紅芋がスーパーで買えない理由とは?沖縄以外ではスーパーで目にすることはありません。その理由や紅芋の品種の種類、栄養価、紅芋の調理法まで徹底解説

さつまいもには多くの品種がありますが、その中で鮮やかな紫色が特徴的なものとして、紫芋と紅芋が挙げられることがあります。これらの2つの品種は一見似ていますが、紫芋はヒルガオ科の植物であり、紅芋はヤマノイモ科に属する異なる植物で、紅芋はさつまいもではありません。今回は、その紅芋について取り上げて紹介します。沖縄県では、芋といえば紅芋を思い浮かべるほど日常的に親しまれています。しかし、沖縄県以外に住んでいる場合、スーパーの野菜売り場で生の紅芋を見かけることはまずありません。その理由も含めて、沖縄県以外ではなかなか目にすることのない紅芋の特徴や、魅力を詳しくお伝えします。

紅芋の特徴と歴史

紅芋は、ヤムイモの一種であるダイショの中で、皮だけでなく内部まで赤紫色をした品種を指します。江戸時代に中国から伝わり、その後県内で栽培が始まりました。台風や干ばつに強い性質と、水はけがよく暖かい沖縄の風土が栽培に適していたことから、広く栽培されるようになりました。伝来以降、品種改良が続けられ新しい品種が開発されています。

紅芋の特徴と歴史

沖縄県内の紅芋など一部の植物は、南西諸島で発生する病害虫のまん延を防ぐため、生のまま県外に持ち出せないことが法令で定められています。この制約によって、九州以北ではあまり紅芋を見かけることはありませんが、沖縄の食文化には欠かせない存在です。

紅芋と沖縄県

紅芋の品種を紹介します!

紅芋の品種

紅芋の主流となる品種とその特徴について紹介します。

紅芋の主流品種

ちゅら恋紅(ちゅらこいべに)

読谷村を中心として栽培される「ちゅら恋紅」は、紅芋生産量の約8割を占めています。控えめな甘さと赤身の強い紫色が特徴です。加熱すると紫色が鮮やかに発色するため、お菓子の材料やペーストなどの加工用としても重宝されています。

宮農36号(みやのう36ごう)

元祖紅芋と言われている品種で、強い甘みが特徴です。見た目は、皮が赤紫色、中身は紫紅色をしています。近年、生産量が減少していますが、希少性の高さが逆に人気を呼んでいるようです。

備瀬(びせ)

白い皮と紫紅色の中身が特徴で、きめ細かくクリーミーな舌触りが魅力です。

沖夢紫(おきゆめむらさき)

鮮やかな紫色に近い色味をしており、粘り気と甘みが強い品種です。熟成させて焼き芋にすると糖度が30〜35度まで上がります。石垣島と八重山地方において、ブランド化に向けた取り組みが進められています。

おぼろ紅(おぼろべに)

2024年から栽培が始まる予定の新品種で、さつまいも類の大病である「サツマイモ基腐病」に対する抵抗力が強く、安定供給が期待されています。

紅芋のもつ豊富な栄養と驚きの健康効果

紅芋のアントシアニン

沖縄県では昔から、体力低下時や便秘時には紅芋を食べる習慣があり、その栄養素には身体に嬉しい効果がたくさんあります。紅芋には、デンプン、ブドウ糖、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、カリウム、ナトリウムなど、栄養素とミネラルが豊富に含まれています。紅芋特有の紫色は、アントシアニンの色素によるものです。アントシアニンは、抗酸化作用に優れ、目の健康に良いとされており、眼精疲労や白内障、眼病予防などの効果があります。さらに、アントシアニンは、動脈硬化の予防やコレストロールの抑制、肝細胞の活性化など生活習慣病の予防にも効果的です。これらの豊富な栄養度と合わせて、食物繊維やポリフェノールも多く含まれているので、機能性食品としても注目されています。

紅芋のおススメ調理法!

紅芋の魅力を引き出す調理方法を紹介します。紅芋の生芋は沖縄県以外では手に入れづらいですが、焼き芋を冷凍したもの、粉状に加工したもの、ペーストであれば比較的容易に入手可能です。通常のさつまいもと同様に調理してもおいしくいただけますが、紅芋独特の甘みや色合いを活かしたデザートや料理、沖縄の郷土料理などに挑戦してみませんか?

デザート|和菓子にも洋菓子にもぴったり

紅芋は洋菓子にぴったり

ペーストを利用したアイスクリームやプリン、パウダーを利用したパンケーキやクッキーなどにすると、自然な甘みと色合いを楽しめます。また、羊羹や饅頭などの和菓子にも相性抜群です。

紅芋モンブラン

料理|食卓に彩りをプラス

紅芋で色彩を食卓に

お正月の栗きんとんに使うと、鮮やかな紫色がおせち料理を一層彩り豊かにします。また、角切りにして炊飯器に入れて炊き込みご飯にしたり、天ぷらや素揚げ、ポテトサラダにしたりなど、紅芋の色を活かした料理にするのもおすすめです。

紅芋がアクセントのチーズケーキ

郷土料理|自然な甘みにほっこり気分

ウムクジ天ぷら

紅芋と砂糖をいっしょに煮たきんとん風芋煮の「ウムニー」や、パウダー状のデンプンと砂糖を混ぜておやきにした「ウムクジ天ぷら」は、おやつとしても楽しめます。サーダーアンダーギーも紅芋を使うと、一味変わった味わいが感じられます。

まとめ

紅芋のお粥

紅芋は沖縄県で広く親しまれている特別な食材で、さまざまな魅力があります。紅芋はヤムイモの一種で、内部まで赤紫色が特徴的です。沖縄の気候に適し、江戸時代から栽培が進められ、現在では「ちゅら恋紅」や「沖夢紫」などの多彩な品種が存在します。紅芋は栄養価が高く、特にアントシアニンが豊富で、抗酸化作用や生活習慣病の予防に効果的です。

紅芋大福

紅芋を使用した料理やお菓子は、鮮やかな色彩と独特の甘さが楽しめ、特にペーストや粉末は手軽に利用できるため、全国的にも人気があります。沖縄ならではの郷土料理にも紅芋が活かされ、伝統と味が融合した一品が多く存在します。栄養豊富な紅芋を使った料理は、鮮やかな紫色で食卓を豊かに彩り、健康にも配慮できる素材です。ぜひいろいろな調理法に挑戦して、色合いや味わいを楽しんでみて下さい。また、沖縄を訪れる際には、県内でしか味わえない、生の紅芋で作った料理をぜひお試しいただければと思います。