昔ながらのさつまいもとして親しまれている「紅あずま」。その魅力であるほくほくとした食感と上品な甘さを、ご家庭で最大限に引き出せていますか。実は、紅あずま本来のおいしさを味わい尽くす鍵は「低温でのじっくり加熱」にあります。この記事では、その甘さを引き出す科学的な理由から、プロが実践する絶品の焼き芋や天ぷらの作り方、さらには大学芋や炊き込みご飯といった多彩なアレンジレシピまで、紅あずまを余すことなく楽しむための知識を網羅的にご紹介します。購入時に失敗しない選び方や正しい保存方法も解説しますので、これを読めば、あなたの紅あずま料理が格段においしくなるはずです。
紅あずまの本当の魅力を知っていますか
秋の味覚として食卓にのぼる機会が増えるさつまいも。スーパーの店頭には様々な品種が並びますが、中でも「紅あずま」は長年にわたり多くの人々に愛され続けている品種のひとつです。しかし、最近人気のねっとり甘いさつまいもと比べて、「昔ながらの品種」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。実は紅あずまには、他の品種にはない確固たる魅力が秘められています。この記事の最初の章では、その知られざる紅あずまの本当の魅力に迫ります。
ほくほく食感と上品な甘さが特徴の紅あずま

紅あずまは、1984年に関東地方を中心に普及したさつまいもです。 皮は少し紫がかった美しい紅色で、果肉は加熱すると鮮やかな黄色になります。 最大の特徴は、なんといってもその粉質でほくほくとした食感と、しっかりと感じられる上品な甘さでしょう。 繊維質が少なく、口に含むとどこか懐かしい栗のような風味と優しい甘みが広がります。 この素朴で飽きのこない味わいこそが、紅あずまが長年、多くの人々の心を掴んで離さない理由なのです。
その食感と味わいは、焼き芋はもちろんのこと、天ぷらや大学芋、煮物といった幅広い料理で真価を発揮します。 加熱しても煮崩れしにくいため、素材の形を活かした調理にも向いている、まさに料理のためのさつまいもと言えるでしょう。
ねっとり系さつまいもとの違いを解説

ここ数年、焼き芋のブームとともに「安納芋」や「紅はるか」といった、蜜のように甘く、ねっとりとした食感のさつまいもが大変な人気を集めています。 では、紅あずまのような「ほくほく系」とは具体的に何が違うのでしょうか。それぞれの特徴を知ることで、気分や料理に合わせてさつまいもを選ぶ楽しみがぐっと広がります。
「ほくほく系」と「ねっとり系」、どちらが優れているということではなく、それぞれに異なる魅力があります。昔ながらの素朴な焼き芋が食べたい時は「紅あずま」、スイーツのような濃厚な甘さを堪能したい時は「紅はるか」といったように、それぞれの個性を理解し、使い分けるのがおすすめです。
| タイプ | 代表的な品種 | 食感 | 甘さの質 | おすすめの調理法 |
|---|---|---|---|---|
| ほくほく系 | 紅あずま、鳴門金時 | 粉質でほくほくしている | 上品で優しい甘さ | 天ぷら、大学芋、煮物、炊き込みご飯 |
| ねっとり系 | 紅はるか、安納芋 | 水分が多くクリーミー | 濃厚で蜜のような強い甘さ | 焼き芋、干し芋、スイートポテト |
紅あずまの甘さを最大限に引き出すにはどうすればいい?
丹精込めて育てられた紅あずまは、それだけでも十分に甘く、ほくほくとした食感を楽しむことができます。しかし、いくつかの簡単なひと手間を加えるだけで、その潜在能力をさらに引き出し、まるでスイーツのような濃厚な甘さを味わうことが可能になるのです。ここでは、紅あずまが持つ本来の甘さを最大限に高めるための、二つの重要な秘訣について詳しく解説していきます。
鍵は低温でじっくり加熱すること

紅あずまをはじめとするさつまいもの甘さの秘密は、でんぷんを糖に変える「β-アミラーゼ」という酵素の働きにあります。 この酵素は、特定の温度帯で最も活発に活動するという性質を持っています。その温度こそが、およそ65℃から75℃の範囲なのです。 したがって、この温度帯をいかに長く保ちながら加熱するかが、紅あずまの甘さを決定づける極めて重要なポイントとなります。
逆に、電子レンジのように急激に高温で加熱してしまうと、β-アミラーゼが本格的に働き出す前に壊れてしまい、でんぷんが十分に糖化されません。 その結果、甘みが少なく、どこか物足りない味わいになってしまうのです。石焼き芋がおいしいのは、石を使って間接的に熱を伝えることで、芋の内部がゆっくりと最適な温度まで上昇し、酵素が働くための十分な時間が確保されるからに他なりません。 家庭で調理する際も、オーブンや蒸し器などを使い、低温でじっくりと時間をかけることを意識するだけで、紅あずまの甘さは格段に向上します。
収穫後の追熟でさらに甘くなる

実は、掘りたての紅あずまが最も甘いわけではありません。 収穫直後のさつまいもはでんぷん質が多く、甘みは比較的控えめです。 本当の甘さを引き出すためには、「追熟(ついじゅく)」と呼ばれる、収穫後に一定期間寝かせる工程が欠かせません。 この追熟期間中に、さつまいも内部のでんぷんが酵素の働きによってゆっくりと糖に分解され、甘みが増していくのです。 同時に、余分な水分が適度に抜けることで、甘みがより凝縮されるという効果もあります。
家庭で追熟を行う場合、最適な環境は温度が13℃から15℃、湿度が80%から90%程度の、少しひんやりと感じるくらいの場所です。 段ボール箱に新聞紙を敷き、土がついたままの紅あずまが互いに触れないように並べて、風通しの良い冷暗所で保存するのが良いでしょう。 冷蔵庫での保存は温度が低すぎて低温障害を起こし、味が落ちる原因となるため避けるべきです。 追熟期間の目安は、購入した状況によっても異なりますが、収穫したてのものであれば1ヶ月から2ヶ月ほど寝かせることで、その甘さを最大限に引き出すことができます。
| 追熟期間 | 状態の変化 | 甘さの目安 |
|---|---|---|
| 収穫直後〜2週間 | 水分が多く、やや粉質な状態。 | 控えめな甘さで、さっぱりとした味わい。 |
| 2週間〜1ヶ月 | でんぷんの糖化が進み、甘みが増してくる。 | しっかりとした甘さが感じられるようになる。 |
| 1ヶ月〜2ヶ月 | 糖化がさらに進み、水分が抜けて甘みが凝縮される。 | 濃厚で強い甘みとなり、食感もしっとりとしてくる。 |
一番おいしい食べ方 絶品焼き芋の作り方を徹底解説
紅あずまが持つ、あのほくほくとした食感と懐かしい甘さを余すところなく味わうなら、やはり焼き芋が一番です。調理器具の特性を活かすことで、同じ紅あずまでも食感や甘みの引き出され方が変わってきます。ここでは、ご家庭にある調理器具を使った絶品の焼き芋レシピを、それぞれの仕上がりの特徴とともに詳しくご紹介します。ご自身の好みに合わせて、ぴったりの作り方を見つけてみてください。
家庭でできるプロの焼き方 オーブン編

お店で売られているような本格的な焼き芋の味を再現したいなら、オーブンを使うのがおすすめです。温度管理がしやすく、低温でじっくりと時間をかけて加熱することで、紅あずまのでんぷんが糖に変わり、甘みが最大限に引き出されます。 時間はかかりますが、その手間をかけるだけの価値がある、格別の味わいが待っています。
作り方は至ってシンプルです。まず、紅あずまをきれいに洗い、水気を拭き取ります。アルミホイルで包むと、蒸し焼きのような状態でしっとりとした仕上がりに、包まなければ皮がパリッと香ばしく焼き上がります。 予熱なしのオーブンを160℃に設定し、80分から90分ほどかけてじっくりと焼き上げましょう。 焼き上がりの目安は、竹串がスッと抵抗なく通るかどうかです。 もし硬い場合は、様子を見ながら追加で加熱してください。 焼き上がった紅あずまからは、甘い蜜がじゅわっと溢れ出ていることもあります。
時短でもおいしい フライパンとトースター編
「もっと手軽に、短い時間で焼き芋を楽しみたい」という日もありますよね。そんな時にはフライパンやオーブントースターが活躍します。オーブンに比べて加熱時間は短くなりますが、コツを押さえれば十分においしい焼き芋を作ることができます。
フライパンで作る場合

フライパンを使えば、蒸し焼きにすることで、しっとりとした食感の焼き芋が約40分で完成します。 きれいに洗った紅あずまをアルミホイルで包み、フライパンに並べます。 少量の水(大さじ2〜3杯程度)を加えて蓋をし、弱火でじっくりと加熱してください。途中で2〜3回、焦げ付かないように転がすのがポイントです。水分がなくなったら、さらに少し焼き付けて香ばしさを出すのも良いでしょう。
オーブントースターで作る場合

オーブントースターは、手軽に香ばしい焼き芋が作れるのが魅力です。 ただし、火力が強く焦げやすいので注意が必要です。紅あずまをアルミホイルでしっかりと包み、20〜30分ほど加熱します。 さらに時間を短縮したい場合は、あらかじめ電子レンジで数分加熱してからトースターで焼くという裏技もあります。 これにより、中まで効率よく火を通すことができます。
しっとり派におすすめ 炊飯器と蒸し器編
紅あずま本来のほくほく感も良いですが、「たまには、ねっとり系のさつまいものような、しっとりとした食感で味わいたい」と感じることもあるでしょう。そんな願いを叶えてくれるのが、炊飯器や蒸し器を使った調理法です。
炊飯器で調理

炊飯器を使えば、スイッチひとつで驚くほど簡単に、甘くてしっとりとした蒸し芋が出来上がります。 洗った紅あずまを炊飯釜に入れ、芋の半分が浸るくらいの水を加えます。 あとは通常モードか、あれば玄米モードで炊飯スイッチを押すだけ。 炊き上がりの合図が鳴れば完成です。じっくりと熱が加わることで、まるでスイーツのような甘みが引き出されます。
蒸し器でふっくら仕上げ
蒸し器を使うと、紅あずま本来の風味を損なうことなく、ふっくらと上品な味わいに仕上がります。沸騰した蒸し器に紅あずまを並べ、30〜40分ほど蒸してください。竹串がすっと通るようになれば蒸し上がりの合図です。水っぽくならず、素材の味が凝縮された、やさしい甘さを楽しむことができます。
| 調理器具 | 加熱時間(目安) | 食感の特徴 | 甘みの強さ | 手軽さ |
|---|---|---|---|---|
| オーブン | 約90分 | 本格的なほくほく感、皮はパリッと | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
| フライパン | 約40分 | しっとり、蒸し焼き風 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| オーブントースター | 約30分 | 香ばしい、ややほくほく | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 炊飯器 | 約60分(炊飯時間による) | 非常にしっとり、ねっとり | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 蒸し器 | 約40分 | ふっくら、上品なしっとり感 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
おかずの主役 紅あずまの天ぷらを上手に揚げる秘訣

焼き芋やふかし芋で楽しむことが多い紅あずまですが、そのほくほくとした食感と上品な甘さは、天ぷらにすることでまた違った表情を見せてくれます。揚げたての衣のサクサク感と、中のほっくりとした食感の対比は、まさに絶品。ここでは、紅あずまの魅力を最大限に引き出し、食卓の主役になる天ぷらを上手に揚げるための秘訣をご紹介します。
衣は薄く 油の温度管理が重要
紅あずまの天ぷらを成功させる鍵は、「衣」と「油の温度」にあります。素材の味を活かすためには、衣はあくまで脇役。分厚い衣は避け、紅あずま本来の風味と食感を邪魔しない薄衣を心がけることが大切です。 また、さつまいもの甘みを引き出すためには、油の温度管理が欠かせません。この二つの要素を丁寧におさえることで、お店で食べるような本格的な天ぷらに仕上がります。
サクッと軽い食感を生む衣の黄金比
家庭で天ぷらを作る際、衣がべちゃっとしてしまうという悩みは少なくありません。サクッと軽い食感の衣を作るためのポイントは、材料をしっかりと冷やし、混ぜすぎないこと。 小麦粉に含まれるグルテンは、混ぜすぎたり温度が高かったりすると粘りが出てしまい、重たい衣の原因になります。 卵や水はもちろん、小麦粉も冷蔵庫で冷やしておくと、より軽い仕上がりになります。
| 材料 | 分量(2〜3人分) | ポイント |
|---|---|---|
| 薄力粉 | 100g | ふるっておくとダマになりにくく、仕上がりが軽くなります。 |
| 片栗粉 | 大さじ2 | サクサク感がアップします。 |
| 卵 | 1/2個 | 風味と食感を良くし、衣にコクを与えます。 |
| 冷水 | 200ml | 氷水を使うとよりカラッと揚がります。 |
ボウルに卵を溶きほぐし、冷水を加えて混ぜ合わせます。そこに、ふるった薄力粉と片栗粉を一度に加え、箸で数回、切るように混ぜるだけで十分です。多少粉っぽさが残るくらいで混ぜるのをやめるのが、サクッと揚げる最大のコツです。
低温からじっくり揚げるのが鉄則
紅あずまの甘みを最大限に引き出すためには、160℃〜170℃の比較的低温の油でじっくりと火を通すことが重要です。 さつまいもに含まれるデンプンは、低温でゆっくり加熱されることで糖に変わり、甘みが増します。 高温の油で短時間で揚げてしまうと、中まで火が通る前に衣が焦げてしまい、ほくほくとした食感も甘みも十分に引き出せません。
油の温度の目安は、乾いた菜箸を油の中に入れたときに、箸先から細かい泡が静かに立ち上る程度です。紅あずまを油に入れたら、衣が固まるまではあまり触らずにおきます。片面がきつね色になったら裏返し、両面が色づくまで3〜4分かけてじっくり揚げましょう。 竹串を刺してみて、すっと通れば揚げ上がりの合図です。
甘みを引き立てる切り方の工夫
天ぷらの食感や味わいは、紅あずまの切り方一つで大きく変わります。どのような食感を楽しみたいかに合わせて切り方を変えることで、紅あずまの天ぷらのバリエーションが広がります。
定番の輪切りは厚みが命

最もポピュラーな輪切りは、紅あずまのほくほくとした食感を存分に味わえる切り方です。おすすめの厚さは1cm〜1.5cmほど。 これより薄いと紅あずまの食感が損なわれ、厚すぎると火が通りにくくなります。切った後は、変色を防ぎ、アクを抜くために5分ほど水にさらしておきましょう。 揚げる前には、キッチンペーパーで水気をしっかりと拭き取ることが、油はねを防ぎ、衣が剥がれにくくなるポイントです。
食感を楽しむ乱切りとスティック状

いつもと違う食感を楽しみたいなら、乱切りやスティック状(拍子木切り)もおすすめです。乱切りにすると断面が広くなるため衣が絡みやすく、よりサクサクとした食感を楽しめます。一口サイズで食べやすいのも魅力です。
一方、スティック状に切ると、スナック感覚でつまみやすく、お子様にも喜ばれます。火の通りが早いので、揚げる時間を少し短くするのがポイントです。どちらの切り方も、紅あずまの甘みとほくほく感を違った形で楽しむことができ、食卓の良いアクセントになります。
紅あずまを使ったアレンジレシピ バリエーション豊かな食べ方
焼き芋や天ぷらでその魅力を存分に味わえる紅あずまですが、その活躍の場は決してそれだけにとどまりません。ほくほくとした食感と上品な甘さは、実はおやつから普段のおかずまで、驚くほど幅広い料理に活かすことができるのです。ここでは、紅あずまの新たな一面を発見できる、バリエーション豊かなアレンジレシピをご紹介します。
子どもが喜ぶおやつ 大学芋とスイートポテト
紅あずまの持つ素朴で優しい甘さは、子どもたちに大人気のおやつの主役としても最適です。定番ながらも奥が深い、二つのレシピを見ていきましょう。
大学芋

外はカリッと、中はほくほく。甘い蜜が絡んだ大学芋は、紅あずまのほくほく感を最大限に楽しめる定番のおやつです。 作り方のコツさえ押さえれば、ご家庭でもお店のような本格的な味わいを再現できます。ポイントは、さつまいもを二度揚げすることと、蜜の煮詰め加減です。一度低温でじっくり揚げて火を通し、最後にもう一度高温で揚げることで、外はカリカリ、中はほくほくの理想的な食感に仕上がります。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 材料 | 紅あずま、揚げ油、砂糖、水、醤油、黒ごま |
| 作り方 |
|
スイートポテト

紅あずまの上品な甘さを活かせば、なめらかな口当たりのスイートポテトも絶品です。 バターや生クリームを加えることで、コクと風味が格段に増し、満足感のある一品になります。よりなめらかな食感を追求するなら、加熱した紅あずまを裏ごしするのがおすすめです。 少し手間はかかりますが、その価値のある格別な口当たりに仕上がります。表面に卵黄を塗ってからオーブントースターで焼き上げると、美しい焼き色がついて見た目も華やかになります。
毎日の食卓に 炊き込みご飯と味噌汁
紅あずまは、おやつだけでなく日々の食卓でも活躍する万能選手です。甘さを活かした、ほっとする味わいの二品をご紹介します。
炊き込みご飯

秋の味覚の代表格、さつまいもご飯。紅あずまを使えば、その自然な甘みがご飯一粒一粒に染み渡り、おかずがなくても満足できるほどの美味しさです。 紅あずまは少し大きめの角切りにすると、炊きあがった時に煮崩れしにくく、ほくほくとした食感をしっかりと楽しめます。 昆布だしで炊いたり、きのこや鶏肉を加えたりと、アレンジも自在。塩昆布を加えるだけで味が決まるので、忙しい日にもおすすめです。
味噌汁

意外な組み合わせに思われるかもしれませんが、紅あずまの甘みと味噌の塩気は驚くほど相性が良いのです。 いつもの味噌汁に加えるだけで、ほんのり甘く、どこか懐かしい味わいの一杯が完成します。豚肉や油揚げ、わかめなど、どんな具材ともよく合います。 煮崩れを防ぐために、ここでも少し厚めに切るのが美味しく仕上げるコツです。
作り置きにも便利 紅あずまの甘露煮とレモン煮
時間がある時に作っておけば、食卓が少し寂しい時やお弁当の彩りに重宝するのが、紅あずまを使った常備菜です。甘さを活かした二つの煮物レシピは、覚えておくととても便利です。
甘露煮

照りのある美しい見た目がおせち料理などでもおなじみの甘露煮。 紅あずまを使えば、程よい甘さで後を引く美味しさの常備菜になります。 煮崩れさせずに美しく仕上げる秘訣は、弱火でコトコトと煮ること、そして火を止めてから一度冷まして味をじっくりと染み込ませることです。 くちなしの実を一緒に煮ると、より一層鮮やかな黄色に仕上がります。
レモン煮

紅あずまの甘さにレモンの爽やかな酸味と香りが加わったレモン煮は、さっぱりといただける一品です。 おかずとしてはもちろん、冷やしてデザート感覚で楽しむのもおすすめです。国産レモンを皮ごと薄切りにして加えると、見た目も香りも豊かになります。 はちみつを加えてコクを出したり、砂糖の量で甘さを調整したりと、お好みの味に仕上げられるのも魅力です。
購入時に失敗しない 新鮮な紅あずまの選び方
せっかく紅あずまを味わうのであれば、その魅力を最大限に引き出せる、新鮮でおいしいものを選びたいものですよね。スーパーの店頭にはたくさんのさつまいもが並んでいますが、いくつかのポイントを押さえるだけで、誰でも簡単においしい紅あずまを見分けることができます。ここでは、プロが実践している選び方のコツを具体的にお伝えします。
色と形と重さでチェックするポイント

おいしい紅あずまを選ぶ基本は、見た目と手に持った感覚です。皮の色が均一で美しく、ふっくらとした形で、ずっしりと重みのあるものが良品である証です。 細かい部分まで観察することで、その紅あずまが持つポテンシャルを見抜くことができます。
具体的にどのような点に注目すればよいか、下の表にまとめました。お店で紅あずまを手に取った際に、ぜひチェックしてみてください。
| チェック項目 | 良い紅あずまの特徴 | 避けた方がよい紅あずまの特徴 |
|---|---|---|
| 皮の色 | 全体的に色が濃く、鮮やかな紅色をしている。ツヤがあるもの。 | 部分的に黒ずみやシミがあるもの、または色が薄くくすんでいるもの。 |
| 形 | 中央がふっくらと太く、両端に向かってなだらかに細くなる紡錘形(ぼうすいけい)。表面がなめらかで凹凸が少ない。 | 細長すぎる、いびつな形、表面に深いへこみやシワが多いもの。 |
| 重さ | 見た目以上にずっしりと重みを感じるもの。水分がしっかり詰まっており、焼くとしっとり甘い。 | 軽く感じるもの。水分が抜け、パサついた仕上がりになる可能性あり。 |
| ひげ根 | ひげ根が少なく、毛穴が浅く目立たないもの。 | ひげ根が多く、硬いものは繊維質が多く食感が劣る傾向。 |
傷や芽が出ているものは避けるべきか
店頭に並んでいる紅あずまの中には、表面に少し傷がついていたり、小さな芽が出ていたりするものもあります。こうした紅あずまは選んでも良いものか、迷う方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、状態をしっかり見極めれば問題ないケースがほとんどです。
まず、表面の小さな擦り傷や、ひげ根を処理した跡などは、味にほとんど影響はありません。ただし、傷が深かったり、その部分が黒く変色して柔らかくなっていたりするものは注意が必要です。そこから傷みが広がってしまう可能性があるため、避けた方が無難でしょう。
また、芽が出ている点については、じゃがいもと違ってさつまいもの芽には毒性はありませんので、調理の際に取り除けば安全に食べることができます。しかし、芽が出ているということは、さつまいもが成長を始め、本体の栄養や水分が芽に使われ始めているサインでもあります。すぐに食べ切る予定であれば問題ありませんが、長く保存したい場合には、芽が出ていないものを選ぶことをおすすめします。
紅あずまを長持ちさせる正しい保存方法
手に入れた紅あずま、そのほくほくとした食感と優しい甘さを、できるだけ長く楽しみたいものですよね。さつまいもは、実はとてもデリケートな野菜。少しの工夫で、鮮度とおいしさを保つ期間が大きく変わってきます。ここでは、私たちが日頃から実践している、紅あずま本来の味を損なわずに長持ちさせるための保存の秘訣を、余すことなくお伝えします。
基本の常温保存と注意点

紅あずまをはじめとするさつまいもは、南国生まれの野菜なので寒さが非常に苦手です。 そのため、基本は冷蔵庫に入れず、風通しの良い冷暗所での常温保存が鉄則となります。 保存に適した温度は13~15℃、湿度は80~90%が理想とされています。 この環境を家庭で再現することが、おいしさを保つ鍵となります。
もし土付きの紅あずまが手に入ったなら、洗わずにそのまま保存するのがおすすめです。 土がついていることで芋の水分が保たれ、乾燥を防いでくれます。保存する際は、一本ずつ新聞紙でくるみ、呼吸ができるように穴を開けた段ボール箱や紙袋に入れておくと良いでしょう。 新聞紙が適度な湿度を保ち、急な温度変化から芋を守ってくれます。 この方法であれば、状態にもよりますが1ヶ月から3ヶ月程度の長期保存も可能です。
| 項目 | 注意点 |
|---|---|
| 温度管理 | 10℃以下になると低温障害を起こし、傷みや変色の原因になります。逆に20℃以上になると芽が出やすくなるため、夏場など室温が高い時期は特に注意が必要です。 |
| 湿気対策 | 水分は腐敗の原因となるため、ビニール袋など通気性の悪いものでの保存は避けましょう。濡れた手で触れたり、結露がつかないようにすることが大切です。 |
| 置き場所 | 直射日光や暖房の熱を避け、風通しの良い冷暗所で保管しましょう。玄関や北向きの部屋など、気温が安定している場所がおすすめです。 |
使いかけの紅あずまはどう保存する?

一度包丁を入れた紅あずまは、残念ながら常温での長期保存には向きません。切り口から水分が蒸発し、またそこから傷みやすくなってしまうからです。使いかけのものは、状況に応じて冷蔵か冷凍で保存しましょう。
数日中に使い切る予定であれば、冷蔵保存が便利です。 切り口が空気に触れないようにぴったりとラップで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。 野菜室は冷蔵室よりも少し温度が高めに設定されているため、低温障害を起こしにくいのが利点です。 カットしたものは水にさらしてアクを抜き、水を張った保存容器に入れて冷蔵することもできますが、その場合は毎日水を替えるようにしてください。 いずれの方法でも、保存期間の目安は2~3日です。
すぐに使う予定がない場合は、冷凍保存がおすすめです。 紅あずまは冷凍にも強い野菜で、生のままでも加熱してからでも冷凍できます。
生のまま冷凍する場合は、使いやすい形(輪切りやいちょう切りなど)にカットし、変色を防ぐために5分ほど水にさらしてアクを抜きます。 その後、キッチンペーパーで水気をしっかりと拭き取り、冷凍用の保存袋に入れて空気を抜いてから冷凍します。
加熱してから冷凍する場合は、焼き芋や蒸し芋にしたものを冷ましてからラップで包んだり、マッシュ状にしてから小分けにして冷凍したりすると、調理の際に時短になって便利です。 冷凍した紅あずまの保存期間は約1ヶ月を目安に使い切りましょう。
まとめ

ほくほくとした食感と、どこか懐かしい上品な甘さが魅力の紅あずま。そのおいしさを最大限に引き出す鍵は、でんぷんを糖に変える酵素が最も働く「低温でのじっくり加熱」にありました。ご家庭でもオーブンやフライパンを使い、少し時間をかけるだけで、驚くほど甘い焼き芋が出来上がります。
天ぷらや大学芋はもちろん、炊き込みご飯や味噌汁といった普段のおかずにも取り入れやすいのが紅あずまの良さです。この記事でご紹介した選び方や保存方法も参考にしていただき、ぜひ旬の紅あずまを食卓の主役にしてみてください。きっと、その素朴で奥深い味わいの虜になることでしょう。





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