昔ながらの干し芋と今の干し芋の違いとは?昔の干し芋の魅力や美味しく食べる方法は?

さつまいもを乾燥させて作る「干し芋」は、栄養価が高く、保存性にも優れていることから、昔から日本の食文化に根付いてきた伝統的な食品です。噛むほどに広がる自然な甘みと、しっとりとした食感が魅力で、冬のおやつや非常食として親しまれてきました。幼少期におやつとして食べた思い出や、祖父母の家で囲炉裏端に干された干し芋を味わった記憶が残っている方も多いのではないでしょうか。しかし、近年ではライフスタイルの変化や加工食品の多様化により、昔ながらの干し芋を目にする機会が減ってきました。スーパーなどで販売されているものは、機械乾燥された商品が主流となり、天日干しの風味や独特の食感を持つ干し芋は少なくなっています。それでも、今なお伝統的な製法を守り続ける専門店や農家が存在し、こだわりの干し芋を生産しています。

今回は、昔ながらの干し芋の魅力を改めて振り返り、その素朴な風味を味わいたい方に向けて、今でも手に入る場所や購入方法を紹介します。懐かしい味わいをもう一度楽しみたい方や、自然な甘みを活かしたシンプルなおやつを探している方にとって、干し芋の魅力を再発見するきっかけになれば幸いです。

干し芋とは?

まずは、干し芋の成り立ちや作り方などについて紹介します。

干し芋の歴史

昔ながらの干し芋-干し芋の歴史

干し芋の起源は古く、平安時代に誕生したといわれています。さつまいもは保存が難しい食材でしたが、乾燥させることで長期保存が可能になり、収穫期以外でも食べられる貴重な食品として広まりました。日本の食文化の中で根付いた干し芋は、時代とともにその役割を変えながら、多くの人々に親しまれてきました。江戸時代から明治時代にかけては、家庭での保存食として重宝され、特に冬場の重要な栄養源となっていました。食糧難の時代には、主食代わりに食べられることも多く、庶民にとって身近な食べ物だったようです。さらに、干し芋の優れた保存性と栄養価の高さは、長期間の保存が求められる環境でも役立ち、戦場の兵士の携帯食や旅人の非常食としても利用されていました。噛むほどに甘みが増し、エネルギー補給にも適していたことから、実用的な食品としての価値も高かったといえます。

現代では、干し芋は茨城県をはじめとする日本各地で特産品として栽培・加工され、昔ながらの製法を守る職人たちの手によって作られています。天日干しでじっくり乾燥させたものや、品種ごとの個性を生かした商品など、バリエーションも豊富になり、昔ながらの味わいを求める人々に愛され続けています。干し芋は単なる保存食にとどまらず、その歴史的な価値と独特の風味で、今もなお多くの人に親しまれている伝統食品といえるでしょう。

干し芋はこうやって作られる!

昔ながらの干し芋-干し芋が作られている風景

干し芋は、蒸したさつまいもの皮を丁寧に剥き、薄くスライスした後、乾燥させることで仕上げられます。伝統的な製法では、露地で数日間天日干しにする方法が用いられ、太陽の光と風の力を借りながら、じっくりと水分を抜いていきます。一方で、近年では乾燥機を使って一定の温度と湿度を管理しながら乾燥させる方法も普及しており、安定した品質の干し芋が生産されるようになりました。

干し芋作りには多くの手間がかかります。さつまいもを均一に蒸し上げる工程から始まり、皮を剥く作業、適切な厚さにスライスする手間、さらに乾燥中の温度や湿度の管理など、細やかな作業の積み重ねが必要です。しかし、この丁寧な工程を経ることで、さつまいも本来の甘みと香りが凝縮され、しっとりとした食感の中にほくほくとした風味が生まれます。手間暇をかけて作られる干し芋は、素朴ながらも奥深い味わいを持ち、噛むほどに広がる自然な甘さが魅力です。伝統的な製法と現代の技術が融合しながら、長年にわたり多くの人々に愛され続けています。

昔ながらの干し芋と今の干し芋の違いとは?

昔ながらの干し芋の品種「玉豊」

昔ながらの干し芋は、表面が白い粉で覆われているのが特徴的です。この白い粉の正体は、さつまいもから自然に生まれた「麦芽糖」であり、品質の良い干し芋に見られる現象です。干し芋作りの過程で、さつまいもに含まれるでんぷんが糖化し、乾燥が進むにつれて麦芽糖として表面に浮き出てきます。しっかりと乾燥させることで甘みが凝縮され、噛むほどに優しい甘さが口の中に広がります。乾燥を十分に行った干し芋は、適度な歯ごたえがあり、ねっとりとしたものとは異なるしっかりとした食感が楽しめます。天日干しによってじっくりと仕上げられたものほど、噛みしめるほどに奥深い甘みと旨味が増していくのが特徴です。素朴ながらも味わい深く、日本人の昔ながらのおやつとして親しまれてきました。

主に使われている品種は「玉豊」で、他の品種と比べてしっかりとした歯ごたえがあり、仕上がった干し芋はやや黒っぽい色合いになります。この見た目も昔ながらの干し芋の特徴のひとつで、機械乾燥が主流となった現代でも、伝統的な製法で作られる干し芋を求める人々に根強く支持されています。

干し芋の白い粉は麦芽糖

近年、主流となっているのは、水分を多く含み、しっとりとした柔らかい食感の干し芋です。従来の干し芋とは異なり、表面が白い粉で覆われる(でんぷんが糖化する)前の状態で販売されることが多く、鮮やかな黄金色が特徴的です。やわらかくねっとりとした口当たりが人気を集め、昔ながらの干し芋とはまた違った魅力を持つ商品として注目されています。

昔ながらの干し芋-今、主流の黄金色の干し芋

このタイプの干し芋は、水分を多く含んでいるため、乾燥が進んだ昔ながらの干し芋と比べると保存期間が短くなります。しかし、乾燥工程が短縮され、機械化が進んだことで、生産効率が向上し、短期間で大量に市場に流通するようになりました。そのため、手軽に購入しやすくなり、一般のスーパーやコンビニなどでも目にする機会が増えています。主に使用される品種は、「紅はるか」「泉」「シルクスイート」などが代表的です。これらの品種は、それぞれ特徴的な甘みを持ち、干し芋に加工すると濃厚な風味が際立ちます。特に「紅はるか」は、糖度が高く、ねっとりとした食感が楽しめる品種として人気があり、近年の干し芋市場をけん引しています。品種ごとに異なる甘みや食感の違いを楽しめるのも、現代の干し芋の魅力のひとつです。

昔ながらの干し芋の美味しく味わう方法

昔ながらの干し芋の楽しみ方は焼く

昔ながらの干し芋は、そのまま食べても素朴な甘みが楽しめますが、少し手を加えることで、さらにおいしく味わえます。温めたり焼いたりすると、表面が香ばしくなり、内側がやわらかくなって食べやすくなります。トースターやフライパンで軽く炙ると、甘みが引き立ち、一層風味が増します。そのまま食べるだけでなく、アレンジを加えることで新たな楽しみ方も広がります。チーズやチョコレートをかければ、濃厚なスイーツとして味わうことができ、細かく刻んでパンやホットケーキの生地に練り込めば、自然な甘みが活きた焼き菓子に仕上がります。また、お茶漬けや炊き込みご飯に加えれば、干し芋の甘みとご飯の旨みが絶妙に調和し、和食のアクセントとしても楽しめます。

さらに、干し芋は地域ごとの郷土料理にも深く根付いています。茨城県では、冬になると各家庭の軒先にさつまいもを干す風景が広がり、冬の風物詩のひとつとされています。そのまま食べるのはもちろん、お雑煮に入れて食べる習慣もあり、家庭ごとにさまざまな食べ方が受け継がれています。愛媛県には「かんころ」と呼ばれる伝統的なおやつがあり、干し芋をすりつぶして小豆と混ぜ、丸めたものが作られています。昔から親しまれてきた郷土料理として、今もなお地元の人々に愛され続けています。

干し芋は、そのまま味わうだけでなく、温めたり、料理に活用したりすることで、新しい魅力が発見できる食品です。食べ方を工夫しながら、干し芋の素朴な甘みを存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。

昔ながらの干し芋を手に入れる方法

先述の通り、最近主流の干し芋はしっとりとした黄金色の干し芋であるため、店頭ではなかなか昔ながらの干し芋を見かけることは少ないかもしれませんが、ネット販売を活用すれば、希少な手作りの逸品など、全国から選りすぐりの干し芋を手に入れられます。賞味期限も長いので、ぜひとっておきの一品を見つけてみてはいかがでしょうか。

天然生活「訳あり 昔ながらの平ほしいも1kg」

出典:Amazonより

しっかりとした歯ごたえと素朴な風味が特徴な、完全無添加の身体にやさしい逸品です。茨城県のひたちなか産のさつまいもが使われています。訳あり品と言っても、見た目が白っぽかったり、サイズが小さめだったりなど個体差があるだけで、十分おいしく食べられます。様々な品種の干し芋がランダムに入っているのも、訳あり商品ならではのうれしいポイントです。

長砂農園「有機干し芋 100g」

出典:楽天市場より

老舗干し芋メーカー「長砂農園ほしいも直売場」の有機JAS認証の干し芋です。茨城県産の有機栽培のさつま芋を100%使用した完全無農薬・無添加のオーガニック商品であり、砂糖や保存料も一切使われていません。昔ながらの伝統的な天日干しと燻煙熟成を組み合わせて作り上げた、しっとりとしたやわらかい食感と自然な甘みが特長で、素朴な味わいをお楽しみいただけます。

昔ながらの干し芋のまとめ

噛めば噛むほど美味しさが出て来る昔ながらの干し芋

昔ながらの干し芋は、手間暇をかけた伝統的な製法によって作られ、素朴ながらも奥深い味わいと独特の食感を楽しめるのが魅力です。じっくりと乾燥させることで、噛むほどにさつまいも本来の甘みが引き出され、濃厚な旨味と香ばしい香りが口いっぱいに広がります。天日干しによる自然な乾燥や、昔ながらの製法を守ることで、機械乾燥にはない味わい深さが生まれます。

全国には、地域ごとに異なる製法や独自の品種を活かした干し芋が数多く存在し、それぞれに個性があります。例えば、茨城県では「玉豊」を使った昔ながらの干し芋が多く、しっかりとした歯ごたえと素朴な甘みが特徴です。一方で、「紅はるか」や「シルクスイート」を使った干し芋は、よりしっとりとして甘みが強い仕上がりになっています。ここまで紹介した干し芋専門店のように、ネット通販を活用すれば、全国各地から選りすぐりの干し芋を取り寄せることが可能です。それぞれの地域で育まれたさつまいもを使い、職人が丁寧に仕上げた干し芋は、産地ごとの風土や製法の違いによって多彩な味わいを楽しめます。昔ながらの本物の味をぜひ手に取り、その土地の風土や職人のこだわりを感じながら、じっくりと味わってみてはいかがでしょうか。