焼き芋といえば、甘さが溢れるねっとり系さつまいもが魅力で、今、人気です。特に「安納芋」は、焼き芋にすることで濃密な甘さと滑らかな食感が際立ち、まるでスイーツのような味わいに変化します。しかし、この安納芋をさらに美味しく楽しむ方法をご存じでしょうか?その秘密は「熟成」にあります。適切な温度と湿度で保存することで、安納芋は糖度を高め、風味が格段に向上します。自宅で簡単に試せる保存方法を知ることで、スーパーで手に入る安納芋が驚くほど甘く変わるのです。本記事では、熟成の仕組みや実践のポイントを詳しく解説。最後まで読むことで、家庭での焼き芋作りがワンランクアップすること間違いなしですよ!
ねっとり系さつまいもの醍醐味は焼き芋
ねっとり系焼き芋の醍醐味と言えば、蜜が溢れる焼き芋に他なりません。この濃厚な甘さと滑らかな食感を楽しむには、やはり焼き芋が一番だと感じる方も多いでしょう。焼き芋やさつまいもに特化したメディアである「五島商店佐藤の芋屋」では、蜜が溢れる焼き芋を家庭で再現するための工夫や方法について、実際に焼き芋を焼きながら検証を重ねた記事を多数、展開しています。
ホクホク系焼き芋の代表的な品種である紅あずまや高系14号と、ねっとり系焼き芋の代表である紅はるかや安納芋とでは、その魅力や美味しさの方向性が大きく異なることも興味深い点かもしれません。紅あずまや高系14号は、焼き芋として楽しむだけでなく、お惣菜や料理に活用されることが多いのが特徴で、そのほくほくした食感は幅広い用途で重宝されています。一方で、紅はるかや安納芋は、その濃密な甘みとねっとりした舌触りが際立っているため、焼き芋としての人気が特に高いと言えます。その濃厚な甘さから加工品として有名なのはスイーツではないでしょうか?安納芋や紅はるかの濃厚な甘さをスイーツに近い扱いをされることも多く、ねっとり系の品種は、やはり、焼き芋が1番ではないかと思っています。私、個人的にも、紅はるかや安納芋を美味しく食べるには、焼き芋が最適な方法だと実感していますし…。
その濃厚な甘さが引き立つ焼き方や温度管理などにこだわることで、まるでスイーツのような甘さを楽しむことができるのは間違いないのですが、それ以上に甘く、美味しくするには、保存と言いますか?貯蔵と言いますか?保管をすると更に美味しくなる?のではないかと思います。今回は、昨年11月に買った土付きの安納芋を保存期間(3カ月)を経て、焼き芋にしてみました。因みに…同じようなことを土付きの紅はるかで実践したこともあり、その成果が物凄く甘くなっていた!ということで今回の安納芋を収穫後(購入後)、3カ月保存した焼き芋は、物凄く楽しみであることは間違いないのです。
安納芋とは?
安納芋は、鹿児島県種子島の安納地域で栽培が始まったさつまいもで、その名もこの地域に由来しています。第二次世界大戦後、スマトラ島北部から持ち帰られたさつまいもが起源とされ、種子島のミネラル豊富な土壌と気候により、甘く濃厚な味わいが育まれました。安納芋は鹿児島県種子島だけではなく、広く全国で栽培されるようになってきています。特に、五島列島では有機栽培に特化した安納芋の栽培が行われており、高品質な安納芋として安納芋を使ったペーストやパウダーが大手食品メーカーの原材料で使用されています。
安納芋の特徴として、安納芋自体の糖度の高さが挙げられます。生の状態でも糖度は16度前後であり、加熱すると40度近くに達することもあります。 冒頭にも触れた通り、安納芋は、この高い糖度により、焼き芋にすると蜜が溢れ出し、スイーツのような甘さになります。また、安納芋はしっとり、ねっとりとした食感とクリーミーな口当たりが特徴で、焼き芋にするとこの独特の食感が際立ちます。 また、安納芋は、ビタミンCや食物繊維、カリウムなどの栄養素も豊富に含まれており、健康面でも注目されているさつまいもです。一般的な安納芋の調理方法(焼き芋)は、オーブンでじっくりと時間をかけて焼くことで、甘みと食感を最大限に引き出すことができます。電子レンジでの加熱は、急激な温度変化により安納芋の風味を損なう可能性が大きいことから、電子レンジでの焼き芋調理は、避けた方が良いかもしれません。
スーパー等で買ってきた安納芋を保管する方法は、冷暗所での保存がベストです。冷蔵庫での保存は冷蔵庫の温度が安納芋の保管には向いていないことから低温障害を引き起こす可能性がありますので、避けるべきです。長期保存する場合は、安納芋を一旦、焼き芋にしてから冷凍する方法もあります。
プロが行う貯蔵、保存方法とは?
さつまいもは、収穫したばかりの状態では、スーパーの店頭には並びません。少なくとも1~2週間程度、貯蔵、保存してから出荷されます。さつまいものプロとも言える農家の方々や農業法人は、適切な方法で保存し、さつまいもの美味しさだけではなく、長期間、最高の状態で品質を保つことが出来るのです。
さつまいもの貯蔵、保存は、さつまいもの収穫後、直射日光や乾燥を避けるため、風通しの良い場所で一時的に保管します。その後、熟成を促進するために、温度が30~33℃、湿度が90~95%の環境で3~4日間程度キュアリング処理を行います。この処理により、さつまいもの傷口にコルク層が形成され、腐敗菌の侵入を防ぎ、水分蒸散を抑えて長期保存が可能となります。 貯蔵には、土中貯蔵、地下穴貯蔵、電熱を利用するキュアリング貯蔵、室内貯蔵など、色々な方法があります。以前は個人による地下穴式の貯蔵が多かったのですが、最近では青果用(生芋)の周年出荷のために、大型の室内(コンテナ)貯蔵が一般的となっています。 貯蔵中は、適切な温度と湿度の管理が最も重要です。さつまいもの貯蔵適温は13~15℃、湿度は80~90%とされています。特に冬の間は屋外での貯蔵は避け、屋内の温度変化の少ない場所で保存します。この方法でうまく貯蔵すれば、翌年の4月までは保存することができるようです。
さつまいもは低温に弱く、10℃以下の低温に長く置くと腐敗しやすいです。一方、15℃以上では皮色の劣化や萌芽をしてしまいます。そのため、冷蔵庫での保存は、避けるべきです。 さつまいもは、水分に弱く、洗うと水気のあるところから傷んできてしまいます。そのため、収穫後は土が付いたまま新聞紙などで包み、風通しの良いところで保存します。この方法で保存すると、さつまいもは約5カ月の保存が可能で、保存期間中に追熟して甘みが増えます。プロの農家の方々や農業法人は、これらの方法を組み合わせることで、さつまいもの品質を長期間維持し、美味しさを保っているのです。
自宅で安納芋を保存してみた!期間は3カ月
先の項で「プロが行う貯蔵、保存方法」を説明しましたが、さすがプロと唸ることばかりで、自宅で全てを行うことは、難しい…少しがっかりした記憶が残っています。強いて言えば、温度は貯蔵に向いている温度の13~15℃は、真冬の外でなければ、クリアできるレベルかもしれません。しかし、湿度…80~90%は理想としても、加湿器をつけておいてもこの湿度はなかなかクリアできることではありません。因みに湿度80%というと日本の季節で言えば、6月~7月くらいの梅雨時期がこの湿度のようです。この梅雨時期のような湿度で温度が13~15℃にするには、間違いなく、人工的に加湿器だけではなく、それ相応の専門の機械が無いと難しいわけです…。ということでプロにはさすがに近づくことは難しいので、出来る事を徹底して行いました。行ったことは以下の通りです。
- 安納芋を土付きのまま保管
- 安納芋を土付きのまま新聞紙で1本1本、包む
- 部屋の中で直射日光や太陽の光が入りにくい場所
- 11月で比較的、寒くなっていたので暖房が入らない様にした
- 毎朝、気温が低いうちに換気を10分
- 加湿器を入れて湿度40~50%に保つ
こんな感じで自宅で出来る事を行いました…が、「毎朝の換気」は、最初は忘れそうになることが多かったのですが、だんだんの習慣になっていったので、これは最初、想像をしていた以上にスムーズでした。最初に想像をしていたのは加湿器で湿度を40%~50%に保つのは、水を補充したり、かなり大変なことになるのでは?と思っていましたが、保管した場所が、狭い場所だったこともあり、水を補充するのは、1日に1回あるかないか?程度でした。狭い空間だったことと空気が抜けるところが無かったこと、そして加湿器は一旦40%になると1%上がるのも時間がかかり、途中で自動運転で調整が出来ていたのが大きかったです。
保存期間、約3カ月の安納芋を焼き芋にしてみた
安納芋の焼き芋レシピは、このメディアでも紹介している「安納芋で蜜が溢れる焼き芋が簡単に出来る焼き芋レシピ」で行いました。因みにこんな感じです。
ポイントは、ぐるぐるに巻くのではなくアルミホイルは安納芋を一回りするくらいにしてください。安納芋を並べた鉄板の下にもう一枚鉄板を入れます。ご家庭だと耐熱皿の下に大きめの耐熱皿を敷くという感じになります。この下の皿には、水を入れます。量は皿から水が溢れない程度にしてください。この状態で160℃のオーブンへ。90分入れます。ご自宅のオーブンがスチームコンベクションオーブンの場合は、スチームを入れて160℃で90分、オーブンへ入れます。
160℃で90分、オーブンで焼き終わりましたら一旦、オーブンの電源を落とします(電源を切ります)。オーブンの予熱が残った状態の中、焼き芋は取り出さずにこのまま30分放置します。オーブンの温度はどんどん下がり最後には100℃を切り90℃や80℃くらいになるはずです。
オーブンの予熱で30分放置した焼き芋を取り出すと今まで見たことがない光景が鉄板や皿の上で展開されているはずです。画像のようにアルミホイルから蜜がたっぷり滲み出てきているはずです。
こんな焼き芋レシピで焼いて、出来上がった焼き芋はこんな感じです。ご家庭の普通のアルミホイルでも良いのですが、黒い焼き芋専用のアルミホイルは、熱伝導が良いのか?更にねっとりして、蜜が溢れるのでいつも使用しています。
焼き立ては熱いので、火傷に気をつけながら手で押してみるとぶよぶよとまではいかないのですが、かなり柔らかい状態になっています。少し固めのグミ?それくらいの柔らかい焼き芋になっています。
安納芋の焼き芋を割ってみるとこんな感じ。焼き芋の香りがいつもの焼き芋より強いのがはっきりと分かります。
後は、安納芋独特のオレンジ色に近い色も個体差はありますが、より濃くなっているかもしれません。
安納芋を少し光を通してみると透明になっているのは蜜をたっぷりと果肉に入っている証拠です。
口に含んでみると、ねっとり…しっとりとした食感が今まで食べたどの安納芋より強く、香りだけでもおうお腹いっぱいとなるような感じになります。そして、果肉の柔らかいことに二度、びっくり!!軽く手で持っただけでもここまで凹んでしまいます。別の記事でも紹介した紅はるか同様、安納芋もスーパーで買ってきた土付きの安納芋なら自宅で貯蔵、保存するとここまで味が変わる!さすがにプロの農家の方々のように専門の機械が無くても十分に熟成できるということが分かりました。スーパーで買ってきた安納芋を更に!更に美味しく食べるなら熟成させるべし。保管場所や保管方法が少し大変ですが、ここまで味が変わるなら行っても良いのではないでしょうか?次は、是非、あなたが自宅で試してみてください!ちょっと驚く安納芋の焼き芋になりますよ!
まとめ
安納芋の濃厚な甘さとねっとりした食感を最大限に引き出すには、焼き芋にするのが最適です。しかし、その魅力をさらに高める鍵は「熟成」にあります。適切な温度と湿度で保存することで糖度が増し、驚くほど甘さが際立つようになります。プロが行う熟成法は難しい部分もありますが、自宅でも工夫次第で手軽に挑戦可能です。例えば、土付きのまま新聞紙で包んで冷暗所に保存するだけでも効果を実感できます。そして、丁寧に焼き上げた安納芋は、果肉から蜜が溢れる驚きの仕上がりに。手間をかける価値が十分にあるので、一度試してみてはいかがでしょうか?甘さと香りの極上の焼き芋が楽しめるはずです!