さつまいも栽培で重要なのは苗。さつまいも栽培の成功の秘訣と今年の安納芋の苗の話

さつまいも栽培を始める際、特に重要なのは苗です。五島訪問で目の当たりにした驚きの変化から、どのようにさつまいもの育てるかが、さつまいも栽培の成功に直結することが分かりました。この記事を最後まで読むことで、さつまいも栽培のポイントや、成功するための具体的な方法を学ぶことができます。家庭菜園でさつまいもを育てる際の重要なポイントや、苗の選び方のコツも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

今年の安納芋の苗は?

さつまいも栽培で重要なのは苗-五島へ

2023年は、4月4日に五島へ行ったことで安納芋の定植、要するに「これから始まるよ~」のスタート地点を自分の目で見ることができました。今年2024年は、少し遅れて6月上旬に五島へ。いつものように安納芋の畑を見学する機会がありましたが、素人の私でも分かるくらい驚きの変化がありました。

ちなみに昨年の様子はこんな感じです。

有機安納芋の定植が始まる!みんな待っててよ!有機安納芋の定植は苗切り、液肥へ漬け込みから始まります!2023年度は有機安納芋を70万本!全て人力で定植していきます!

「苗、変わりましたか?」という感じで、よくよく考えると苗が変わるはずもなく、どうしてそう思ってしまったのか?それは、昨年見た状態(画像を含む)とは、勢いが違うのか、大きさが違うのか、まるで違う作物を植えたような感じがしたからです。そこでアグリ・コーポレーションの佐藤社長へ聞いてみました。「苗、変わりましたか?」という素人丸出しの質問でした。

大きく変わったさつまいも栽培

さつまいも栽培で重要なのは苗-大きく変化

佐藤社長曰く、実はこの「苗、変わりましたか?」は、当たりではないけれど、外れでもないとのことでした。後日、安納芋、ふくむらさき、紅乙女の栽培責任者のラボ長に話を聞いてみました。ラボ長の記事「初心者でも出来る!安納芋の育て方をプロが教えます!家庭菜園で安納芋栽培で失敗しないコツとは?安納芋の水やり、収穫方法、そのポイントは?ベランダで栽培できる?美味しい安納芋の育て方」は、家庭菜園を行う人を中心にアクセスが大きく上がっている記事です。今回もラボ長に「今年と昨年では何が違うのか?」、「何か変えたことはあるのか?」という核心に近い質問を投げてみました。

今年はここ数年で1番良いかも

そんな言葉から始まったのが今回の「今年と昨年では何が変わった?」のインタビューです。

今年と昨年では何が変わった?

マルチを使用した栽培

さつまいも栽培で重要なのは苗-マルチ栽培

今年と昨年で何を変えたのか?これは大きく言うと2つあります。ひとつは、マルチを使用しました。マルチを使用することにより地温(土の温度)が一定に保たれ、夜になっても地温が下がらないことが良い点です。アグリ・コーポレーションの定植は、70万本を6月までに植えていくのですが、どうしても本数が多いため、4月上旬から定植を開始します。4月上旬は冬から春に季節が変わったばかりなので、夜はまだ冷えることがあります。そのため、地温が一定で夜になっても地温が下がらないというのは有効でした。

また、マルチをしたことで草取りの回数が大幅に減りました。以前はマルチをしていなかったので畝と畝の間に草が生え、草取りが間に合わないくらい草との格闘があったわけです。今回は苗をマルチに刺していくので、その刺していった場所の草取りだけになり、草の量も草取りに関わる労働時間も1/10くらいになりました。草が生えにくいということは、草に畑の栄養を取られずに済むので、苗も昨年とは比べ物にならない状態になっています。

マルチは良い点ばかりですか?

さつまいも栽培で重要なのは苗-マルチ栽培ドローン撮影

雨が多少降らなくても土が乾かないので苗の成長に影響が出ることはなく、苗がある程度大きくなると日陰になるので草はなかなか生えにくい環境になります。良いことも多いですが、問題もありまして、五島の土地柄、畑が集中している三井楽町の土地柄が粘土質なので、カチカチに固まるためマルチをはがす作業が大変なのです。さつまいもの産地の中でも鹿児島県や宮崎県のような火山灰土壌の場所はマルチを使用した栽培に向いていますが、粘土質の土壌は向いていません。しかし、過去の状況等を考え、総合的に見るとマルチ栽培への切り替えは然るべきかなと思っています。

苗の状態

さつまいも栽培で重要なのは苗-定植後の状態

もうひとつ、大きく変えた点があります。過去、定植してしばらくすると葉が2~3枚程度しか残らず、理由が分かりませんでした。畑に栄養が足りていないのではないか?肥料に問題があるのではないか?といろいろ調査したりテストをしたりしましたが、原因を特定できませんでした。ところが、マルチ栽培を始めたことで、その原因を特定できました。定植して30分くらいするとマルチにべったりとついてしまっていたのです。最初は自家製液肥に使っていた黒砂糖かと思いましたが、調べるとそうではなく、自家製液肥の酸性濃度が苗には向かないくらい高かったのです。要するに、苗には向かない酸性濃度だったのでこれを全て中止しました。今年は、今まで作ってきた畑の力と丁寧に育ててきた苗の力を信じて、そのまま定植しています。それが現在の良い状況につながっているのです。

今年は自家製液肥は使わない?

いいえ。定植前の苗には酸性濃度が強すぎるので使いませんが、今までの実験や研究の結果をフィードバックして出来上がった自家製液肥ですので、液肥として畑には使用しています。その成果も出てきていると思います。

定植後の苗の状態が違うとどうなりますか?

さつまいも栽培で重要なのは苗-苗づくり

昨年の状態を知っている人が見ると、「苗、違いますか?」、「苗、変わりましたか?」と聞かれると思います。それくらい今年は目で見て違いが分かるレベルです。そういう苗が育つと、さつまいもの場合、上(苗の部分)が大きく育つと下(実の部分)も大きく育つので、今年は大いに期待できると思っています。8月のお盆明け、毎年20日くらいに試し掘りを行いますが、その試し掘りが今から楽しみです。実も昨年と比べると大きく、数も2倍くらいになっている可能性もあります。

素人意見ですが、大きくなると味って変わります?

さつまいも、特に安納芋の場合、Mサイズ、Lサイズが普通です。大きくなる分には全く問題ありません。大きくても小さくても糖度は変わらないので。そうそう、もうひとつ大切なことがありました。中耕でも大きく変わった部分があります。

中耕で大きく変わった部分とは?

さつまいも栽培で重要なのは苗-中耕

常用管理機で畝間を中耕していくのですが、普通の常用管理機だとマルチのビニールに引っかかってビニールを破ってしまうので、刃を大きく変えました。

さつまいも栽培で重要なのは苗-中耕2

通常は6枚×2ですが、両端を外して4枚×2の状態にして作業をしています。ということで今年は、大きく2つ変えたこと、それに付随するものも変えています。それが今年の定植した後の違いにつながっているようです。

家庭菜園向け!さつまいも栽培で重要なこと

最後に少し教えて欲しいことがあります。家庭菜園で同じようなことをするのは難しいと思いますが、さつまいも栽培で一番重要なこと、一番気をつけたほうが良いことがあれば教えていただけますか?

苗が重要です

私たちもそうなのですが、苗が重要です。家庭菜園をしている人は苗を種芋から作り、そのまま育てて、そこから定植することは少ないと思います。多くは近所のホームセンターや種苗センターで苗を購入することが多いのではないでしょうか。

苗の選び方

さつまいも栽培で重要なのは苗-苗の選び方

苗の選び方ですが、一言で言えば「強い苗」が良いです。苗の節間は狭い方が良く、苗の茎は太い方が良いです。定植した後の馬力、定植した後の勢いが違います。また、苗の葉は大きいほど良いです。茶色になっている、少し茶色になりかけているものは避けるべきです。

まとめ

さつまいも栽培において、成功の鍵を握るのは苗です。今年の五島訪問で実感した驚きの変化から、その重要性が再確認しました。2024年6月上旬に訪問し、昨年とは比べ物にならないほどの成長を見ました。「苗、変わりましたか?」と佐藤社長に尋ねたところ、昨年と異なる大きな変化があったと言われていました。

さつまいも栽培で重要なのは苗-マルチ栽培ドローン撮影2

まず、今年はマルチを使用した栽培を取り入れたそうです。これにより地温が一定に保たれ、夜間でも地温が下がらず、苗の成長が促進されました。さらに、マルチの効果で草取りの手間が大幅に削減され、労働時間も1/10に減少しました。結果として、苗が昨年よりも格段に良い状態で育っています。次に、長年の謎が判明!自家製液肥の酸性濃度が苗に影響していたことだと分かりました。この状況を改善することで、苗の状態が飛躍的に良くなっていました。定植前の酸性濃度が高すぎた液肥の使用を中止し、今まで大切に作り上げた畑の力と苗の成長力を信じて育てることが、良好な結果をもたらしているとのことです。見た目にも昨年と比べると、苗の勢いが大きく違い、成長も目に見えて向上していました。さらに、中耕作業も改善されたみたいでマルチビニールに引っかからないように刃を変更し、効果的な作業が可能になったようです。このような工夫と改善が積み重なり、今年の定植後の苗は昨年とは異なる驚くべき成長を遂げています。本当に違う作物かと思ったくらいです。

さつまいも栽培で重要なのは苗-ビニールハウス

家庭菜園でさつまいもを育てる際も、苗選びが重要です。強い苗を選び、節間が狭く茎が太いもの、葉が大きいものを選ぶことで、定植後の成長が違ってきます。茶色くなっている苗は避けるべきです。

以上のポイントを踏まえ、さつまいも栽培の成功に向けた具体的な方法を実践してみてください。これにより、収穫の秋が楽しみになりますよ。

あっそうそう!ラボ長が、今年はかなり期待できる成果になるので相田さん、頼みますよとのことでした。