンプン質が糖分に変化して、独特の甘みに変わるのです。そして、安納芋のふるさとは、種子島です。
この種子島の風土や気候が、安納芋のおいしさを作り上げたと言っても良いでしょう。
海底から盛り上がって島になった種子島の土壌と、海から吹く風にはミネラルが豊富に含まれて、そのおかげで甘い安納芋が作られたといわれています。収穫時に16度程度の安納芋の糖度は、時間をかけてゆっくり焼くことで40度まで上がり、他にはない甘さのあるさつまいもとして楽しむことができます。ですから安納芋の甘みを楽しむためには、焼く温度が重要となります。高温で一気に焼くのではなく、オーブントースターなどで250度程度の温度でジワジワ焼き、焼いたあとにいったんラップに包んで冷凍庫で凍らせるのがおいしくいただく裏ワザです。
しっとり系の紅まさりの特徴と人気の食べ方は?
紅まさりの特徴としては、まずその形が「紡錘形」、つまり一般的なさつまいもの形をしていて「紅あずま」よりもやや丸い形となっています。また、表面の皮の色も、いかにもさつまいも、といった「赤色」になっています。紅まさりという名前からもわかるとおり、その赤さが紅まさりの特徴と言えるのです。
一方で、中の肉色は淡い黄色になっているのも、さつまいもらしい色といって良いでしょう。大きさとしては中型のさつまいもに区分され、サイズのばらつきが少ないのが特徴となっています。さつまいもの品種として気になるのは、やはり、その舌触りではないでしょうか。近頃は安納芋に代表される「ねっとり系」のさつまいもが人気ですが、ねっとり系は比較的こってりしていますので、たくさん食べると次第にしつこさを感じてしまうこともあるかも知れません。その点、この紅まさりはホクホク系よりは若干しっとりしているのが特徴で、甘みの方も糖度が高くしっかりしたさつまいもの味が楽しめます。紅あずまと比較してみると、さっぱり、ホクホク系の紅あずまよりも、しっとりとした食感となっていて、ホクホク系にありがちな「繊維感」も少ないのが紅まさりの特徴と言えるでしょう。このように、程よい粘りと適度な甘さが特徴である紅まさりですが、どのようにするとおいしく食べられるのでしょうか。
安納芋よりもさっぱりした舌触りを楽しめるので、もちろん一般的な焼き芋としていただくのが正解でしょう。あるいは蒸しても良いですし、適度な食感があるため、料理の材料としても重宝されています。例えば、天ぷらの中でも人気の具材となるさつまいもですから、紅まさりもまた天ぷらにしてみると甘さと食感が楽しめます。その他に、天日干しで干し芋にしてみたり、スイートポテトの材料としても最適です。紅まさりの旬は一般的なさつまいもと同じように、およそ1月頃〜3月頃となり、主な生産地は茨城県です。
安納芋と紅まさりの特徴の違いは?
このように、安納芋と紅まさりは基本的にまったく違った楽しみ方ができるさつまいもと言えます。とはいえ対極になるというわけでもなく、ともに甘さにおいては糖度の高さが特徴となっています。ただし甘さに関しては、口にした瞬間に甘さが口の中に広がる安納芋に対して、典型的なホクホク系のさつまいもよりはしっとりしつつも、安納芋ほどどろっと溶けるほどではない紅まさりの方が、たくさん食べやすい甘さと言えるかも知れません。このあたりの甘さの好みは、人によって変わってくるでしょう。
さらに食感に関しても、ねっとり系の代表格である安納芋は、その甘さと舌触りで人気の品種となっていますし、一方の紅まさりは、安納芋よりは少し粉っぽいとも表現されるしっとり系の代表となっています。ですから、その時の気分に合わせてどちらを食べたいのかを決めれば、よりさつまいもを楽しめるようになるのではないでしょうか。
安納芋と紅まさりの特徴、品種、食感、まとめ
さつまいもには数多くの品種があり、それぞれに異なる魅力が詰まっています。その中でも、「安納芋」と「紅まさり」は、特に人気の高い品種として注目されています。どちらも甘さが際立つ品種ですが、食感や用途に違いがあり、料理や好みによって選び分けると、よりさつまいもの美味しさを堪能できます。
安納芋は、強い甘さとねっとりとした食感が特徴で、焼き芋にするととろけるような濃厚な味わいが楽しめます。種子島の温暖な気候と肥沃な土壌で育つことで、他の品種に比べて水分量が多く、加熱することで糖度がさらに高まります。特に、じっくりと時間をかけて焼くことで甘みが引き立ち、ねっとりとした舌触りが際立ちます。また、一度冷凍してから解凍すると、甘さがより濃縮され、スイーツのような味わいになります。
一方で、紅まさりは、しっとりとした食感と程よい甘さが特徴で、焼き芋だけでなく、天ぷらやスイートポテト、大学芋など、幅広い料理に活用しやすいのが魅力です。中型で形が整いやすく、表皮は美しい赤色で、中の果肉は淡い黄色をしています。繊維質が少ないため、口当たりが滑らかで、さつまいもの自然な甘さを優しく楽しめるのが特長です。焼くとしっとりした食感になり、甘みが増しますが、安納芋ほどのねっとり感はなく、ほどよい水分量を保った仕上がりになります。
このように、安納芋と紅まさりはそれぞれ異なる特長を持ち、好みや用途に応じて選ぶことで、さつまいもの美味しさを存分に味わえます。濃厚な甘みとねっとり食感を楽しみたいなら安納芋、しっとりとした口当たりと程よい甘さを求めるなら紅まさりが適しています。その日の気分や作りたい料理に合わせて使い分けることで、さつまいもの魅力をさらに引き出すことができるでしょう。