自然な甘さで、料理やお菓子作りに大活躍のさつまいも。「紅あずま」や「安納芋」など様々な品種がありますが、皆さんは「シルクスイート」をご存じでしょうか。漢字やひらがなの和風な名前が多いさつまいもの中で、カタカナの名前は珍しいですよね。この記事では、さつまいも界においてフレッシュな存在であるシルクスイートについて、特徴やおすすめの食べ方などの情報をまとめました。
シルクスイートはどんな品種？
さつまいもの品種の一つである「シルクスイート」は、群馬県の「カネコ種苗株式会社」によって開発されました。種苗が販売されるようになったのは、2012年です。1998年に育成された「春こがね」や、2001年に育成された「紅まさり」と比べると、まだまだ新しい品種といえます。シルクスイートは、この春こがねと紅まさりを交配させて生まれたさつまいもです。親からそれぞれの良いところを引き継いで、多くの人々から愛される存在になりました。シルクスイートにはどのような特徴があるのか、次の項目で具体的に説明していきます。
シルクスイートの3つの特徴
赤紫色の皮に、淡い黄色の身を持つシルクスイート。名前に「絹」と「甘い」という意味を持つこの品種には、3つの個性があります。味や食感などに注目して、シルクスイートの3つの特徴を紹介していきますね。
1.シルクのようになめらかな舌触り
シルクスイートは、その名の通り、絹のような舌触りが特徴的です。これは親である紅まさり譲りで、なめらかな食感を味わえます。
繊維が少なく水分量は多いため、焼き芋にしてもパサつかず、しっとりとした焼き上がりになります。
2.上品で素朴な甘さ
シルクスイートは甘すぎず、上品な味わいを楽しめるさつまいもです。糖度は約8.8度で、一般的なさつまいもの数値（7度前後）を上回ります。糖度だけでみると、それほど甘くないように思えるかもしれません。しかし、甘さは糖度だけで決まるわけではないのです。シルクスイートは口当たりが良く、するりと食べられるため、実際の糖度より美味しさを感じますよ。
3.収穫後、日持ちする
シルクスイートは、収穫後に品質を保ったまま貯蔵しやすい品種です。また、その特徴により、時間をおくほどに旨みが増すさつまいもでもあります。掘り起こしたばかりのシルクシートは甘みが弱く、焼くとホクホクした食感になります。これを適切な条件下で貯蔵することで、身が熟成されて味は甘く、潤いのある肉質になっていくのです。具体的には、収穫から早くとも5週間後くらいからが食べ頃といえます。なお、収穫時期は10～11月で、販売時期は4～5月です。
シルクスイートの美味しい食べ方
シルクスイートを家庭で食べるなら、定番ではありますが、やはり焼き芋がおすすめです。電子レンジで加熱するのではなく、トースターやオーブンでじっくり焼くことで、甘みを最大限に引き出せます。また、なめらかな口当たりが求められる、プリンや芋ようかんにするのも良いでしょう。シルクスイートの一番の魅力は、なんといっても絹のような舌触りです。このしっとり食感を活かした食べ方が向いていると言えます。
シルクスイートの産地
シルクスイートの産地は主に、千葉県・茨城県・熊本県などです。さつまいもは中南米で生まれた野菜であり、暖かい場所を好みます。また、湿気に弱いため、水はけの良い土地で育成する必要があります。関東や九州でさつまいもの育成が盛んなのは、これらの条件を満たすためです。千葉県や茨城県が位置する関東平野は、火山灰の風化物でできた土壌である「関東ローム層」に覆われています。また、火山噴出物が堆積した「シラス台地」は、熊本県の南部に分布しています。これらの火山灰土壌は排水性が良く、安定した気温の高さも相まって、さつまいもの育成に適しているのです。
シルクスイートの栽培方法
シルクスイートの栽培方法の流れは、以下の通りです。
- 1 畑を準備する
- 2 苗を購入する
- 3 植え付けする
- 4 「つる返し」をする
- 5 実ったさつまいもを収穫する
それぞれ、詳細とポイントを解説しますね。
1.畑を準備する
畑を耕し、土をかけて畝を作っておきます。畝には、雑草が生えるのを防ぐため黒のマルチシートをかけ、フィルムに切れ目を入れます。
2.苗を購入する
ホームセンターや通販サイトなどで、シルクスイートの苗を購入します。葉や茎に元気があり、節の間が間延びしておらず、長さが25～30cmほどのものを選ぶと良いでしょう。シルクスイートの苗は「つる割れ病」に弱いため、苗を購入したあとは、登録農薬で消毒することで病気を防げます。
3.植え付けする
植え付けの方法にはいくつか種類がありますが、「斜め植え」が作業しやすく、おすすめです。畝に対して苗を斜めに置き、3～4節ほどを土の中に植えます。
4.「つる返し」をする
苗を植えて2か月ほど経ったら、さつまいものつるを地面から離し、畝の上に置きます。この作業により、つるに生えた不定根が切れて、さつまいもに養分が集中しやすくなります。
全てのつるを畝に乗せたら、元の位置に戻します。これが「つる返し」です。つる返しを行わないと、養分が葉やつるに行き過ぎてしまい、実が小さくなってしまいます。必ず行いましょう。
5.実ったさつまいもを収穫する
植え付けから100日ほど経ったら、さつまいもを収穫します。まずは手で土を掘り、実が育っているのを確認しましょう。次に、つるを鎌で刈り取り、畝の外に出します。最後に、実を傷つけないように鍬を使って、掘り起こします。
まとめ
さつまいも界ではまだ新人と言える、シルクスイート。登場して間もないものの、魅力あふれる期待の新星です。
最後に、この記事の内容をまとめます。
- シルクスイートは2012年に登場したばかり
- 絹のようになめらかな食感で、糖度8.8のほどよい甘さ
- 収穫して時間が経つほど、甘くなりしっとり食感になる
- 栽培の際は、「つる割れ病」に注意して苗を消毒する
- 産地は千葉県、茨城県、熊本県など
- 一番の魅力は舌触り、食べるなら焼き芋やスイーツで！
シルクスイートをスーパーマーケットなどで見かけた際は、手に取ってみてはいかがでしょうか。
