さつまいもの定番の1つ、焼き芋。特に寒い時期は、割ったときにほわんと立ち上る湯気や、ホクホク or ねっとりした甘味がたまりません。ところで、焼き芋は実の部分だけを食べる方が多いかもしれませんが、皮も食べられることはご存じでしょうか。実は、さつまいもの皮にも栄養が詰まっており、ダイエットにも効果的と言われているんですよ。この記事では、焼き芋の皮に含まれる栄養素や、焼き芋以外で皮を美味しく食べられる料理をご紹介します。
焼き芋は皮ごと食べても問題なし!
焼き芋の皮はそのまま食べても害はありません。焼き芋は皮を剥くものだ、というイメージをお持ちのかたも多いと思いますが、大学芋やレモン煮など、皮を剥かずに作られるさつまいも料理も散見されます。つまり、焼き芋の皮も問題なく食べることができるのです。またさつまいもには、じゃがいもが持つような毒性(ソラニン)もないのでご安心を。どちらも主食になりうるイモ類ですが、じゃがいもはナス科、さつまいもはヒルガオ科という別の植物です。ソラニンはナス科の植物に含まれる成分で、じゃがいもの他にはツルナスやイヌホオズキが挙げられます。ヒルガオ科にも毒性を持つものもありますが、さつまいもには毒性がないため、芽が出ても食べることは可能です。しかし「芽が出ている=栄養が芽に流れている=味が落ちている」ということなので、芽が出る前に食べるのが望ましいでしょう。また皮の汚れについてですが、さつまいもは出荷時に洗浄されることが多いため、土などは取り除かれています。汚れが気になる場合は、自分で納得のいくまで洗える自作の焼き芋に限って皮を食べる、という風にしても良いかもしれませんね。
焼き芋の皮はダイエットに効果的! 気になる栄養素は?
さつまいもが栄養豊富なのは周知の事実ですが、それは果肉部分に限ったことではありません。むしろ、皮により多く含まれている成分もあるほどです。ここでは、さつまいもの皮に多く含まれる以下4つの栄養素を、ダイエットに絡めつつご紹介します。
- ポリフェノール(クロロゲン酸、アントシアニン)
- カルシウム
- 食物繊維
- ヤラピン
ポリフェノール
さつまいもの皮には主に2種類のポリフェノールが含まれています。ポリフェノールとは苦み・渋みといった味覚を持つ成分のことで、また皮の色味もポリフェノールが由来となっています。具体的な効果は種類によって異なりますが、基本的に抗酸化作用が期待できるでしょう。さつまいもの皮に含まれるポリフェノールで注目すべきは、クロロゲン酸とアントシアニンです。
クロロゲン酸
クロロゲン酸はコーヒーにも含まれているポリフェノールで、脂肪肝や糖尿病予防に効果的と言われています。また、脂肪の蓄積を抑えたり、糖質の吸収を緩やかにしたりする働きがあるため、ダイエット効果も期待できるでしょう。
アントシアニン
ブルーベリーとセットで語られることも多いアントシアニンですが、実はさつまいもの皮にも含まれています。眼精疲労に効果的と言われているほか、内臓脂肪の蓄積や血圧の上昇を抑制する働きも。内臓脂肪が気になる方はポリフェノールを意識的に摂ってみるのも良いかもしれませんね。
カルシウム
さつまいもにはビタミンやミネラルも含まれており、なかでもカルシウムは果肉よりも皮のほうが多いのが特徴。カルシウムを逃したくない場合は皮も一緒に食べるようにしましょう。カルシウムは骨や歯の形成に役立つのはもちろん、以下のような作用もあります。
- 血液凝固作用
- 筋肉の収縮
- 神経の安定
食物繊維
第6の栄養素とも言われている食物繊維。水溶性と不溶性の2種類がありますが、さつまいもはそのどちらをも含んでいます。ちなみに両者の違いは以下のとおりです。
- 水溶性:便を柔らかくし、腸内環境を整える
- 不溶性:腸の蠕動運動を刺激し、便通を促す
「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によると、皮つきのさつまいもは蒸した状態で100gあたりそれぞれ1.0g(水溶性食物繊維)と2.8g(不溶性食物繊維)、皮なしは0.6g(水溶性食物繊維)と1.7g(不溶性食物繊維)。どちらも皮つきの状態のほうが多く含まれていることがわかりますね。ちなみに、食物繊維は体内の水分を吸収する効果もあるため、飲み物と一緒に摂取するのがおすすめです。
参考資料:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年「第2章本表別表1(データ)
ヤラピン
さつまいもを切った時に白い液体が染み出てきた経験はありませんか? これはヤラピンという成分で、古くから緩下剤として知られていました。事実、腸の蠕動運動を促す働きがあり、食物繊維との相乗効果によってさらなる快便が期待できます。
焼き芋を皮ごと食べる際の注意点
さつまいもの皮には栄養素が詰まっていることがおわかりいただけたと思います。しかし同時に注意しておく点もあるため、食べる前に確認しておきましょう。
果肉よりも消化されにくい
皮は果肉よりも食物繊維が多く含まれているため、その分消化されにくいです。そのため、小さなお子さんやお年を召した方々、そして胃が弱い方々はそのことを念頭に置いて判断してください。そして食べる際は、体内の水分を保つためにも飲み物をプラスしましょう。牛乳や豆乳などは、さつまいもの栄養素の中では少ないたんぱく質を補えるのでおすすめです。
汚れがついていないか確認する
お店で販売されているさつまいもは出荷時点で土等が取り除かれているため、基本的に心配はいりません。しかし気になる場合は生の状態を購入し、自分で洗って焼き芋を作ると安心ですね。ちなみに、皮にべたべたした黒い汚れのようなものが付いていることがありますが、これは汚れではなく先述のヤラピンです。空気中でクロロゲン酸と反応した結果の姿なので、食べても問題ありません。
焦げている部分は食べない
ヤラピンの黒い部分は問題ありませんが、焦げた部分は食べないようにしましょう。味も良くありませんし、体に悪影響を及ぼす成分が含まれている可能性が高くなります。例えばアクリルアミド。これは120℃以上加熱した際に発生する成分で、発がん性や神経毒性(しびれや頭痛等を引き起こす)があると考えられています。健康のために食べるつもりが、むしろ危険にさらすことになりかねません。そのため、焦げた部分は取り除くようにしてくださいね。
焼き芋以外にも? 美味しく皮を食べる方法
焼き芋の皮は硬くて食べにくい……というかたは、焼き芋以外の料理がおすすめです。例えば以下の調理法なら皮を意識せずに食べられるでしょう。
(例)
- 大学芋
- サラダ
- フライドポテト
- スイートポテト
皮つきじゃがいものフライドポテトがあるように、揚げることでパリッと仕上がり、皮が香ばしさのアクセントになります。あるいはたれを絡めて大学芋にすれば、果肉と皮がより一体化するでしょう。サラダにする際は、サイコロ状にカットして茹でることで食べやすさがアップします。また、黄色と紫色のコントラストが鮮やかなサラダになるでしょう。ちなみに皮のみを使った以下の料理もあります。気になった方はぜひ試してみてくださいね。
(例)
- きんぴら
- ふりかけ
- チップス
まとめ
さつまいもの皮にはポリフェノールや食物繊維などの栄養が含まれています。無理をして食べる必要はありませんが、試しに食べてみる価値はあるでしょう。焼き芋を自作するなら、最初から皮も食べる目的で仕上げてみても良いですね。また、皮を違和感なく食べられるさつまいも料理もおかずからスイーツまで様々なので、気になった方はぜひ挑戦してみてください。