さつまいもを安心して皮まで食べられるとして有機さつまいもの人気が高まっています。自然環境にも優しい栽培方法なのですが実際に有機栽培されたさつまいもはあるの?

安心して食べられる、有機栽培のさつまいも人気が高まっています。自然にも優しい栽培方法で、消費者の関心も強まり、手掛けてみたいと考える生産者も増加傾向です。農林水産省が実施している、「令和3年度 有機農業等の取組に関する意識・意向調査」においても、生産者が有機農業に取り組む理由として、「より良い農作物を提供したい」と回答した方が69.2%で、最も多い回答になりました。しかし一方で、「有機栽培は難しそう」と考える方も少なくありません。そこで今回は、さつまいもの有機栽培方法を例として紹介します。栽培時期や土作り、収穫の際のポイントまで具体的に解説するので、これから有機栽培を始めようと考えている方は参考にしてみてください。

参照:令和3年度 有機農業等の取組に関する意識・意向調査

栽培方法

ここでは、さつまいもの栽培方法について紹介します。さつまいもの栽培時期は、地域や品種によって異なる場合がありますが、5月中旬に苗を植え付け10月頃に収穫です。4月下旬頃から、さつまいもの苗が、ホームセンターなどで販売されますので、そちらを利用するとよいでしょう。良い苗を選ぶ際の基準は、茎が太くて、節間が間延びしておらず、葉の色が濃く厚みのあるものです。

以下では、具体的な栽培方法を紹介します。

土作り

さつまいもは日光がよく当たり、通気性に富んだ乾燥している土を好みます。さつまいもの組織内には、自ら栄養分を作り出す微生物が共生していますので、栽培には痩せた土の方が適しています。有機肥料も少量であれば問題ありませんが、多いとツルばかりが伸びて、芋の生育が悪くなる「ツルボケ」という症状が発生するおそれがあるので、最小限にしましょう。追肥も行わないのが一般的です。植え付けの10日ほど前に、土をよく耕して、水はけと通気性の良い、高さ20~30cm、幅45cmほどの畝を作りましょう。土壌のpHは、5.5~6.0が望ましいです。地温の維持と雑草の予防のために、黒のビニールマルチを張ります。マルチは畝から浮かさずに、ピンと張るのがポイント。この作業をマルチングといいます。有機栽培は、雑草との闘いともいえますので、雑草を防ぐためにも、マルチングをしっかりと行うようにしましょう。

有機栽培のポイント

一般的なさつまいも作りでは、土作りの段階で、元肥として化成肥料を使用しますが、有機栽培では化成肥料を使用しないか、少量の有機肥料を使用する程度です。追肥もほとんど行いません。さつまいも栽培では、肥料をあまり必要としないので、初めての有機栽培でも取り組みやすいのがポイントです。反対に、肥料が多いと、芋の生育に悪影響を及ぼしてしまいます。

植え付け

土作りができたら、苗を植え付けていきます。気温が高すぎると苗が傷むため、雨または、曇りの日、あるいは夕方に植え付けを行うのが一般的です。株間を30cmほど取って、マルチに棒などで穴を開け、深さ10cmくらいの楕円形の植穴を掘ります。植穴の底に寝かせるように苗を置いたら、塊根の基となる不定根がよく出るように、3~4節が土に埋まるように植え付けるとよいでしょう。苗を寝かせる方向は、畝と並行です。根は挿した方向に長くのびるため、畝と直角に植えると、通路や隣の畝まで芋が広がり、収穫が大変になります。苗を植えたら、植穴全体にふたをするように土をかけます。マルチと土の間に空気が入ると、太陽の熱で芽が枯れてしまう恐れがあるためです。

有機栽培のポイント

有機栽培では、コガネムシによる虫害対策が重要になってきます。地表面をマルチでしっかりと覆うようにしましょう。こうすることで、成虫が土に卵を産み付けるのを防げます。また、雑草が生えてきた場合も、定期的に処理をするようにしましょう。

ツル返し

株が成長しツルが畝間から伸びて、伸びたツルが土に付着すると、葉の付け根部分からも根を出します。芋は根に養分が蓄積されてできるので、放っておくと地表を這うツルにも芋がつき、養分が分散してしまう場合も。これを防ぎ、植え付けた部分の芋だけを肥大させるために行うのが、ツル返しという作業です。ツルから出た根を見つけたら、土から剥がし、株の上へ返すように乗せていきます。一度行っても、すぐツルが伸びて次の根が出てしまうので、注意して観察し、葉の付け根から出た根があれば、ツル返しを都度行うようにしましょう。

収穫

植え付け後、110~120日後に収穫が可能です。葉の大半が枯れてきたら収穫のサイン。収穫時期は、早すぎると味が乗らず、遅れて霜が降りる頃になってしまうと、形が悪く、貯蔵性も落ちるので、適期収穫をするようにしましょう。掘った芋を乾燥させるため、収穫は晴れた日の午前中に行います。晴天続きで土が乾燥しているタイミングで行うのが、おすすめです。株元でツルを切り、マルチを剥がしたら、芋を傷つけないように、スコップなどで周囲から掘り起こして収穫します。掘った芋を乾燥させるために並べて干し、表面が乾いてから保存します。

追熟

さつまいもの主成分は炭水化物です。しかし、収穫直後はほとんどがでんぷんのため、甘味がほとんどありません。そこで、追熟という行程を経ることで、さつまいもの甘みを熟成させます。収穫後3~4週間で、でんぷんが果糖などの糖類に変化して、甘みが増してくれるのです。ただし、9度以下の低温環境下で糖化が進むと、腐敗しやすくなりますので、冷蔵庫などに入れての保存は厳禁です。反対に、15度以上で保存すると、さつまいもが萌芽してしまうので、保存の際の温度は12~14度あたりが最適です。

まとめ

今回は、さつまいもの有機栽培方法について紹介しました。さつまいもは、芽かきなどの管理作業の手間がかからず、栽培がしやすい作物です。有機栽培といっても、マルチングをしっかり行えば、ツル返し以外に日々の作業は多くありません。さつまいも栽培は、初心者でも取り組みやすいため、本記事を参考に挑戦してみてもらえると嬉しいです。