さつまいもはねっとり派?ほくほく派?焼き芋におすすめの人気品種と特徴まとめ

寒い季節になると食べたくなる焼き芋。ねっとり濃厚で蜜があふれるタイプもあれば、昔ながらのホクホク食感で素朴な甘さが楽しめるタイプもありますよね。実は、同じさつまいもでも品種によって甘さや食感は大きく変わります。この記事では、「ねっとり系」と「ほくほく系」の代表的な品種を詳しく紹介し、焼き芋にしたときの特徴や選び方をまとめました。自分の好みに合うさつまいもを見つけて、最高の焼き芋を味わってみてください。

さつまいもの食感は品種で決まる

さつまいもの食感は品種で決まる

日本で正式に登録されているさつまいもは60種類以上あり、それぞれに個性豊かな味わいと特徴を持っています。大きく分けると食感は「ねっとり」「ほくほく」「しっとり」の3タイプに分類されます。ねっとりタイプは水分や蜜が多く、まるでスイーツのように濃厚でとろける甘さが魅力で、焼き芋にすると糖度が一段と際立ちます。一方で、ほくほくタイプは栗のように軽やかな口当たりで、素朴ながらも奥深い風味が楽しめるのが特徴です。さらに、しっとりタイプは両者の中間的な存在で、なめらかな食感とやさしい甘さを持ち合わせ、幅広い層に親しまれています。品種によってこれほどまでに異なる味わいを体験できるのも、さつまいもの奥深い魅力といえるでしょう。

ねっとり系の代表品種

安納芋

ねっとり系の代表品種 安納芋

安納芋(あんのういも)は、鹿児島県・種子島が原産の大人気品種です。糖度が非常に高く、じっくりと焼き上げると蜜があふれるほどジューシーになり、濃厚な甘さが口いっぱいに広がります。ねっとり系さつまいもの代表格として知られ、とろけるような食感とコクのある甘みはまるでスイーツのよう。特に焼き芋にすると真価を発揮し、甘党の方やスイーツ感覚で楽しみたい方におすすめの品種です。

紅はるか

ねっとり系の代表品種 紅はるか

紅はるか(べにはるか)は、「春こがね」と「九州121号」を交配して誕生した人気のさつまいも品種です。市場では「紅天使」や「甘太くん」といったブランド名でも流通しており、スイーツのような強い甘さと、しっとりねっとりとした食感が大きな特徴となっています。収穫直後は甘みが控えめですが、一定期間追熟させることで糖度がぐんと高まり、焼き芋にすると蜜がしたたり落ちるほど濃厚な味わいに変化します。現在では国内はもちろん、海外でも人気が高まりつつあり、ねっとり系焼き芋の代表格として注目されている品種です。

シルクスイート

ねっとり系の代表品種 シルクスイート

シルクスイートは、2012年に登場した比較的新しい品種で、その名の通りシルクのようになめらかな口当たりが特徴です。一般的なさつまいもは収穫後に熟成させて甘みを引き出す必要がありますが、シルクスイートは掘りたてでもしっかりと甘みを感じられるのが大きな魅力。加熱するとしっとりとした質感がさらに際立ち、なめらかで上品な甘さが口いっぱいに広がります。スイーツ感覚で楽しめるため、子どもから大人まで幅広い層に人気があり、焼き芋用としても近年特に注目を集めている品種です。

マロンゴールド

ねっとり系の代表品種 マロンゴールド

マロンゴールドは黄金色の果肉が特徴的な品種で、焼き上げるとまるで栗を思わせる濃厚な風味が広がります。ねっとりとした食感を持ちながら、甘さはほどよく上品で、しつこさがないため誰でも食べやすいのが魅力です。焼き芋として味わうのはもちろん、スイートポテトやケーキなどのお菓子作り、デザートの材料としても活躍します。黄金色の見た目と香ばしい甘さが相まって、家庭用から贈答用まで幅広く人気を集めるさつまいもです。

ほくほく系の代表品種

ほくほく系の代表品種

なると金時(鳴門金時)

ほくほく系の代表品種 なると金時

鳴門金時(なるときんとき)は、徳島県を代表する特産品で、ホクホク食感の王道ともいえる人気品種です。焼き芋にすると甘みはほどよく、上品であっさりとした味わいが広がり、飽きのこない美味しさが魅力とされています。糖度が高すぎず素朴な甘さのため、昔ながらの焼き芋が好きな方から支持を集めており、まさにホクホク系さつまいもの代表格です。

また、調理の幅が広く、和菓子やスイートポテトなどのお菓子作りはもちろん、天ぷらや煮物などの料理にもよく使われる万能タイプ。食感の良さとクセのない甘さから、料理の引き立て役にもなり、家庭料理からプロの和菓子店まで幅広く活用されています。さつまいもをホクホク派で楽しみたいなら、まずは鳴門金時を選ぶのがおすすめです。

紅あずま

ほくほく系の代表品種 紅あずま

紅あずま(べにあずま)は、関東地方を中心に長く親しまれてきた定番のさつまいも品種です。焼き芋にすると、昔ながらの焼き芋を思わせる粉質でホクホクとした食感が広がり、甘さも素朴でどこか懐かしさを感じさせます。ねっとり系が主流となりつつある現在でも、「ホクホク系といえば紅あずま」と言われるほど根強い人気を誇っています。

糖度は安納芋や紅はるかほど強くはありませんが、自然であっさりとした甘みが魅力で、飽きずに食べられるのが大きな特長。焼き芋だけでなく、大学芋や天ぷら、煮物など幅広い料理にも適しており、和食との相性も抜群です。関東を代表するホクホク系さつまいもとして、家庭の食卓やお菓子作りに欠かせない存在となっています。

宮崎紅

ほくほく系の代表品種 宮崎紅

宮崎紅(みやざきべに)は、「鳴門金時」や「紅薩摩」などと同じ高系14号系統に属するさつまいもで、九州を代表する人気品種のひとつです。焼き芋にするとホクホク感が強く、甘さは控えめで上品。ねっとり系の濃厚な甘みとは対照的に、さつまいも本来の素朴な風味を楽しめるのが特徴です。

糖度は比較的あっさりとしているため、焼き芋としてそのまま味わうのはもちろん、煮物や天ぷら、味噌汁の具材など、料理全般にも合わせやすい万能タイプ。特に甘すぎる焼き芋が苦手な方や、素材の自然な味わいを活かしたい方にぴったりの品種です。収穫期が早いのも特徴で、秋口から市場に出回るため、シーズンの始まりを告げるさつまいもとしても親しまれています。

パープルスイートロード

ほくほく系の代表品種 パープルスイートロード

パープルスイートロードは、農研機構によって育成された紫芋系の品種で、果肉が鮮やかな紫色をしているのが最大の特徴です。この美しい色合いは、ポリフェノールの一種であるアントシアニンによるもので、抗酸化作用が期待できる成分としても注目されています。食感はホクホクとして軽やかで、甘さは控えめで上品。ねっとり系の濃厚な甘みとは一線を画し、飽きのこないあっさりとした味わいが魅力です。そのため、焼き芋として楽しむのはもちろん、スイートポテトやケーキ、和菓子など、スイーツ作りや加工用途にも幅広く活用されています。

見た目のインパクトと栄養価の高さから、料理に彩りを添える存在としても人気が高まっている品種。鮮やかな紫色とホクホク食感の組み合わせは、焼き芋好きの方にも新鮮な驚きを与えてくれるでしょう。

甘さの違いも品種次第

甘さの違いも品種次第

さつまいもの甘さは、選ぶ品種によって大きく変わります。ねっとり系の品種は、濃厚で強い甘みが特徴で、焼き上げると蜜があふれるような安納芋や、追熟することで激甘になる紅はるかがその代表格です。スイーツのような甘さとクリーミーな食感は、甘党の方にとってたまらない魅力といえるでしょう。一方で、ほくほく系の品種は、軽やかで上品な甘さを持っており、栗を思わせるような風味が楽しめます。徳島県の名産である鳴門金時や、昔ながらの焼き芋を連想させる紅あずまが有名です。口の中でほろりとほどける食感と、ほどよい甘さのバランスは、素朴な美味しさを求める方にぴったりです。

実際に食べ比べてみると、同じ焼き芋でも「ねっとり系」と「ほくほく系」ではまるで別のスイーツや料理を味わっているかのように感じられます。季節や気分に合わせて品種を選ぶことで、焼き芋の楽しみ方がさらに広がるはずです。

焼き芋を、より甘くするコツ

焼き芋を、より甘くするコツ

焼き芋の甘さは、品種の特性だけでなく「加熱方法」や「保存状態」によっても大きく左右されます。さつまいもに含まれるでんぷんは、そのままでは甘みを感じにくいのですが、70℃前後の温度でじっくりと加熱することで酵素「β-アミラーゼ」が活性化し、でんぷんを糖へと変化させるのです。この工程によって、焼き芋特有の濃厚な甘さが生まれます。さらに、収穫してすぐのさつまいもよりも、1〜2か月ほど追熟させたものの方が格段に甘みが増します。保存中にでんぷんが糖へとゆっくり変わり、焼き上げたときには蜜があふれるようなスイーツ感覚の味わいに変化します。特に紅はるかや安納芋などのねっとり系は、追熟による甘さの伸びが顕著で、まるでデザートのような濃厚さを楽しめます。

調理の際は、オーブンを使って160〜180℃程度の低温で時間をかけて焼き上げる方法がおすすめです。じっくり火を通すことで糖化が進み、どの品種でも本来持っている自然な甘さを最大限に引き出せます。トースターや炊飯器でも工夫すれば同じような効果が得られるので、自宅でも簡単に「専門店のような甘い焼き芋」を再現できます。

まとめ

さつまいもは品種によって「ねっとり」と「ほくほく」で食感や甘さが大きく変わるまとめ

さつまいもは品種によって「ねっとり」と「ほくほく」でまったく異なる魅力を持っています。濃厚でスイーツのような甘さを楽しみたいなら、安納芋や紅はるかといったねっとり系がぴったり。とろけるような食感と蜜のあふれる甘さで、デザート感覚の焼き芋が味わえます。一方で、鳴門金時や紅あずまなどのほくほく系は、栗のように軽やかで素朴な甘さが特徴。昔ながらの焼き芋を思わせる懐かしい風味が魅力です。

どちらも美味しさの方向性が違うため、気分やシーンによって選び分けるのも楽しみ方のひとつです。濃厚で贅沢な甘さを味わいたい日にはねっとり系を、あっさりと上品な味わいを求める日にはほくほく系を選ぶなど、バリエーションを広げることで焼き芋の奥深さを感じられるでしょう。ぜひお気に入りの品種を見つけて、ねっとり派・ほくほく派どちらの魅力も堪能してみてください。