
福江商店街にぽつんと光る、新たな文化の拠点「kiito」
福江商店街の端っこ、夜になると少し寂しく感じるダケ眼科の斜め前に、ぽつんとあたたかな灯りが漏れているお店があります。レトロなレンガ造りの外壁に市松模様がアクセントになった入り口。その名も「kiito(キイト)」。この場所は、かつて「うらしまたろう」というレストランだったところ。2024年に五島へ移住してきた若いお二人が、今年の4月にお店をオープンさせました。
店名の由来は「生糸」
「Kiito」は「生糸」の意味。かつて歌舞伎の衣装を手がけていたお二人にとって、生糸はまだ染まっていないからこそ、どんな色にもなれるという希望の象徴なのだそうです。
店内に入ると、ふんわりと流れるピアノの音。開店祝いのお花や、サイン入りの歌舞伎写真が飾られていて、ふと別世界に迷い込んだような気分になります。驚いたことに、お祝いの花には片岡愛之助さんご夫妻のお名前も!
1番人気のタコライスは地元とのつながりも
バーではありますが、フードメニューも充実。店長・前神さんのおすすめは「タコライス」だそうで、迷わず注文。料理は前神さん、ドリンクはパートナーの丸山さんが担当されています。
カクテルはフルーティーなものからサワーまで種類豊富で、ノンアルコールもあるので、お酒が苦手な方や女性にも嬉しいラインナップ。中でも注目は、愛媛出身の前神さんが考案した、みかんのオリジナルカクテル「KIITOサワー」。インスタにも写真があるのでぜひチェックを。
しばらくして運ばれてきたタコライスは、大きな深皿に盛りつけられていて、見た目にもインパクト大! このお皿、移住直後に親切にしてくれた「パウザ」というレストランのオーナーさんからの贈り物なんだそうです。五島産の卵をカリッと焼いた目玉焼きがのり、スプーンで割るととろりと黄身がとけ出して……甘めに味付けされたひき肉と、シャキシャキのレタス、チーズのバランスも抜群。お好みでタバスコをかけても◎。ボリュームもたっぷりで、大満足の一皿です。
夜遅くに二軒目として来店するお客さんも多いそうで、やきそばも人気メニューのひとつ。実は最初はなかったのですが、「お酒の締めはやっぱり麺だよね〜」という常連さんの声から追加されたのだとか。
舞台裏から五島へ
食事のあいまに、お二人にお話をうかがいました。
前職は、歌舞伎の衣装を手がける「松竹衣装」。約20年にわたり、衣装の管理や着替えの補助で舞台裏を支え、坂田藤十郎さんや片岡愛之助さんらの担当もされていたそうです。全国の地方公演にも同行し、目まぐるしい毎日のなかで、「いつか自分たちで何かをしたい」という想いが芽生え始めた頃。市川九團次さんが五島に訪れ、歌舞伎文化を広める活動をしていたとき、その話をきっかけに五島を訪れ、島の自然や人柄に心を奪われて移住を決意。
現在kiitoでは、九團次さんがJAと開発した「九團次カレー」も提供。さらに、富江町田尾地区では「九團次米」も栽培中。今年は収穫量も増え、カレーやタコライスにもこのお米(品種は「にこまる」)が使われているとのこと。9月には九團次さんご本人も来島予定で、kiitoにも立ち寄るそうです!
手作りの店づくり、支えてくれた五島の人々
移住後、お店の改装に取りかかったものの、大工さんが見つからず……なんと、資材調達から壁塗り、カウンター造りまで、すべて自分たちの手で作り上げたのだとか! それを見た近所の方が手伝いに来てくれるなど、五島の人の温かさにも触れたそうです。店内には、歌舞伎役者の化粧を写し取った「押隈(おしくま)」も多数展示されています。五島ではなじみのない文化ですが、あるお客さんが「これ、魚拓みたいだね!」とぽろり。釣りの島・五島ならではの例えに、逆に若い丸山さんが「魚拓ってなんですか?」と聞き返して笑いが起きたエピソードも。
お酒やご飯だけじゃなく、歌舞伎の裏話なんかも聞ける、ちょっと不思議であたたかい空間。一人でも気軽にふらっと立ち寄れる「café bar kiito」。ランチ営業も検討中とのことで、今後の展開も楽しみです。
kiito(Cafe bar)
長崎県五島市末広町7-13
TEL:070-9064-7010
営業時間:19:00~23:30
定休日:水曜日
公式instagramはこちら
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